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学園へ入学
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あれから月日が流れ、ついに今日は私が学園に入学する日。あの温室サロンで仕切り直すと言われてから何もないまま今日を迎えた。
いや、何もないってことはないか。相変わらず手紙のやり取りはしていたし、見学と称して何度か学園へ足を運んだり、貴族街でデートもして…。ルーク様と2人で過ごす時間が増え、慣れるどころか増々ドキドキしてしまうのだけど。
ただあの『仕切り直し』はいつまでたってもこないから、距離が近くなった事が嬉しい反面ほんの少し不安に思っている。
「まぁでもこれはこれ、それはそれ、よね」
私自身この気持ちもまだよく分かっていないわけだし。これから思う存分できる推し活を楽しまなきゃよね。
「エレナ?」
「寂しくなったらいつでも帰ってきていいからね」
「大丈夫ですわ。お兄様もいますし」
「そうか……」
去年のお兄様同様私も両親からの熱くて長い抱擁を受け、学園の前で馬車を降りた。
「「「入学おめでとう」」」
「ありがとうございます」
そう迎えてくれたのはルーク様とお兄様とニーナ様。入学式である今日は本来在校生は休日なのだけど、私のために来てくれた。……私のために来てくれたのはニーナ様だけか。
まさかまさかのお兄様は生徒会長に選ばれたのだ。副会長はルーク様。いやそこは公爵令息であるルーク様が会長じゃないの? って思うよね。今現在学園に通う王族もいないんだし。
ちなみに生徒会は成績上位の者から選ばれるようで、元々ルーク様に会長の話が来ていたのにいつの間にかお兄様が会長になっていたらしい。こんなところで漫画の強制力が…って一瞬思ったけど、きっと会長なんて面倒だと思ったルーク様の策略……それこそ強制力が働いたとも言えちゃう?
まっ、そんなわけで2人は私関係なく入学式に出席する必要があったのだ。
「会場までエスコートするよ」
「ありがとうございます」
…………あれ? お兄様が邪魔してこないですって!?
「寮まで送るよ」
「はい」
「えっ!?」
待って待って待って! お兄様!? 嘘でしょう?
「エレナ? えっと…手カメラはいいの? ライナスがニーナ嬢をエスコートしているけど…」
「あ…そうですね。手カメラ……お兄様………」
「ふっ。ライナスに優先されなくてショック?」
「えっ!?」
私……もしかして……もしかしなくてもブラコンだったの? え、ショック。自分がブラコンだったことがショックだわ。でもさすが兄妹というか…。
「ニーナ嬢はもちろんライナスのことも大好きだもんね。これからはその気持ちを僕に向けてくれたらいいよ」
「っ!!! ま、周りに沢山人がいるのにっ」
「なら誰もいない場所ならいいの?」
そういうわけじゃないっ! 額にとはいえこんなサラッとキスしてこないでよっ。
「顔真っ赤」
「だっ、誰のせいだと」
「僕のせいかな?」
「ルーク様しかいませんっ」
もうっ。入学早々こんな…恥ずかしすぎるわ。会場の入口までエスコートしてもらえるし、落ち着くまでルーク様の腕に顔を隠しておこう。
「ふっ。――可愛い――」
「今笑いました? ルーク様のせいですよっ」
「ごめんね」
「もうっ」
結局顔が赤いまま会場まで着いてしまった。これじゃ貴族令嬢としてダメね。気を引き締めましょう。
「入学おめでとうございます。クラスを確認しますのでお名前をお願いします」
「ありがとうございます。エレナ・マーリンです」
「えぇっと、はい。エレナ・マーリン様はSクラスですね。入って左前がSクラスの席になります」
ふぅ。無事Sクラスに入れて良かった。
クラスは上からS・A・B・C・Dと続く。成績順に振り分けられるのだけど、Sクラスは成績優秀者であり伯爵位以上の子息子女でないと入れない。そのため各学年によってSクラスの人数は違っていて…極端な話、子爵家の子が首席だった場合Sクラスは0人になってしまうのだ。
って言っても基本的に爵位が高い者ほど厳しい教育を受けてきているから、そんな年は一度もなかったのだけど。
そう言えば漫画ではお兄様とニーナ様はもちろんナターシャも同じクラスだったわよね。去年は別のクラスだったみたいだけど今年はどうだったのかしら。後で確認しておかなきゃ。
「どうやらいつものエレナに戻ったみたいだね?」
「???」
「ニーナ嬢関連のことを考えているだろう?」
「あっ!」
「ふっ。式の後に教室で今後の説明があるからね。終わったら迎えに行くから一緒に昼食をとろう」
「はい」
そう私の頭を一撫でし、生徒会の仕事へ向かわれた。だからっ! さらっとそんな事しないでってば。ドキッとするじゃない。
はぁ。寮に戻ったらソフィーに相談してみよう。
寮生活とはいえ貴族の子が一人で生活できないからと使用人を1人連れてきていいことになっていて…授業中は寮の掃除をしたり、必要とあれば学園依頼の仕事もしている。って、要するに学園が人件費削ってるだけじゃない?
