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本編
第3話 俺様のネズミ退治とお婆さんの思い出(1)
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俺様が依頼を完遂してから、町の人たちから「みーちゃん」と呼び掛けられる事が増えた。大抵みんな教会へお祈りや町内会とかで集まるから、その辺りからヌコのハンターが噂になっているらしいのだ。
「ネズミの駆除ですか?」
受付で依頼を出している商人さんも、その噂を聞いてやって来たようだ。倉庫でネズミが増えて困っているから駆除して欲しいと。
「ネズミ退治と言えば、ヌコ様の出番でしょう? 是非お願いしたいのですが」
茶色の女の人が、F級ハンターは指名依頼を出来ませんからと説明している。暇そうな臭い人達に任せるのが良いと思うぞ。
「なるほど、そんな規則になっているのですね」
それから、商人さんは依頼方法や依頼票の書き方を細かく聞いた後で、依頼票の最後に付け加えた。
条件:受注者はヌコに限る
規則として無理な内容や条件の場合は受理出来ない。ちょっと前では、これはあり得ないから受理出来なかっただろう。
しかし、目の前にヌコでF級ハンターの俺様がいる。
「確かに無理な条件ではありませんが・・・。最終的にはハンター自身が依頼を受けるか決めます。そこはご了承くださいね?」
茶色の女の人が、商人さんから依頼料金を預かって手続きは完了だ。商人さんが、俺様にニッコリ笑って話しかけてきた。
「そうそう、我が商会に北方からワイバーン肉の美味しいところが入荷したんですよ」
俺様は魚のほうが好きなのだ。
「おや? お気に召さないご様子で? それでは・・・そうですね。この時期はガリウス海のキラーサーモンは脂が乗って旨いんです。三日後に入荷予定があるんですよ。なかなか手に入らない品ですよ」
サーモンか。それは旨そうだ。
茶色の女の人は怪訝な顔で商人さんを見ている。
「おや、お嬢さん。私は入荷すると言っただけですよ?」
商人は、よろしくと、にこやかに去っていった。
「先輩なんですかそれー? みーちゃんに依頼がきたんですね! さすが、みーちゃん」
赤毛の女の子がパタパタとやって来て、依頼票を掲示板に張り出しにいった。
「あの条件だと、世界中で みーちゃんしか受けられない依頼ね。どうする? ネズミ退治やってみる?」
こっちでも、ヌコはネズミ退治みたいな思い込みがあるのだろうか? 自慢じゃないが、俺様はネズミを獲ったことなんて一度もないのだ。野良の連中なら、あるんだろうけどな。
前足を舐めて、顔をゴシゴシ、クルッと回って丸くなったら、俺様はお昼寝の時間だ。
「やる気は、なさそうね」そう言って、茶色の女の人は他の仕事を始めた。
その日の午後、ギルドの中が騒がしくて居られなくなったので、俺様は散歩に出た。野良の連中なら、縄張りの見回りと言うところだろう。
小さめの通りを渡って、ギルドの向かい側の商店街に入る。買い物客に踏まれないように通りの端を選んで歩いて、お肉屋さんへ。無口なおやじさんに、オーク肉の切れ端をもらう。やっぱり魚が食べたいなあ。
次は、3軒となりの野菜売りのおばあさんの所へ世間話に付き合ってあげる。俺様にとっては、面白い話は特にないのだが、のんびりと話すおばあさんを見ていると、ちょっと癒やされるのだ。あの臭い人達は、いつも騒がしいからな。今日は、おばあさんの若い頃の話だった。
「わたしは、ずっと遠くの国の生まれでね。近くに海があったんだよ。子供の頃は、海でよく溺れたもんさ」
おばあさんの昔話しは笑えない話が多いけど、子供の頃に食べた魚料理の話は俺様の食欲を大いに刺激した。
「この時期はキラーサーモンが美味しいんだよ。焼いてもいいし、スープも美味しかったねえ。沢山とれるから、毎日キラーサーモンさ。時期の最後にはみんな嫌になってくるのさ。そんなに高いものじゃなかったけど、この国じゃ高くて買えないんだよ」
懐かしそうに、そんなことをいうばあさんは、「死ぬ前にもう一度たべたいねえ」と笑った。
俺様もサーモンが食べたいぞ。よし、ばあさん、俺様にまかせとけ!
野菜箱でガシガシガシっと爪研ぎをした俺様は、早足でハンターギルドに戻った。
掲示板に飛びついて、あのネズミ退治の依頼を引き剥がし、口に咥えて、茶色の女の人の机に飛び乗る。
「え? みーちゃん、この依頼を受けるの???」
「ネズミの駆除ですか?」
受付で依頼を出している商人さんも、その噂を聞いてやって来たようだ。倉庫でネズミが増えて困っているから駆除して欲しいと。
「ネズミ退治と言えば、ヌコ様の出番でしょう? 是非お願いしたいのですが」
茶色の女の人が、F級ハンターは指名依頼を出来ませんからと説明している。暇そうな臭い人達に任せるのが良いと思うぞ。
「なるほど、そんな規則になっているのですね」
それから、商人さんは依頼方法や依頼票の書き方を細かく聞いた後で、依頼票の最後に付け加えた。
条件:受注者はヌコに限る
規則として無理な内容や条件の場合は受理出来ない。ちょっと前では、これはあり得ないから受理出来なかっただろう。
しかし、目の前にヌコでF級ハンターの俺様がいる。
「確かに無理な条件ではありませんが・・・。最終的にはハンター自身が依頼を受けるか決めます。そこはご了承くださいね?」
茶色の女の人が、商人さんから依頼料金を預かって手続きは完了だ。商人さんが、俺様にニッコリ笑って話しかけてきた。
「そうそう、我が商会に北方からワイバーン肉の美味しいところが入荷したんですよ」
俺様は魚のほうが好きなのだ。
「おや? お気に召さないご様子で? それでは・・・そうですね。この時期はガリウス海のキラーサーモンは脂が乗って旨いんです。三日後に入荷予定があるんですよ。なかなか手に入らない品ですよ」
サーモンか。それは旨そうだ。
茶色の女の人は怪訝な顔で商人さんを見ている。
「おや、お嬢さん。私は入荷すると言っただけですよ?」
商人は、よろしくと、にこやかに去っていった。
「先輩なんですかそれー? みーちゃんに依頼がきたんですね! さすが、みーちゃん」
赤毛の女の子がパタパタとやって来て、依頼票を掲示板に張り出しにいった。
「あの条件だと、世界中で みーちゃんしか受けられない依頼ね。どうする? ネズミ退治やってみる?」
こっちでも、ヌコはネズミ退治みたいな思い込みがあるのだろうか? 自慢じゃないが、俺様はネズミを獲ったことなんて一度もないのだ。野良の連中なら、あるんだろうけどな。
前足を舐めて、顔をゴシゴシ、クルッと回って丸くなったら、俺様はお昼寝の時間だ。
「やる気は、なさそうね」そう言って、茶色の女の人は他の仕事を始めた。
その日の午後、ギルドの中が騒がしくて居られなくなったので、俺様は散歩に出た。野良の連中なら、縄張りの見回りと言うところだろう。
小さめの通りを渡って、ギルドの向かい側の商店街に入る。買い物客に踏まれないように通りの端を選んで歩いて、お肉屋さんへ。無口なおやじさんに、オーク肉の切れ端をもらう。やっぱり魚が食べたいなあ。
次は、3軒となりの野菜売りのおばあさんの所へ世間話に付き合ってあげる。俺様にとっては、面白い話は特にないのだが、のんびりと話すおばあさんを見ていると、ちょっと癒やされるのだ。あの臭い人達は、いつも騒がしいからな。今日は、おばあさんの若い頃の話だった。
「わたしは、ずっと遠くの国の生まれでね。近くに海があったんだよ。子供の頃は、海でよく溺れたもんさ」
おばあさんの昔話しは笑えない話が多いけど、子供の頃に食べた魚料理の話は俺様の食欲を大いに刺激した。
「この時期はキラーサーモンが美味しいんだよ。焼いてもいいし、スープも美味しかったねえ。沢山とれるから、毎日キラーサーモンさ。時期の最後にはみんな嫌になってくるのさ。そんなに高いものじゃなかったけど、この国じゃ高くて買えないんだよ」
懐かしそうに、そんなことをいうばあさんは、「死ぬ前にもう一度たべたいねえ」と笑った。
俺様もサーモンが食べたいぞ。よし、ばあさん、俺様にまかせとけ!
野菜箱でガシガシガシっと爪研ぎをした俺様は、早足でハンターギルドに戻った。
掲示板に飛びついて、あのネズミ退治の依頼を引き剥がし、口に咥えて、茶色の女の人の机に飛び乗る。
「え? みーちゃん、この依頼を受けるの???」
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みーちゃんのヌコ探しがボイスブックになりました。
こちら:https://www.writone.jp
もしくは、 https://www.writone.jpから
"ネコ"を漢字"で"俺様は猫"で検索して下さい(登録時にミスったので)
声の演技でこんなに生き生きとキャラクターが動き出すなんて感動です。続きを聴いてみたいので、リクエストに是非ご協力をお願いできませんか?Writoneのページで"つづきがきになる"をクリックするだけです。
ボイスブック化してくれた 鈴風さん すみちゃむさん なつさん ありがとうございます。
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