小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました

みかん桜(蜜柑桜)

文字の大きさ
上 下
4 / 65

ガラスペン

しおりを挟む
「お茶をご用意しましょうか?」
「アンナ…お願いするわ。お祖父様とお祖母様がいらしてからメアリーの機嫌が悪くなってしまって大変だったの」
「大旦那様も大奥様もリリーナ様を溺愛されていらっしゃいますものね」

 そうなのだ。元々私達兄妹3人を同じだけ愛してくれていた祖父母。特別扱いをしてもらえないメアリーは当然祖父母を嫌っているし、兄もメアリーを特別視しない祖父母に疑念を抱いている。逆に両親に構ってもらえない私は祖父母に懐き、結果溺愛されるようになったのだ。

 とはいえ特別扱いはせず3人を同じように大切にしてくれているのに…今思い出してもムカつくし、メアリーが許せない。







「おめでとう、メアリー」
「お祖父様、お祖母様、ありがとうございます。………これはなんですか?」
「ガラスペン、というものよ。最近発売されたもので一度のインク付けで羽ペンよりも多くの文字を書くことができるのよ。これから家庭学習が始まるでしょう。きっと役に立つわ」

 あからさまにテンションを下げたメアリー。ガラスペンってものすごく高くて中々手に入らないって噂されているものなのに。

「お姉様にも同じものを渡していましたよね?」
「えぇ、そうね。リリーナだけでなくレオニールにも渡したのだけれど…それにメアリー、あなたには」
「何でお姉様ばかり可愛がるのですか! 今日はメアリーの誕生日です。お姉様にプレゼントなんておかしいわ!!」

 何を言っているの?

「私だけじゃなくお兄様も貰っているわよ」
「うるさい! うるさい!」
「お祖父様もお祖母様も人が悪い。何もメアリーの誕生日当日に用意しなくても」
「メアリーもレオニールも、いらないのであれば無理に受け取らなくていいぞ」

 お祖父様はずっと黙って様子を見ていたけれど、まだ5歳とはいえ癇癪を起こし始めたメアリーに呆れていた。それもそのはず。あくまでもガラスペンは私達の勉強に役立つようにとお祖父様が手に入れてくれただけで、メアリーの誕生日プレゼントは別で用意されているのだから。
 お父様に爵位を譲ってから領地の田舎に住んでいるお祖父様とお祖母様。高価なものだし、せっかくだからと直接渡してくれただけだ。

「お姉様が貰うなんておかしいわっ!」


 パキン


「えっ…」

 そろそろお客様も到着するのだからいい加減にしてほしい。と思っていたら、メアリーにガラスペンを奪われ廊下に投げつけられた。直接廊下に落ちれば絨毯の上で壊れることもなかっただろう。壁に当たってから落ちたためキレイに半分に割れてしまった。


「うぅぅ、、」

 公爵令嬢だから人前で泣いちゃだめだと自分に言い聞かせ、何とか堪えるが流石にこれは許せない。酷すぎる。
 また手に入れると言ってくれたけれど、1つ1つが手作りで最初に貰ったこのガラスペンは戻ってこない。

「……部屋に下がります」

 メアリーの誕生日なんて祝いたくない。この国では、無事にここまで育ったことをお祝いする5歳の誕生日は特別。でもそんなこと関係ない。メアリーだって私がいない方が嬉しいだろうし、体調が悪いとでも言ってもらおう。


「何を騒いでいるんだ」
「お父様…」
「そろそろお客様が到着される。準備をなさい」

 結局部屋に下がることは許されず、思っていた以上に私へダメージを与えられた事に喜びを隠せないメアリーの誕生日パーティーに最後まで参加させられた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

【完結】「君を手に入れるためなら、何でもするよ?」――冷徹公爵の執着愛から逃げられません」

21時完結
恋愛
「君との婚約はなかったことにしよう」 そう言い放ったのは、幼い頃から婚約者だった第一王子アレクシス。 理由は簡単――新たな愛を見つけたから。 (まあ、よくある話よね) 私は王子の愛を信じていたわけでもないし、泣き喚くつもりもない。 むしろ、自由になれてラッキー! これで平穏な人生を―― そう思っていたのに。 「お前が王子との婚約を解消したと聞いた時、心が震えたよ」 「これで、ようやく君を手に入れられる」 王都一の冷徹貴族と恐れられる公爵・レオンハルトが、なぜか私に異常な執着を見せ始めた。 それどころか、王子が私に未練がましく接しようとすると―― 「君を奪う者は、例外なく排除する」 と、不穏な笑みを浮かべながら告げてきて――!? (ちょっと待って、これって普通の求愛じゃない!) 冷酷無慈悲と噂される公爵様は、どうやら私のためなら何でもするらしい。 ……って、私の周りから次々と邪魔者が消えていくのは気のせいですか!? 自由を手に入れるはずが、今度は公爵様の異常な愛から逃げられなくなってしまいました――。

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

こな
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。 「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」 「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」 でも、お願いされたら断れない性分の私…。 異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。 ※この話は、小説家になろう様へも掲載しています

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

処理中です...