推しの悪役令嬢を幸せにします!

みかん桜(蜜柑桜)

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お茶会参加

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「エレナ様っ、良かった…」
「ご、ごめんなさい。お茶会を近くで見たくて…」
「もう、本当にライナス様のことがお好きなんですから。兄妹仲がいいのは良いことですけど、次からはこのソフィーに言ってからにしてくださいね。あともう少し遅ければお屋敷中を探し回るところでした。りんごのタルトはこちらでお召し上がりになりますか?」
「もちろんよっ」

 遠慮なく小言は言ってくるソフィーだけど、何度誘っても一緒には食べてくれなかった。1人より2人で食べた方が美味しいのに。まぁいいわ。タルトを食べたら推し活を再開しましょう。

「ねぇソフィー、あのご令嬢ってニーナ・クラーク様よね?」
「そのようです。先程も気になされていたので確認してきました」

 10歳前後で婚約者を決める人が多いみたいだから今日はまだ何もないかもしれない。やっぱり家柄とか諸々の理由でお父様が決めるのよね?

「ソフィー! ソフィー!」

 わぁぁぁ。お兄様と推しのツーショット…めちゃくちゃお似合いじゃない? 今でも眼福物ですもの、将来は確実に美男美女に育つ二人はきっと神々しいはず。可愛い主人公とカッコいいお兄様が並ぶのもお似合いだったけど、推しとお兄様の方がお似合いね。

「お食事の途中で…」
「何を話しているのかしら? あぁ…残念、離れてしまったわ」

 でも推しが…推しがスイーツを楽しんでいる。その後お兄様と推しが隣に並ぶことはなかったけれど、待ち望んでいた推しをこの目で見ることができて私は大満足。




「やっぱりエレナが一番だよ」
「??」

 そう言って私を抱きしめるお兄様は、お茶会が終わってすぐ私の部屋に来たみたい。盗み見ていた事がバレないよう、少し早めに部屋に戻ってきておいてよかった。

「今日は何をして過していたの?」
「推し……りんごのタルトを食べました」

 危ない。危うく推し活ですって言いそうになっちゃった。

「そう。誰かに会ったりした?」
「い、いえ。なぜですか?」
「エレナをお茶会に誘いたいってある人に言われてね。前に会った時はそんなこと言っていなかったから、少し気になったんだ」

 ルーク様かしら? 早速お茶会の話を進めてくれているの? それにしても1年も先の話なのに随分早くから計画するのね。







 あっという間に更に1年が経ち、今日は待ちに待った日。約束通りルーク様がお茶会に招待してくれた。

「ふふふ」
「エレナ、楽しそうだね」
「はいっ! ずっと楽しみにしていたのです」

 その瞬間少しムッとしたお兄様。

「それは…ルークに会えるから?」
「えっ? お茶会自体が楽しみなのです。」

 きっとニーナ様も参加されるはず。あれからお兄様はお茶会の開催をしなくなっちゃったから、推しに会うのも1年ぶりなの。今日はどんなドレスでどんな髪型にしているのかしら?

 オリヴィエ公爵家に到着し、出迎えくれたルーク様と公爵夫人へ挨拶。1年前じゃ考えられないくらいちゃんとできるようになったのよ。

 すでに何人か到着済みのようで、お茶会会場には数人のご令息、ご令嬢がいた。ニーナ様はまだみたいね。

「僕から離れちゃだめだよ」
「分かりました!」

 努力せず推しとお兄様のツーショットが見れるなんて…。

「よしっ」

 気合を入れ直していたら変な目で見られたけど気にしない。今日の私のミッションは、推しと友達になることだから。

 お茶会が始まり、何人かと友人になることができた。どうにか推しと話せないかソワソワしていると…なんと! 推しがお兄様に声をかけてきたではないか。幼い頃は髪を巻かないスタイルなのね。

「紹介するよ。隣りにいるのは妹のエレナ・マーリン。そしてエレナ、こちらはニーナ・クラーク様だよ」

 推しが! 推しが目の前にいるっ! 

「……エレナ、ご挨拶を」
「っ!! マーリン侯爵家が長女、エレナ・マーリンでしゅ。あっ…」

 あまりの感激に噛んでしまった。しかもマナーはしっかり学んだはずなのに、お兄様にコソッと促されるまで挨拶自体せずにいてしまった。嫌われたらどうしよう。

「ふふ。可愛らしいわね」
「ほわぁ、可愛い…」

 笑顔が眩しすぎです!

「ありがとう。可愛い子に可愛いって言われるなんて嬉しいわ。私のことはニーナと呼んで?」
「っ! 嬉しいですっ! 私のことはどうぞエレナと…」
「エレナね」
「ありがとう、ありがとうございますっ」

 名前、呼んでくれた。

「初めてのお友達が嬉しいの?」
「はいっ。お兄様、ニーナ様を紹介してくださりありがとうございますっ!」
「お礼なら僕に言ってほしいな。ニーナ嬢を招待したのは僕なんだから」
「ルーク様!」

 どこから聞いていたの? 急に現れたらびっくりするじゃない。でも約束を守ってくれたこと、推しも招待してくれていたこと、ちゃんとお礼を伝えなきゃね。

「えっ、今ルーク様って言った? ダメだよ、ちゃんとオリヴィエ公爵令息様って呼ばないと」
「僕が許可したんだ」
「僕は許可してない」

 お礼を伝えたかったのにお兄様と話し込んでしまって伝えそびれてしまった。それにしてもお兄様とルーク様の仲が良かったなんて知らなかったわ。

「ライナスの許可は必要ないだろう」
「僕はエレナの兄だよ? 必要に決まってる」

 正直ルーク様の呼び方なんて何でもいいんだけど。そう思っていると耳元に推しの声がっ。

「2人は放っておいて、あちらでスイーツをいただかない?」
「っ! ぜひっ」

 何でこの世界にはカメラがないんだろう。推しとスイーツなんてシャッターチャンスがいくつあるのか。

 中々会えない、その状況が推しへの気持ちを更に高めてしまったようで、この日のお茶会はまるで夢の中にいるようなふわふわした感覚が抜けず、気が付いたらお茶会が終わっていた。

 推しはもちろん他にも何人か友人ができ、無事にミッションをやり遂げた私が帰りの馬車で爆睡したことは、推しには秘密。




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