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ようやく気付いた恋心
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「ルーク様?」
授業が終わり、課題に使える資料を探しに図書館へと向かう途中、ルーク様がナターシャと2人で話し込んでいるのを見つけてしまった。
嬉しいって気持ちを隠しきれず、どう見たって喜んでいるナターシャ。しかも、ルーク様も嫌がってるように見えない。
「もしかして…ナターシャの事を好きになってしまったの?」
私に止める権利なんていし、ルーク様がナターシャと仲良くするのが嫌だなんて事を言える立場でもない。でもそれが物凄く悔しい。
「辛い…いやだよ、ルーク様…なんでなの?」
ここからじゃ何を話しているのかなんて全然聞こえてこない。盗み聞きなんて良くないって分かってるけど…何を話しているのか気になって仕方ないよ。でも…聞きたくない気持ちもあるから、とっても複雑だわ。
もし愛の言葉なんて囁いていたら…私、立ち直れない気がする。
それに……
「……仕切り直しだってしてもらってない」
一昨年の夏に王都の公園にある温室サロンで告白してくれたのに…あの時ちゃんと返事をしなかったのがいけなかったのかな?
これまで、もしかしてって舞い上がったり、いつまでたっても仕切り直しをしてもらえなくて、勘違いかもって落ち込んだり……それでも私以上にルーク様と距離が近い女性なんていないって思ってたから、どこかで安心していたのかもしれない。
こんな気持ち初めて。
これって……嫉妬、だよね。
やっぱりモブの私じゃ主人公に負けてしまうのかな。って、私は漫画に出てないけど。ナターシャは、お兄様が好きってわけじゃないって言ってたよね…でもまさか恋の相手がルーク様だなんて思いもしなかったわ。
「はぁぁ、資料どうしよう」
図書館へ向かうには2人の前を通らなければ行けない。それは嫌だなぁ。
「あっ」
今した握手の意味は何? 告白されてこちらこそって返しの握手? そんなわけ……ないよね?
「エレナ?」
「あっ…」
モタモタしていたら、いつの間にかナターシャと分かれたルーク様が目の前に立っていた。
「こんなところでどうしたの?」
「と、図書館に資料を探しに行こうかと…」
「付き合うよ」
「いえっ、お忙しいと思うので…」
あまり優しくしないでください。勘違いしちゃうので。
「? たとえ忙しくてもエレナを優先するよ?」
だからっ! 勘違いしてしまうような言い方をしないでよ。
「なんの資料を探しているの?」
「経営学の資料を」
「それは頼りになる公爵夫人になりそうだね」
「?? ありがとうございます?」
えっと…公爵夫人? まるでルーク様の伴侶になるみたいな言い方……きっとナターシャに見習ってほしいとかなんだろうけど。彼女だってSクラスで頭がいいんだし、心配しなくたって頼りになる公爵夫人になるんじゃない?
違うって信じたいのに、どうしても悪い方悪い方に考えが向かってしまう。
先日、ナターシャにぶつかられた話をルーク様にしたのに、あんな和やかにお喋りしていて…。ナターシャが私にぶつかってきたのも、ルーク様と仲良くしていることに怒ったのだと思うと納得がいくけどさ。
「全部知ってるくせに」
「ん? エレナ?」
「いえ。なんでもありません」
ナターシャのことを警戒していたくせに。面倒な令嬢だって言ってるのを、聞いたこともあるんだよ?
「ナターシャを好きにならないで」
きっとこの声はルーク様には届いていない。こんなことを願うなんて私はなんて酷いんだって思うけど、そう願わずにはいられないよ。
それにしても、いつの間にナターシャの狙いがお兄様からルーク様に変わったんだろう。違う…ニーナ様から私に狙いが変わった? でもそれでルーク様が選ばれる理由が分からないわ。
「これなんてどうかな? 俺も去年経営学の課題をする時に参考にした本なんだ。分かりやすいしきっとエレナの為になるよ」
「では、こちらを借りようと思います」
「せっかくだから、少しここでやっていかない? アドバイスするよ」
「いえ、寮に帰って1人でやってみます。お気持ちだけ頂いておきますね。ありがとうございます」
「エレナ? 何かあった?」
どうして気がつくの? いつも通りしようって気を付けていたのに。私の事、一番理解しているのはルーク様じゃないかって思うくらい、毎回私のちょっとした変化にまで気付いてくれる。
「何も…何もありません」
「俺に嘘を付いたって無駄だよ? エレナ、俺に話して」
「本当に、何もないんです」
「そう…俺の目を見て」
うぅ…そうやって無理やり目を合わせようとしないでよ。無理矢理のくせに、優しく頬に触れないで。
「泣かないで」
そう言って涙を唇で吸い取るルーク様。
「ちょっ、ルーク様っ」
「しーっ。図書館では静かにね」
「だっ、だってルーク様が」
「でも涙は止まったね? かーわいい。顔が真っ赤だよ」
「誰のせいですかっ」
「僕かな?」
あぁ…もうちゃんと認めよう。
私、ルーク様の事が好き。
授業が終わり、課題に使える資料を探しに図書館へと向かう途中、ルーク様がナターシャと2人で話し込んでいるのを見つけてしまった。
嬉しいって気持ちを隠しきれず、どう見たって喜んでいるナターシャ。しかも、ルーク様も嫌がってるように見えない。
「もしかして…ナターシャの事を好きになってしまったの?」
私に止める権利なんていし、ルーク様がナターシャと仲良くするのが嫌だなんて事を言える立場でもない。でもそれが物凄く悔しい。
「辛い…いやだよ、ルーク様…なんでなの?」
ここからじゃ何を話しているのかなんて全然聞こえてこない。盗み聞きなんて良くないって分かってるけど…何を話しているのか気になって仕方ないよ。でも…聞きたくない気持ちもあるから、とっても複雑だわ。
もし愛の言葉なんて囁いていたら…私、立ち直れない気がする。
それに……
「……仕切り直しだってしてもらってない」
一昨年の夏に王都の公園にある温室サロンで告白してくれたのに…あの時ちゃんと返事をしなかったのがいけなかったのかな?
