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第37話 エクソダス 各種族編
第37-1話 DT説得行脚に励む
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宣言どおりに各種族を回ることにした私は、事前に手伝ってもらった所には、改めて説明に行った。
○魔法使いの里
最初は魔法使いの里です。
さすがに魔法使いの里に行きたくなかったので、紫とセリカリナで会って話をしました。
「一応全員に話したいのですが、どうですか?」
「町の魔法使いは、3回くらいに分けて話をして欲しいのよ。もっともここから離れる事は、全員が了承したみたいなのだけれどね」
「そうでしたか」
「もちろん自分の住む町が移転されるという前提でね」
「町に住んでいる魔法使いの皆さんは、やっぱり町の魔法使いですからねえ」
「会わなくても良いなら、説明だけを町の薬屋の無線で行ってもいいのだけれど、みんなあなたに会いたいらしいわよ」紫はあまりいい顔はしていない。
「それが目的というのも嫌ですけど、仕方がありませんね」
「じゃあ日程についてはまた調整するわね」
「よろしくお願いします」
それでも、7色には会わざるを得ないため、2度目の魔法使いの里入りをして、7色全員と面会して、改めて説明をした。
「下準備をお手伝いいただきありがとうございました。ついては、改めて説明させていただこうと思いまして、こうして伺った次第です」
私は、最初にそう言って頭を下げた。
「何も話す事はないよ。わしは隠居の身だからな。連れて行ってくれるのならそれでよい」とは青の魔女さんです。健康そうな顔立ちなのに、話し方はちょっと疲れている。
「私もそうよ。私自身、藍の魔女から降りようと思っているのだけど、後継者が渋っているだけなのよ。魔法使いでいられなくてもいいから次の世界には行きたいわね」
藍の魔女も同じような事を言っている。肌の張りは若いのに老成された話し方だ。
「説明は了解したわ。移転するのも問題ない。それより今後の作業を改めて確認したいのだけれど良いかしら」
赤がそう言った。後ろでオレンジ、黄、緑の魔女が頷いている。
「かまいませんよ。順番は、まず魔族と人族を除いた他種族を転送して、人族を国別に土地とセットで送ります。それから順に、天使、ドラゴン、そして魔族の土地と魔族をセットで送ります。そして、最後に関係者全員という順番です。関係者は、上級魔族、ドラゴンの9柱、天使の上位15柱、魔法使いの7色含む15人程度ですね。人族の移転については、各国の都市群を魔力を使って地域ごとまとめて根こそぎ転移するのを手伝ってもらいます」
「土地ごとなのね」
「城ごとなのでかなりの土量を転移する事になります」
「天界はどうするの」
「天界と魔法使いの里は、引っ越し先の惑星で製作します。それから里を土ごと引き剥がして、その浮いている岩に乗せます」
「大胆ねえ。ドラゴンは?」
「洞窟は移転しないと思いますし、里も新しく作るとは言っていますが、スケジュールには念のため入れています」
「魔族はどうするの」
「これが一番やっかいなのですよ。見た事がないのですが、土地は種族ごとの集落に分けて、そこの種族と集落をセットで送り込みます。人数と重量がありそうなので期間がどの位かかるのかはなんとも・・」
「わかったわ」
「全員移転できたら、この世界の魔鉱石はできるだけ引っ剥がして持っていきますね」
「そうして欲しいわ」
魔法使いの里への説明はそれで終了した。
○天界
次は、ガブリエルと連絡を取りました。
「下準備の時には色々とご協力ありがとうございました」鏡を通じて私は頭を下げた。
「今更だねえ。私達も聞かされて、考えさせられる事もあったからねえ。構わないよ」
「天使の皆さんに説明がしたいので、その事で連絡をしました」
「ああ、それかい。君が天界に来る必要は無いし、説明も必要ないよ。族長会議の話は天使達には聞かせていたのさ。君の気持ちはよくわかるよ。何なら、全員と鏡越しに話してもいい。残りたい者がでるんじゃないかって?人族あっての私達天使だよ。人が全員新しい世界に行くなら当然私達も行きます。と言っているからねえ」とガブリエルが言った。
なので、何回か鏡越しに天使達に説明をした。説明の際に強制されていないかと確認しましたが、いずれも新しい世界に人と共に移住すると答えるのです。こちらとしては納得できませんでしたが、諦めました。
○ドラゴンの里
「モーラ。始祖龍さんと話しをしたいので、連絡を入れてください。先日の約束もあるので、会う事はできると思いますが、できれば里に行って他のドラゴンさんにも話したいのですよ」
「ふむ、招待して欲しいと言うことじゃな。聞いてみるわ」
「ダメならモーラに迷惑をかけないように自力でドラゴンの里に向かいますけどね」
「場所も知らないのにどうやって行くのじゃ」
「それはまあ、色々と」
「いろいろ歩き回った時に調べたのか?」モーラが探るように聞いてきた。
「その辺は、この件が終わったら話しましょう」
