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第一章「『魔法少女☆マジカラ』編」
第6話(Bパート)
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街のとある場所にて
そこでは怪人と魔法少女との戦闘が既に始まっていた
「っく、そぉ……!!」
…いや、正確には先程まで行われていたと言うのが正しいだろう
戦っていた筈の魔法少女達は倒れ付し、立っているのは敵であるジャドー一匹
「フン、こんなもんかァ…」
戦闘自体は始まってものの十分も経つか経たないか位、
にも関わらずその時点で既に少女達は追い込まれ、たった数分足らずでで力の差というものを見せつけられていた
それこそ、前にズタボロにされたレッドの様に
「こんなに、強いなんて…」
「…うぅ」
囮になっていたレッドはおろか、たった数分だけで後方から支援しているブルーやグリーンすらもまるでついでの様に倒される
その力の差は、この短時間の時点で既に明白だった
既に精神的にズタボロの三人と、無傷かつ平然なジャドー
「グハハハ…もう終わりかぁ?随分とあっけねぇなぁ!!」
「な…なんの、まだまだこれからだっつ!!」
しかしそんな状況下でもレッドは諦める事は無く、すぐ様に持ち前のド根性と気力で立ち直した
「そ、そうよ…まだまだ!!」
「ここで負けるわけには…いかないです!!」
そして、何はともあれそんな姿を見て僅かではあるもののすぐに持ち直そうと、今にもまた立ち上がろうとする三人
「頑張ってくださいッス三人とも!!」
「「「お前も頑張るんだよ!!!!」」」
後、遠くで避難してる妖精一匹
「ほう…!!」
「まだまだ一ラウンド目!!
こっからは二ラウンド目、次で決着をつけてやる!!」
そんな魔法少女を見て再び興味を持ったのか、薄ら笑いを浮かべながら獲物を握り締めるジャドー
そして今、魔法少女が復活を遂げ逆転をかまそうとする…
…だがその時、ジャドーがある事考え口にした
「…諦めない諦めない、ヒーローなんざそればっかりかァ
所詮魔法少女だなんて気取っちゃいるが…まァ所詮ガキはガキだ、こんな体たらくじゃ街のヒーローが聞いて呆れるなァ?」
「ッ…な、何を!?」
ブルーがその言葉に反論しようとするも、すかさず更に声を重ねるジャドー
「だってそうじゃねぇか!!
そもそもお前らがここに来た時にゃ既に此処はオレによって荒らされてた、人間共ももうほぼ全員逃げた後だったんだぜぇ?
オマケに今居る此処だってこの体たらく、良く正義の味方を気取れるもんだァ!!」
「うぐっ、それは…!?」
わざと心を折るかの如く大声で叫ぶ様に言い放つジャドー、だが実際それはこの四人にとって正論でもあった
被害が実際に起きてからここに駆けつけるまでに一体どの位かかっただろうか、少なからず被害は既に出ている筈だ
「…なぁ、今までもそうだったんだろ
街が荒らされてからやっと出向いてって、お前ら魔法少女は街を守るんだろォ?
それとも何か、わざわざ怪人を理由に街中荒らし回ってストレス解消かァ!!」
悪意マシマシの言葉が次々と容赦無く、次々に魔法少女達へと襲いかかる
「護りたいモンも護れない、倒すべきモンも倒せない!!正に見掛け倒しのヒーローってヤツだなァコレは!!」
「「なっ…!!」」
強い敵を前にし悔しがる二人、悔しいがこの敵には適わないのだと
心を真正面からへし折りにいくジャドーに、身も心もズタボロブルーとグリーンは遂に膝を着いてしまった
「では随分とガッカリだがトドメと行こうか!!ハハハハハ!!」
そして今、ジャドーがその様子を確認した後に斧を振り上げようとする
「だが断るッ!!」
「ハハhはべすッ!?」
だがその瞬間それを全部払拭というか台無しにするかの様に、レッドの声と共に何かがジャドーに投げられ顔面に命中した
「か、かない!?」
いきなりの攻撃に味方までもが目を丸くする、まだ戦う気があるのかと
「よォし見事に命中っ!!」
拳を握りニヤケ顔のレッド、だが周りには瓦礫位しか無い上に石を投げた程度で同行出来る気もしないものだ
ではレッドは憎きジャドーに向けて今、一体何を投げたのだろうか?
「っんのォ往生際の悪いヤツめ 、一体何をォ…?」
さて、一体何を投擲したのかと言うと
「…へ、ヘロー」
「…………あ?」
「「」」
自分の相棒、もとい妖精のアイリスだった
二人はレッドのよる突然の奇行に呆気に取られ、今まで考えてた事全部吹っ飛んだ挙句に立ち尽くしたまま絶句していた、そら当たり前だ
「…………」
ジャドーは投げられてきたアイリスを掴み、如何にも不機嫌そうな顔で睨む
「あっ…そのえっと、ゴメンなさぃ…」
「あぁ?」
完全に怒らせた様子のジャドーを前にアイリスは若干の間無言になり
「…………
…では、バイ☆ナラッ!!」
開幕早々全力で逃げた
「逃がすと、思ってんのかァ?」
「ですよねっー
て言うかなんで今私をコイツに投げたのかないさぁぁあああッ!!!?」
激しい怒りの篭もった威圧をかますジャドー、レッドに咆哮する妖精アイリス
「…あのバカ」
「うわぁお…」
完全に頭を悩ませ遂には膝を抱えだすブルーとグリーン
さっきまでシリアスだった筈の戦闘の場がいよいよ遂にカオスに
「舐めやがって、そんなに死にたいならお前から殺してやる…!!」
「やめて頭を鷲掴みにしないで痛い痛い頭が割っれっるぅぅうっ!!」
アイリスの頭をガッシリと握り絞めて張本人のレッドに投げ当て返そうと、ジャドーは振りかぶりながら必死になって辺りを見回した
「何処だァ、さっさと出て来い!!」
が…肝心のマジカルレッドは何処にも居ないのだがまぁ当然それもそうだろう
それもその筈、何故ならば
「秘儀、百万年殺しィいいいッ!!」」
「え、ちょっmアアァァーーーーッッ!!!?」
(((いや何してんのアイツぅうううッッ!!!?)))
ジャドー本人の背後から武器であるロッド、それも思いっきり炎を滾らせたソレでおもっくそ尻を狙っていたのだから
所謂急所を狙った焼き根性である、グロ以前の問題だけど
これには勿論アイリス含めた味方三人もドン引き
「っと、うぉお!?」
「ぐふぉ…こんな付け焼刃程度でぇ、このオレを倒せるとでもォ!?」
(付け焼刃っつーか思いっきり直で尻穴焼かれてるんですけど…)
だがこの騎士も強者、こんなギャグみたいなやられ方など早々しないと言わんばかりにケツに力を込めて踏ん張る
肛門括約筋が唸りをあげてレッドが突いたロッドを押し返しつつ、ジャドーはそのまま汚ねぇロッドを尻から放り出そうと踏ん張る
というかコレ今読者は一体何を見せられているんだろうか
「グハハハハ!!どうだ、貴様らの攻撃など効くワケが…!!」
「マジカル☆ファイヤ―、オーン!!」
「オッホォアァアアアアアッッッッ!?!?」
すかさず容赦無くロッドから追加で炎を噴出させるレッドに尻からの色んな痛みで悶えるジャドー、目を覆うその他の面々
ここまで来るともうなんか、兎に角敵側が可哀想である
というか絵面そのものがヤベぇ
「…ふぃー、やっと一撃当たったわ」
しでかした当の本人はやり切ったかの様な清々しい顔
「いや「ふぃー」じゃねぇよ何してんのアンタぁ!!」
「何って…どう見ても戦いに決まってんじゃん、敵の不意をついて一発逆転からの大勝利ー!!って凄く王道でカッコ良くない?」
「こんなド変態ショーが魔法少女の戦いであってたまるか!!第三者から見たらきったねぇ絵面にしかなってないわよコレ!?」
この魔法少女は毎回何か下劣な事でもしないと消えてしまうのだろうか
「こんのクソガキ、まさかこんな汚ぇ手使うとは思いもしなかったぜぇ…!!」
(誰だって想定しないと思いますこんな魔法少女…)
(いやまぁ色んな意味で汚いっちゃ確かに汚いッスけども)
全くもってその通りである
「だがさっきも言っただろう…そんな卑怯な事でこのオレには倒せんとなァ!!
あ、でもちょっとだけ待ってケツの穴があぁぃィイデェデデデデ!!」
(あ、案外結構効果覿面っぽい)
オークこと豚の自称怪人ジャドーは四つん這いの姿勢かつ片手でケツの中心部を抑え、同時に大事そうに下腹部を守ろうとしている
男なら分かるだろうか、この…何かめっちゃ大事なものを失った感覚
だがまぁ手段は兎も角一転攻勢、劣勢に立たされていたとはいえまだそこまで大したダメージもあまり無い魔法少女が優位に立った
「この、クソガキどもがぁ…!!」
「ふふん形勢逆転ね、これでもう弱いなんて言わせないわよ!!」
「一応その通りなだけに何も言えねぇ…」
その通りだけどもう少しやりようは無かったのか
「ぐぅぅ…
…グフフフ、だが幾ら貴様らが頑張ろうとも…貴様ら魔法少女の根本は全くもって、変わらんぞぉ?」
ジャドーは劣勢、なのにも関わらず嫌らしい目付きで笑い始める
「たとえ貴様が今オレをぶっ倒したとしても、そんなバイト感覚の半端なヒーローごっこじゃあどの道後は絶対に無ぇ
そんな覚悟の無ぇ奴が…守れると思ってんのかァ!?」
敵である魔法少女に向けられたその叫びはその後の先を意味する、つまりは【正義の味方】としての真っ直ぐな警告
だがしかしそれは確かに、その通りでもあった
「そ、それは…」
「…何故街そのものが目的の怪人である筈のオレが貴様らに、敵である筈の魔法少女を態々おびき寄せてこんな事を言うとでもォ?」
グリーンの反発を遮ってジャドーは次々と言葉を並べる、まるで敵に警告してしまうというよりも自身の味方に注意するかの様に
そして、言葉を続けた
「…貴様らが、本当に覚悟のある奴なのかを確かめる為だ」
「……は?」
ジャドーの言葉に魔法少女達は目を丸くする
怪人である筈のジャドーのその目ははさっきの荒々しい目とは別の、実に悲哀に満ちた瞳と思える様な悲しそうなだった
「フン、最初はこんな事する気も起きなかったのにな
さっきも言ったが…半端な覚悟ではこの先無駄死にするだけだ、もし遊び感覚で怪人退治など辞めといた方が良いだろう
それに…確かに怪人倒しには意味はあるだろう、倒して被害を食い止める…だがそれでお前らが守る筈の街の人間が納得するのか?」
「…………」
魔法少女達はすっかり立ち止まりジャドーの話に聞き入っている、敵では無いのかと迷っているからだ
「本当に続けるつもりか?例え誰からも非難されようとも、お前らの人生全てを無駄にしようとも…戦い続ける気なのか」
そう何処か寂しげに言い続けるジャドーに、レッドは静かに歩み寄りおもむろに仁王立ちして
「んなもん知るか!!」
「!?」
おもっくそ真っ向から、切り捨てた
「どーでも良い、そんなもんどーでも良い
それよりもこの暴れた後どーすんだよコレ、アイリスが全部徹底的に隅から隅まで一人で直してくれると言ったとはいえ…」
「いやそこまでは言ってないッスよ!?」
そして先程のシリアスをぶっ壊す勢いでフラフラと歩き回りながら、何故か矛先を急にアイリスに向けてからかい始めた
「大体そんな事小難しい考えてたんなら魔法少女なんてやらないでしょ、そんなもん起きたら考えりゃ良いのよ起きたらね
そんで起きたら…臨機応変に対応する所存です」
「それ絶対やらない感じの駄目な受け答えでしょーが!!」
そして独自の持論もといダメダメな「だろう行動」宣言
一見だとというか完全に一見じゃなくとも本当にダメすぎる発言であるしそもそももうヒーローなのかも怪しくなってきたなコレ
「いや…え?だがそれは…!!」
「そ・れ・に!!」
ついつい口を出そうとするジャドーの口を塞ぐレッド
「私達なら何だろうとも絶対に出来るさ、というかやってやろうじゃん!!強敵だろうが非難だろうが絶対に負けるもんか!!
