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第41話 大団円?

第41-5話 DTただ今休暇中

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○海水浴に行こう
 私は唐突に思いました。「ああ、海に行こう」と。
「皆さん。まだまだ忙しいでしょうけど、海水浴に行きませんか?」
「海水浴?なんじゃそれは」
 モーラは私をジッと見る。多分私の頭の中にあるイメージを覗いているのでしょう。
 多分皆さんも共有していますね?
「行きたいです!!」エーネが一番最初に手をあげました。
「私も!!」キャロルが次でした。
「やっぱり~肌がベタベタになりますか~?」エルフィがちょっと嫌そうだ。
「大丈夫よ。こいつが真水のシャワーを用意してくれるから、海で遊んだ後はベタつかないわよ。ね!」
 アンジーが嬉しそうにそう言った。まあ、するつもりでいましたから良いですけど、先にそう言われるちょっとねえ。
「なら行きます~」
「僕も行きます」
「メアさんどうしました?」私はメアが何か言いたげにソワソワしているのを見てしまった。
「水着を購入する必要がありますね」メアが決意を込めて言いました。おおう、そっちか。
「そうですね。それは絶対必要です」ブレンダが妙に気合いが入っている。
「普通にシャツにスパッツじゃあダメですか?」ユーリが言った。
「残念ですが濡れた時に肌が見えてしまいます」メアが特に胸のあたりを触っている。
「別にそれでも・・・やっぱり恥ずかしいですね」ユーリが顔を赤くしている。
「なんじゃ。いつも風呂で見られておるじゃろう?そういえば外で服を脱ぎ捨てて燃やした時も同じ事を言っておったなあ」
「モーラ様には恥じらいがありませんから」メアが断定的に言った。
「中原にあった露天風呂でも大胆でした」エーネがジッとモーラを見ています。
「まあ、本体がこれじゃあないから仕方がないわよ」アンジーが冷たい目でモーラを見ながら言った。
「まあ、水着は仕方なかろう。こやつのイメージでもみんな着ておるなあ」
「でもどうしてぬし様の頭の中のイメージは大きい胸の女性しかでてこないのでしょうか」パムが不思議そうだ。
「元の世界では、大きいことが良い事だとイメージ戦略していましたからねえ」
「そうなのですか?」パムは私ではなくアンジーを見て聞きました。
「まあ、それはねえ、揺れないよりは揺れていた方がいいでしょう?」
「だからアンジー様はいつもエルフィの胸を触るのですね」レイが、おうそうだったのかと頷いて言った。
「ち、違うわよ」アンジーが言い訳を考えていたようだが、うまく浮かばなかったらしい。
「私は大きくても小さくてもどっちもいいんですがねえ」私はそう言った。
「最近うまくなったわねえ」アンジーがジト目です。
「なんですか皆さんその目は。何かお気に障りましたか?」
「いいえ、ですのでこれから水着を買いに行きます」
「メア。目つきが変わっているわよ。どうしたのかしら」アンジーがメアを見て不審げだ。
「私は知っていますよ~服屋さんが水着フェアをやるって言っていました~」
「エルフィさんそれを言ってはいけません。あれは・・・」
「まあよい服屋に行こうか」
「賛成ー」