「わかった。連絡を取りに行ってくるわ」
「お願いしますね」
そう言ってモーラは飛んでいって、少しして戻ってきた。
「突然来られたら里が困るから、明後日連れてこいと言われたわ」
「そうですか。良かったです」
そしてその日になり、早朝に私は、モーラの手に乗ってドラゴンの里に到着した。
そこには、見知ったドラゴンさん達が待ち構えていました。
「久しぶりですね光のドラゴンさん。そして、ヒメツキ様、風のドラゴンさん。お知り合いがいらっしゃるのは心強いです」私は丁寧にお辞儀をした。
「でもね、話によっては帰られなくなるわよ」ヒメツキさんの表情が硬い。
「水の、いやヒメツキよ、お互い体面を繕うのはやめんか。こやつは、他のドラゴンに聞かせるために改めて話をしに来ただけなんじゃから」
「そうだけど、だからこそよ」
「まあまあ。とりあえず長老のところに行こうじゃないか」
そうして、始祖龍様の家に入り、大広間に通されて始祖龍様と対面する。両脇には、人の姿をした長老達が左右に分かれて座っている。モーラは私の隣にいる。おおう畳だ。久しぶりに嗅ぐ良い匂いだ。
「お招きいただきありがとうございます」私は正座をして手をついて頭を下げる。
「うむ。膝を崩すがいい」
「ありがとうございます」
「さて、色々な所に話をして回っているらしいな」始祖龍様が肘掛けに肘をついてそう尋ねた。
「まだ魔法使いの里と天界だけです」
「そうか?おぬしが中原で殺されたふりをしてから、おぬしが小さな種族を回っているのをよく見かけていたと、風が言っていたが、あれは人違いか?」始祖龍様が笑いながら私に尋ねる。目は笑っていないようですが。
「あの時はまだ調査段階でした。この世界にはどのくらいの種族がいるのかそれを調べる旅でした」
私は、始祖龍様の視線にちょっとだけ背中に冷や汗が流れていました。
「なるほどなあ。勉強熱心だとは聞いていたが、それほどとはな。さて、わざわざここに来たという事は何か聞きたいことでもあるのであろう?説明に来るだけなら別の場所でもよかっただろうが」
始祖龍様は、私を見てちょっとだけ真面目な顔になる。
「確かにお聞きしたい事もあってこちらに伺いました。ですが、このような公の場でできる質問ではありません」
私は正直にそう答える。
「かまわぬ。その質問が無礼であろうと、この者達に聞かせられない話であろうと、わしが認める」
周囲の他のドラゴン達がざわめく。
「ありがとうございます。私からの質問は、この世界の危うさをあなたは一番良くお知りになられていたのではないかと、お聞きしたかったのです」
「そこか。確かに危機感はあったが知らなかったぞ。ただ、くだんの一族がいなくなれば大丈夫と聞かされていたのは間違いないな」始祖龍様は、そんな事かと笑っている。
「本当にその一族がいなくなればと直接言われていましたか?」
「匂わす言い方ではあったが、そういう意図だろうと思っていたがなあ」
「そんなところでしょうねえ。それを始祖龍様に話をしたのは、天界ですね」
私が聞きたかったのはそこなんですよ。
「そうじゃ」始祖龍様は、さらりと答えた。
「私は何のために送り込まれたのでしょうか。ご存じですか?」
「確かにな。一体おぬしを送り込んだやつの意図は何じゃ?救世主としてか?」
始祖龍様は笑いながら言った。
「そんな大それたものでは無いでしょう。本当に一時しのぎで魔族を滅ぼさせるつもりだったのでは無いでしょうか」
私はそう正直に答えた。
「質問はそれだけか?」
「はい。それと改めて協力を依頼させていただこうと思いまして」
私はそこであぐらをかいていた足を正座に戻した。
「改めて協力じゃと?」
「これから、各種族を惑星に引っ越しさせるためには、ドラゴン様方のご協力が必要ですので」
「それこそ今更じゃなあ。これまで散々わしらを使い倒したくせに」
そう言ったあと、始祖龍様は背筋を伸ばしてこう言った。
「それについては構わぬ。しかし本当に実現可能なのか?」
「それは皆さんの協力いかんによります。たぶん膨大な魔力が必要になります」
「そうか。それに種族全てと言っていたな。それも本当か」
「ええ、本当です」
「善き者も悪しき者も全てと」
「はい。選別したりしません。全員です」
「おぬしは神にでもなったつもりか?」
「いいえ、選別しても無意味だからですよ」
「どういうことだ?」
「知識を持つ者は、その全員が善にも悪にもどちらにも転ぶ可能性があります。善き者だけを連れていったところで、いずれ一部は、悪しき者に変わるのです。これはどこまでいっても変わりません」
「切り捨てないのか」
「私にはその判断がつけられません。それに面倒くさいし煩わしいのです。時間もありませんし」
「そうか。そういう言い方でごまかすか」
「そう思っていただいてかまいません。あと、勝手に選別して無理に殺したりしないで欲しいのです」
「行きたくない者はどうする」
「説得して連れて行きます」
「強情じゃのう。死ぬことも許さんのか」
「野垂れ死にをしたい人などいないのですよ。ひとりで死ぬのは寂しいのです。私は砂漠でそれを体験しました」
「死にかけたのか」
「いえ、死にました」