これまで、もしかしてって舞い上がったり、いつまでたっても仕切り直しをしてもらえなくて、勘違いかもって落ち込んだり……それでも私以上にルーク様と距離が近い女性なんていないって思ってたから、どこかで安心していたのかもしれない。
こんな気持ち初めて。
これって……嫉妬、だよね。
やっぱりモブの私じゃ主人公に負けてしまうのかな。って、私は漫画に出てないけど。ナターシャは、お兄様が好きってわけじゃないって言ってたよね…でもまさか恋の相手がルーク様だなんて思いもしなかったわ。
「はぁぁ、資料どうしよう」
図書館へ向かうには2人の前を通らなければ行けない。それは嫌だなぁ。
「あっ」
今した握手の意味は何? 告白されてこちらこそって返しの握手? そんなわけ……ないよね?
「エレナ?」
「あっ…」
モタモタしていたら、いつの間にかナターシャと分かれたルーク様が目の前に立っていた。
「こんなところでどうしたの?」
「と、図書館に資料を探しに行こうかと…」
「付き合うよ」
「いえっ、お忙しいと思うので…」
あまり優しくしないでください。勘違いしちゃうので。
「? たとえ忙しくてもエレナを優先するよ?」
だからっ! 勘違いしてしまうような言い方をしないでよ。
「なんの資料を探しているの?」
「経営学の資料を」
「それは頼りになる公爵夫人になりそうだね」
「?? ありがとうございます?」
えっと…公爵夫人? まるでルーク様の伴侶になるみたいな言い方……きっとナターシャに見習ってほしいとかなんだろうけど。彼女だってSクラスで頭がいいんだし、心配しなくたって頼りになる公爵夫人になるんじゃない?
違うって信じたいのに、どうしても悪い方悪い方に考えが向かってしまう。
先日、ナターシャにぶつかられた話をルーク様にしたのに、あんな和やかにお喋りしていて…。ナターシャが私にぶつかってきたのも、ルーク様と仲良くしていることに怒ったのだと思うと納得がいくけどさ。
「全部知ってるくせに」
「ん? エレナ?」
「いえ。なんでもありません」
ナターシャのことを警戒していたくせに。面倒な令嬢だって言ってるのを、聞いたこともあるんだよ?
「ナターシャを好きにならないで」
きっとこの声はルーク様には届いていない。こんなことを願うなんて私はなんて酷いんだって思うけど、そう願わずにはいられないよ。
それにしても、いつの間にナターシャの狙いがお兄様からルーク様に変わったんだろう。違う…ニーナ様から私に狙いが変わった? でもそれでルーク様が選ばれる理由が分からないわ。
「これなんてどうかな? 俺も去年経営学の課題をする時に参考にした本なんだ。分かりやすいしきっとエレナの為になるよ」
「では、こちらを借りようと思います」
「せっかくだから、少しここでやっていかない? アドバイスするよ」
「いえ、寮に帰って1人でやってみます。お気持ちだけ頂いておきますね。ありがとうございます」
「エレナ? 何かあった?」
どうして気がつくの? いつも通りしようって気を付けていたのに。私の事、一番理解しているのはルーク様じゃないかって思うくらい、毎回私のちょっとした変化にまで気付いてくれる。
「何も…何もありません」
「俺に嘘を付いたって無駄だよ? エレナ、俺に話して」
「本当に、何もないんです」
「そう…俺の目を見て」
うぅ…そうやって無理やり目を合わせようとしないでよ。無理矢理のくせに、優しく頬に触れないで。
「泣かないで」
そう言って涙を唇で吸い取るルーク様。
「ちょっ、ルーク様っ」
「しーっ。図書館では静かにね」
「だっ、だってルーク様が」
「でも涙は止まったね? かーわいい。顔が真っ赤だよ」
「誰のせいですかっ」
「僕かな?」
あぁ…もうちゃんと認めよう。
私、ルーク様の事が好き。
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