…まぁ、確かにアイリスは遅れた件で話はあるけどね」
「ヒィッ」
そうはっきりとジャドーに向かって言い放つレッド、怯えるアイリス
「…かない
勝手に私を巻き込まないでください誰ですか貴方」
「あっれぇ辛辣過ぎない!?」
「あはは…」
そしてそう冗談交じりに言いながらも心底ホッとするブルーと、小声ではあるが良かったとひっそり呟くグリーンなのであった
すると怪人はクスリと笑い出す
「…それで?結局オレを、どうするつもりだぁ」
ジャドーは妙に余裕ぶった様子でレッドに問う、勿論それに対する答えも当人は既に決まっていた
「さぁね…、もう悪さしないってんなら取り敢えず帰ってくんない?こちとら学校抜け出したワケだし帰りたいんだけど?
話もドロドローンと違ってちゃんと通じるみたいだしー」
(一話で言い訳して抜け出した奴が何言ってんスか)
アイリスの何か言いたそうな顔をするも空気を読む
「それとも何?まだ私達の敵として戦うって言うのなら…さっきみたいにまた堂々と、真っ向から来れば良いんじゃないの」
レッドがそう言い終わると同時に後ろに居たアイリスにブルーとグリーンの元へと下がり、膝をつくジャドーを三人と共に見下ろした
「…全く仕方無いッスねぇ」
「ま、リーダーの頼みなら仕方無いわね」
そして残りの三人も当然の如くレッドの賛成し、やれやれと言いたげな顔
「ちょっと待った、リーダーって何さ」
「赤だからじゃないですかね?」
「随分と安直だね!?」
しかしリーダーと言われて満更でも無くレッドはほんのちょっぴり照れる
まるで怪人に勝ったかの様なムードを出し魔法少女達は和やかな雰囲気でスッキリと、いつの間にか先程の憂いを消し去っていた
「…グフフフ、そう…か」
肩の荷が降りた様な顔でそれを見るジャドー
「ま、そう言うワケだ
大人しく帰る?それともまた真正面から私達に挑んでみる?」
(…何か良い雰囲気っぽいけどただ不意打ちで勝っただけッスよねコレ
いや、というかさっきから何か嫌な予感が…)
いつにも自信マシマシでレッドがそう言い放つ
するとジャドーはそのまま安心したかの様な顔で魔法少女達を見ると、片方の手をゆっくりと挙げ始めそして…
(…)
「やはり、貴様らは…
…甘過ぎるなァ、馬鹿共が」
「「「「!!!?」」」」
不気味な笑みに表情を変え、手招く様なジェスチャーをした
「「「「ドロォオオーーンッ!!」」」」
「なっ…!?」
その瞬間いつの間にか真後ろにまで忍び寄っていたドロドローンが、背後から一気に覆い被さる様に四人に強襲する
「っ危ないッス!!」
嫌な雰囲気をいち早く感じレッドに飛びつき既のところで何とか回避する事は出来、何とか不意打ちを受ける事無く無事に済む
「うわっ!!」
「きゃあっ!?」
が、残りの二人は避ける暇も無く不意をつかれてしまった
レッドはアイリスとともに起き上がり、すぐにそちらも助けようと襲われてしまった二人の方へと顔を向ける
二人を襲うドロドローンはそのまま服や身体と地面にガムの様にネチャネチャとへばりつきながらしっかりと締め付けていた
「ぐぅっ…な、何なのよコイツら…!?」
「う、動けないですっ…!!」
いくら暴れようとも全く取れる気配を見せず、地面と二人に粘着しくっついたまま二人の動きを完全に封じられてしまっていた
「そ、その二人とも…傍からR-18の〇ロ同人みたいになってるよ?レーティング的に色々と良いのコレ?」
「「言ってる場合か!!」」
完全にスライムに襲われてるアレなシチュエーション
だがそんな見た目やボケによる雰囲気とは裏腹に、汚染をしてしまうドロドローンに捕まったというのはかなり不味いのだ
そして魔法少女達が気を取られてしまっている内にジャドーが起き上がり、笑いながら得物を担ぎ再び近づいて来る
「グッフフフフ…本当に馬鹿な奴らだぁ、言っていただろう?あの程度でこのオレを倒せるとでも思っているのかってなァ?」
如何にも嫌らしくニヤつき睨み返すレッドに顔を向けた
「こ、こいつッ…!!」
「随分と甘いヒーロー様だなぁ…適当に言葉並べるだけ信じやがる
オレがお前らだけに拘る理由?ンなもん強い奴に勝つだけよ!!」
さっきの様な悲しそうな目は何処へやら、邪悪に満ちた様な目で睨み返しながらまたさっきみたく煽り続ける
「それにオレには慕うお方が居る、オレらや怪人どもの頂点に立つお方だ…その人の命じた事ならば例えどんな事だってやってやる!!
そう例え、卑怯な手だとしてもなァ…!!」
手招いていた手の平を潰す様に握りしめるジャドー
「「ッぁあぁああああ!!!!」」
「っ!?」
すると突如、怪人に捕まり動けなくなっている二人からの激しく大きな悲痛の叫びが鼓膜を破りそうな程に聞こえてきた
「グフフフ…貴様らの仲間を捕まえているコイツらはオレの手下、合図さえ送ればすぐ様に貴様らの仲間を汚染し締め付ける…!!」
合図をする度にドロドローンが二人を苦しめる
「ひっ卑怯ッス、背後から人質を取るなんて!!」
「るせぇ!!敵のケツ穴不意打ちした奴らが何言ってんだァ!!」
「うわ否定出来ない」
アイリスが大声で叫ぶ、がかなりの距離に吹っ飛ばされている上に一人の状態の為にとても手が出せる状況では無い
というかジャドーの返しが切実かつ必死過ぎる
「それに…倒すか倒されるかの戦いで何を言ってんだぁ?それに言っただろうが、例え…卑怯な手でも使うってなァ!!」
そして咆哮の様に叫び、遠くに居るアイリスすらをも怯ませる
「なら、コイツらを引き剥がせばぁ…!!」
そう言ってレッドは捕まっている二人の元へと駆け寄りロッドから火を吹かし、拘束している怪人を焼き払おうとした
「それをぉ…オレが目の前で素直に、させると思ってんのかァ!?」
「ぬぐぉあああッ!!」
その瞬間にレッドの背後から重い一撃が振り下ろされる
レッドは何とか反応し振り向きざまにロッドを両手で支え、襲い来る斧を真正面から受け止めようと抑えにかかった
しかし場面も力も運も、何もかもが悪かった
「オラオラどうした、その程度かァ!?」
「ぐぅうっ……!!」
元々三人でも押されていた強敵、その圧倒的なまでのパワーには幾ら魔法少女といえど一人では立て直す事すら危う過ぎる
更に後ろには動けない味方、もし押し負ければ仲間ごと一巻の終わりだ
「くそっ、こんな奴等に捕まってなければ…!!」
「かないさん…!!」
「諦めろ、魔法少女どもォ!!」
抑えるので手一杯なレッドに、更に力が重くのしかかる
誰がどう考えてもこの時点でどうする事も出来ずただ負けを待つ様な、何をしようにも絶対に勝ち目も全くもって無い勝負だった
だが、それでも
「ぬぅ?」
「…っそれでも!!