「死んだのか?」
「ええ、この世の真実を叫んだら、かけられた魔法に爆殺されました。おかげで魔法は解除されましたけどね。その時に「ああ私はここで、たったひとりで死んでいくんだ。寂しいなあ」と思いました」
「ならばどうして生きている」
「この世界に転生してきた時にある事に気づきまして、その時に不本意に死ぬ目に合ったら復活するように自分に魔法をかけていました。私自身、その時まで忘れていたのですけどね」
「はは、すごいなそれは、不死身か」
「不死身ではありませんよ。分子レベルまで粉砕されれば修復は不可能です」
「分子レベルとは?ああ異世界の言葉か」
「ああ、粉々のさらに粉々ですね」
「さて聞かせてくれ、その案では、千年以上生きていられるのだな」
「何も無ければ十億年単位で」
「億とは?」
「千年の次の桁が億ですので、千年の10倍から100倍ですね」
「それなら安心じゃな」
「全員で移住しても、皆さんが力を使わずに争わず、約束を守って暮らしてくれれば、もっと大丈夫ですよ」
「そうなればよいな。わかった。この事は各地のドラゴンすべてに話そう」
「ありがとうございます。私としては、各地のドラゴンさん達にひとりずつ説明をしたいのですが、集めることはできますか?」
「うむ、全員を集めることはできないが、何回かに分けて集めることは可能だ」
「その時には内覧会で見られなかったドラゴンさん達にもお見せしますよ」
「あれはすごかったなあ。おぬしら長老達も見てみるが良い、世界を見る目が変わるぞ」
そして、私はドラゴンの里を辞した。
意外に簡単に説明は終わり、人数の多い他種族への説明に行くことになった。
○ 家族にこれから各種族を回ると言って家を出ようとする
「さてそれでは各種族を回ってきますね」
私はフードのついたローブを着て、居間にいる皆さんにお辞儀をする。
「ぬし様、お待ちください」パムが椅子から立ち上がり、それに合わせてレイとエルフィも立ち上がった。
「パムさんどうしましたか」
「私、いいえ私達に同行させてください」
「いや、私はあなた達が行きたくないところに行こうとしていますよ?皆さんも行きたくないでしょう?」
私はパムとエルフィとレイに声をかける。
「行きたくないのと、行かなければならないのとを比べた時に、行かないという選択肢は、私達にはありません」
パムがそう言うと、エルフィとレイも頷いている。
「やりたくない事はしなくていいのですよ」
私はパムを見て言いました。
「ぬし様が私と1対1で話をしてくれた時に、ぬし様は言いました。どんな種族もどんな人も連れて行くと。残りたい人もできるだけ説得して連れて行くと」
「確かに言いましたよ」
「私はぬし様のお手伝いをしたいのです。決して一族のためにではありません。一族の一部の嫌いな人のためにぬし様の手伝いをしないのは、すでに私ではありません」
「嫌な思いをする事になるかもしれませんよ?」
「かまいません。これは私だけでなく」パムはそう言って、エルフィを見た。
「旦那様。エルフ族の時には私が一緒に行きます。そして2回目からは、私が一人で説明してきます」
「僕も同じです。孤狼族に連なる獣人族全種族を一緒に回った後は僕が頑張ります」
「お二人の決意はわかりました。パムさんにも言いましたが、つらいと思いますよ」
「でも、こればかりは逃げたくないんです」
エルフィがいつもより真剣な目をしています。
「僕の所は孤狼族だけではありません。他の獣人族のところには僕が案内します」
レイも自分なりに爺分の行動を決めているようです。
「確かに他の獣人の所は私では探索できませんでしたから、それは助かりますが」
「ファーンのところの獣人に色々聞きました。彼らのつてをたどれば大丈夫です」
レイが胸を張ってそう言いました。
「わかりました。皆さん一緒に行ってくれますか?」
「「「はい」」」ああ、声が揃っていますねえ。これは良い事です。
そこで一度、椅子に座り直して、周り方、説明の仕方などを話し合いました。3人の準備もあるので、明日からそれぞれの種族を回る事にしました。私の気力はちょっとそがれましたけど、懸念していた事はあっさりと解消されましたから、少しだけ嬉しかったりします。
○ブレンダの決意
「パムさんは、ハズ様と一緒にドワーフの里に行かれるのですね」
全員が部屋に戻った時にブレンダがパムを呼び止めて、居間のテーブルの端に座って話し始めた。
「はい。それがどうかしましたか?」
「私もしばらく家を離れようと思います」
「何をする気ですか?」パムが意外そうにブレンダを見て言いました。
「移住先に害をなす可能性のある者達は、不要だとは思いませんか?」
ブレンダはちょっとだけ恐い目でパムを見つめます。
「ブレンダさん。お気持ちはわかりますがそれはお控えください。あなたが手を汚す必要はありません」
パムはブレンダのやろうとしている事を察したようです。
「私は隷属して、この家族の中での自分の役割に気付いてしまいました」
ブレンダは、そこでまるで空の上を見るように遠い目をしています。
「どんな役割ですか?」
パムは、ブレンダの様子に眉をひそめています。