○服屋inマジシャンズイレブン
「あらーお久しぶりねー。アンジーちゃんとモーラちゃんとキャロルちゃんとエーネちゃんとユーリちゃんとエルフィちゃんとパムちゃんとブレンダちゃんとレイちゃんとメアちゃん・・・それとああDTだったっけ」
 最後だけそっけないダヴィさんです。まあそんなものですよねえ。
「DTさん。お久しぶりです」ナナミさんは普通に挨拶してくれました。ちょっと涙が出るくらい嬉しいですね。
「DT。全員引き連れて良いご身分ね。今日は何を買いに来たのかしら?」ダヴィさん冷たいです。ああ、私がきれいどころを引き連れているのが羨ましいのですね。
「ああ、海水浴に行こうと思いまして、水着を買いに」
「男は別に短パンで良いでしょう?」ダヴィさんが塩対応です。
「いや、皆さんの水着を買いに来ました」
「いやーDTはわかってるわねー。そうよ水着よーこれから流行させるのよー。せっかく海が出来たのよー、遊びに行くしかないじゃないのよー」ダヴィさんが態度を豹変させました。どうも怪しい。
「そうですね」ダヴィさんの態度の豹変に私はドン引きですよ。
「DTさん。皆さんが海に遊びに行くなら、みんな真似すると思いますよ」ナナミさんが嬉しそうに言った。
「そんな事はありませんよ」
「行った後に教えてくださいね」ナナミさんが言った。
「なぜ行った後?」
「そりゃあねーあの10人が海に水着を着て行ったとなればねー、みんな真似するからよー」ダヴィさんが嬉しそうに言い、ナナミさんが頭を抱えている。
「ああ確かにそうですね」
 私は10人と言われて、私は中に入っていないことがちょっと寂しかったですが。それは商売としては仕方が無いことだと自分を納得させました。
「じゃあ試着室へゴーよ!」なぜかダヴィさんは私の腕を引っ張って試着室の方に向かいます。
「どういう事ですか?」
「あんたのご要望通りのモノをー取りそろえているからに決まっているじゃないのよー」
「いや、私のご要望どおりって・・・」
「いいからーこっちにくるのよー」
 私はダヴィさんに引っ張られて、試着室の先の部屋に連れて行かれる。以前メイド服を審査した時に入った事があります。ああ、これは事前にナナミさんとメアさんが段取りしていましたね。
 私はその部屋に入れられて、椅子をひとつ与えられて、手元に札を持たされています。札には棒がついていて、札には、0から10までの数字が書いてあります。えー点数なんかつけられませんよ。
 部屋の外では、「エー」とか「これはまずくないですか?」とか「前の世界ではそれくらいは当たり前よ」とか聞こえてきました。ブレンダが関わった段階で嫌な予感しかしません。
 ようやく静かになってダヴィさんが入ってくる。
「では、くじの順番で決まったエントリーナンバー1番、モーラちゃんどうぞ」
「わしからなのは不本意じゃ・・・」モーラはそう言いながらトボトボと入ってくる。着ている水着はワンピースタイプで子ども向けの定番っぽい。ショルダーストラップはやや幅広で、胸元は横に幅のある生地を使っていて、中央にリボンがついています。腰回りにはスカートの様にフリルがあしらってあって、色はピンクですよ。おいおい可愛いじゃありませんか。
「モーラちゃん後ろも向いてねー」ダヴィの声にモーラは渋々後ろを向く。やや太いショルダーストラップは、背中の中央でリボンになっている。
「おぬし、どうじゃ?」背中越しに私を見るモーラ。私はついつい親指を立ててモーラに頷く。
「似合ってますよモーラ。とても可愛いです」
「でしょう?」ダヴィさんが鼻高々です。
「そ、そうか。それなら良かった」モーラは恥ずかしそうに私の方を見た。
「で、何点をつけるのかしら?」ダヴィさんが私を見る。
「いやあ。10点つけたいのですが、最初から10点ではねえ」
「別に10点でもいいじゃろう」モーラが恨めしげに私を見る。
「わかりました。10点で」
「本当にいいのね?」ダヴィさんが私を見る。
「いいです10点」
「では次に行きましょう。モーラちゃんありがとうねー」
「おう。じゃあな」
「モーラすいませんが笑ってください」私は懇願する。
「こうか?」モーラが笑ったが、口がひきつっている。そしてトボトボと部屋から出て行った。
「笑顔が見たかったー」私はそう叫びながら椅子から崩れ落ちる。

「エントリーナンバー2番、レイちゃん」ダヴィさんの声にレイが飛び込んでくる。
「おや、いつもの戦闘服じゃないですか?」
 レイが着ているのは、いつもの伸縮自在で魔法を吸い込む私の作ったつなぎに見える。
「違いますよー」そう言ってレイが嬉しそうに私の所に駆け寄ってきた。確かに似ているが、生地に触るとつるつるだ。ダヴィさんがレイが嫌がるだろうと、私のつなぎを真似して作ってくれたようだ。私はレイを撫でながら、ダヴィさんに親指を立てる。
「で、点数は?」
「もちろん10点です」
「では次を呼ぶので、レイちゃんは戻ってね」
「はーい」レイは戻って行った。

「エントリーナンバー3番はユーリちゃん」その声に扉が開いて、背中を丸めて入って来ます。
「ユーリちゃん。ちゃんと背筋を伸ばしてね」ダヴィさんから注文がはいる。
「はい」そうしてやっとユーリの水着の全体が見える。色は紺色でシンプルなセパレートです。ああ、神様!そうなのです。こんな感じが良いのです。ボーイッシュな髪型に、ちょっとタイトなセパレートタイプ。肩ひもと水着の縁の白いラインがちょっとだけ可愛さを引き立てています。ん?その水着にパレオは違和感ありまくりです。
「ユーリ。申し訳ありませんが、そのパレオはその水着用ではありませんね」
「ばれましたか。私もフリルが良いと言ったのですが、どうしてもこれを着なさいと言われまして」
「ならば思い切って取りましょう」私は鼻息荒く言った。
「ええ?取るのですか?」ユーリがモジモジしている。
「それはデザインに含まれていないのでしょう?頑張って取ってください」
「はい」耳まで真っ赤にしてユーリがパレオを取った。
「ブラボー」私は立ち上がって拍手をした。ダヴィさんに親指を立てる。
「ユーリ素敵ですよ。大変可愛いです」
「本当ですか?」嬉しそうにユーリが言った。
「はい。でもダヴィさん一言いいですか?」
「言いたいことはわかっているけど、一応聞くわ」ダヴィさんがゲンナリしている。
「ユーリの可愛さが全然伝わってきません」
「絶対言うと思ったわよ」
「ですが、この水着にユーリはベストマッチです」
「はいはい。で何点?」
「ユーリには10点ですが、水着には8点です」

「エントリーナンバー4番キャロルちゃん」
「・・・・はい」返事がかなり遅れました。何かありましたか?
 扉が開いてキャロルが入ってくる。普通のセパレートタイプに見えますが。でも白い色で、胸元から前を隠して入って来ました。本当に恥ずかしそうです。これはもしかして。
「ダヴィさん手を抜きましたね」
「そういう訳じゃなくてね。素材の問題なのよ。着てもらって初めてわかったのよ」
「だったら違うのを着させてください」キャロルが涙目だ。
「でも、確かに白が似合いますね」
「本当ですか?」キャロルは一瞬喜んだ。
「おや、腰にだけではなく、胸元にもフリルがついているじゃないですか?それなら隠す必要はないでしょう?」
「キャロルちゃん。背中を見せてあげなさい」
「・・・はい」キャロルは後ろを向いた。背中はユーリのとは違い背中が大きく出るタイプでそこにひもが組まれていて体のサイズに合わせて着られるようになっている。
「珍しいですねえ。背中のひもで水着を締めるのですか」
「デザインしてみたんだけどねえ。ちょっと問題があるのよー。キャロルちゃん胸は良いからお腹をお願い」
「は・・い」キャロルが恥ずかしそうに隠していたお腹を見せる。
「あ・・・ひもで縛るとお腹を全部引っ張らずに皺が寄るというのですか」
「どうすれば良いと思う?」いやあんたデザイナーでしょ?
「背中の開口部をちょっと上に上げて、ひもを太くして力の掛かる幅を増やして、生地は一体成形でお腹全体の力を面で受ける素材にするしか無いですね」私はより具体的にそう力説した。
「なるほどね。それとね?」ダヴィさんは、キャロルに近づいて胸のフリルを持ち上げる。
「ダヴィさん何を」キャロルは一瞬何をされたのかわからなかった。ダヴィさんはフリルを持ち上げながら、
「白い生地だと下の肌が透けて見えるのよ」ダヴィさんは平然と言う。とうぜん下の肌が見えている。
「だから、そこには薄い生地を重ねて・・・だからデザイナーってやつは」
「そうなのよ。下に生地入れると厚くなるのよ。どうにかならない?」
「色の違うところだけ肌色の生地をいれたらどうですか」
「ええ、それじゃあ人によって違うじゃない。これ量産するのよ」
「じゃあ肌の色の違う皮膚の方に何か貼ったらどうですか」
「それだわねー!ところで点数は?」
「それが改善されたら10点あげます。現状ではキャロル10点水着7点ですね。ちなみに白い水着は水の中でさらに透けますからね。テストしてみてくださいね」
「キャロルありがとうねー」ダヴィさんの言葉にキャロルはダヴィさんさんを睨んでから出て行った。