負ける、もぉんくぁああああああッッ!!!!」
必死に力を振り絞り、ギリギリまで持ち堪えた
その行動と出来事にジャドーは敬意すら評したのか往生際が悪い奴とでも思ったのか、先程の邪悪なものとは違う笑みを一瞬だけ浮かべた
そして、レッドにボソリとつぶやく様にこう言った
「…そこまでやるとは思っていなかったなぁ、流石に侮っていた
ならばオレも敬意を表して…ある真実を教えてやろう」
「な、何を…!?」
敵意を向けたままのレッドをそのままに言葉を続けるジャドー
「ククク、それはな…?」
ーーーー
そして同時刻、その場所のすぐ近くにて
「…こっち、確かこっちだったはず」
「はいはい分かった、そんなに焦んなよ」
正とかさみは声の主を探すべく住宅街を歩いていた
とは言ったものの声だけしか頼りが無い現状、何があるのかも分からず基本的には目的地まで歩いて行くしかない
「しっかしシケてんなぁ…人っ子一人居やしねぇ、まぁあんな爆発でも起こってりゃあ当然なんだけどな
はぁ、本当にこんな所に居るのか?」
しかし歩いているところが問題だ
此処はさっき爆発が起きていた場所のすぐ付近なのだ、つまりこちらはいつ怪人だのと得体の知れないものが襲ってくるか分からない
…まぁもっとも、この男のお陰でその心配は無いのだが
そんな中ずっと暇そうに護衛もとい暇潰し程度にかさみに付き合っている正は話題ついでにある事を質問した
「…なぁ、そういや良く場所が分かるなお前?」
「えっ?」
不思議そうに首を傾げるかさみ
「だって少ししか聞いてない声を頼りに歩いてんだろ?にしては妙に…正確に迷いなく歩いてるなーって思ってよ
そこんとこ、どうなんだ?」
確かにかさみはさっきまで正体不明の謎の声しか頼りにして居ない、にも拘わらずまるでナビ通りにスルスルと歩いている
はっきり言ってとても不思議というか、不気味なのだ
一体何が彼女の足を動かし導いているのだろうか…
と、まさにその時であった
「ついた」
「は?」
かさみが突然に立ち止まりそう言う、どうやら此処がかさみの言っていた声の主が居る筈の場所である
だがしかしそこには…誰もいなかった
「…本当に此処であってんだよな」
「うん、たぶん」
一点の迷いも無い声でウソ無く平然と答えるかさみ
しかし幾ら辺りを見回してみれどもさっきも説明した通り人の気配どころか、目に映るものは瓦礫と壊れかけてる建物位
こんな場所に重要な物があるとは思えない
「じゃあ、此処に何があるっていうんだ…?」
とそう思っている時、かさみがあるものを見つけた
「これは…?」
「白い、ブローチか?コレ」
かさみがおもむろに見つけ拾い上げたのは、丸い形をしていて妙な模様が入った大きめの白いブローチだった
だがただのブローチというよりは何かが決定的に違う様な、まるで何か強いオーラを放っている様な不思議な感覚がある
「…………」
肝心のかさみはそれをじっと見つめたままその場で動かなくなってしまった
そう言えばかさみは記憶喪失者である筈、もしかするとこのブローチに何か感じるものでもあったのだろうか…
何にせよ此処に突っ立ってても始まらない、そう思ったのか正はかさみの方へとスッと手を差し伸べた
「おい、かさみ…」
その時だった
「…ぁああああああッッ!!!!」
「!?」
誰かの叫び声、いや踏ん張る様な声が近くから響いてきた
かさみは慌ててブローチをポケットに入れて走り出し、正と共に住宅街の曲がり角を飛び出して行く
そこで目にしたのはかない、もとい魔法少女マジカルレッドがジャドーの攻撃をふんばっている光景だった
後ろにはさっきも言った様に動けなくなった二人も居る
「あれは…かない達だな、大分ピンチそうだが」
「…………」
不幸中の幸いなのか単なる不幸なのか、敵と魔法少女は交戦に集中しているのか此方に全く気づく気配が無い
「なぁお前はどうする?いつも通り此処で待って…
…ってちょ、おい!?」
その時、突如かさみが無言で交戦する魔法少女達に向かって走り出した
「…………ッ!!」
まるで何か重要な事を思い出したかの様に、無我夢中で
息は荒くなり無表情っぽかった顔は必死さが滲み出ていて、冷や汗が止まらないまま危険を顧みずに走り続ける
ーーーー
また一方の、レッドの方は
「…………!!」
「…グフフフ、どうだ?衝撃的だろう?」
こっそりとレッドにのみ聞こえる位のか細い声で、ある事を告げていた
その途端、レッドの顔はみるみるうちに青くなり力も抜けていく
「そ、そんな…!?」
次第に武器を支える力すらも無くなっていったみたいにロッドを手から放し、そのまま一気に地面に落ちていった
「ど、どうしたんですか!?」
「アンタ…コイツに一体何を吹き込んだのよ!!」
そしてジャドーは、残りの動けない二人をそっちのけで得物を上へ振りかざし
「まぁ安心しろよ魔法少女ども、大した事じゃねぇ…それにィ
そんな心配する必要も…無くなるからなァ!!」
一気に力を込めて、全力でレッドに振り下ろす
「くっそ、この…!!」
「かないさんッ!!」
二人が力ずくで振りほどこうとするもビクともしない、刃先は無慈悲にもレッドの首筋に向かって一直線に迫ってい
「ッ…!!」
ハッと気づいた時にはもう遅かった、レッドはただその攻撃に対し祈る様に目を瞑り動くのすらも辞める
が、それでも尚二人を守ろうと最後まで二人の前で壁になったのだった
だが、その攻撃は当たる事は無かった…何故ならば
「…あぁ?誰だお前」
「……させない」
三人の目の前に飛び出したかさみが咄嗟にさっき拾ったブローチを盾代わりにして、刃先を受け止めていたからだ
「か、かさみ…!?」
魔法少女達は訳が分からないと言いたげな顔をしながらポカンと口を開けて驚愕していた
だがそんな暇は、もうすぐに無くなる
「誰だか知らねぇが、オレの邪魔をするとは良い度胸だァ…!!
そんなに死にてぇんならまずテメェから先に潰してやるよォオ!!」
即座にまた斧を振りかぶって再び攻撃の動作に入る、次に全力でやられたら今度こそ四人とも終わりだ
「させないって、言ってる」
だがそれでも意地でも一歩も引く気の無いかさみ
「幾ら何でも無茶ですよかさみさん!!」
魔法少女達の警告など、最早耳にすら入っては居なかった
だが此処でアイリスが不可解な点を見つける
「…ど、どうして此処にかさみさんが?いやそんな事よりも
どうやって今のを防いだんスか…!?」
どう考えても人よりも脅威なドロドローンよりも遥かに危険な生物の、普通なら余波だけでも殺せる様な殺傷力を持った攻撃
それをただのブローチ程度で受けてそもそも無事な筈が無い、と言うよりもブローチごと体が切断されて一発アウトだ
では何故かさみはあの攻撃を受け『止めて』いるのか
「それと…うーんあのブローチ、何処かで見た様な…?」
そして極めつけはアイリスが見覚えのあるというあのブローチ、恐らくただのアクセサリーなどでは無いだろう
ならばあの道具は一体…?
何て考えてる間にも、危機はすぐまたそこまで迫っている
「そんじゃあ…今度こそ終いだ、あばよ」
「…………っ」
かさみの身体の奥底で、死に近づいている警告するかの様な激しい鼓動が何処かで鳴り響く
まるで警告音の様に、強く激しく
「う、ぐぅ…!!」
レッドは何かを吹き込まれてほぼ戦闘不能、残りの二人もまともな戦闘はほぼ不可能…ならばどうするか
出た以上やるしかない、そう思った
「…来い!!」
正がどうにかしてくれるとか魔法少女がまた動いてくれるとか、そんな事すら考えている余裕は既に無い
「覚悟アリか…なら!!
お望み通りぃいいい、今すぐ楽にしてやぁあるぅよぉォオアアアアッッ!!!!」
敵の怒号が辺りに飛び交い襲ってくる、もう待ってくれる時間は無い
戦え、後ろに居る大切になったモノを
そう
そこに居る、魔法少女達の様にーーーー
ーーその時
強く眩い閃光が周りに居る全てのモノを包み込む様に照らした
「な、何だァ!?」
「まっ眩し!!」
「きゃあっ!!」
思わず全員が目を瞑り手で抑え、それでもどうしても眩しく感じてしまう
やっと光が止んだ後もそれは余波の如く尚眩く光っているかの様に錯覚させ、そのまま大気の中へと散っていく
「ま、眩しかったです…」
「何が起きたってのよ全く、というか何なのこ…れ……?」
敵はおろか味方でさえ何が起きたのかが把握出来ていない、誰も彼もが何も分からずに混乱している状態である
「くっそ…何なんださっきから、どうなってんだコレぁ…!?
一人ひとりがやっとの事で目をゆっくりと、恐る恐る開けてみる
するとそこには
「…『変身』、だったっけ
【魔法少女マジカラ・ホワイト】…参上、よ」
たった一人、さっきまでかさみだった筈の『魔法少女』が現れていた
黒い手袋に肩の装飾が着いたタンクトップの様な上着に大きなベルトと半ズボン、あの三人とはまた一風変わった姿だ
かさみ、もといホワイトは静かに地面に降り立ち目を見開く
「み、皆さん大丈夫ッスかー!?」
と、ジャドーがそれに気を取られているウチにすぐ様アイリスが捕まっていた二人の元へと急いで向かって来た
「あっアイリス、何でアンタ自分だけ安全圏内でずっと見物してんのよ!!後動けないから早くコレ取って!!」
ブルーがが必死にかさみもといホワイトを止めようと、アイリスにドロドローンを解く様に強く言う
だがドロドローンも怪人、戦闘能力の無いアイリスには土台無理な話だ
「んな事言われても無理に決まってんでしょーが、来た瞬間真っ先に瞬殺されるわ!!後それ私の力じゃ無理ッス!!」
「約立たず!!」
「何を!?」
などと呑気に言い争っている場合では無い
「ゆ、ゆめみさんそんな事よりも…」
「あ、ゴメンのぞみ…で、アレは一体何なのよ」
辛うじて動かせる片腕でブルーはホワイトの方と指でさす
「そ、そんな事言われても分からないッスよ私にも!!
そもそも魔法少女って言うのは言わば私達妖精の力を貸している状態ッス、妖精無しの魔法少女なんて聞いた事も無いんでスって…」
しかし、実際に目の前で変身しているのだ
「…後で聞いてみる必要がありそうね」
ならば果たしてかさみは、一体どういう方法で魔法少女になったのか?