「不殺ではない道を生きる者であるという事です。すでに私の手は汚れています。この先この手が汚れようとも構わないとも思っています」ブレンダは、そう言って今度は自分の手を見ている。
「ブレンダさん。あなたが見つめている手が震えているのはなぜですか?」
パムはブレンダの手が少しだけ震えているのに気づいてしまった。
「それは・・・」
「ブレンダさん。不殺について、どのようなイメージをお持ちですか?」
パムはゆっくりとブレンダに聞いた。
「自分の身を守り切れなくなるまでは、不殺で戦うものだと聞いていますが」
ブレンダは震えていた手を握って言った。
「それは正しくて、正しくないのです」パムは少しだけ微笑んで答える。
「正しくて、正しくない?」そこでブレンダは顔を上げてパムを見た。
「不殺は、ぬし様の心のありようではありますが、私たちの行っている不殺は、それを体現するための試行錯誤でしかありません。ぬし様からは、不殺を気にするくらいなら、その考えを捨てなさいと言われています」
ブレンダは、パムの話をただ聞いている。
「私たちは、不殺にこだわっているわけではなくて、不殺で事を納めるための努力をいかにするかを考えています。ぬし様は、誰をも憎んでいて、それでいて誰をも殺したくないのです」
パムはそう言った。
「誰をも憎んで、殺さない?」ブレンダはそこでも首をかしげる。
「実際にあなたも、今では殺すことに不安や動揺をお持ちでしょう?それが普通の人の心です。ですが、いつか人を殺さなければならない状況になるだろうと思っていますよね。そして、その時には家族に代わって自分がやらなければならない。そう考えているのですよね」
パムは確認するようにブレンダに語りかける。
「は・・・い」ブレンダはパムのちょっとだけ迫力がある言葉に少しだけ怯えながら頷いた。
「その状況をどう切り抜けるか。それがぬし様の考えている不殺なのです。ぬし様は、そのために何万回もの脳内シミュレーションを行っているのだそうです。それに裏付けられているから不殺でいられるのだと私は思っています。ただ、ユーリもエルフィもレイも、皆さんそれぞれが自分の考える不殺を求めています」
「それぞれの不殺ですか?」その言葉にもブレンダは首をかしげる。
「はい。私の場合は、私たちが置かれた特殊な状況を事前に察知して、調査をして、それを報告して、検討してもらい、事前にそれを回避する事で、不殺への道を探っています。
ユーリは、戦いの場で相手とのコミュニケーションを通して、ユーリの絶対的な力を見せる事で、相手の戦う心を萎えさせ、不殺を成そうとしています。レイも似たような考えですね。
エルフィは、相手に弓で攻撃していますが、回復魔法の矢を使っているので、相手に当たって傷つけても、結果傷が残らない事で不殺としています。
そうやって自分なりのやり方で「不殺」というものを考えているだけなのです。あくまでぬし様の気持ちを察しているだけで、ぬし様からは、そんなものには縛られるなと、仮に殺してしまったとしても、ぬし様がその状況を作ってしまったからで、ぬし様が至らなかったせいなのだから、その時は悔やむなと思われています」
「そうなのですね」
「もしあなたが、ぬし様の気持ちを汲んでくれるのなら、そのような役割を考えずに、殺さずにその者達を更生させる方に考え方を変えてもよいのではありませんか?」
「相手を・・・更生ですか?」ブレンダはそう言われても理解が追い付いていない。
「はい。アンジー様は、最初の旅の時、偶然とはいえ、旅の途中で襲ってきた盗賊が傭兵団に捕らえられた時に、その者達が殺されるところを助け、アンジー教ができたのです。本人は孤児院を作らせたかっただけらしいのですが、彼らは自発的に更生しました」
「そう・・なのですね」そこでブレンダは考え始めた。
「だ・か・ら、それは誤解だって言ったでしょう?モーラにそそのかされてそうなっただけでねえ・・・」
アンジーが突然後ろから現れてそう言った。二人はビックリしてアンジーを見ている。
「ああ、あれはわしが悪かった。今では大規模な孤児院運営組織になってしまったからな」
そう言いながらモーラも出てくる。
「私としては、アンジー教と名乗るのはやめて欲しいのよ。さてブレンダ。あなたの気持ちもわかるし、私もその考えには賛成だわ。でも考えて欲しいのよ。あいつが、あなたが人を殺した事を知った時にどうするのかを。あいつは、その事を知っても多分何も言わないでしょう。けど、きっと悲しそうな目であなたを見るようになるでしょう。あなたはそれに耐えられるのかしら?」
アンジーはいつもとは違う優しい顔でブレンダを見て言った。
「たった今、その事を考えただけで悲しくなりました」ブレンダは下を向いたまま、悲しそうな表情で小声でそう呟いた。
「でしょう?でもね、ブレンダがあいつのために何かしたいなら、私からお願いをしたい事があるのよ」
「なんでしょうか」ブレンダが顔を上げてアンジーを見た。アンジーは厳しい目をしている。
「あなたのやろうとしている事に近い事よ。各国のスラム街に潜入して、内情を探って欲しいの。 誰と交渉すれば、もっとも上手く人を動かすことができるのか、調べて欲しいのよ」
