31 / 44
私の秘密
しおりを挟む
目的のカフェに到着し、個室へ向かう際も、数種類のデザート…前世で言うアフタヌーンティーのセットを頼む際も、届けたときも、一言も話さない私達を店員さんは物凄く怪しんでいた。そんなことを気にする余裕すら今の私にはないんだけどね。
届いた紅茶を一口頂き、まずは不安で埋まっている心を落ち着かせよう。これから前世の話をすると思うと味は全く楽しめなかったけど、お気に入りの茶葉のおかげで少しは落ち着けたかも。
本来なら締め切った部屋に男女で2人きりになるのはあまりよろしくない。でも今回はいくら使用人達が気配を消していようと、聞こえるかもしれないと思うだけで不安材料が増えてしまうから、お願いしてみんなには扉の外で待ってもらうことに。
この話は絶対にルーク様にしか聞かれたくないもの。ここには私達しかいないけど、念の為小さな声で話そう。
「私……」
「ゆっくりでいいよ」
大丈夫。大丈夫だよエレナ。ルーク様はきっと私を信じてくれる。
「私……、私、前世の…記憶があるんです。………しかも異世界の…」
「うん」
「えっ!? お、驚かないのですか?」
「これでも驚いてるよ。でもそれを聞いて納得できたことの方が多いかな。手カメラは前世の…そのイセカイの記憶が理由?」
よかった…信じてもらえた。
「はい。私が最近ハマっているマイは、前世ではお米と言ってパンのように私がいた国の主食でした」
「パンよりも食べていたのか?」
「人によります。私がいた国でもお米…マイよりもパンの方をよく食べている人もいました。私もその時の気分でメニューを決めていたと言いますか…」
「気分でとは…そ、それは料理人がさぞかし大変だったろう」
その辺の詳細は今度ゆっくりと聞いてもらおう。今はニコッと返すだけにとどめた。その時は手カメラやお米の話、クッキーの型やアレンジ、孤児院のバザーで出していた物の話もして…その全てが前世の記憶のおかげだって話したら、さすがにルーク様の驚く顔が見れるかしら?
「きっとエレナが前にいた世界は、ここよりも発展していたんだろうね」
「ふふ、はい。その目で見たらきっと物凄く驚かれますよ」
「そうか…それは見てみたかったよ。………でもエレナ、君が苦しんでいたのは、前世の話を隠していたから、ではないよね? お茶会で、何があったの?」
きた…もしここが漫画の世界だと聞いたら、ルーク様はどう思うだろう。さすがに信じてもらえない? 不安しかなかったけれど、これを話さない限り王女殿下との話もうまく伝えられないから……。
「漫画…絵本や小説のように物語が描かれているものがありまして……前世の私が読んでいた中に、この世界と酷似した物語があったんです…」
「この世界と?」
「はい。恋愛を描いた話で、主人公の名前がナターシャ・ハーロウ。恋の相手がライナス・マーリンで、悪役令嬢…主人公のライバルと言いますか、嫌がらせをしてしまう悪い令嬢の名前がニーナ・クラークでした」
「そ、それは……」
嘘だと思うよね。でもそれが本当なんだよ、ルーク様。
私が知っている内容をルーク様に伝え、前世からニーナ様が好きだったこと、そして彼女を悪い令嬢にしたくなかったのだと、その全てをルーク様に話した。
「なるほど。確かにニーナ嬢は幼い頃と今では性格が大分変わっているもんね。エレナが頑張ったことが結果に繋がったんだ」
「ルーク様が側にいてくださり、いつも相談に乗ってくださったおかげです。ありがとうございます」
「僕こそ、頼ってくれてありがとう」
このままの勢いで王女殿下との事も話してしまおう。
「そう言えば、僕やエレナは出てこないの?」
「実は…王女殿下も前世は私がいた国と同じ国だったようです。同じ物語も読んでおられたようで、むしろ原作の小説を読まれていた殿下の方がより詳しくご存知でした」
私の元気がなくなってしまった原因である、女医や誘拐について話すと、ルーク様は静かに怒りをためているようだった。
「ライナスもも入れて…3人で話し合うべきかもね」
「あのっ、お兄様に前世の話は…」
「話さないよ。エレナは王女殿下の前で、前世の記憶なんてないフリをしていたんだろう? ライナスはエレナの事になると感情が抑えられないからね。まぁ、僕が言えた話でもないけど…お茶会の話だけをライナスに伝えて、対策を練ろう」
「はい」
この時、何故ニーナ様を入れないのか疑問に思ったけれど、お兄様と対策を練った後にその理由が分かったのだった。
「そろそろ使用人達がしびれを切らしているところだろう。今日はここまでにしようか」
「はい。ありがとうございます」
話して少し楽になったけど、まだ不安であることに変わりはないなと思っていたら、使用人達を呼びに行こうと席を立ったルーク様に気が付いたら抱きしめられていた。
「エレナ、話してくれてありがとう。僕が……俺が必ずエレナを守るから、安心しろ」
「は、はいっ」
私のためを思っての言動なのに、一人称が変わり話し方もいつもと違うルーク様に、非常識にもドキドキしてしまった。
届いた紅茶を一口頂き、まずは不安で埋まっている心を落ち着かせよう。これから前世の話をすると思うと味は全く楽しめなかったけど、お気に入りの茶葉のおかげで少しは落ち着けたかも。