「エントリーナンバー5番パムちゃん」
「行きます」パムはなにやら出てくる前に深呼吸していますよ。
 パムが出てきました。ああ、ユーリがスク水・・・じゃない学生標準水着の競泳タイプだったのに、今度はガチ競泳タイプですね。着るのが面倒な気がしますが。
 それでも、パムの筋肉が余すところなく強調されていて、すごく格好いいです。体格も体型も良いので、まるで水球の選手のような逆三角形に見えます。ハイレグじゃないところもポイント高いですね。でもね、筋肉の上に豊満な胸は、この場合少しだけ邪魔なのです。
「ぬし様どうですか?」
「最高です。完璧です」
「どう完璧か言ってください」パムは私の言葉の微妙な所に違和感があったようです。まずい。
「なんといっても完璧なバディです。でも惜しむらくは肩幅がある。なのでダボダボのシャツを上に来て、裾をへその上で隠すような感じが完璧かもしれません。なんたって胸が眩しすぎます」
「なるほど。微妙だと言いたいのですね。ダヴィさん良いですか?」
「んー。シャツは海に入る時に邪魔にならない?」
「濡れたシャツがアクセントになります」
「おおーセクシーさがアップするのねー」ダヴィさんが親指を立てる。
「で、何点?」点数要りますか?
「パムさんの鍛え上げられた肉体に10点、水着に9点」
「意外に高得点ねえ」

「次、エントリーナンバー6番メアちゃん」
「はい」そう言ってメアが入ってくる。なるほどセパレートではないのですね。まだこの世界にビキニが流行するのは早いと思うのですが、やはり持って来ますか。ならば他の人もビキニで良かったのではありませんか?
 それにしてもそのビキニ、オーソドックスなフリをして大胆ですね。上は首で吊っていて、首の後ろで縛っているのでいつでも外せるタイプです。ああ、もしかしたらリボンがダミーでちゃんとなっているのか?
 あと、下も同じようにお尻が入るくらいに深めなのに両サイドはひもになっています。これもダミーなのでしょうねえ。
「ご主人様違います。全部ひもを引けば取れますよ」メアは妖艶な目で私に笑いかけ、しかも下の水着のひもに手をかけた。
「メアさん恥ずかしいからと言って補助脳に変わってもらうのはいかがなものかと思いますよ」
「わかりました」そう言ってお辞儀をした。
「ちなみにメアさん後ろを向いてください」
「はい」メアが後ろを向くと胸を押さえる横のひもはとても細くてほとんど背中しか見えない。下の水着も前と横は深めに見えるが、後ろはかなり下がっていてお尻の谷間まで下がっている。ダメでしょうこれは。
「残念ながら、この世界ではまだ早いですね」
「えーそうなのー」メアではなくダヴィさんが文句を言う。
「いきなり刺激的だと最初から受け入れてもらえませんよ。水着を着なくなるかもしれません」
「そうかもねーで何点」
「これは、10点と10点としたいですが、時代背景から水着は9点です」

「エントリーナンバー7番エーネちゃん」
「はい!」元気なお返事と共に部屋に入ってくる。
 水着はワンピースですが、やはり胸のボリュームが厚すぎて、たわわなものがあふれんばかりに詰められて水着のていをなしていません。凶器。これは凶器です。エルフィと違うのは身長が低い割にでかいので、本当にサイズ感が違うのです。そして素材を目一杯引っ張っていて、何というかもう見ている方が恥ずかしいのです。
「ディー様どうですか?」エーネがくるっと回った。
「DTどうなのよ。ちゃんと見なさいよ」
「ダヴィさん。これは凶器なので反則負けです。頼みますから胸の布地を増やしてそれから上にフリルをつけてください」
「そうするともっと大きく見えるわよ」
「だから下にもフリルをお願いします」
「そうなるとフリル人間になるわよ」
「下はトランクスタイプにするとたぶん収まります」
「なるほど参考になるわー」
「これはわざとですね?」
「DT、何点?」ダヴィさんは、私の疑問をスルーしました。
「正直点数なんかどうでもいいのですね。エーネは10点水着は7点です」