アンジーのその目は、ブレンダにとって非常に危険な事だと訴えている。
「それは・・・」パムの仕事を奪うのではないかと考えてパムを見た。
「残念ながら私はドワーフです。人族からは一線を引かれてしまい、裏の中心にいる者達まで、接触できた事はありません」
多分ブレンダの感情が伝わったのだろう。パムは残念そうに言った。
「ユーリは名が売れてしまっていて潜入には向かないし、キャロルはまだ経験も浅く子どもだから説得力がないし、近づけば怪しまれるのよ」
アンジーは、少しだけ悲しそうな表情になった。ブレンダしかいないと言っているようなものだ。
「わかりました」ブレンダは決意と共に嬉しそうにそう言った。
「やばいと感じたらすぐに離脱するのよ」アンジーは自分の首にかかったネックレスに触った。
「はい」ブレンダも同じようにネックレスに触る。
「あなたなら転移できるから、もしもの時も大丈夫そうだし、旅をしなくても夜だけでも動けそうだしね」
アンジーが少しだけシニカルに笑いながら言った。
「それに時間がありませんので、主要3国の各都市だけでよろしいかと思います」パムがそう付け加えた。
「では、セリカリナに一度里帰りをするという話にします」
「どうせ、あいつは勘づくとは思うけどねえ」アンジーが地下室の方を見ながら言った。
「確かになあ。そんな事だけには、あやつはアンテナが働くからな」モーラも同じ方を見ながら言った。
「しかも、出発する時に心配するのが目に浮かぶわ」
「ぬし様は、本当に家族に対しては、心配性を発動しますからね」パムが笑っている。
「うかうか遊びにも行けやしないのよ」
「アンジーおぬしも結構あやつから離れたがらないではないか」モーラがアンジー見て笑いながら言った。
「ばっ・・・そうよ。何をやりだすかわからないし、帰ってくるとボロボロだったり、魔力切れ起こして倒れたりするからね。あいつは家にいてもらった方が安心だわ」アンジーの顔が少しだけ赤くなっている。
「アンジー様。最初の印象と違いすぎます」ブレンダがちょっと微笑んでいる。
「はあ?私は一貫しているわよ」何を言い出すのよという感じでアンジーが言った。
「ああ、ツンデレじゃな」
「そうですね。ツンデレです」パムがそう繰り返す。
「そうだったのですね。納得しました」ブレンダが笑いをこらえきれずにいる。
「本当にあんた達は!まあいいわ。ブレンダ。お願いね」
「はい」
「あと色仕掛けはやめておきなさい。色恋が絡むと、男は理性を失って何するかわからないからね」
「はいわかりました」
「本当にツンデレじゃな」
「まったくです」
みんなが笑い出したところで、メアがお茶を持って居間に入って来た。
「メアさんせっかくですから、セリカリナまでは一緒に行きませんか」
「そうですね。今回は、家も大丈夫でしょうから」
「今回は?」
「前回の白き閃光の事件の時にブレンダさんもわかったかと思いますが?」
「そうですね。作れない側の私にとっては、前回はなかなか刺激のない食事になりましたから」
誰かの事をディスっていませんか?
「今回はキャロルがいてくれるので、 大丈夫かと思います」
「それ以外は欠食児童なのですか?」
「前回旅でいなかったパムとユーリでは野営と同じ料理になりますし、エルフィは、お酒しか飲みませんので」
「そうでしたか・・・・」ブレンダはしばらく考え込んでいたが、メアがこう言った。
「やっぱり一緒に行くのはやめておきます。台所が気になってすぐ帰りたくなりそうですから」
「まあなあ」
「そうなのよねえ」アンジーが言ったが、アンジーあなたも台所を手伝いましょうね。
ブレンダの話はそこで終わった。
翌日の朝食の後、私がレイと出掛ける準備をしていると、ブレンダが階段を降りてくる。
ブレンダは、鞄を持ち、ローブを着て、フードを被って降りてくる。
「ブレンダさ・・おっと。ブレンダ。どうしましたか。どこかに行きますか?」
私は、旅装のブレンダを見てそう言いました。
「はい、各都市に行きまして、スラム街などの裏の世界を調査してきます」
「あら、結局正直に話してから行くのね」アンジーが言った。
「はい。嘘をつくのは違う気がしましたので」
「それが正解ね」
「なぜそんな所に行くのですか?必要は無いでしょう」
私は、首をかしげて聞きました。私は、あえて危険なところに行って欲しいとは思っていませんよ。
「各種族の説得が終わったら、各国を説得に回る作業があるのですよね?ならば、国王は別にして、影の部分を味方に引き入れておくと何かと上手く事が運ぶと思いませんか?」
ブレンダは私に微笑みながらそう言った。
「そ、それはそうですが」
「では各国へ行ってまいります」ブレンダは頭を下げた。
「理由はわかりましたが、それでも私としては、あなたに危ない事はさせたくないのですが」
「また始まったわ」アンジーがやれやれという顔をしている。
「まったくじゃ」モーラも同じです。
「モーラもアンジーも、家族が危険なところに行くのにその反応はどうなんですか。 ましてや各国のスラム街に潜入とか、そりゃあ不安にもなりますよ。魔法使いは万能ではないのですよ。後ろから襲われたら何もできないのですから」