あの光るブローチに関係があるのだろうか…
「後で聞くのは良いんスけど、その前にその状況どうにかすべきッスね」
「うっさい!!アンタも巻き込んでやろうか!?」
何にせよ結局こいつ等がしまらないのは、どんな状況でも同じだった
「まぁそうね、問題は…
…魔法少女になったとしても、あの化け物に勝てるか…ね」
そう、問題はそこであった
魔法少女が三人がかりで束になっても真っ向に挑めば勝てそうに無い様な奴に、果たしてホワイト一人が勝てるのであろうか
そんな時、ホワイトに真っ向から対峙するジャドーの方からまた余裕気な表情で口を開き始めた
「フン、魔法少女が一人増えたところで結果は同じだぁ…雑魚が何人来ようともオレには勝てねぇんだよ」
ジャドーがさっきの様にホワイトに対して、まるで魔法少女じゃ話にならないとばかりに挑発気味に言い放つ
しかしホワイトは表情を全く変えずにこう返す
「じゃあ、やってみれば?」
素かわざとかそのまま挑発をそっくり投げたのだ、正に煽り返しというか…わざとなのか素なのか分からない言動である
「ちょっかさみさん!?何で煽ったんスか今!?」
「…?」
「多分アレ素ね、恐ろしいわね天然って…」
「何の話ですか?」
というか完全にどっからどうみても真顔な辺り割とガチで素なやつだ、のぞみとご同類っぽい奴だ多分
まぁ、本人に悪気があるのか無いのかはさておくとして…
もしも敵の目の前のそれをやったら、そらブチ切れるだろという話
それが原因でか先程までしつこく粘っていたレッド達等にイライラしていたジャドーの怒りが、遂に沸点もとい臨界点を超えた
「…上等だ、今すぐ殺してやらァァアアッッ!!!!」
「…………!!」
強く足を踏み出し一直線にホワイトへ向かって行くジャドー、対するホワイトも拳を握り締め腕を構えた
「オラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」
斧が猛威を振るい無差別に周囲ごと根こそぎ刈り取りぶっ壊す様な勢いで、ホワイトに向かって何度も切りかかっていく
その猛攻は留まる事を知らないかの如く振るうごとに勢いを増している
「ふっ、よっ、せいっ…とぉ」
しかしホワイトも負けてはいない
鈍器の様な鈍く大きい刃から伝わるを衝撃を躱してはいなし受け流し、全ての攻撃を見切っては上手く立ち回っている
「こんのッ…ちょこまかと、ウザってぇんだよォ!!」
ジャドーのイライラは爆発して尚更に募り、真っ向からぶった切ろうとした
「せぇいッ!!」
その一撃を、ホワイトが両腕をクロスし真っ向から受け止める
グローブが特別性なのかこの魔法少女の肉体そのものが強固なものなのか、辺りに金属を強く叩いたかの様な轟音が響き渡った
「良く受け止められたなァ、だが…!!」
だがしかしジャドーの一番厄介なところはその圧倒的にも思えるパワー…その巨体から生み出される力はレッド達三人がかりでも軽く圧倒してしまう程であり、真正面から対峙したら終わりである
「このオレのパワーに勝てるとでも思ってんのかぁ!?」
「ぐっ…!!」
そのパワーは下から抑えているホワイトの足元に亀裂すら入る程に、強烈に重く強く少女の身体にのしかかっていく
「ならお望み通りにこのまま押し潰してやるよォッ!!」
そう言ってジャドーは更に、自身の体重を込め始める
このままではさっきの通りにまたやられてしまうだろう
だが、ホワイトはそれ以上だった
「…ッつぁぁああああ!!」
「何っ…ぐぅおあぁ!?」
斧を退けるどころか寧ろそのまま刃先をがっしりと掴み、ジャドーそのものを宙どころか自身の真上にまで持ち上げる
「いっせぇのぉ…せぇえいやぁあッ!!」
そしてそのまま鎧と巨体の重量をものともせず思い切りブン投げた
ジャドーが握っていた斧は投げられた際に手から離れ、既に明後日の方向にへと別に飛んでいき地面に突き刺さってしまう
「す、凄い…!!」
「もしかしたら…本当に勝つかもしれないッスよ、コレは!!」
砲弾の如き勢いで飛ばされたジャドーは建物に数回衝突した果てにやっと勢いを止め、地面に落下した後にフラフラとダウンする
が、すぐにまた起き上がってホワイトに向き直った
「こんのっ…コレで終わったと思うなよ、クソガキぃ!!」
そしてその巨体を届かせる様に唸らせながら、走り出した
武器を持っていた手は鉄の様に硬く重い拳へと変わり、力任せの格闘スタイルに変えながらも闘牛の如き勢いで向かって行く
「…っ、なんて凄まじい魔力の密度と量…まるであの拳一点のみに集中したみたいな感じッス」
「さ、流石にアレは不味いんじゃないですか…!?」
その圧と凄まじさ、そして執念に周囲が引き始める
ジャドーが走り踏み込む度に地響きの如き轟音が地面から鳴り続ける、それはその化け物自身の力を物語っているかの様に
「もう手加減はしねぇ、この場で今すぐにでも殺してやる!!」
振り上げた拳がホワイトに狙いを定め、宙で孤を描きながらオーバーアクション気味に上から鋭い殴打を振り落とし繰り出す
喰らったら最早この一撃で終わりだ
「かさみ、早く避けて!!」
しかしそれでもホワイトは避けるどころかその場を離れる素振りは全く見せず、それどころか正面を見据えて拳をまた構え始める
「…………ふぅ」
一瞬だけ息を吐いて呼吸を整え、右拳を少し引いた
「死にぃ、さぁらせぇぇえあぁああああッッ!!!!」
拳が、こめかみの直ぐ傍にまで迫る時
「…必殺、『マジカル…っ
ホワイト・バスター』ッッ!!」
ジャドーの攻撃を紙一重で見切ると同時にホワイトの魔力を纏った拳がジャドーの腹を突き抜け、光線の様に襲い掛かる
光線の如きエネルギー波はジャドーの拳の魔力すらも全て掻き消しながら敵を含む全てを飲み込んでいった
その威力たるや、現状魔法少女達の中でも最も威力がある筈であるグリーンの矢ですらも比では無いだろう
「なぁっ!?ぐ、ぐぅうぅぅうううッ…!!まさかこのオレが、こんな完膚なきまでに…圧倒的に…1?
ば、ばぁあかぁあなぁああッッ!!!!」
ジャドーはそのまま天高くへと物凄い勢いで、まるで何処ぞのポケ何とかの悪組織三人組ばりに綺麗に吹っ飛んでいった
「覚えておけよおぉ、お前らぁあああああ……!!」
妙に強敵な雰囲気の敵なわりに小物感溢れる捨て台詞であった
「……た、倒した…の?」
「み…みたい、ね」
魔法少女達は安堵し一気に気を抜いたのか、その場でへたり込んだ
が、終わりでは無い
「ドォ、ロォオオオ…!!」
「ってやっべすっかり忘れてた、そういや私達まだ捕まってるんだったぁ!!」
「…ていうかコレあの強い怪人?の部下なんですよね…て事はですよ?」
グリーンが何かに気づいたのか急に辺りを必死に見回し始める、だが今の時点でもうそれは遅かった
「「「「ドロドロォーーーーン…!!!!」」」」
「ですよねー」
周囲にはジャドーの部下と思わしきドロドローンが所狭しと現れていた
「…ひとり頭、何人倒すの?」
「わぁ頼もしい!!でもゴメン、私達まだ動けないの!!」
妙に魔法少女みたいなのに変身してから本家よりも頼もしくなったホワイトである、が幾ら何でもこの状況は少し不味い
動けない味方二人に戦意喪失した一人…後全く使えない一匹が居るのだ、コレを全部守りながらというのはかなり難しいだろう
「待って今物凄く飛ぼされた気がするんスけど!?」
「そんな事言ってる場合か!!くそっ、せめてコレさえ外れれば…!!」
「ふんぬぅうううっ!!はぁはぁ…駄目です、取れません…」
このままでは勝ったのに結局全滅して終わりになってしまう、では一体どうすれば良いのか?
「折角勝ったのに、結局こんなところで…!!」
ところで、かさみを此処まで連れてきたのは一体誰だろうか
「ふーむ、そういや折角アイツらに超能力と誤魔化し…もとい言ったんだし、超能力っぽい何かを使った方が良いのか…?」
怪人が蔓延ると分かっていて尚安全にど真ん中歩けたのは何故だろうか
「なら超能力っぽいものは…そういやこの前絵本と一緒に買ったあのオカルト本に、パイロキネシスとか載ってたっけなぁ」
この小説の一話で単騎ボロボロになっているところを真っ向から助け、相手の怪人をタイマンで瞬殺したのは一体誰なのだろうか
「よし!!じゃそれに決定、何かテキトーに炎出しとけばそれっぽいだろ」
それに何より、この場で唯一余裕な男は誰だろうか
その答えは
そう、達人 正であった
「て事で死んどけ必殺、パイロ何とかファイヤーッ!!」
「「「「ドロォオオオオオッッ!!!?」」」」
「せめて技名位ちゃんと言ってあげて!?」
正は突如何処からかいつの間に魔法少女達の目の前へと現れると、キメポーズみたく勢いのままに手を上げた
すると魔法少女達の周囲至る所に突如として火花散る極太の火柱が噴出しドロドローンを焼き尽くす、正に火災現場みたいな有様である
俺やったぜみたいな正の顔とは裏腹に容赦無く燃え尽き消えてゆくドロドローンの光景は凄惨そのものだった、因みに周りの家とか建物には一切燃え広がってはいないので一応大丈夫です
「ったた…うんまぁ、やっと外れたから良いんだけどさ」
「やっと解放されまし…って熱っ、めっちゃ熱ッ⁉」
まぁ絵面は兎も角そのお陰でか、ブルーとグリーンの二人の拘束は瞬く間にも解けていきやっとの事で解放された
「よーし大丈夫かお前らー、服が燃えてイヤーンな事になってないかー?」
「あんな大惨事作った直後に女子に言い放つ言葉ッスかソレ」
冷静かつ一周回って傍観しているアイリスのツッコミが冴え渡る
「と言うか瞬く間に終わったわね…」
「私達の存在意義って、一体何なんでしょうか…」
「二人とも気を確かにッス!!大丈夫、本当にちゃんと役に立ってまス!!」
そして鑑賞以前に膝から落ちてネガティブへと変貌してる二人、敵が居なくなっても敗北感が何か雰囲気的にめっちゃ残ってる
「…結果は?」
「止めてあげなさい!!今のアンタの言葉も結構刺さるんだからッス!!」
そこに新たにチートの仲間入り(仮)であるホワイトの追い打ちが突き刺さっていく
「おーいそこ、コントはそこまでにしといて帰んねーのか」
「十中八九アンタのせいだよ」
と、ボケはここまでにしてそろそろ帰らそうと魔法少女達を呼ぶ正
「へいへいすんませんっした…って、あ?」
だがしかし一つおかしな事があった
かないが膝を抱えたまま動かず、呼べども何故か反応すら無いのだ
「…………」
姿も返信したままで、どう見ても様子がおかしい
「どうしたんスかかないさん、早く変身解いて帰らないと…」
それに気づいたアイリスがそっと近づき改めてかないを呼んでみた
が、その時目にしたのは
「…嘘、でしょ……」
いつもの明るい性格とは全くの真逆の、何もかも失った様な姿だった
目は大量の涙を垂れ流し真っ赤に染まり一点の光も無い虚ろな状態で、身体はまるで重病みたく小刻み震えていて最早見てすらもいられない
「かっかない、さん…!?」
その姿に恐怖すら覚えるアイリスにすら気づかず、かないの頭の中は混乱と同様に満ちていた
(…嘘だ、そんな事ある訳が無い
あの怪人の正体が全部、人間だなんて事……ッ!!!!)