本来なら締め切った部屋に男女で2人きりになるのはあまりよろしくない。でも今回はいくら使用人達が気配を消していようと、聞こえるかもしれないと思うだけで不安材料が増えてしまうから、お願いしてみんなには扉の外で待ってもらうことに。
この話は絶対にルーク様にしか聞かれたくないもの。ここには私達しかいないけど、念の為小さな声で話そう。
「私……」
「ゆっくりでいいよ」
大丈夫。大丈夫だよエレナ。ルーク様はきっと私を信じてくれる。
「私……、私、前世の…記憶があるんです。………しかも異世界の…」
「うん」
「えっ!? お、驚かないのですか?」
「これでも驚いてるよ。でもそれを聞いて納得できたことの方が多いかな。手カメラは前世の…そのイセカイの記憶が理由?」
よかった…信じてもらえた。
「はい。私が最近ハマっているマイは、前世ではお米と言ってパンのように私がいた国の主食でした」
「パンよりも食べていたのか?」
「人によります。私がいた国でもお米…マイよりもパンの方をよく食べている人もいました。私もその時の気分でメニューを決めていたと言いますか…」
「気分でとは…そ、それは料理人がさぞかし大変だったろう」
その辺の詳細は今度ゆっくりと聞いてもらおう。今はニコッと返すだけにとどめた。その時は手カメラやお米の話、クッキーの型やアレンジ、孤児院のバザーで出していた物の話もして…その全てが前世の記憶のおかげだって話したら、さすがにルーク様の驚く顔が見れるかしら?
「きっとエレナが前にいた世界は、ここよりも発展していたんだろうね」
「ふふ、はい。その目で見たらきっと物凄く驚かれますよ」
「そうか…それは見てみたかったよ。………でもエレナ、君が苦しんでいたのは、前世の話を隠していたから、ではないよね? お茶会で、何があったの?」
きた…もしここが漫画の世界だと聞いたら、ルーク様はどう思うだろう。さすがに信じてもらえない? 不安しかなかったけれど、これを話さない限り王女殿下との話もうまく伝えられないから……。
「漫画…絵本や小説のように物語が描かれているものがありまして……前世の私が読んでいた中に、この世界と酷似した物語があったんです…」
「この世界と?」
「はい。恋愛を描いた話で、主人公の名前がナターシャ・ハーロウ。恋の相手がライナス・マーリンで、悪役令嬢…主人公のライバルと言いますか、嫌がらせをしてしまう悪い令嬢の名前がニーナ・クラークでした」
「そ、それは……」
嘘だと思うよね。でもそれが本当なんだよ、ルーク様。
私が知っている内容をルーク様に伝え、前世からニーナ様が好きだったこと、そして彼女を悪い令嬢にしたくなかったのだと、その全てをルーク様に話した。
「なるほど。確かにニーナ嬢は幼い頃と今では性格が大分変わっているもんね。エレナが頑張ったことが結果に繋がったんだ」
「ルーク様が側にいてくださり、いつも相談に乗ってくださったおかげです。ありがとうございます」
「僕こそ、頼ってくれてありがとう」
このままの勢いで王女殿下との事も話してしまおう。
「そう言えば、僕やエレナは出てこないの?」
「実は…王女殿下も前世は私がいた国と同じ国だったようです。同じ物語も読んでおられたようで、むしろ原作の小説を読まれていた殿下の方がより詳しくご存知でした」
私の元気がなくなってしまった原因である、女医や誘拐について話すと、ルーク様は静かに怒りをためているようだった。
「ライナスもも入れて…3人で話し合うべきかもね」
「あのっ、お兄様に前世の話は…」
「話さないよ。エレナは王女殿下の前で、前世の記憶なんてないフリをしていたんだろう? ライナスはエレナの事になると感情が抑えられないからね。まぁ、僕が言えた話でもないけど…お茶会の話だけをライナスに伝えて、対策を練ろう」
「はい」
この時、何故ニーナ様を入れないのか疑問に思ったけれど、お兄様と対策を練った後にその理由が分かったのだった。
「そろそろ使用人達がしびれを切らしているところだろう。今日はここまでにしようか」
「はい。ありがとうございます」
話して少し楽になったけど、まだ不安であることに変わりはないなと思っていたら、使用人達を呼びに行こうと席を立ったルーク様に気が付いたら抱きしめられていた。
「エレナ、話してくれてありがとう。僕が……俺が必ずエレナを守るから、安心しろ」
「は、はいっ」
私のためを思っての言動なのに、一人称が変わり話し方もいつもと違うルーク様に、非常識にもドキドキしてしまった。
3
お気に入りに追加
230
あなたにおすすめの小説
魔法の使えない不良品伯爵令嬢、魔導公爵に溺愛される
ねこいかいち
恋愛
魔法で栄えた国家グリスタニア。人々にとって魔力の有無や保有する魔力《オド》の量が存在価値ともいえる中、魔力の量は多くとも魔法が使えない『不良品』というレッテルを貼られた伯爵令嬢レティシア。両親や妹すらまともに接してくれない日々をずっと送っていた。成人間近のある日、魔導公爵が嫁探しのパーティーを開くという話が持ち上がる。妹のおまけとして参加させられたパーティーで、もの静かな青年に声をかけられ……。
一度は書いてみたかった王道恋愛ファンタジーです!
