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第38話 エクソダス 魔族編

第38-4話 ファーンの移転

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  町ごと運んで旅ですか?
○ファーンを移転させる
 敵に塔のことが知られてしまった以上、その付近の町に迷惑がかかりそうなので、ファーンとベリアルには移転を早めてもらうことにしました。
「大丈夫なのか?」
「だって、惑星に行った方が絶対安全ですよ」
「はたして乗ってくるかしら?」
「話だけはしておきます」

○ビギナギル
 私はまず、貿易の要所であるビギナギルに行った。領主様とお会いして、ファーンの引っ越しについて事前に連絡をする。
「突然で申し訳ありませんが、ファーンとはしばらく物資の流通はできなくなります。ですからビギナギルには、各国への供給物資の最低ラインの量を半年分備蓄してください」
「一体何が起きるのですか」領主様は飛び上がらんばかりに私に言った。
「ファーンとベリアルに引っ越しをしてもらう事になりまして、そちらへの物資供給が滞ります」
「引っ越しですか?」領主様は何を言っているんだこいつという顔をしています。そりゃあそうですねえ。
「はい」
「事情をお聞かせいただきたいのですが」前のめりだった領主様は、私の様子を見て椅子に座り直した。
「各国にはこれから説明に歩きますが~」私は各種族にしてきた説明を話した。
「そんなことをするのですか」領主様は当然半信半疑です。
「簡単に言うとテスト移住ですね。それを実際に皆さんに見てもらって生活できることを示すつもりです」
「私たちは・・・」
「ビギナギルが消えると各国への物流が滞り、理由を探りに来ます。理由を知られると混乱が起きてしまいます」
「むしろ移住を有利に運ぶには、そのほうが効果的なのではありませんか?」
 領主様、ごもっともなご意見です。
「私は国ではなく、ひとりひとりに引っ越しを納得の上で移住して欲しいのです」
「おっしゃっている意味がよくわかりません」そりゃあ首をかしげますよねえ。
「これから各国に話に行きますが、私が住民全員に直接話をします。必ず1回は私から直接話を聞いてもらいます」
「そんな無駄なことをされるのですか」領主様はあきれています。当然の反応で今更です。
「無駄ではありませんよ。それがお願いする側を信頼してもらうために必要だと思っています」
「私の街でも話をしていただけますか?」
「では、まず領主様を含めて主要な方々にお話をさせてもらい、その後地域別にお話をしていきます」
「お願いします」
 もちろん他言無用をお願いして主要な人だけに話をしました。 
「畜産が増えたために牧草の伸びが悪いと思っていたが、そういう事か」
「果実の収穫も数年単位で微妙に落ちてきているかもしれない。作付面積が増えているから気にしていなかったが」
「ここを放棄していく事になるのか?」
「いいえ、牧草地や畑は放棄しないでそのまま持っていきます」
「そんな事ができるのか!」
「実際やっているのですから大丈夫ですよ」
 そして、ビギナギルの主要な人達には説明をしました。あとはキャロルにお願いしようとして、キャロルを連れてきました。
「そんな大役を私に押しつけるのですか?」突然連れてこられたキャロルは、文句を言いたげです。いや文句を言っていました。
「事情が変わりましたので、よろしくお願いしますね」
「私に頼む時は、いつも急ですし、無理難題ばかりだと思います。後で何か要求させていただきます」
 キャロルはそう言って、横を向いた。
「私に出来ることで、家族から文句が出ないことであれば」
「しまった先回りされてしまった」キャロルが珍しく歯がみして私を睨みました。
「内緒にしてくれれば、その約束も叶うかもしれませんけど」
「皆さんに内緒事なんて通じるとは思えません。ですが、交渉はしてみます」
「大人になりましたね」私は、キャロルの頬にキスをしました。
「!!」キャロルは目を見開いて私を見つめました。そして頬に手を当ててから顔を真っ赤にしています。
「これは前払いです。精算はこの騒動が片付いてからでいいですか?」
「ダー様ズルいです。前払いを受け取ったら、仕事を片付けなきゃならないじゃないですか。もう」
 キャロルがプンプン怒っています。そんなキャロルも可愛いですね。
「私はズルい男ですからねえ」
 そうして、キャロルの前から消える。
「本当に・・・ズルいです」キャロルは頬を撫でながらそう呟いた。