《魔法少女マジカラ☆ぐれーと!!》
【第6話「行動開始、悪からの絶望・前編」】
《…第七話に、続く》
そこでは怪人と魔法少女との戦闘が既に始まっていた
「っく、そぉ……!!」
…いや、正確には先程まで行われていたと言うのが正しいだろう
戦っていた筈の魔法少女達は倒れ付し、立っているのは敵であるジャドー一匹
「フン、こんなもんかァ…」
戦闘自体は始まってものの十分も経つか経たないか位、
にも関わらずその時点で既に少女達は追い込まれ、たった数分足らずでで力の差というものを見せつけられていた
それこそ、前にズタボロにされたレッドの様に
「こんなに、強いなんて…」
「…うぅ」
囮になっていたレッドはおろか、たった数分だけで後方から支援しているブルーやグリーンすらもまるでついでの様に倒される
その力の差は、この短時間の時点で既に明白だった
既に精神的にズタボロの三人と、無傷かつ平然なジャドー
「グハハハ…もう終わりかぁ?随分とあっけねぇなぁ!!」
「な…なんの、まだまだこれからだっつ!!」
しかしそんな状況下でもレッドは諦める事は無く、すぐ様に持ち前のド根性と気力で立ち直した
「そ、そうよ…まだまだ!!」
「ここで負けるわけには…いかないです!!」
そして、何はともあれそんな姿を見て僅かではあるもののすぐに持ち直そうと、今にもまた立ち上がろうとする三人
「頑張ってくださいッス三人とも!!」
「「「お前も頑張るんだよ!!!!」」」
後、遠くで避難してる妖精一匹
「ほう…!!」
「まだまだ一ラウンド目!!
こっからは二ラウンド目、次で決着をつけてやる!!」
そんな魔法少女を見て再び興味を持ったのか、薄ら笑いを浮かべながら獲物を握り締めるジャドー
そして今、魔法少女が復活を遂げ逆転をかまそうとする…
…だがその時、ジャドーがある事考え口にした
「…諦めない諦めない、ヒーローなんざそればっかりかァ
所詮魔法少女だなんて気取っちゃいるが…まァ所詮ガキはガキだ、こんな体たらくじゃ街のヒーローが聞いて呆れるなァ?」
「ッ…な、何を!?」
ブルーがその言葉に反論しようとするも、すかさず更に声を重ねるジャドー
「だってそうじゃねぇか!!
そもそもお前らがここに来た時にゃ既に此処はオレによって荒らされてた、人間共ももうほぼ全員逃げた後だったんだぜぇ?
オマケに今居る此処だってこの体たらく、良く正義の味方を気取れるもんだァ!!」
「うぐっ、それは…!?」
わざと心を折るかの如く大声で叫ぶ様に言い放つジャドー、だが実際それはこの四人にとって正論でもあった
被害が実際に起きてからここに駆けつけるまでに一体どの位かかっただろうか、少なからず被害は既に出ている筈だ
「…なぁ、今までもそうだったんだろ
街が荒らされてからやっと出向いてって、お前ら魔法少女は街を守るんだろォ?
それとも何か、わざわざ怪人を理由に街中荒らし回ってストレス解消かァ!!」
悪意マシマシの言葉が次々と容赦無く、次々に魔法少女達へと襲いかかる
「護りたいモンも護れない、倒すべきモンも倒せない!!正に見掛け倒しのヒーローってヤツだなァコレは!!」
「「なっ…!!」」
強い敵を前にし悔しがる二人、悔しいがこの敵には適わないのだと
心を真正面からへし折りにいくジャドーに、身も心もズタボロブルーとグリーンは遂に膝を着いてしまった
「では随分とガッカリだがトドメと行こうか!!ハハハハハ!!」
そして今、ジャドーがその様子を確認した後に斧を振り上げようとする
「だが断るッ!!」
「ハハhはべすッ!?」
だがその瞬間それを全部払拭というか台無しにするかの様に、レッドの声と共に何かがジャドーに投げられ顔面に命中した
「か、かない!?」
いきなりの攻撃に味方までもが目を丸くする、まだ戦う気があるのかと
「よォし見事に命中っ!!」
拳を握りニヤケ顔のレッド、だが周りには瓦礫位しか無い上に石を投げた程度で同行出来る気もしないものだ
ではレッドは憎きジャドーに向けて今、一体何を投げたのだろうか?
「っんのォ往生際の悪いヤツめ 、一体何をォ…?」
さて、一体何を投擲したのかと言うと
「…へ、ヘロー」
「…………あ?」
「「」」
自分の相棒、もとい妖精のアイリスだった
二人はレッドのよる突然の奇行に呆気に取られ、今まで考えてた事全部吹っ飛んだ挙句に立ち尽くしたまま絶句していた、そら当たり前だ
「…………」
ジャドーは投げられてきたアイリスを掴み、如何にも不機嫌そうな顔で睨む
「あっ…そのえっと、ゴメンなさぃ…」
「あぁ?」
完全に怒らせた様子のジャドーを前にアイリスは若干の間無言になり
「…………
…では、バイ☆ナラッ!!」
開幕早々全力で逃げた
「逃がすと、思ってんのかァ?」
「ですよねっー
て言うかなんで今私をコイツに投げたのかないさぁぁあああッ!!!?」
激しい怒りの篭もった威圧をかますジャドー、レッドに咆哮する妖精アイリス
「…あのバカ」
「うわぁお…」
完全に頭を悩ませ遂には膝を抱えだすブルーとグリーン
さっきまでシリアスだった筈の戦闘の場がいよいよ遂にカオスに
「舐めやがって、そんなに死にたいならお前から殺してやる…!!」
「やめて頭を鷲掴みにしないで痛い痛い頭が割っれっるぅぅうっ!!」
アイリスの頭をガッシリと握り絞めて張本人のレッドに投げ当て返そうと、ジャドーは振りかぶりながら必死になって辺りを見回した
「何処だァ、さっさと出て来い!!」
が…肝心のマジカルレッドは何処にも居ないのだがまぁ当然それもそうだろう
それもその筈、何故ならば
「秘儀、百万年殺しィいいいッ!!」」
「え、ちょっmアアァァーーーーッッ!!!?」
(((いや何してんのアイツぅうううッッ!!!?)))
ジャドー本人の背後から武器であるロッド、それも思いっきり炎を滾らせたソレでおもっくそ尻を狙っていたのだから
所謂急所を狙った焼き根性である、グロ以前の問題だけど
これには勿論アイリス含めた味方三人もドン引き
「っと、うぉお!?」
「ぐふぉ…こんな付け焼刃程度でぇ、このオレを倒せるとでもォ!?」
(付け焼刃っつーか思いっきり直で尻穴焼かれてるんですけど…)
だがこの騎士も強者、こんなギャグみたいなやられ方など早々しないと言わんばかりにケツに力を込めて踏ん張る
肛門括約筋が唸りをあげてレッドが突いたロッドを押し返しつつ、ジャドーはそのまま汚ねぇロッドを尻から放り出そうと踏ん張る
というかコレ今読者は一体何を見せられているんだろうか
「グハハハハ!!どうだ、貴様らの攻撃など効くワケが…!!」
「マジカル☆ファイヤ―、オーン!!」
「オッホォアァアアアアアッッッッ!?!?」
すかさず容赦無くロッドから追加で炎を噴出させるレッドに尻からの色んな痛みで悶えるジャドー、目を覆うその他の面々
ここまで来るともうなんか、兎に角敵側が可哀想である
というか絵面そのものがヤベぇ
「…ふぃー、やっと一撃当たったわ」
しでかした当の本人はやり切ったかの様な清々しい顔
「いや「ふぃー」じゃねぇよ何してんのアンタぁ!!」
「何って…どう見ても戦いに決まってんじゃん、敵の不意をついて一発逆転からの大勝利ー!!って凄く王道でカッコ良くない?」
「こんなド変態ショーが魔法少女の戦いであってたまるか!!第三者から見たらきったねぇ絵面にしかなってないわよコレ!?」
この魔法少女は毎回何か下劣な事でもしないと消えてしまうのだろうか
「こんのクソガキ、まさかこんな汚ぇ手使うとは思いもしなかったぜぇ…!!」
(誰だって想定しないと思いますこんな魔法少女…)
(いやまぁ色んな意味で汚いっちゃ確かに汚いッスけども)
全くもってその通りである
「だがさっきも言っただろう…そんな卑怯な事でこのオレには倒せんとなァ!!
あ、でもちょっとだけ待ってケツの穴があぁぃィイデェデデデデ!!」
(あ、案外結構効果覿面っぽい)
オークこと豚の自称怪人ジャドーは四つん這いの姿勢かつ片手でケツの中心部を抑え、同時に大事そうに下腹部を守ろうとしている
男なら分かるだろうか、この…何かめっちゃ大事なものを失った感覚
だがまぁ手段は兎も角一転攻勢、劣勢に立たされていたとはいえまだそこまで大したダメージもあまり無い魔法少女が優位に立った
「この、クソガキどもがぁ…!!」
「ふふん形勢逆転ね、これでもう弱いなんて言わせないわよ!!」
「一応その通りなだけに何も言えねぇ…」
その通りだけどもう少しやりようは無かったのか
「ぐぅぅ…
…グフフフ、だが幾ら貴様らが頑張ろうとも…貴様ら魔法少女の根本は全くもって、変わらんぞぉ?」
ジャドーは劣勢、なのにも関わらず嫌らしい目付きで笑い始める
「たとえ貴様が今オレをぶっ倒したとしても、そんなバイト感覚の半端なヒーローごっこじゃあどの道後は絶対に無ぇ
そんな覚悟の無ぇ奴が…守れると思ってんのかァ!?」
敵である魔法少女に向けられたその叫びはその後の先を意味する、つまりは【正義の味方】としての真っ直ぐな警告
だがしかしそれは確かに、その通りでもあった
「そ、それは…」
「…何故街そのものが目的の怪人である筈のオレが貴様らに、敵である筈の魔法少女を態々おびき寄せてこんな事を言うとでもォ?」
グリーンの反発を遮ってジャドーは次々と言葉を並べる、まるで敵に警告してしまうというよりも自身の味方に注意するかの様に
そして、言葉を続けた
「…貴様らが、本当に覚悟のある奴なのかを確かめる為だ」
「……は?」
ジャドーの言葉に魔法少女達は目を丸くする
怪人である筈のジャドーのその目ははさっきの荒々しい目とは別の、実に悲哀に満ちた瞳と思える様な悲しそうなだった
「フン、最初はこんな事する気も起きなかったのにな
さっきも言ったが…半端な覚悟ではこの先無駄死にするだけだ、もし遊び感覚で怪人退治など辞めといた方が良いだろう
それに…確かに怪人倒しには意味はあるだろう、倒して被害を食い止める…だがそれでお前らが守る筈の街の人間が納得するのか?」
「…………」
魔法少女達はすっかり立ち止まりジャドーの話に聞き入っている、敵では無いのかと迷っているからだ
「本当に続けるつもりか?例え誰からも非難されようとも、お前らの人生全てを無駄にしようとも…戦い続ける気なのか」
そう何処か寂しげに言い続けるジャドーに、レッドは静かに歩み寄りおもむろに仁王立ちして
「んなもん知るか!!」
「!?」
おもっくそ真っ向から、切り捨てた
「どーでも良い、そんなもんどーでも良い
それよりもこの暴れた後どーすんだよコレ、アイリスが全部徹底的に隅から隅まで一人で直してくれると言ったとはいえ…」
「いやそこまでは言ってないッスよ!?」
そして先程のシリアスをぶっ壊す勢いでフラフラと歩き回りながら、何故か矛先を急にアイリスに向けてからかい始めた
「大体そんな事小難しい考えてたんなら魔法少女なんてやらないでしょ、そんなもん起きたら考えりゃ良いのよ起きたらね
そんで起きたら…臨機応変に対応する所存です」
「それ絶対やらない感じの駄目な受け答えでしょーが!!」
そして独自の持論もといダメダメな「だろう行動」宣言
一見だとというか完全に一見じゃなくとも本当にダメすぎる発言であるしそもそももうヒーローなのかも怪しくなってきたなコレ
「いや…え?だがそれは…!!」
「そ・れ・に!!」
ついつい口を出そうとするジャドーの口を塞ぐレッド
「私達なら何だろうとも絶対に出来るさ、というかやってやろうじゃん!!強敵だろうが非難だろうが絶対に負けるもんか!!
