推しの悪役令嬢を幸せにします!

みかん桜(蜜柑桜)

文字の大きさ
上 下
35 / 44

ようやく気付いた恋心

しおりを挟む
「ルーク様?」

 授業が終わり、課題に使える資料を探しに図書館へと向かう途中、ルーク様がナターシャと2人で話し込んでいるのを見つけてしまった。

 嬉しいって気持ちを隠しきれず、どう見たって喜んでいるナターシャ。しかも、ルーク様も嫌がってるように見えない。

「もしかして…ナターシャの事を好きになってしまったの?」

 私に止める権利なんていし、ルーク様がナターシャと仲良くするのが嫌だなんて事を言える立場でもない。でもそれが物凄く悔しい。

「辛い…いやだよ、ルーク様…なんでなの?」

 ここからじゃ何を話しているのかなんて全然聞こえてこない。盗み聞きなんて良くないって分かってるけど…何を話しているのか気になって仕方ないよ。でも…聞きたくない気持ちもあるから、とっても複雑だわ。

 もし愛の言葉なんて囁いていたら…私、立ち直れない気がする。

 それに……

「……仕切り直しだってしてもらってない」

 一昨年の夏に王都の公園にある温室サロンで告白してくれたのに…あの時ちゃんと返事をしなかったのがいけなかったのかな? 

 これまで、もしかしてって舞い上がったり、いつまでたっても仕切り直しをしてもらえなくて、勘違いかもって落ち込んだり……それでも私以上にルーク様と距離が近い女性なんていないって思ってたから、どこかで安心していたのかもしれない。

 こんな気持ち初めて。

 これって……嫉妬、だよね。

 やっぱりモブの私じゃ主人公に負けてしまうのかな。って、私は漫画に出てないけど。ナターシャは、お兄様が好きってわけじゃないって言ってたよね…でもまさか恋の相手がルーク様だなんて思いもしなかったわ。

「はぁぁ、資料どうしよう」

 図書館へ向かうには2人の前を通らなければ行けない。それは嫌だなぁ。

「あっ」

 今した握手の意味は何? 告白されてこちらこそって返しの握手? そんなわけ……ないよね?

「エレナ?」
「あっ…」

 モタモタしていたら、いつの間にかナターシャと分かれたルーク様が目の前に立っていた。

「こんなところでどうしたの?」
「と、図書館に資料を探しに行こうかと…」
「付き合うよ」
「いえっ、お忙しいと思うので…」

 あまり優しくしないでください。勘違いしちゃうので。

「? たとえ忙しくてもエレナを優先するよ?」

 だからっ! 勘違いしてしまうような言い方をしないでよ。

「なんの資料を探しているの?」
「経営学の資料を」
「それは頼りになる公爵夫人になりそうだね」
「?? ありがとうございます?」

 えっと…公爵夫人? まるでルーク様の伴侶になるみたいな言い方……きっとナターシャに見習ってほしいとかなんだろうけど。彼女だってSクラスで頭がいいんだし、心配しなくたって頼りになる公爵夫人になるんじゃない?

 違うって信じたいのに、どうしても悪い方悪い方に考えが向かってしまう。

 先日、ナターシャにぶつかられた話をルーク様にしたのに、あんな和やかにお喋りしていて…。ナターシャが私にぶつかってきたのも、ルーク様と仲良くしていることに怒ったのだと思うと納得がいくけどさ。

「全部知ってるくせに」
「ん? エレナ?」
「いえ。なんでもありません」

 ナターシャのことを警戒していたくせに。面倒な令嬢だって言ってるのを、聞いたこともあるんだよ?

「ナターシャを好きにならないで」

 きっとこの声はルーク様には届いていない。こんなことを願うなんて私はなんて酷いんだって思うけど、そう願わずにはいられないよ。

 それにしても、いつの間にナターシャの狙いがお兄様からルーク様に変わったんだろう。違う…ニーナ様から私に狙いが変わった? でもそれでルーク様が選ばれる理由が分からないわ。

「これなんてどうかな? 俺も去年経営学の課題をする時に参考にした本なんだ。分かりやすいしきっとエレナの為になるよ」
「では、こちらを借りようと思います」
「せっかくだから、少しここでやっていかない? アドバイスするよ」
「いえ、寮に帰って1人でやってみます。お気持ちだけ頂いておきますね。ありがとうございます」
「エレナ? 何かあった?」

 どうして気がつくの? いつも通りしようって気を付けていたのに。私の事、一番理解しているのはルーク様じゃないかって思うくらい、毎回私のちょっとした変化にまで気付いてくれる。
 
「何も…何もありません」
「俺に嘘を付いたって無駄だよ? エレナ、俺に話して」
「本当に、何もないんです」
「そう…俺の目を見て」

 うぅ…そうやって無理やり目を合わせようとしないでよ。無理矢理のくせに、優しく頬に触れないで。

「泣かないで」

 そう言って涙を唇で吸い取るルーク様。

「ちょっ、ルーク様っ」
「しーっ。図書館では静かにね」
「だっ、だってルーク様が」
「でも涙は止まったね? かーわいい。顔が真っ赤だよ」
「誰のせいですかっ」
「僕かな?」

 あぁ…もうちゃんと認めよう。

 私、ルーク様の事が好き。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

人質王女の婚約者生活(仮)〜「君を愛することはない」と言われたのでひとときの自由を満喫していたら、皇太子殿下との秘密ができました〜

清川和泉
恋愛
幼い頃に半ば騙し討ちの形で人質としてブラウ帝国に連れて来られた、隣国ユーリ王国の王女クレア。 クレアは皇女宮で毎日皇女らに下女として過ごすように強要されていたが、ある日属国で暮らしていた皇太子であるアーサーから「彼から愛されないこと」を条件に婚約を申し込まれる。 (過去に、婚約するはずの女性がいたと聞いたことはあるけれど…) そう考えたクレアは、彼らの仲が公になるまでの繋ぎの婚約者を演じることにした。 移住先では夢のような好待遇、自由な時間をもつことができ、仮初めの婚約者生活を満喫する。 また、ある出来事がきっかけでクレア自身に秘められた力が解放され、それはアーサーとクレアの二人だけの秘密に。行動を共にすることも増え徐々にアーサーとの距離も縮まっていく。 「俺は君を愛する資格を得たい」 (皇太子殿下には想い人がいたのでは。もしかして、私を愛せないのは別のことが理由だった…?) これは、不遇な人質王女のクレアが不思議な力で周囲の人々を幸せにし、クレア自身も幸せになっていく物語。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている

五色ひわ
恋愛
 ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。  初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

処理中です...