○ファーンに移住を依頼
 そして、ファーンに行って、町長に事情を説明する。
「あそこに現れた塔のせいで、急いで移動しないとならないのか」
「確かに、私の浅慮が招いたところではあります」
「そうか」
「かなり前倒しになって申し訳ありません。皆さんを危険にさらすわけにはいきませんので。備蓄は、心もとないとは思いますが、 何かあれば必要な物資は届けます」
「そんなに危険なのか?」
「あの塔を目指して敵が攻めてきます」
「あれは前時代の遺跡。災害の元凶だったはずじゃ」
「ご存じでしたか」
「詳しくは知らぬが、 魔法使い達が災害を起こしたと信じられていてな、おかげで魔法使いが嫌いな者達が逃げてきて、この村は出来た。この村はそういう者達の集まりなのじゃ。今度は何が攻めてくるのじゃ?」
「移住に反対してここで死のうとする者達です。魔族も獣人も人もいます」
「そうか。殺し合いになるのか?」
「いいえ、戦いで死なせはしません」
「どうするつもりなのか」
「攻めてくる人たちが悔しがるくらいの報復をします」
「おぬしは本当に人殺しは嫌いなのじゃな」なぜか町長は嬉しそうに言った。
「恨みは買いたくありませんよ」
「そうじゃな。仲良く暮らしたいよな」
「はい」
「まあ、この町まで襲われてはなあ。以前おぬしが言っていたから、町の者達にはある程度言い含めておるが・・」
「私が直接全員にお話しして、現地も全員に見せます。絶対安心ですから」
「わしらが最初に移動する事になるのか?」その声は私に確かめるようだった。
「人の町では一番最初ですね。ファーンは自給率が一番高いですから」
「おぬしがわしらを送り届けるのか」これも確かめるように私に言った。
「はい。実は、南方の他の種族はすでに送り届けていて、問題なく生活しているのですよ」
「試験は終わっているというのか」
「はい。問題は起きていません。実は大きな建物の移転がまだなので、それが心配なのです」
「わしらが飼っている肉牛や乳牛鶏も一緒に移すのか」
「もちろんです。馬も全部送り込みたいので、まず人を、同時に土地、そして建物と動物を一気に全部送り込みます」
「嫌になったら戻ってこられるのか?」
「それは保証します。戻りたい人には戻っていただきますが、その人の家と土地を元に戻したとしても、残りの人が戻ってこなければ、土地も食べる物もないファーンでは生きていけるとは思えません」
「ベリアルはどうする」
「ファーンが移動した後、1日か2日後には移動してもらいます。そして、ファーンやベリアルの周辺に住むドワーフやエルフ、獣人達、長命人族の集落も日を置かずに移動してもらいます」
「おぬしの家は?」
「家ですか?もちろん送り込みます」
「そうか。それならばお願いがあるのじゃが。 町をもう一回り大きくしたいのじゃが、頼めるか?」
「初回特典としてやってみましょう」
「できるのか?」
「城壁だけ新規に作ればいいだけですから。そもそも魔獣は襲ってこないので、ほとんどいらないのですけどね」
「襲ってこないのか?」
「ええ、近隣の魔族が飼っている魔獣だけになります。魔族領からの侵入は、距離がかなり離れていますので、まずありませんね」
「安全な暮らしになるのか」
「なりますね」
「わかった。住民への説明をよろしくな」
「はい」
 そして、町長以下、事務屋の人、商店会商工会町内会などの人を呼んで一度説明して、それから各街区に説明に行く。私の意見を聞いてくれる人達がほとんどだったが、最近ここに来た人などが不安そうにしている。
「他の町の人に会えなくなりますか?」
「その人が移住先に来てくれると言ってくれれば会えるようになりますよ。その人次第だと思います。残念ですが、私は無理矢理連れてくるつもりはありません。できるだけ説得はしますが」
「わかりました。行きます」
「その人はどこにお住まいですか?」
「引っ越しをしていなければ、ロスティアの都市プリカミノにいると思います」
「お手紙を書いて送っておいてください」
「手紙ですか?お金がかかります・・・」
「では、町長にお願いして、手紙をお預かりして、届けてもらいましょう。もしいなかった諦めてくださいね」
「いいのですか?」
「あなたの手紙で決心するかもしれませんでしょう?」
「はい」
 そうして、全員と話を終えて、全員から了解をもらった。次はベリアルです。

 ベリアルにシンカさんを訪ねて行く。
「こんにちは。シンカさんいますか?」
 私は、いつの間にか大きくなったベリアルの町に驚き、その町の奥の方に薬屋が出来ていて、そこにシンカさんいると聞いてその店に到着する。
 扉を開けてくれたのは別の魔法使いさんでした。中に入ると、奥の方に人影がありました。
「来たか、模倣使い」シンカさん笑いながら私をそう呼んだ。扉を開けてくれた魔法使いさんも笑っている。
「模倣使いですか。まさにその通りなので、嫌がることもできませんね」私は頭をかいた。
「用件はエリスから聞いているよ。昨日会議が行われてね、移転する事に決定しているよ」
「そうでしたか。それでも私は全員に話をしなければなりません」
「それも聞いているよ。あんたが来たら広場に集合する事になっているのさ」
「ありがとうございます」
「私からは一言だけ。裏切るなよ」シンカさんは私を鋭い目で睨んで言った。
「もちろん裏切るつもりはありませんよ」
「まあ、あんたには脅しも効きそうにないがなあ」シンカさんは自嘲気味に言った。
「では失礼します」
「本当に頼んだからね」シンカさんは私の後ろ姿に切なそうな声で言った。
 私は振り向かず、左手を挙げて、右手で扉を閉めた。
 説明は全員が真剣に聞いてくれた。やはり、牧草や蚕の育成が芳しくないのを感じていたようだ。
「隣のファーンは外壁を拡張すると言ってたが、この町のもできるだろうか」
「頑張ります。質問は何かありませんか?」
「シンカさんが全部答えてくれたよ。そして、「心配するな私が一緒にいる」と言ってくれたよ。だから安心してあなたの案に乗ることができる」
「次の場所をお見せします」
「それは見ておきたいな。希望者も選抜している。すぐにでも連れて行ってくれ」
「わかりました」
 どうやら私は、シンカさんの段取りどおりに動くだけでよかったようです。

 周辺に住む各種族については、実はすでに話をしていたのです。
 少し前の話になりますが、私は、各種族に説明に行く前に、エルフィ、パム、レイにお願いしていました。
「一緒に回ってくれるなら、一度練習しておきましょう」
「練習ですか?」
「はい。パムさんは大丈夫だと思いますが、エルフィとレイについては、想定問答をシミュレーションしておいた方がいいと思いますので」
「ああ確かにそうですね」パムがエルフィとレイを見て言いました。その目にエルフィとレイは不服そうです。
「ということで、練習台にうってつけの人達がいます」
「確かにそうですね」
「では、3人一緒に私達の周りにいる各種族の方々に説明して質問してもらいましょう」
 そうして、事前に周囲の各種族の集落には説明が終わっていたのです。

○下準備
 私は、ビギナギルの備蓄のためにファーンとベリアルの量産したものをビギナギルに移す作業をブレンダと共にしばらく続けました。
「DTよ。もうよい。わしらの生活分まで持って行かれたら困るぞ」町長からそう言われてしまいました。
「わかりました。これからビギナギルに最後の物資を送り届けて、これで終了ですと言ってきます」
「しばらく寂しくなるな」
「申し訳ありません。しばらくは我慢してください」
「まあ、おぬしがこの村に来た頃は、他の町との交流もない生活だったから、あの頃に戻ったと思えば、わし的には問題ないがなあ」
「ああ、そういえばそうでしたね」
「じゃがこれからはそうはいかんのだ。わしらは困らないが、他の街が困るのだろうな。ああ、わしらも売り先がなくなったら、それはそれで困るのか」
「ああ、そうなのですよねえ」
 私はそう言ってビギナギルに飛んだ。

○お引っ越し
「準備は整ったのか」モーラが私に尋ねる。
「はい、その間の周辺の監視ありがとうございました」
「怪物騒動から動きはないみたいだぞ。パムからもそう聞いておる」
「ファーンとベリアルの引っ越しはいつなのかしら?」アンジーが聞いてきた。
「明日から一週間です」
「手伝える事はなにかあるのかしら?」
「ファーンとベリアルが移転した後の移転先での心のケアをお願いしますね」
「そこまでするのね」
「私達の暮らす町ですから」
「わかったわ」
「モーラには、里には内緒で、惑星に着いたらファーンとベリアルに城壁を作ってください」
「ああわかった。自分の体内の魔力の範囲で何とかしよう」
「よろしくお願いします」

 そうして、ファーンの全てを惑星に転移する。
「では手順を再確認します。まず人をまとめて惑星に送ります。その後、城壁を除いて土地と建物を、その後に牧柵と家畜を一斉に移転します。その後はモーラよろしくお願いしますね」
 そして、町長と各街区の責任者が誘導して町から離れて行く。アンジーも孤児院の子ども達と一緒にその中にいて、不安そうな子ども達を元気づけている。その周囲をアンジー教の人達が囲んでいる。その様子にアンジーがゲンナリしている。私の家族も町の人の周りに立って、動かないように見ていてくれている。
 町長が私に全員いると報告してくれたので、私は左手をあげて、カウントダウンを開始した。同時に町民の周囲に立っていた家族も手を上げてカウントダウンを行っている。
「『さん、にー、いち、ゼロ』」最後は手を広げ、立っている人の真下に黒い影が出来て、一瞬でその場から全員が消える。
 私の足元に置いていた箱に向かって声をかける。
「ブレンダ、メアさんどうですか」
「大丈夫です。成功です」
「わかりました。それではすぐに土地と建物を送り込みます」
 私は町の中に移動して、城壁の上に立った。
 まず土地と建物のうち、家畜を囲っている牧柵や厩舎、養鶏場を除いた家と土地を送り込む。
 家は基礎がほとんどなく、土もほとんど持ち上げる必要がないため、ほんの少しの薄い土と一緒に建物を持ち上げる。
「送りますよ」
 先程は足元にあった箱は、左足の上に乗っていて、それに向かって私は言った。
 持ち上げた土地と建物の下に黒い影が発生して、そこにゆっくりと沈むように移動して、土地と建物は吸い込まれて、そこから消えた。
「成功です。問題ありません」メアの声がした。
「じゃあ最後は、家畜と馬です」
 私はさらに移動して大規模な畜舎、養鶏場、厩舎を一気に持ち上げる。牧柵は深く刺さっているので、かなりの土量を持ち上げた。
「行きますよ」
 私は、持ち上げた土の下に黒い影を発生させて、その中にゆっくりと降ろして行く。影の中に建物から全て飲み込まれて、やがて消えた。
「無事届きました」
「漏れがないかどうか、家に入ってもらって、確認するよう話してください」
 私は城壁の上に座り込んで回答を待った。
「大丈夫です。完璧な成功です」ブレンダのおかしい表現に少し笑ってしまいました。いつもなら言葉の乱れは心の乱れですよと言うべき所ですが。
 そして、無事にファーンを移転させたので、翌日はベリアルを転移し、その翌日には周辺に住む各種族も転移させ、私はまた倒れかけました。
「ハズ様、もうお休みください。休息が必要です。魔力切れではなく体力切れです」
 ブレンダが倒れかけた私の体を抱きとめてそう言いました。
「どうやらそのようですね。あとはよろしくお願いします」
 私は、ブレンダに抱きしめられながら、意識を失います。ブレンダがよろけたので、パムが代わりに私を背負ったようです。
「いつもより慎重にしかも繊細に作業を組んでいました。本当に町を大切にされているのですね。まるで家族のように思っていらっしゃるのがわかります」
 ブレンダが悲しそうにパムに背負われた私を見て言った。
「はい、ご主人様の家族の範囲は広いですから」メアがそう言った。
 そして無事にファーンとベリアルは事前に惑星に送られました。