【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない
金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ!
小説家になろうにも書いてます。
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
死にたがり令嬢が笑う日まで。
ふまさ
恋愛
「これだけは、覚えておいてほしい。わたしが心から信用するのも、愛しているのも、カイラだけだ。この先、それだけは、変わることはない」
真剣な表情で言い放つアラスターの隣で、肩を抱かれたカイラは、突然のことに驚いてはいたが、同時に、嬉しそうに頬を緩めていた。二人の目の前に立つニアが、はい、と無表情で呟く。
正直、どうでもよかった。
ニアの望みは、物心ついたころから、たった一つだけだったから。もとより、なにも期待などしてない。
──ああ。眠るように、穏やかに死ねたらなあ。
吹き抜けの天井を仰ぐ。お腹が、ぐうっとなった。
悪役令嬢の護衛騎士というモブになったが様子がおかしい
Blue
恋愛
乙女ゲームの世界の中のモブとして転生したエルダ。作中で悪役令嬢になる第三王女の護衛騎士という立ち位置だ。悪役令嬢になるはずの第三王女は可愛いし、仕事も充実しているし、気楽な気持ちで日々を過ごすはずが……
なんだか様子がおかしい。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
クラヴィスの華〜BADエンドが確定している乙女ゲー世界のモブに転生した私が攻略対象から溺愛されているワケ〜
アルト
恋愛
たった一つのトゥルーエンドを除き、どの攻略ルートであってもBADエンドが確定している乙女ゲーム「クラヴィスの華」。
そのゲームの本編にて、攻略対象である王子殿下の婚約者であった公爵令嬢に主人公は転生をしてしまう。
とは言っても、王子殿下の婚約者とはいえ、「クラヴィスの華」では冒頭付近に婚約を破棄され、グラフィックは勿論、声すら割り当てられておらず、名前だけ登場するというモブの中のモブとも言えるご令嬢。
主人公は、己の不幸フラグを叩き折りつつ、BADエンドしかない未来を変えるべく頑張っていたのだが、何故か次第に雲行きが怪しくなって行き────?
「────婚約破棄? 何故俺がお前との婚約を破棄しなきゃいけないんだ? ああ、そうだ。この肩書きも煩わしいな。いっそもう式をあげてしまおうか。ああ、心配はいらない。必要な事は俺が全て────」
「…………(わ、私はどこで間違っちゃったんだろうか)」
これは、どうにかして己の悲惨な末路を変えたい主人公による生存戦略転生記である。
二度目の結婚は異世界で。~誰とも出会わずひっそり一人で生きたかったのに!!~
すずなり。
恋愛
夫から暴力を振るわれていた『小坂井 紗菜』は、ある日、夫の怒りを買って殺されてしまう。
そして目を開けた時、そこには知らない世界が広がっていて赤ちゃんの姿に・・・!
赤ちゃんの紗菜を拾ってくれた老婆に聞いたこの世界は『魔法』が存在する世界だった。
「お前の瞳は金色だろ?それはとても珍しいものなんだ。誰かに会うときはその色を変えるように。」
そう言われていたのに森でばったり人に出会ってしまってーーーー!?
「一生大事にする。だから俺と・・・・」
※お話は全て想像の世界です。現実世界と何の関係もございません。
※小説大賞に出すために書き始めた作品になります。貯文字は全くありませんので気長に更新を待っていただけたら幸いです。(完結までの道筋はできてるので完結はすると思います。)
※メンタルが薄氷の為、コメントを受け付けることができません。ご了承くださいませ。
ただただすずなり。の世界を楽しんでいただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる