上 下
6 / 43
本編

第2話 俺様の初仕事と家出ヌコの事情(1)

しおりを挟む
俺様がハンターギルドに来て数日が過ぎた。

最初の夜は臭い人ハンター達が大騒ぎしていたからテーブルの下で過ごしたのだ。

朝、茶色の女の人エヌエラが来て受付の下でじっとする。初めての場所は落ち着かないからな。
夕方、気持ちに余裕が出たから受付の奥を少し探検してみたのだ。紙束を蹴飛ばしたり爪でカリカリしてみたら赤毛の女の子ナリンがギャーと言ってたのだ。ダッシュで逃げてた。
夜は臭い人ハンター達がごはんをくれた。好きな味が無かったから砂かけ。そしたら、茶色の女の人エヌエラが魚の焼いたのをくれたのだ。あれは美味かった。
ここは夜中でも誰か居るから、その近くで眠るようにしているのだ。

朝になったら、受付の机で座って臭い人ハンター達の依頼票とやらを覗きこんでチェックして、
昼になったら、茶色の女の人エヌエラのお弁当を横からちょっと食べて、終わったら膝の上で昼寝なのだ。
夕方なったら、臭い人ハンター達が戻ってきて騒がしくなるから、俺様は隣の建物へ避難するのだ。

隣は買取り窓口って言ってた。臭い人ハンター達が獲物を持ってやってくる。
美味そう獲物を見つけたらスリスリ攻撃だ。臭い人ハンター達の臭い臭いはちょっとだけガマンなのだ。
上手く行けば、切れ端を食べさせてくれたりする。「査定が下がる」とか言ってる時は、解体の人の頭の上に登るのだ。
「仕事ができねえ」とか言いながら食べさせてくれるからな。

お腹がいっぱいになったら二階に上がって白髭の爺さんギルドマスターの部屋へ。机の書類でがさがさ遊ぶのが面白いのだ。遊んだら朝までふかふかの椅子でのんびりする。
朝になって白髭の爺さんギルドマスターが来るまでに抜け出せば怒られないから大丈夫だ。

やっと平穏な日々が戻って来た感じだ。
今日も午後から茶色の女の人エヌエラの膝の上で昼寝しているのだ。そしたら臭い人ガイルが受付まで来た。

「ガイルさん、今日は早かったんですね」
「今日は、近場で駆け出しのガキどもの面倒みてたんでな。ところで、みーちゃんはどうしてる?」

「みーちゃんなら、ここに」
茶色の女の人エヌエラの胸と机の隙間から鼻先だけ出してひくひくひく。今日はあの臭い獲物は持ってないな。机に上がって背伸びする。

「みーちゃん、今日も昼寝か? そろそろ依頼を受けねえと除籍になっちまうぞ?」
「あら、別に良いじゃないですか。すっかり馴染んで人気者ですしね~、みーちゃん」

赤毛の女の子ナリンが、パタパタっとやって来た。
「先輩! ガイルさん、依頼が来たんです! みーちゃんにぴったりの依頼が! ほらほら、パルケス通りで、迷子のヌコ探しですよ!」

「ヌコ探しか、みーちゃんに丁度良いかも知れねえ。期限はどうなってる?」

「えーと、かなり先ですよ。こういうの受けてくれるハンターさんは、ほとんど居ませんからね。かなり余裕あります」

「ヌコ探しは案外難しいんだぜ? 俺達が近づいただけで逃げて行きやがる。警戒されたら気配を消すから、もう見つからねえ」

それは、臭い人ハンター達が臭いからだと思うけどなあ。

「規則だから明日の朝に掲示板に張り出して、受ける人が居なかったらお願いしましょうか。みーちゃん、それでいい?」

ヌコ探し? 放っておけばいいんだよ。イヤになって出ていったかもしれないし、帰る気が有れば帰ってくるだろ。面倒だなあ。
「ぅにゃ~ご」

「よし、決まりだな。頑張れよ。みーちゃん」

「明日、楽しみだねー、みーちゃん」

俺様 やるって言ってないのに~ 勝手に話が進むのはいつもの事だけどな!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

処理中です...