…まぁ、確かにアイリスは遅れた件で話はあるけどね」
「ヒィッ」
そうはっきりとジャドーに向かって言い放つレッド、怯えるアイリス
「…かない
勝手に私を巻き込まないでください誰ですか貴方」
「あっれぇ辛辣過ぎない!?」
「あはは…」
そしてそう冗談交じりに言いながらも心底ホッとするブルーと、小声ではあるが良かったとひっそり呟くグリーンなのであった
すると怪人はクスリと笑い出す
「…それで?結局オレを、どうするつもりだぁ」
ジャドーは妙に余裕ぶった様子でレッドに問う、勿論それに対する答えも当人は既に決まっていた
「さぁね…、もう悪さしないってんなら取り敢えず帰ってくんない?こちとら学校抜け出したワケだし帰りたいんだけど?
話もドロドローンと違ってちゃんと通じるみたいだしー」
(一話で言い訳して抜け出した奴が何言ってんスか)
アイリスの何か言いたそうな顔をするも空気を読む
「それとも何?まだ私達の敵として戦うって言うのなら…さっきみたいにまた堂々と、真っ向から来れば良いんじゃないの」
レッドがそう言い終わると同時に後ろに居たアイリスにブルーとグリーンの元へと下がり、膝をつくジャドーを三人と共に見下ろした
「…全く仕方無いッスねぇ」
「ま、リーダーの頼みなら仕方無いわね」
そして残りの三人も当然の如くレッドの賛成し、やれやれと言いたげな顔
「ちょっと待った、リーダーって何さ」
「赤だからじゃないですかね?」
「随分と安直だね!?」
しかしリーダーと言われて満更でも無くレッドはほんのちょっぴり照れる
まるで怪人に勝ったかの様なムードを出し魔法少女達は和やかな雰囲気でスッキリと、いつの間にか先程の憂いを消し去っていた
「…グフフフ、そう…か」
肩の荷が降りた様な顔でそれを見るジャドー
「ま、そう言うワケだ
大人しく帰る?それともまた真正面から私達に挑んでみる?」
(…何か良い雰囲気っぽいけどただ不意打ちで勝っただけッスよねコレ
いや、というかさっきから何か嫌な予感が…)
いつにも自信マシマシでレッドがそう言い放つ
するとジャドーはそのまま安心したかの様な顔で魔法少女達を見ると、片方の手をゆっくりと挙げ始めそして…
(…)
「やはり、貴様らは…
…甘過ぎるなァ、馬鹿共が」
「「「「!!!?」」」」
不気味な笑みに表情を変え、手招く様なジェスチャーをした
「「「「ドロォオオーーンッ!!」」」」
「なっ…!?」
その瞬間いつの間にか真後ろにまで忍び寄っていたドロドローンが、背後から一気に覆い被さる様に四人に強襲する
「っ危ないッス!!」
嫌な雰囲気をいち早く感じレッドに飛びつき既のところで何とか回避する事は出来、何とか不意打ちを受ける事無く無事に済む
「うわっ!!」
「きゃあっ!?」
が、残りの二人は避ける暇も無く不意をつかれてしまった
レッドはアイリスとともに起き上がり、すぐにそちらも助けようと襲われてしまった二人の方へと顔を向ける
二人を襲うドロドローンはそのまま服や身体と地面にガムの様にネチャネチャとへばりつきながらしっかりと締め付けていた
「ぐぅっ…な、何なのよコイツら…!?」
「う、動けないですっ…!!」
いくら暴れようとも全く取れる気配を見せず、地面と二人に粘着しくっついたまま二人の動きを完全に封じられてしまっていた
「そ、その二人とも…傍からR-18の〇ロ同人みたいになってるよ?レーティング的に色々と良いのコレ?」
「「言ってる場合か!!」」
完全にスライムに襲われてるアレなシチュエーション
だがそんな見た目やボケによる雰囲気とは裏腹に、汚染をしてしまうドロドローンに捕まったというのはかなり不味いのだ
そして魔法少女達が気を取られてしまっている内にジャドーが起き上がり、笑いながら得物を担ぎ再び近づいて来る
「グッフフフフ…本当に馬鹿な奴らだぁ、言っていただろう?あの程度でこのオレを倒せるとでも思っているのかってなァ?」
如何にも嫌らしくニヤつき睨み返すレッドに顔を向けた
「こ、こいつッ…!!」
「随分と甘いヒーロー様だなぁ…適当に言葉並べるだけ信じやがる
オレがお前らだけに拘る理由?ンなもん強い奴に勝つだけよ!!」
さっきの様な悲しそうな目は何処へやら、邪悪に満ちた様な目で睨み返しながらまたさっきみたく煽り続ける
「それにオレには慕うお方が居る、オレらや怪人どもの頂点に立つお方だ…その人の命じた事ならば例えどんな事だってやってやる!!
そう例え、卑怯な手だとしてもなァ…!!」
手招いていた手の平を潰す様に握りしめるジャドー
「「ッぁあぁああああ!!!!」」
「っ!?」
すると突如、怪人に捕まり動けなくなっている二人からの激しく大きな悲痛の叫びが鼓膜を破りそうな程に聞こえてきた
「グフフフ…貴様らの仲間を捕まえているコイツらはオレの手下、合図さえ送ればすぐ様に貴様らの仲間を汚染し締め付ける…!!」
合図をする度にドロドローンが二人を苦しめる
「ひっ卑怯ッス、背後から人質を取るなんて!!」
「るせぇ!!敵のケツ穴不意打ちした奴らが何言ってんだァ!!」
「うわ否定出来ない」
アイリスが大声で叫ぶ、がかなりの距離に吹っ飛ばされている上に一人の状態の為にとても手が出せる状況では無い
というかジャドーの返しが切実かつ必死過ぎる
「それに…倒すか倒されるかの戦いで何を言ってんだぁ?それに言っただろうが、例え…卑怯な手でも使うってなァ!!」
そして咆哮の様に叫び、遠くに居るアイリスすらをも怯ませる
「なら、コイツらを引き剥がせばぁ…!!」
そう言ってレッドは捕まっている二人の元へと駆け寄りロッドから火を吹かし、拘束している怪人を焼き払おうとした
「それをぉ…オレが目の前で素直に、させると思ってんのかァ!?」
「ぬぐぉあああッ!!」
その瞬間にレッドの背後から重い一撃が振り下ろされる
レッドは何とか反応し振り向きざまにロッドを両手で支え、襲い来る斧を真正面から受け止めようと抑えにかかった
しかし場面も力も運も、何もかもが悪かった
「オラオラどうした、その程度かァ!?」
「ぐぅうっ……!!」
元々三人でも押されていた強敵、その圧倒的なまでのパワーには幾ら魔法少女といえど一人では立て直す事すら危う過ぎる
更に後ろには動けない味方、もし押し負ければ仲間ごと一巻の終わりだ
「くそっ、こんな奴等に捕まってなければ…!!」
「かないさん…!!」
「諦めろ、魔法少女どもォ!!」
抑えるので手一杯なレッドに、更に力が重くのしかかる
誰がどう考えてもこの時点でどうする事も出来ずただ負けを待つ様な、何をしようにも絶対に勝ち目も全くもって無い勝負だった
だが、それでも
「ぬぅ?」
「…っそれでも!!