「エントリーナンバー8番ブレンダちゃん」
「行きます」そう言って扉が開いて入ってくるブレンダ。それは水着ではありませんよ。バニーガールです。よりにもよって、それを着てきますか。狙ってますねブレンダ。
「そうです。私は水着ではなくあえてこれを」ブレンダはそう言って、バニーガール姿で私の所に近づいてくる。意外にボリューム感のある胸元ですが、素材のせいなのか、胸との隙間が気になってそれどころではありません。
「ブレンダさん。それはだめです。鼻血がでます」
「ブレンダって呼ばないと、もっと近づきます」嬉しそうにブレンダが迫ってくる。胸の谷間を強調して。
「ブレンダ勘弁してください」
「しょうがないですねえ。本当にヘタレなんですから」ブレンダがため息をついた。
「だって、ダヴィさんが私を睨むんですよ」実際にダヴィさんはジト目で私を見ています。まるでそんなんじゃ審査員は務まらないわよ。もっと冷静にやりなさいよ。とでも思っているかのように。
「あら、人がいたんですね。失礼しました」
「で、DT。何点」
「似合いすぎているのでブレンダに10点水着5点です」だって水着じゃないのです。
「そうでしたか。それなら良かったです」ブレンダが嬉しそうにさっさと戻って行く。

「エントリーナンバー9番エルフィちゃん」
「はーい」そう言ってドスドスと入ってくるエルフィ。
 嬉しそうに入って来て、正面に立って胸を揺らすエルフィ。ああ、たわわがこぼれていますねえ。
「エルフィ。それは水着とは言いません。首からひもを提げて、たまたま胸の所を通過しているだけです。ダメそれ絶対。大体動くたびに何かやっかいなものが色々見えたり隠れたりするのは水着とはいえません。却下です。却下。
「えー。これなら旦那様を絶対悩殺できるってー」エルフィは口を尖らせています。
「大丈夫です。あなたの場合どんな服着ても私は悩殺されています。でも、本来水着を着て、海辺で人に出会います。プライベートビーチならまだしも、あなたのその姿を他の人には見られたくありません」
「あーそうか。旦那様だけに見られるんじゃないんだった。これは恥ずかしいですね~」そう言って急に前屈みになるエルフィ。急に恥ずかしくなりましたか。確かに皆さん水着の事をよく知らないだけの事はありますね。
「DT。何点?」
「本人10点水着8点です」
「えーー」エルフィが肩を落として戻って行く。

「そして最後は・・・」
「仕方がないわね」扉が開いて光があふれる。そこにはいつものアンジーではなくて、元のアンジー・・・天使のアンジーが白いワンピースの水着を着て入ってくる。胸元は少し深めに開いていて、谷間がちゃんとできている。腰のフリルはちょっと腰よりお尻から長めにのフリルになっている。くるりと回ると背中は深く開いていて、まるでレオタードのようです。似合いすぎです。似合いすぎますよアンジーさん。いえアンジー様。思わず私はひざまずきそうになりました。神よ。
 そして私は、そばにあったペンを持って札を書き加えた。
「11点です」
「あんたならそう言うと思った」アンジーが嬉しそうに飛び跳ねている。
「ズルいです」ユーリが水着のまま飛び込んでくる
「異議あり」パムも飛び込んでくる。
「これは主催者の陰謀です」ブレンダまでも飛び込んでくる。
「やりすぎ~」
「私もそう思います」メアが入って行くる。
「私と同じ水着のはずなのに」キャロルが涙目です。
「です」エーネも入って来た。
 モーラも入って来て全員でダヴィさんに文句を言いたげだ。さらにナナミさんも入ってくる。
「皆さん申し訳ありません。今回の試着は開催予定のファッションショーの準備とDTさんのコメントが欲しくてこのようなことになりました」ナナミさんが頭を下げる。
「ナナミー。みんな水着が欲しかったけど、DTに負担がかからないように取引したんだからいいのよ」
「あー言っちゃダメじゃない」
「DTそういう事だから、許してね」
「私は確かに今お金がないですからね。ただコメントが欲しかったならそう言ってくれればよかったのに」
「DTさん。それではあなたの本当の意見が聞けないでしょう?」
「本当の意見ですか?」
「ええ、水着への意見ではなくて、水着を着ている彼女たちの感想ですよ」
「それはすいませんでした」
「謝られてもねえ」
 そうして普通の水着を手に入れたのでした。
「私が一番損したような気がします」キャロルが涙目でした。


○いざ海へ
 水着の手配を終えて、水着の到着を待っている間に、私達が海水浴に行くというのを知って、一緒に行きたがる人達がでました。
「どうするのよあんた。こいつら連れて行ったら何が起こるかわからないわよ。イテ」アンジーの頭に何か落ちてきたようです。
「一体誰が教えたのですかねえ」私はモーラを見る。まあ、その辺でしょうねえ。
「実は・・・」そう言ってエーネが手を上げた。
「そうでしたか。モーラ疑ってすいませんでした」私はモーラに謝った。
「それがなあ。わしの方からも漏れたらしいのじゃよ」モーラがすまなさそうに言った。
「さすがにどちらも断るのは後々問題が起きそうですねえ」
「まあ、おぬしがなかなか旅館を作らんじゃろう?それもあってなあ・・・」

 それでは、その時の会話の再現をどうぞ
「あやつはまだ旅館を作らんのか」始祖龍様がモーラに言った。
「じゃから作らせておるらしいぞ。なかなかいい木も見つからんから進まないと言っておったわ」
「海の見える旅館なあ」
「海に行ってくればよかろう」
「そりゃあひとりで行ってもなあ。お付きがうるさいからな」
「そういえば海に入るには水着を着るらしいぞ」
「土よ。おぬしは持っているのか」
「ああ、最近あつらえたわ・・・あ」
「おぬし、いつ海に行くのかな?」
「海に行くのは・・・はい近々です」
「連れて行け」
「はあ?」
「良いじゃろう?おぬしとなら護衛不要じゃ。お付きも連れて行かんですむ」
「わしの家族だけで行くつもりだったのだがなあ」
「あきらめろ。その場にわしも突撃するからな」
「わかりました。日時が決まったら教えます」
 と言うやり取りがあったそうです。
「すまん」
「気にしていませんよ。せっかくですから勇者さん達も呼びますか」
「親方様それは良いです」レイがなぜか嬉しそうだ。
「どうしたんじゃレイ」モーラがレイの発言にビックリしている。
「レイは~レティにメロメロなのですよ~」エルフィが茶化してそう言った。
「そうなの?」アンジーもビックリしている。
「また一緒に踊りたいなと思っていました」レイが踊りに目覚めたようです。

「つまり慰労会という訳ね」エリスがそう言った。
「この惑星を作った時に協力いただいた方々にお越しいただいて、みんなで騒ごうかと」
「声は掛けておくわ。でも、始祖龍様とかガブリエルとか来るんでしょう?」
「そうかもしれませんね。でもその海岸線は誰もいませんからプライベートビーチみたいなものですよ」
「単に遠くて誰も来られないってだけでしょう?」
「そうとも言いますが。離れたところで同時にやってもいいじゃないですか」
「それはそうねえ。魔法使い達はその隣でやることにしようかしら」
「ご検討ください」
 そして、天界、ドラゴン、魔法使いの里、魔族までが参加することになった。
 私は事前の留意事項を関係者に配った。
「料理は素材を持ち込むのと、料理長を決めろと、総指揮はメアが執るのか」
「あとは最終参加人数を決めることくらいですかねえ」
「水着持参ね。なければ服のまま入っても良いと」
「塩水は洗える場所と着替える場所を用意するから問題ないと」
「そんなものですかねえ」

○当日
 私達は前日には海岸に到着して、モーラと共にシャワー室と着替えルームを作った。
「そういえば、アンジーが以前、ユーリに「海にはいつか行けるわよ」って言っていましたが、あの時から予想していたのですか?」
「あれは気休めよ。私だって行ったことがないのだから。あの世界では海なんて言葉でしか出てこなかったわよ。それにしてもないなら知識をつけなくても良かったと思うのだけれどね」
「確かにそうですね。何か意図があったのか。それとも拡張する予定もあったのですかねえ」
「今となってはわからないことだらけだわね」
 そして、ブレンダが、勇者達をまとめて連れてくる。
「お招きいただきありがとうございます。これを」
 イオナの後ろにいたジョアンナが持参した食料をそこに置いた。
 勇者達それぞれが何かを持参している。
「海に慣れていない人もいるでしょうから注意してくださいね。溺れないように」
 皆さん泳いだことがないでしょうからねえ。
 私とアンジー、モーラはビーチパラソルの下で遊んでいる勇者達を見ている。
「ビーチパラソルを立てて海水浴ねえ。いいのかしら」エリスが到着したようだ。
「かまわないでしょ。傘なんだから」
「最近は雨の降るタイミングもわからないから傘も必要だろう?」モーラがなぜか水着にサングラスをしている。
「雨の時期がわからなくなったのは問題だな。それも面白いがなあ」シンカさんが言った。
「あそこは規則正しく時期が決まっていましたからね」
「そういえばこちらの暦と時間はどうなっているのかしら」紫が到着した。
「軌道計算の時にあわせましたけど、31日計算で12か月にしました。 5年位で1日ずれますから、ひと月だけ30日になりますねえ」
「うるう年があるのね」
「そのくらいは勘弁してくださいよ」
「仕方がないか」シンカさんが言った。
「標準時はちゃんと時計にして各種族に置いておきますから」
「色々大変ね」
「おや、あそこで遊んでいるの勇者達じゃない。呼んだのね」
「遠いですけどね」
「関係者は全員来ることになったの?」
「声はかけましたよ。天界、魔族、ドラゴンの里、あとは、私の知り合いにはね」
「すごい数になりそうじゃないの」
「天界は3人ですし、魔族は魔王様夫婦と側近、魔族の5傑のうち戦った3人だけ、ドラゴンの里が9柱全部、魔法使いの里は隣でやるので、入れ替わりで来るのですよね。別枠で勇者パーティーですよ。さすがに天使やドラゴンと一緒にはできないでしょう?」
「ああ、2色はこないわよ」
「おや。エリスさんがそれを言いますか?藍と青は交代したそうじゃないですか」
「おやまあバレていたのねえ」
「それからはまあ若い人たちだけですよ」
「本当に30人規模じゃない」
「そこで土のドラゴンの出番です。夜は温泉です」
「そうじゃな」
 そうして海辺で遊んでいる。
「こんな日がくるとはなあ」
「ええ、私は楽しいですよ。友達が来てくれるのは」
「よう元気かDT」
「あ町長さん。どうしてここがわかりましたか」
「エリスさんに聞いてな。土産を持ってきたよ」
「何を・・・これは・・お米ですか」
「ああ、おぬしが言っていたものを作ってもらったよ」
「一つ聞いてもいいですか?」
「一つか?」町長さんの声が笑っている。
「たくさん聞きたいですけど、とりあえずひとつ。あなたはミカエルさんではないのですか?」
「んーひ・み・つ」口調が急に若々しくなりました。しかも女声です。誰?
「そうですか、秘密ですか」
「世の中知らなくても良い事もあるのでなあ。ではわしはこれで失礼する」
「なんですか?その種みたいな白い粒は」キャロルが不思議そうにその種を見る。町長さん精米までしてくれていますよ。すぐ炊ける状態ですよ。
「これは町長さんが持ってきてくれた・・・ああもういませんね」
「町長さんが来ていたのですか?」
「送ってくれたみたいです。お米と言いまして私の世界の主食です」
 私はお米を見て、少しだけ涙が出ました。ここで食べずに持って帰りたいくらいです。
「メアさん!お米が来ました。焼き肉にはおにぎりですよー」
 私は涙を拭きながらメアさんに手を振っていた。
「あんたねえ。男は簡単に泣くもんじゃないわよ」アンジーがそばで笑っている。

 そうして、モーラが地下倉庫の中に隠していた秘蔵の酒をみんなで飲み干して、露天風呂に入り、最後に夜空に花火を打ち上げて、海水浴は終わりました。


続く


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