私は二人を見て、強い口調でそう言いました。
「ほらね。こうなのよ」アンジーがブレンダを見る。ブレンダはちょっとだけ微笑んで、すぐ真面目か顔に戻った。
「ハズ様それは大丈夫です。私はあなた様と双璧をなす魔法使いだと、ハズ様自身がお認めになられたではありませんか。潜入の際は、ハズ様と同様の防御魔法を使いますから安心してください」
「催眠も麻痺も大丈夫ですか?」私は疑いのまなざしでブレンダを見る。
「はい」私の心配顔を見て笑いながらブレンダが答える。
「笑っていますけど、私は心配です」ちょっとだけ笑っているブレンダを見てちょっとだけ、私は怒りそうになっていました。
「あんた、出かけるにあたっておまじないをしてあげないのかしら」アンジーが私を見てニヤリと笑った。
「ブレンダさん。決心は変わりませんか?私のためであれば、できればやめて欲しいのですが」
「今後、各国の都市で説得を行うのにコネクションづくりは必要な事だと思います」
「そうですか。わかりました。それでは」
私は立ち上がってブレンダに近づく。横にいたパムが跪いて見せ、あわせてブレンダが跪く。
「あなたの旅が安全であり、無事に戻ってこられますように」
私はブレンダの額に長いキスをする。ブレンダは驚き、目を見開いたまま、私の仕草を全部見ていた。そして立ち上がり、ちょっと赤くなっている。
「これはちょっと新鮮です。本当に守られている気がします」
ブレンダはボーッとした感じでそう言うと、すぐに真面目な表情に切り替えた。
「では、行ってまいります」ブレンダは敬礼をした。どうしてそこで敬礼しますか。
全員で玄関を出てブレンダを見送る。ブレンダは右手のタクトを振って、一瞬でその場から消えた。
「玄関の横からとはいえ。転移魔法は風情がないのう」モーラがポツリと呟いた。
「ディー様、行き先のマーカーはどこに置いてあるのでしょうか」エーネが尋ねる。
「紫も含めてこの3人は、元からマーカーなんて必要ないのよ。ただこいつだけは、慎重だからそれをしないだけなのよ」アンジーがあきれながらそう言った。
「転移先に誰かいて、何かされたら嫌じゃないですか」私が言い訳がましくそう返す。
「臆病なだけなのではありませんか?」キャロルが幻滅した目で見て言った。
「確かにな」モーラは鼻で笑った。
「ご主人様は敵が多すぎますから」メアがそう言った。それに納得したように全員が頷いた。
続く
○魔法使いの里
最初は魔法使いの里です。
さすがに魔法使いの里に行きたくなかったので、紫とセリカリナで会って話をしました。
「一応全員に話したいのですが、どうですか?」
「町の魔法使いは、3回くらいに分けて話をして欲しいのよ。もっともここから離れる事は、全員が了承したみたいなのだけれどね」
「そうでしたか」
「もちろん自分の住む町が移転されるという前提でね」
「町に住んでいる魔法使いの皆さんは、やっぱり町の魔法使いですからねえ」
「会わなくても良いなら、説明だけを町の薬屋の無線で行ってもいいのだけれど、みんなあなたに会いたいらしいわよ」紫はあまりいい顔はしていない。
「それが目的というのも嫌ですけど、仕方がありませんね」
「じゃあ日程についてはまた調整するわね」
「よろしくお願いします」
それでも、7色には会わざるを得ないため、2度目の魔法使いの里入りをして、7色全員と面会して、改めて説明をした。
「下準備をお手伝いいただきありがとうございました。ついては、改めて説明させていただこうと思いまして、こうして伺った次第です」
私は、最初にそう言って頭を下げた。
「何も話す事はないよ。わしは隠居の身だからな。連れて行ってくれるのならそれでよい」とは青の魔女さんです。健康そうな顔立ちなのに、話し方はちょっと疲れている。
「私もそうよ。私自身、藍の魔女から降りようと思っているのだけど、後継者が渋っているだけなのよ。魔法使いでいられなくてもいいから次の世界には行きたいわね」
藍の魔女も同じような事を言っている。肌の張りは若いのに老成された話し方だ。
「説明は了解したわ。移転するのも問題ない。それより今後の作業を改めて確認したいのだけれど良いかしら」
赤がそう言った。後ろでオレンジ、黄、緑の魔女が頷いている。
「かまいませんよ。順番は、まず魔族と人族を除いた他種族を転送して、人族を国別に土地とセットで送ります。それから順に、天使、ドラゴン、そして魔族の土地と魔族をセットで送ります。そして、最後に関係者全員という順番です。関係者は、上級魔族、ドラゴンの9柱、天使の上位15柱、魔法使いの7色含む15人程度ですね。人族の移転については、各国の都市群を魔力を使って地域ごとまとめて根こそぎ転移するのを手伝ってもらいます」
「土地ごとなのね」
「城ごとなのでかなりの土量を転移する事になります」
「天界はどうするの」
「天界と魔法使いの里は、引っ越し先の惑星で製作します。それから里を土ごと引き剥がして、その浮いている岩に乗せます」
「大胆ねえ。ドラゴンは?」