負ける、もぉんくぁああああああッッ!!!!」
必死に力を振り絞り、ギリギリまで持ち堪えた
その行動と出来事にジャドーは敬意すら評したのか往生際が悪い奴とでも思ったのか、先程の邪悪なものとは違う笑みを一瞬だけ浮かべた
そして、レッドにボソリとつぶやく様にこう言った
「…そこまでやるとは思っていなかったなぁ、流石に侮っていた
ならばオレも敬意を表して…ある真実を教えてやろう」
「な、何を…!?」
敵意を向けたままのレッドをそのままに言葉を続けるジャドー
「ククク、それはな…?」
ーーーー
そして同時刻、その場所のすぐ近くにて
「…こっち、確かこっちだったはず」
「はいはい分かった、そんなに焦んなよ」
正とかさみは声の主を探すべく住宅街を歩いていた
とは言ったものの声だけしか頼りが無い現状、何があるのかも分からず基本的には目的地まで歩いて行くしかない
「しっかしシケてんなぁ…人っ子一人居やしねぇ、まぁあんな爆発でも起こってりゃあ当然なんだけどな
はぁ、本当にこんな所に居るのか?」
しかし歩いているところが問題だ
此処はさっき爆発が起きていた場所のすぐ付近なのだ、つまりこちらはいつ怪人だのと得体の知れないものが襲ってくるか分からない
…まぁもっとも、この男のお陰でその心配は無いのだが
そんな中ずっと暇そうに護衛もとい暇潰し程度にかさみに付き合っている正は話題ついでにある事を質問した
「…なぁ、そういや良く場所が分かるなお前?」
「えっ?」
不思議そうに首を傾げるかさみ
「だって少ししか聞いてない声を頼りに歩いてんだろ?にしては妙に…正確に迷いなく歩いてるなーって思ってよ
そこんとこ、どうなんだ?」
確かにかさみはさっきまで正体不明の謎の声しか頼りにして居ない、にも拘わらずまるでナビ通りにスルスルと歩いている
はっきり言ってとても不思議というか、不気味なのだ
一体何が彼女の足を動かし導いているのだろうか…
と、まさにその時であった
「ついた」
「は?」
かさみが突然に立ち止まりそう言う、どうやら此処がかさみの言っていた声の主が居る筈の場所である
だがしかしそこには…誰もいなかった
「…本当に此処であってんだよな」
「うん、たぶん」
一点の迷いも無い声でウソ無く平然と答えるかさみ
しかし幾ら辺りを見回してみれどもさっきも説明した通り人の気配どころか、目に映るものは瓦礫と壊れかけてる建物位
こんな場所に重要な物があるとは思えない
「じゃあ、此処に何があるっていうんだ…?」
とそう思っている時、かさみがあるものを見つけた
「これは…?」
「白い、ブローチか?コレ」
かさみがおもむろに見つけ拾い上げたのは、丸い形をしていて妙な模様が入った大きめの白いブローチだった
だがただのブローチというよりは何かが決定的に違う様な、まるで何か強いオーラを放っている様な不思議な感覚がある
「…………」
肝心のかさみはそれをじっと見つめたままその場で動かなくなってしまった
そう言えばかさみは記憶喪失者である筈、もしかするとこのブローチに何か感じるものでもあったのだろうか…
何にせよ此処に突っ立ってても始まらない、そう思ったのか正はかさみの方へとスッと手を差し伸べた
「おい、かさみ…」
その時だった
「…ぁああああああッッ!!!!」
「!?」
誰かの叫び声、いや踏ん張る様な声が近くから響いてきた
かさみは慌ててブローチをポケットに入れて走り出し、正と共に住宅街の曲がり角を飛び出して行く
そこで目にしたのはかない、もとい魔法少女マジカルレッドがジャドーの攻撃をふんばっている光景だった
後ろにはさっきも言った様に動けなくなった二人も居る
「あれは…かない達だな、大分ピンチそうだが」
「…………」
不幸中の幸いなのか単なる不幸なのか、敵と魔法少女は交戦に集中しているのか此方に全く気づく気配が無い
「なぁお前はどうする?いつも通り此処で待って…
…ってちょ、おい!?」
その時、突如かさみが無言で交戦する魔法少女達に向かって走り出した
「…………ッ!!」
まるで何か重要な事を思い出したかの様に、無我夢中で
息は荒くなり無表情っぽかった顔は必死さが滲み出ていて、冷や汗が止まらないまま危険を顧みずに走り続ける
ーーーー
また一方の、レッドの方は
「…………!!」
「…グフフフ、どうだ?衝撃的だろう?」
こっそりとレッドにのみ聞こえる位のか細い声で、ある事を告げていた
その途端、レッドの顔はみるみるうちに青くなり力も抜けていく
「そ、そんな…!?」
次第に武器を支える力すらも無くなっていったみたいにロッドを手から放し、そのまま一気に地面に落ちていった
「ど、どうしたんですか!?」
「アンタ…コイツに一体何を吹き込んだのよ!!」
そしてジャドーは、残りの動けない二人をそっちのけで得物を上へ振りかざし
「まぁ安心しろよ魔法少女ども、大した事じゃねぇ…それにィ
そんな心配する必要も…無くなるからなァ!!」
一気に力を込めて、全力でレッドに振り下ろす
「くっそ、この…!!」
「かないさんッ!!」
二人が力ずくで振りほどこうとするもビクともしない、刃先は無慈悲にもレッドの首筋に向かって一直線に迫ってい
「ッ…!!」
ハッと気づいた時にはもう遅かった、レッドはただその攻撃に対し祈る様に目を瞑り動くのすらも辞める
が、それでも尚二人を守ろうと最後まで二人の前で壁になったのだった
だが、その攻撃は当たる事は無かった…何故ならば
「…あぁ?誰だお前」
「……させない」
三人の目の前に飛び出したかさみが咄嗟にさっき拾ったブローチを盾代わりにして、刃先を受け止めていたからだ
「か、かさみ…!?」
魔法少女達は訳が分からないと言いたげな顔をしながらポカンと口を開けて驚愕していた
だがそんな暇は、もうすぐに無くなる
「誰だか知らねぇが、オレの邪魔をするとは良い度胸だァ…!!
そんなに死にてぇんならまずテメェから先に潰してやるよォオ!!」
即座にまた斧を振りかぶって再び攻撃の動作に入る、次に全力でやられたら今度こそ四人とも終わりだ
「させないって、言ってる」
だがそれでも意地でも一歩も引く気の無いかさみ
「幾ら何でも無茶ですよかさみさん!!」
魔法少女達の警告など、最早耳にすら入っては居なかった
だが此処でアイリスが不可解な点を見つける
「…ど、どうして此処にかさみさんが?いやそんな事よりも
どうやって今のを防いだんスか…!?」
どう考えても人よりも脅威なドロドローンよりも遥かに危険な生物の、普通なら余波だけでも殺せる様な殺傷力を持った攻撃
それをただのブローチ程度で受けてそもそも無事な筈が無い、と言うよりもブローチごと体が切断されて一発アウトだ
では何故かさみはあの攻撃を受け『止めて』いるのか
「それと…うーんあのブローチ、何処かで見た様な…?」
そして極めつけはアイリスが見覚えのあるというあのブローチ、恐らくただのアクセサリーなどでは無いだろう
ならばあの道具は一体…?
何て考えてる間にも、危機はすぐまたそこまで迫っている
「そんじゃあ…今度こそ終いだ、あばよ」
「…………っ」
かさみの身体の奥底で、死に近づいている警告するかの様な激しい鼓動が何処かで鳴り響く
まるで警告音の様に、強く激しく
「う、ぐぅ…!!」
レッドは何かを吹き込まれてほぼ戦闘不能、残りの二人もまともな戦闘はほぼ不可能…ならばどうするか
出た以上やるしかない、そう思った
「…来い!!」
正がどうにかしてくれるとか魔法少女がまた動いてくれるとか、そんな事すら考えている余裕は既に無い
「覚悟アリか…なら!!
お望み通りぃいいい、今すぐ楽にしてやぁあるぅよぉォオアアアアッッ!!!!」
敵の怒号が辺りに飛び交い襲ってくる、もう待ってくれる時間は無い
戦え、後ろに居る大切になったモノを
そう
そこに居る、魔法少女達の様にーーーー
ーーその時
強く眩い閃光が周りに居る全てのモノを包み込む様に照らした
「な、何だァ!?」
「まっ眩し!!」
「きゃあっ!!」
思わず全員が目を瞑り手で抑え、それでもどうしても眩しく感じてしまう
やっと光が止んだ後もそれは余波の如く尚眩く光っているかの様に錯覚させ、そのまま大気の中へと散っていく
「ま、眩しかったです…」
「何が起きたってのよ全く、というか何なのこ…れ……?」
敵はおろか味方でさえ何が起きたのかが把握出来ていない、誰も彼もが何も分からずに混乱している状態である
「くっそ…何なんださっきから、どうなってんだコレぁ…!?
一人ひとりがやっとの事で目をゆっくりと、恐る恐る開けてみる
するとそこには
「…『変身』、だったっけ
【魔法少女マジカラ・ホワイト】…参上、よ」
たった一人、さっきまでかさみだった筈の『魔法少女』が現れていた
黒い手袋に肩の装飾が着いたタンクトップの様な上着に大きなベルトと半ズボン、あの三人とはまた一風変わった姿だ
かさみ、もといホワイトは静かに地面に降り立ち目を見開く
「み、皆さん大丈夫ッスかー!?」
と、ジャドーがそれに気を取られているウチにすぐ様アイリスが捕まっていた二人の元へと急いで向かって来た
「あっアイリス、何でアンタ自分だけ安全圏内でずっと見物してんのよ!!後動けないから早くコレ取って!!」
ブルーがが必死にかさみもといホワイトを止めようと、アイリスにドロドローンを解く様に強く言う
だがドロドローンも怪人、戦闘能力の無いアイリスには土台無理な話だ
「んな事言われても無理に決まってんでしょーが、来た瞬間真っ先に瞬殺されるわ!!後それ私の力じゃ無理ッス!!」
「約立たず!!」
「何を!?」
などと呑気に言い争っている場合では無い
「ゆ、ゆめみさんそんな事よりも…」
「あ、ゴメンのぞみ…で、アレは一体何なのよ」
辛うじて動かせる片腕でブルーはホワイトの方と指でさす
「そ、そんな事言われても分からないッスよ私にも!!
そもそも魔法少女って言うのは言わば私達妖精の力を貸している状態ッス、妖精無しの魔法少女なんて聞いた事も無いんでスって…」
しかし、実際に目の前で変身しているのだ
「…後で聞いてみる必要がありそうね」
ならば果たしてかさみは、一体どういう方法で魔法少女になったのか?
