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俺の婚約者 sideルーク
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俺には12歳の時から婚約者がいる。
エレナ・マーリン。それが婚約者の名前。
本当はもっと早く婚約する予定だったが、妹大好き次期侯爵と娘大好き現侯爵がゴネたため、少し時間がかかってしまった。
物心が付いた時には既に始まっていた次期公爵となるための厳しい教育。別に両親の事は嫌いじゃない。上位貴族家にしては珍しく家族仲も良い方だとも思っている。ただ、毎日勉強漬けの毎日で、楽しいことなんて何もなかった。
そんな単調な毎日が色付いたのは、エレナ、君に出会ってからなんだ。
底抜けに明るい君の隣にいると、生きる活力になる。
エレナに初めて会ったのは7歳の時。友人であるマーリン侯爵家のライナス主催のお茶会で、だった。まだ6歳だった彼女には参加資格はなかったけれど、参加したかったのか、開催されていたガーデンに入り込んでいたんだ。
前世の記憶があると聞いた今からすれば、ただただニーナ嬢を見たくての行動だったと理解しているが。……完全に隠れてると思い込んでいたあの日のエレナ、あれは可愛かったな。
それに、俺にも可愛いと思う感情があることを知った出来事でもある。
それから約束通りお茶会に招待したり、ピクニックや孤児院へと一緒に行ったり、クッキーを一緒に作ったり…幼い頃からずっと一緒に過ごし、大切に大切にしてきた。
俺よりも同じ公爵家のニーナ嬢にご執心だったことにはイラつきも覚えたけど、ニーナ嬢の言動に一喜一憂する姿も可愛いと思うんだから重症だよな。
婚約したことを伝えたときですら、ニーナ嬢のことで頭が一杯で。まぁ、あの日は婚約者であることをまだ隠すつもりでいたから、敢えてライナスとニーナ嬢に夢中になっているタイミングで伝えたんだが。
もちろん手放すつもりなんて更々ない。婚約者だからではなく俺自身を好きになってほしくて隠してきたのに、ここまで時間がかかるとは…正直誤算だ。
ニーナ嬢に憧れるあまり、自身も侯爵令嬢として完璧な淑女となったエレナ。年々婚約者ではないからと遠慮しだすし。
そもそも普通は気が付くだろう。仮にも公爵家嫡男の俺に婚約者がいないはずないし、エレナ以外の人間全てが知っている事だぞ? 鈍感すぎるところが可愛い反面憎くもある。デートの誘いを断られないだけ良しとするべきか…。
前回はガラにもなく焦ってしようとした告白。仕切り直すからには完璧に、エレナにも好きになってもらってからと、ずっと機会を待っていた。
ようやくその時がきた。
*
*
*
「2年ぶりですね」
「あの時と咲いている花は違うけどね」
仕切り直しの場に選んだのは、前回と同じ温室サロン。ここにはもう一度来たいとエレナがずっと言っていたからね。もちろん料理は別のものを用意している。
「エレナが待ち望んでいた茶葉が手に入ったよ」
「本当ですか!? コレ、ニーナ様お気に入りの茶葉なんです」
知っているよ。販売元はクラーク公爵家が懇意にしている相手だったから、セオドアに融通してもらったからね。
「ふふ。嬉しいです」
「アップルパイも用意しているよ」
「わぁ! 本当ですか! オリヴィエ公爵領で収穫されるりんご、すごく好きなんです」
「ありがとう」
元々うちの領はりんごの収穫量が多かったけど、エレナがりんご好きと知ってからは品種改良も重ねてきた。これは昔一緒に行った孤児院で、エレナと仲良くなった孤児院出身の者達が、エレナのためにと協力してくれたおかげだ。
今日のりんごはアップルパイに一番合う物を使用している。
アップルパイを一口食べ、紅茶を口に含んだ後、意を決したエレナが口を開いた。
「ルーク様。あのっ、その…実はですね、えっと、その………お伝え、したいことが…あり、ます」
必死に言葉を紡ぐ姿が可愛い。ニヤけそうになる口元を手で隠し、俺から気持ちを伝えよう。
「奇遇だね。俺もあるんだ」
「っ!! ではっ、ル、ルーク様からどうぞっ」
あぁ、耳まで真赤にして…可愛すぎる。早くこの腕で抱き締めたい。……今までもフライングはしていたが、気持ちを通じあわせ、目一杯に甘やかし、愛でたい。
「では、遠慮なく」
従者に指示を出し、持ってきてもらったのは101本のバラの花束。
片膝を付き、誠心誠意君に伝えよう。
「エレナ。エレナとの出会いは私にとって特別なものだったんだ。私の色のない世界を色付かせてくれた。エレナの笑顔を見るだけで疲れが飛び、共に過ごす時間はこれ以上にないほどの幸せを感じるんだ。
エレナ、ルーク・オリヴィエの名において君を必ず幸せにすると誓おう。だからどうか、残りの人生を私と共に過ごしてほしい」