……そのおかげで変わらずソフィーが側にいてくれるからいいんだけどね。
ちなみにオーランドは男爵家次男だから、セオドア様と一緒に来年この学園に入学する予定で、セオドア様は別の使用人を連れてくるらしい。
Sクラスに割り当てられた席へと向かうと、友人である伯爵令嬢が既に座っていた。彼女は私のニーナ様愛を知っているし、彼女は彼女でお兄様とニーナ様のカップル推し。
私の学園生活、楽しくなりそう。
いや、何もないってことはないか。相変わらず手紙のやり取りはしていたし、見学と称して何度か学園へ足を運んだり、貴族街でデートもして…。ルーク様と2人で過ごす時間が増え、慣れるどころか増々ドキドキしてしまうのだけど。
ただあの『仕切り直し』はいつまでたってもこないから、距離が近くなった事が嬉しい反面ほんの少し不安に思っている。
「まぁでもこれはこれ、それはそれ、よね」
私自身この気持ちもまだよく分かっていないわけだし。これから思う存分できる推し活を楽しまなきゃよね。
「エレナ?」
「寂しくなったらいつでも帰ってきていいからね」
「大丈夫ですわ。お兄様もいますし」
「そうか……」
去年のお兄様同様私も両親からの熱くて長い抱擁を受け、学園の前で馬車を降りた。
「「「入学おめでとう」」」
「ありがとうございます」
そう迎えてくれたのはルーク様とお兄様とニーナ様。入学式である今日は本来在校生は休日なのだけど、私のために来てくれた。……私のために来てくれたのはニーナ様だけか。
まさかまさかのお兄様は生徒会長に選ばれたのだ。副会長はルーク様。いやそこは公爵令息であるルーク様が会長じゃないの? って思うよね。今現在学園に通う王族もいないんだし。
ちなみに生徒会は成績上位の者から選ばれるようで、元々ルーク様に会長の話が来ていたのにいつの間にかお兄様が会長になっていたらしい。こんなところで漫画の強制力が…って一瞬思ったけど、きっと会長なんて面倒だと思ったルーク様の策略……それこそ強制力が働いたとも言えちゃう?
まっ、そんなわけで2人は私関係なく入学式に出席する必要があったのだ。
「会場までエスコートするよ」
「ありがとうございます」
…………あれ? お兄様が邪魔してこないですって!?
「寮まで送るよ」
「はい」
「えっ!?」
待って待って待って! お兄様!? 嘘でしょう?
「エレナ? えっと…手カメラはいいの? ライナスがニーナ嬢をエスコートしているけど…」
「あ…そうですね。手カメラ……お兄様………」
「ふっ。ライナスに優先されなくてショック?」
「えっ!?」
私……もしかして……もしかしなくてもブラコンだったの? え、ショック。自分がブラコンだったことがショックだわ。でもさすが兄妹というか…。
「ニーナ嬢はもちろんライナスのことも大好きだもんね。これからはその気持ちを僕に向けてくれたらいいよ」
「っ!!! ま、周りに沢山人がいるのにっ」
「なら誰もいない場所ならいいの?」
そういうわけじゃないっ! 額にとはいえこんなサラッとキスしてこないでよっ。
「顔真っ赤」
「だっ、誰のせいだと」
「僕のせいかな?」
「ルーク様しかいませんっ」
もうっ。入学早々こんな…恥ずかしすぎるわ。会場の入口までエスコートしてもらえるし、落ち着くまでルーク様の腕に顔を隠しておこう。
「ふっ。――可愛い――」
「今笑いました? ルーク様のせいですよっ」
「ごめんね」
「もうっ」
結局顔が赤いまま会場まで着いてしまった。これじゃ貴族令嬢としてダメね。気を引き締めましょう。
「入学おめでとうございます。クラスを確認しますのでお名前をお願いします」
「ありがとうございます。エレナ・マーリンです」
「えぇっと、はい。エレナ・マーリン様はSクラスですね。入って左前がSクラスの席になります」
ふぅ。無事Sクラスに入れて良かった。
クラスは上からS・A・B・C・Dと続く。成績順に振り分けられるのだけど、Sクラスは成績優秀者であり伯爵位以上の子息子女でないと入れない。そのため各学年によってSクラスの人数は違っていて…極端な話、子爵家の子が首席だった場合Sクラスは0人になってしまうのだ。
って言っても基本的に爵位が高い者ほど厳しい教育を受けてきているから、そんな年は一度もなかったのだけど。
そう言えば漫画ではお兄様とニーナ様はもちろんナターシャも同じクラスだったわよね。去年は別のクラスだったみたいだけど今年はどうだったのかしら。後で確認しておかなきゃ。
「どうやらいつものエレナに戻ったみたいだね?」
「???」
「ニーナ嬢関連のことを考えているだろう?」
「あっ!」
「ふっ。式の後に教室で今後の説明があるからね。終わったら迎えに行くから一緒に昼食をとろう」
「はい」
そう私の頭を一撫でし、生徒会の仕事へ向かわれた。だからっ! さらっとそんな事しないでってば。ドキッとするじゃない。
はぁ。寮に戻ったらソフィーに相談してみよう。
寮生活とはいえ貴族の子が一人で生活できないからと使用人を1人連れてきていいことになっていて…授業中は寮の掃除をしたり、必要とあれば学園依頼の仕事もしている。って、要するに学園が人件費削ってるだけじゃない?
……そのおかげで変わらずソフィーが側にいてくれるからいいんだけどね。
ちなみにオーランドは男爵家次男だから、セオドア様と一緒に来年この学園に入学する予定で、セオドア様は別の使用人を連れてくるらしい。
Sクラスに割り当てられた席へと向かうと、友人である伯爵令嬢が既に座っていた。彼女は私のニーナ様愛を知っているし、彼女は彼女でお兄様とニーナ様のカップル推し。
私の学園生活、楽しくなりそう。
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