「洞窟は移転しないと思いますし、里も新しく作るとは言っていますが、スケジュールには念のため入れています」
「魔族はどうするの」
「これが一番やっかいなのですよ。見た事がないのですが、土地は種族ごとの集落に分けて、そこの種族と集落をセットで送り込みます。人数と重量がありそうなので期間がどの位かかるのかはなんとも・・」
「わかったわ」
「全員移転できたら、この世界の魔鉱石はできるだけ引っ剥がして持っていきますね」
「そうして欲しいわ」
魔法使いの里への説明はそれで終了した。
○天界
次は、ガブリエルと連絡を取りました。
「下準備の時には色々とご協力ありがとうございました」鏡を通じて私は頭を下げた。
「今更だねえ。私達も聞かされて、考えさせられる事もあったからねえ。構わないよ」
「天使の皆さんに説明がしたいので、その事で連絡をしました」
「ああ、それかい。君が天界に来る必要は無いし、説明も必要ないよ。族長会議の話は天使達には聞かせていたのさ。君の気持ちはよくわかるよ。何なら、全員と鏡越しに話してもいい。残りたい者がでるんじゃないかって?人族あっての私達天使だよ。人が全員新しい世界に行くなら当然私達も行きます。と言っているからねえ」とガブリエルが言った。
なので、何回か鏡越しに天使達に説明をした。説明の際に強制されていないかと確認しましたが、いずれも新しい世界に人と共に移住すると答えるのです。こちらとしては納得できませんでしたが、諦めました。
○ドラゴンの里
「モーラ。始祖龍さんと話しをしたいので、連絡を入れてください。先日の約束もあるので、会う事はできると思いますが、できれば里に行って他のドラゴンさんにも話したいのですよ」
「ふむ、招待して欲しいと言うことじゃな。聞いてみるわ」
「ダメならモーラに迷惑をかけないように自力でドラゴンの里に向かいますけどね」
「場所も知らないのにどうやって行くのじゃ」
「それはまあ、色々と」
「いろいろ歩き回った時に調べたのか?」モーラが探るように聞いてきた。
「その辺は、この件が終わったら話しましょう」
「わかった。連絡を取りに行ってくるわ」
「お願いしますね」
そう言ってモーラは飛んでいって、少しして戻ってきた。
「突然来られたら里が困るから、明後日連れてこいと言われたわ」
「そうですか。良かったです」
そしてその日になり、早朝に私は、モーラの手に乗ってドラゴンの里に到着した。
そこには、見知ったドラゴンさん達が待ち構えていました。
「久しぶりですね光のドラゴンさん。そして、ヒメツキ様、風のドラゴンさん。お知り合いがいらっしゃるのは心強いです」私は丁寧にお辞儀をした。
「でもね、話によっては帰られなくなるわよ」ヒメツキさんの表情が硬い。
「水の、いやヒメツキよ、お互い体面を繕うのはやめんか。こやつは、他のドラゴンに聞かせるために改めて話をしに来ただけなんじゃから」
「そうだけど、だからこそよ」
「まあまあ。とりあえず長老のところに行こうじゃないか」
そうして、始祖龍様の家に入り、大広間に通されて始祖龍様と対面する。両脇には、人の姿をした長老達が左右に分かれて座っている。モーラは私の隣にいる。おおう畳だ。久しぶりに嗅ぐ良い匂いだ。
「お招きいただきありがとうございます」私は正座をして手をついて頭を下げる。
「うむ。膝を崩すがいい」
「ありがとうございます」
「さて、色々な所に話をして回っているらしいな」始祖龍様が肘掛けに肘をついてそう尋ねた。
「まだ魔法使いの里と天界だけです」
「そうか?おぬしが中原で殺されたふりをしてから、おぬしが小さな種族を回っているのをよく見かけていたと、風が言っていたが、あれは人違いか?」始祖龍様が笑いながら私に尋ねる。目は笑っていないようですが。
「あの時はまだ調査段階でした。この世界にはどのくらいの種族がいるのかそれを調べる旅でした」
私は、始祖龍様の視線にちょっとだけ背中に冷や汗が流れていました。
「なるほどなあ。勉強熱心だとは聞いていたが、それほどとはな。さて、わざわざここに来たという事は何か聞きたいことでもあるのであろう?説明に来るだけなら別の場所でもよかっただろうが」
始祖龍様は、私を見てちょっとだけ真面目な顔になる。
「確かにお聞きしたい事もあってこちらに伺いました。ですが、このような公の場でできる質問ではありません」
私は正直にそう答える。
「かまわぬ。その質問が無礼であろうと、この者達に聞かせられない話であろうと、わしが認める」
周囲の他のドラゴン達がざわめく。
「ありがとうございます。私からの質問は、この世界の危うさをあなたは一番良くお知りになられていたのではないかと、お聞きしたかったのです」
「そこか。確かに危機感はあったが知らなかったぞ。ただ、くだんの一族がいなくなれば大丈夫と聞かされていたのは間違いないな」始祖龍様は、そんな事かと笑っている。
「本当にその一族がいなくなればと直接言われていましたか?」
「匂わす言い方ではあったが、そういう意図だろうと思っていたがなあ」
「そんなところでしょうねえ。それを始祖龍様に話をしたのは、天界ですね」
私が聞きたかったのはそこなんですよ。
