推しの悪役令嬢を幸せにします!

みかん桜(蜜柑桜)

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私の秘密

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 目的のカフェに到着し、個室へ向かう際も、数種類のデザート…前世で言うアフタヌーンティーのセットを頼む際も、届けたときも、一言も話さない私達を店員さんは物凄く怪しんでいた。そんなことを気にする余裕すら今の私にはないんだけどね。

 届いた紅茶を一口頂き、まずは不安で埋まっている心を落ち着かせよう。これから前世の話をすると思うと味は全く楽しめなかったけど、お気に入りの茶葉のおかげで少しは落ち着けたかも。

 本来なら締め切った部屋に男女で2人きりになるのはあまりよろしくない。でも今回はいくら使用人達が気配を消していようと、聞こえるかもしれないと思うだけで不安材料が増えてしまうから、お願いしてみんなには扉の外で待ってもらうことに。

 この話は絶対にルーク様にしか聞かれたくないもの。ここには私達しかいないけど、念の為小さな声で話そう。

「私……」
「ゆっくりでいいよ」

 大丈夫。大丈夫だよエレナ。ルーク様はきっと私を信じてくれる。

「私……、私、前世の…記憶があるんです。………しかも異世界の…」
「うん」
「えっ!? お、驚かないのですか?」
「これでも驚いてるよ。でもそれを聞いて納得できたことの方が多いかな。手カメラは前世の…そのイセカイの記憶が理由?」

 よかった…信じてもらえた。

「はい。私が最近ハマっているマイは、前世ではお米と言ってパンのように私がいた国の主食でした」
「パンよりも食べていたのか?」
「人によります。私がいた国でもお米…マイよりもパンの方をよく食べている人もいました。私もその時の気分でメニューを決めていたと言いますか…」
「気分でとは…そ、それは料理人がさぞかし大変だったろう」

 その辺の詳細は今度ゆっくりと聞いてもらおう。今はニコッと返すだけにとどめた。その時は手カメラやお米の話、クッキーの型やアレンジ、孤児院のバザーで出していた物の話もして…その全てが前世の記憶のおかげだって話したら、さすがにルーク様の驚く顔が見れるかしら?

「きっとエレナが前にいた世界は、ここよりも発展していたんだろうね」
「ふふ、はい。その目で見たらきっと物凄く驚かれますよ」
「そうか…それは見てみたかったよ。………でもエレナ、君が苦しんでいたのは、前世の話を隠していたから、ではないよね? お茶会で、何があったの?」

 きた…もしここが漫画の世界だと聞いたら、ルーク様はどう思うだろう。さすがに信じてもらえない? 不安しかなかったけれど、これを話さない限り王女殿下との話もうまく伝えられないから……。

「漫画…絵本や小説のように物語が描かれているものがありまして……前世の私が読んでいた中に、この世界と酷似した物語があったんです…」
「この世界と?」
「はい。恋愛を描いた話で、主人公の名前がナターシャ・ハーロウ。恋の相手がライナス・マーリンで、悪役令嬢…主人公のライバルと言いますか、嫌がらせをしてしまう悪い令嬢の名前がニーナ・クラークでした」
「そ、それは……」

 嘘だと思うよね。でもそれが本当なんだよ、ルーク様。

 私が知っている内容をルーク様に伝え、前世からニーナ様が好きだったこと、そして彼女を悪い令嬢にしたくなかったのだと、その全てをルーク様に話した。

「なるほど。確かにニーナ嬢は幼い頃と今では性格が大分変わっているもんね。エレナが頑張ったことが結果に繋がったんだ」
「ルーク様が側にいてくださり、いつも相談に乗ってくださったおかげです。ありがとうございます」
「僕こそ、頼ってくれてありがとう」

 このままの勢いで王女殿下との事も話してしまおう。

「そう言えば、僕やエレナは出てこないの?」
「実は…王女殿下も前世は私がいた国と同じ国だったようです。同じ物語も読んでおられたようで、むしろ原作の小説を読まれていた殿下の方がより詳しくご存知でした」

 私の元気がなくなってしまった原因である、女医や誘拐について話すと、ルーク様は静かに怒りをためているようだった。

「ライナスもも入れて…3人で話し合うべきかもね」
「あのっ、お兄様に前世の話は…」
「話さないよ。エレナは王女殿下の前で、前世の記憶なんてないフリをしていたんだろう? ライナスはエレナの事になると感情が抑えられないからね。まぁ、僕が言えた話でもないけど…お茶会の話だけをライナスに伝えて、対策を練ろう」
「はい」

 この時、何故ニーナ様を入れないのか疑問に思ったけれど、お兄様と対策を練った後にその理由が分かったのだった。

「そろそろ使用人達がしびれを切らしているところだろう。今日はここまでにしようか」
「はい。ありがとうございます」

 話して少し楽になったけど、まだ不安であることに変わりはないなと思っていたら、使用人達を呼びに行こうと席を立ったルーク様に気が付いたら抱きしめられていた。

「エレナ、話してくれてありがとう。僕が……俺が必ずエレナを守るから、安心しろ」
「は、はいっ」

 私のためを思っての言動なのに、一人称が変わり話し方もいつもと違うルーク様に、非常識にもドキドキしてしまった。





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