エレナ・マーリン。それが婚約者の名前。
本当はもっと早く婚約する予定だったが、妹大好き次期侯爵と娘大好き現侯爵がゴネたため、少し時間がかかってしまった。
物心が付いた時には既に始まっていた次期公爵となるための厳しい教育。別に両親の事は嫌いじゃない。上位貴族家にしては珍しく家族仲も良い方だとも思っている。ただ、毎日勉強漬けの毎日で、楽しいことなんて何もなかった。
そんな単調な毎日が色付いたのは、エレナ、君に出会ってからなんだ。
底抜けに明るい君の隣にいると、生きる活力になる。
エレナに初めて会ったのは7歳の時。友人であるマーリン侯爵家のライナス主催のお茶会で、だった。まだ6歳だった彼女には参加資格はなかったけれど、参加したかったのか、開催されていたガーデンに入り込んでいたんだ。
前世の記憶があると聞いた今からすれば、ただただニーナ嬢を見たくての行動だったと理解しているが。……完全に隠れてると思い込んでいたあの日のエレナ、あれは可愛かったな。
それに、俺にも可愛いと思う感情があることを知った出来事でもある。
それから約束通りお茶会に招待したり、ピクニックや孤児院へと一緒に行ったり、クッキーを一緒に作ったり…幼い頃からずっと一緒に過ごし、大切に大切にしてきた。
俺よりも同じ公爵家のニーナ嬢にご執心だったことにはイラつきも覚えたけど、ニーナ嬢の言動に一喜一憂する姿も可愛いと思うんだから重症だよな。
婚約したことを伝えたときですら、ニーナ嬢のことで頭が一杯で。まぁ、あの日は婚約者であることをまだ隠すつもりでいたから、敢えてライナスとニーナ嬢に夢中になっているタイミングで伝えたんだが。
もちろん手放すつもりなんて更々ない。婚約者だからではなく俺自身を好きになってほしくて隠してきたのに、ここまで時間がかかるとは…正直誤算だ。
ニーナ嬢に憧れるあまり、自身も侯爵令嬢として完璧な淑女となったエレナ。年々婚約者ではないからと遠慮しだすし。
そもそも普通は気が付くだろう。仮にも公爵家嫡男の俺に婚約者がいないはずないし、エレナ以外の人間全てが知っている事だぞ? 鈍感すぎるところが可愛い反面憎くもある。デートの誘いを断られないだけ良しとするべきか…。
前回はガラにもなく焦ってしようとした告白。仕切り直すからには完璧に、エレナにも好きになってもらってからと、ずっと機会を待っていた。
ようやくその時がきた。
*
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「2年ぶりですね」
「あの時と咲いている花は違うけどね」
仕切り直しの場に選んだのは、前回と同じ温室サロン。ここにはもう一度来たいとエレナがずっと言っていたからね。もちろん料理は別のものを用意している。
「エレナが待ち望んでいた茶葉が手に入ったよ」
「本当ですか!? コレ、ニーナ様お気に入りの茶葉なんです」
知っているよ。販売元はクラーク公爵家が懇意にしている相手だったから、セオドアに融通してもらったからね。
「ふふ。嬉しいです」
「アップルパイも用意しているよ」
「わぁ! 本当ですか! オリヴィエ公爵領で収穫されるりんご、すごく好きなんです」
「ありがとう」
元々うちの領はりんごの収穫量が多かったけど、エレナがりんご好きと知ってからは品種改良も重ねてきた。これは昔一緒に行った孤児院で、エレナと仲良くなった孤児院出身の者達が、エレナのためにと協力してくれたおかげだ。
今日のりんごはアップルパイに一番合う物を使用している。
アップルパイを一口食べ、紅茶を口に含んだ後、意を決したエレナが口を開いた。
「ルーク様。あのっ、その…実はですね、えっと、その………お伝え、したいことが…あり、ます」
必死に言葉を紡ぐ姿が可愛い。ニヤけそうになる口元を手で隠し、俺から気持ちを伝えよう。
「奇遇だね。俺もあるんだ」
「っ!! ではっ、ル、ルーク様からどうぞっ」
あぁ、耳まで真赤にして…可愛すぎる。早くこの腕で抱き締めたい。……今までもフライングはしていたが、気持ちを通じあわせ、目一杯に甘やかし、愛でたい。
「では、遠慮なく」
従者に指示を出し、持ってきてもらったのは101本のバラの花束。
片膝を付き、誠心誠意君に伝えよう。
「エレナ。エレナとの出会いは私にとって特別なものだったんだ。私の色のない世界を色付かせてくれた。エレナの笑顔を見るだけで疲れが飛び、共に過ごす時間はこれ以上にないほどの幸せを感じるんだ。
エレナ、ルーク・オリヴィエの名において君を必ず幸せにすると誓おう。だからどうか、残りの人生を私と共に過ごしてほしい」
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