あの光るブローチに関係があるのだろうか…
「後で聞くのは良いんスけど、その前にその状況どうにかすべきッスね」
「うっさい!!アンタも巻き込んでやろうか!?」
何にせよ結局こいつ等がしまらないのは、どんな状況でも同じだった
「まぁそうね、問題は…
…魔法少女になったとしても、あの化け物に勝てるか…ね」
そう、問題はそこであった
魔法少女が三人がかりで束になっても真っ向に挑めば勝てそうに無い様な奴に、果たしてホワイト一人が勝てるのであろうか
そんな時、ホワイトに真っ向から対峙するジャドーの方からまた余裕気な表情で口を開き始めた
「フン、魔法少女が一人増えたところで結果は同じだぁ…雑魚が何人来ようともオレには勝てねぇんだよ」
ジャドーがさっきの様にホワイトに対して、まるで魔法少女じゃ話にならないとばかりに挑発気味に言い放つ
しかしホワイトは表情を全く変えずにこう返す
「じゃあ、やってみれば?」
素かわざとかそのまま挑発をそっくり投げたのだ、正に煽り返しというか…わざとなのか素なのか分からない言動である
「ちょっかさみさん!?何で煽ったんスか今!?」
「…?」
「多分アレ素ね、恐ろしいわね天然って…」
「何の話ですか?」
というか完全にどっからどうみても真顔な辺り割とガチで素なやつだ、のぞみとご同類っぽい奴だ多分
まぁ、本人に悪気があるのか無いのかはさておくとして…
もしも敵の目の前のそれをやったら、そらブチ切れるだろという話
それが原因でか先程までしつこく粘っていたレッド達等にイライラしていたジャドーの怒りが、遂に沸点もとい臨界点を超えた
「…上等だ、今すぐ殺してやらァァアアッッ!!!!」
「…………!!」
強く足を踏み出し一直線にホワイトへ向かって行くジャドー、対するホワイトも拳を握り締め腕を構えた
「オラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」
斧が猛威を振るい無差別に周囲ごと根こそぎ刈り取りぶっ壊す様な勢いで、ホワイトに向かって何度も切りかかっていく
その猛攻は留まる事を知らないかの如く振るうごとに勢いを増している
「ふっ、よっ、せいっ…とぉ」
しかしホワイトも負けてはいない
鈍器の様な鈍く大きい刃から伝わるを衝撃を躱してはいなし受け流し、全ての攻撃を見切っては上手く立ち回っている
「こんのッ…ちょこまかと、ウザってぇんだよォ!!」
ジャドーのイライラは爆発して尚更に募り、真っ向からぶった切ろうとした
「せぇいッ!!」
その一撃を、ホワイトが両腕をクロスし真っ向から受け止める
グローブが特別性なのかこの魔法少女の肉体そのものが強固なものなのか、辺りに金属を強く叩いたかの様な轟音が響き渡った
「良く受け止められたなァ、だが…!!」
だがしかしジャドーの一番厄介なところはその圧倒的にも思えるパワー…その巨体から生み出される力はレッド達三人がかりでも軽く圧倒してしまう程であり、真正面から対峙したら終わりである
「このオレのパワーに勝てるとでも思ってんのかぁ!?」
「ぐっ…!!」
そのパワーは下から抑えているホワイトの足元に亀裂すら入る程に、強烈に重く強く少女の身体にのしかかっていく
「ならお望み通りにこのまま押し潰してやるよォッ!!」
そう言ってジャドーは更に、自身の体重を込め始める
このままではさっきの通りにまたやられてしまうだろう
だが、ホワイトはそれ以上だった
「…ッつぁぁああああ!!」
「何っ…ぐぅおあぁ!?」
斧を退けるどころか寧ろそのまま刃先をがっしりと掴み、ジャドーそのものを宙どころか自身の真上にまで持ち上げる
「いっせぇのぉ…せぇえいやぁあッ!!」
そしてそのまま鎧と巨体の重量をものともせず思い切りブン投げた
ジャドーが握っていた斧は投げられた際に手から離れ、既に明後日の方向にへと別に飛んでいき地面に突き刺さってしまう
「す、凄い…!!」
「もしかしたら…本当に勝つかもしれないッスよ、コレは!!」
砲弾の如き勢いで飛ばされたジャドーは建物に数回衝突した果てにやっと勢いを止め、地面に落下した後にフラフラとダウンする
が、すぐにまた起き上がってホワイトに向き直った
「こんのっ…コレで終わったと思うなよ、クソガキぃ!!」
そしてその巨体を届かせる様に唸らせながら、走り出した
武器を持っていた手は鉄の様に硬く重い拳へと変わり、力任せの格闘スタイルに変えながらも闘牛の如き勢いで向かって行く
「…っ、なんて凄まじい魔力の密度と量…まるであの拳一点のみに集中したみたいな感じッス」
「さ、流石にアレは不味いんじゃないですか…!?」
その圧と凄まじさ、そして執念に周囲が引き始める
ジャドーが走り踏み込む度に地響きの如き轟音が地面から鳴り続ける、それはその化け物自身の力を物語っているかの様に
「もう手加減はしねぇ、この場で今すぐにでも殺してやる!!」
振り上げた拳がホワイトに狙いを定め、宙で孤を描きながらオーバーアクション気味に上から鋭い殴打を振り落とし繰り出す
喰らったら最早この一撃で終わりだ
「かさみ、早く避けて!!」
しかしそれでもホワイトは避けるどころかその場を離れる素振りは全く見せず、それどころか正面を見据えて拳をまた構え始める
「…………ふぅ」
一瞬だけ息を吐いて呼吸を整え、右拳を少し引いた
「死にぃ、さぁらせぇぇえあぁああああッッ!!!!」
拳が、こめかみの直ぐ傍にまで迫る時
「…必殺、『マジカル…っ
ホワイト・バスター』ッッ!!」
ジャドーの攻撃を紙一重で見切ると同時にホワイトの魔力を纏った拳がジャドーの腹を突き抜け、光線の様に襲い掛かる
光線の如きエネルギー波はジャドーの拳の魔力すらも全て掻き消しながら敵を含む全てを飲み込んでいった
その威力たるや、現状魔法少女達の中でも最も威力がある筈であるグリーンの矢ですらも比では無いだろう
「なぁっ!?ぐ、ぐぅうぅぅうううッ…!!まさかこのオレが、こんな完膚なきまでに…圧倒的に…1?
ば、ばぁあかぁあなぁああッッ!!!!」
ジャドーはそのまま天高くへと物凄い勢いで、まるで何処ぞのポケ何とかの悪組織三人組ばりに綺麗に吹っ飛んでいった
「覚えておけよおぉ、お前らぁあああああ……!!」
妙に強敵な雰囲気の敵なわりに小物感溢れる捨て台詞であった
「……た、倒した…の?」
「み…みたい、ね」
魔法少女達は安堵し一気に気を抜いたのか、その場でへたり込んだ
が、終わりでは無い
「ドォ、ロォオオオ…!!」
「ってやっべすっかり忘れてた、そういや私達まだ捕まってるんだったぁ!!」
「…ていうかコレあの強い怪人?の部下なんですよね…て事はですよ?」
グリーンが何かに気づいたのか急に辺りを必死に見回し始める、だが今の時点でもうそれは遅かった
「「「「ドロドロォーーーーン…!!!!」」」」
「ですよねー」
周囲にはジャドーの部下と思わしきドロドローンが所狭しと現れていた
「…ひとり頭、何人倒すの?」
「わぁ頼もしい!!でもゴメン、私達まだ動けないの!!」
妙に魔法少女みたいなのに変身してから本家よりも頼もしくなったホワイトである、が幾ら何でもこの状況は少し不味い
動けない味方二人に戦意喪失した一人…後全く使えない一匹が居るのだ、コレを全部守りながらというのはかなり難しいだろう
「待って今物凄く飛ぼされた気がするんスけど!?」
「そんな事言ってる場合か!!くそっ、せめてコレさえ外れれば…!!」
「ふんぬぅうううっ!!はぁはぁ…駄目です、取れません…」
このままでは勝ったのに結局全滅して終わりになってしまう、では一体どうすれば良いのか?
「折角勝ったのに、結局こんなところで…!!」
ところで、かさみを此処まで連れてきたのは一体誰だろうか
「ふーむ、そういや折角アイツらに超能力と誤魔化し…もとい言ったんだし、超能力っぽい何かを使った方が良いのか…?」
怪人が蔓延ると分かっていて尚安全にど真ん中歩けたのは何故だろうか
「なら超能力っぽいものは…そういやこの前絵本と一緒に買ったあのオカルト本に、パイロキネシスとか載ってたっけなぁ」
この小説の一話で単騎ボロボロになっているところを真っ向から助け、相手の怪人をタイマンで瞬殺したのは一体誰なのだろうか
「よし!!じゃそれに決定、何かテキトーに炎出しとけばそれっぽいだろ」
それに何より、この場で唯一余裕な男は誰だろうか
その答えは
そう、達人 正であった
「て事で死んどけ必殺、パイロ何とかファイヤーッ!!」
「「「「ドロォオオオオオッッ!!!?」」」」
「せめて技名位ちゃんと言ってあげて!?」
正は突如何処からかいつの間に魔法少女達の目の前へと現れると、キメポーズみたく勢いのままに手を上げた
すると魔法少女達の周囲至る所に突如として火花散る極太の火柱が噴出しドロドローンを焼き尽くす、正に火災現場みたいな有様である
俺やったぜみたいな正の顔とは裏腹に容赦無く燃え尽き消えてゆくドロドローンの光景は凄惨そのものだった、因みに周りの家とか建物には一切燃え広がってはいないので一応大丈夫です
「ったた…うんまぁ、やっと外れたから良いんだけどさ」
「やっと解放されまし…って熱っ、めっちゃ熱ッ⁉」
まぁ絵面は兎も角そのお陰でか、ブルーとグリーンの二人の拘束は瞬く間にも解けていきやっとの事で解放された
「よーし大丈夫かお前らー、服が燃えてイヤーンな事になってないかー?」
「あんな大惨事作った直後に女子に言い放つ言葉ッスかソレ」
冷静かつ一周回って傍観しているアイリスのツッコミが冴え渡る
「と言うか瞬く間に終わったわね…」
「私達の存在意義って、一体何なんでしょうか…」
「二人とも気を確かにッス!!大丈夫、本当にちゃんと役に立ってまス!!」
そして鑑賞以前に膝から落ちてネガティブへと変貌してる二人、敵が居なくなっても敗北感が何か雰囲気的にめっちゃ残ってる
「…結果は?」
「止めてあげなさい!!今のアンタの言葉も結構刺さるんだからッス!!」
そこに新たにチートの仲間入り(仮)であるホワイトの追い打ちが突き刺さっていく
「おーいそこ、コントはそこまでにしといて帰んねーのか」
「十中八九アンタのせいだよ」
と、ボケはここまでにしてそろそろ帰らそうと魔法少女達を呼ぶ正
「へいへいすんませんっした…って、あ?」
だがしかし一つおかしな事があった
かないが膝を抱えたまま動かず、呼べども何故か反応すら無いのだ
「…………」
姿も返信したままで、どう見ても様子がおかしい
「どうしたんスかかないさん、早く変身解いて帰らないと…」
それに気づいたアイリスがそっと近づき改めてかないを呼んでみた
が、その時目にしたのは
「…嘘、でしょ……」
いつもの明るい性格とは全くの真逆の、何もかも失った様な姿だった
目は大量の涙を垂れ流し真っ赤に染まり一点の光も無い虚ろな状態で、身体はまるで重病みたく小刻み震えていて最早見てすらもいられない
「かっかない、さん…!?」
その姿に恐怖すら覚えるアイリスにすら気づかず、かないの頭の中は混乱と同様に満ちていた
(…嘘だ、そんな事ある訳が無い
あの怪人の正体が全部、人間だなんて事……ッ!!!!)
《魔法少女マジカラ☆ぐれーと!!》
【第6話「行動開始、悪からの絶望・前編」】
《…第七話に、続く》
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