Appendix
 動植物を転移した後、ゴブリンやオークを転送していました。
 まあ、練習がてらというと不謹慎ですが、重量物を範囲ごとに転送となると、ちょっと土の厚さとか色々調整が面倒そうだったので、練習が必要だったのです。彼らが岩山で寝ている場所ごととか、洞窟内に寝ている間にその住処ごと転送していて、彼らが世界が変わった事に気づかないように送り込んでいました。
 転送をルーチン化して、慣れたところで、ワームを送り込む事にした私は、砂漠に飛びました。
「どうも、お久しぶりです」
 私は、砂漠のそばの森の所に建っている小屋に行って、扉を叩いた。
「そろそろですか?」中からは、ワームの育ての親であるアーカーソンが出てくる。
「準備はできていますか?」
「はい」アーカーソンは、楽しそうに答えました。
「気候条件ですが、砂漠はかなり暑いところになると思いますが、生存可能でしょうか」
「砂が深ければ逃げ込みますし、大丈夫ですよ」
「では、位置を再確認しに一度行きますね」
 私は、彼を連れて一度惑星に飛んだ。そこにはメアとブレンダが待機している。
「ここでよろしいのでしょうか」
「はい。かまいません」
「では戻りましょう」私と彼は、元の砂漠に戻ってきた。
「よいしょ!!」
 私はワームを砂ごと一気に持ち上げて、砂をふるい落とした。
「なぜ持ち上げたのですか?小さくできるのに」アーカーソンが笑っている。
「ああそうでした。眠らせればいいのでしたね」
「少しだけ待ってくださいね」
 アーカーソンは、木の棒をこすり合わせて不協和音を鳴らしている。するとアーカーソンの近くにワームが寄ってきたので、彼はワームに魔法をかけ、ワームは砂の上に昇ってきて小さくなっていく。一匹を取り出すと同じように木をこすり合わせては、おびき寄せて眠らせている。彼はそれを数回繰り返した。
「あなたはワーム使いですか」私は思わず笑ってしまった。
「前回のように地下深く逃げ込まれた時のために少しだけ調整しました。家畜として養殖するには必要な事だったのです」
「世界中が飢餓に至ったら、その時はよろしくお願いします」
「次の惑星では、各都市からかなり遠くに砂漠があるのでしょう?ワームを解体して、各地に輸送するのが難しくなるかもしれませんね。その辺は大丈夫ですか?」
 アーカーソンは、そう言いながら持ってきた虫かごに5体ほどを入れる。
「そうはならないようにします」
 私は、彼と共に転移して、その広大な砂漠に到着した。彼は虫かごからワームたちを砂に埋めて、手を鳴らした。ワームは目覚めて、体が大きくなり始めたが、先に砂に潜っていき、最後には砂の模様ができて、静かになった。
 アーカーソンは周囲を見て、私に言った。
「一度戻って荷物を持って、ここで暮らしたいのですが」
「ここではまだ生活できませんよ。食料がありませんから。せっかく砂漠に連れて来たワームを食べることになりますよ?」
「そうでしたか。ここで生活するつもりでした。あちらに戻ったらどこにいればいいですか?」
「あの砂漠の小屋でもセリカリナでもどちらでもいいですよ。セリカリナに行かれるのでしたら、小屋はここに送っておきますが」
「ではセリカリナに行きますね。小屋はこのままでかまいません。中の物は背負って持っていけるものしかありませんので、すぐセリカリナに向かいます。あの小屋に着いたら少しだけ時間をください」
「では、またこの地で会えますように」
「はい、ここで暮らしていると思いますので、お待ちしています」
 メアとブレンダと彼を連れて、元のところに戻り、彼が荷物を取りに行く間に、メアとブレンダに彼とセリカリナに行くようお願いして、私は別の場所に消えた。


続く


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