「そうじゃ」始祖龍様は、さらりと答えた。
「私は何のために送り込まれたのでしょうか。ご存じですか?」
「確かにな。一体おぬしを送り込んだやつの意図は何じゃ?救世主としてか?」
始祖龍様は笑いながら言った。
「そんな大それたものでは無いでしょう。本当に一時しのぎで魔族を滅ぼさせるつもりだったのでは無いでしょうか」
私はそう正直に答えた。
「質問はそれだけか?」
「はい。それと改めて協力を依頼させていただこうと思いまして」
私はそこであぐらをかいていた足を正座に戻した。
「改めて協力じゃと?」
「これから、各種族を惑星に引っ越しさせるためには、ドラゴン様方のご協力が必要ですので」
「それこそ今更じゃなあ。これまで散々わしらを使い倒したくせに」
そう言ったあと、始祖龍様は背筋を伸ばしてこう言った。
「それについては構わぬ。しかし本当に実現可能なのか?」
「それは皆さんの協力いかんによります。たぶん膨大な魔力が必要になります」
「そうか。それに種族全てと言っていたな。それも本当か」
「ええ、本当です」
「善き者も悪しき者も全てと」
「はい。選別したりしません。全員です」
「おぬしは神にでもなったつもりか?」
「いいえ、選別しても無意味だからですよ」
「どういうことだ?」
「知識を持つ者は、その全員が善にも悪にもどちらにも転ぶ可能性があります。善き者だけを連れていったところで、いずれ一部は、悪しき者に変わるのです。これはどこまでいっても変わりません」
「切り捨てないのか」
「私にはその判断がつけられません。それに面倒くさいし煩わしいのです。時間もありませんし」
「そうか。そういう言い方でごまかすか」
「そう思っていただいてかまいません。あと、勝手に選別して無理に殺したりしないで欲しいのです」
「行きたくない者はどうする」
「説得して連れて行きます」
「強情じゃのう。死ぬことも許さんのか」
「野垂れ死にをしたい人などいないのですよ。ひとりで死ぬのは寂しいのです。私は砂漠でそれを体験しました」
「死にかけたのか」
「いえ、死にました」
「死んだのか?」
「ええ、この世の真実を叫んだら、かけられた魔法に爆殺されました。おかげで魔法は解除されましたけどね。その時に「ああ私はここで、たったひとりで死んでいくんだ。寂しいなあ」と思いました」
「ならばどうして生きている」
「この世界に転生してきた時にある事に気づきまして、その時に不本意に死ぬ目に合ったら復活するように自分に魔法をかけていました。私自身、その時まで忘れていたのですけどね」
「はは、すごいなそれは、不死身か」
「不死身ではありませんよ。分子レベルまで粉砕されれば修復は不可能です」
「分子レベルとは?ああ異世界の言葉か」
「ああ、粉々のさらに粉々ですね」
「さて聞かせてくれ、その案では、千年以上生きていられるのだな」
「何も無ければ十億年単位で」
「億とは?」
「千年の次の桁が億ですので、千年の10倍から100倍ですね」
「それなら安心じゃな」
「全員で移住しても、皆さんが力を使わずに争わず、約束を守って暮らしてくれれば、もっと大丈夫ですよ」
「そうなればよいな。わかった。この事は各地のドラゴンすべてに話そう」
「ありがとうございます。私としては、各地のドラゴンさん達にひとりずつ説明をしたいのですが、集めることはできますか?」
「うむ、全員を集めることはできないが、何回かに分けて集めることは可能だ」
「その時には内覧会で見られなかったドラゴンさん達にもお見せしますよ」
「あれはすごかったなあ。おぬしら長老達も見てみるが良い、世界を見る目が変わるぞ」
そして、私はドラゴンの里を辞した。
意外に簡単に説明は終わり、人数の多い他種族への説明に行くことになった。
○ 家族にこれから各種族を回ると言って家を出ようとする
「さてそれでは各種族を回ってきますね」
私はフードのついたローブを着て、居間にいる皆さんにお辞儀をする。
「ぬし様、お待ちください」パムが椅子から立ち上がり、それに合わせてレイとエルフィも立ち上がった。
「パムさんどうしましたか」
「私、いいえ私達に同行させてください」
「いや、私はあなた達が行きたくないところに行こうとしていますよ?皆さんも行きたくないでしょう?」
私はパムとエルフィとレイに声をかける。
「行きたくないのと、行かなければならないのとを比べた時に、行かないという選択肢は、私達にはありません」
パムがそう言うと、エルフィとレイも頷いている。
「やりたくない事はしなくていいのですよ」
私はパムを見て言いました。
「ぬし様が私と1対1で話をしてくれた時に、ぬし様は言いました。どんな種族もどんな人も連れて行くと。残りたい人もできるだけ説得して連れて行くと」
「確かに言いましたよ」
「私はぬし様のお手伝いをしたいのです。決して一族のためにではありません。一族の一部の嫌いな人のためにぬし様の手伝いをしないのは、すでに私ではありません」
「嫌な思いをする事になるかもしれませんよ?」
「かまいません。これは私だけでなく」パムはそう言って、エルフィを見た。
「旦那様。エルフ族の時には私が一緒に行きます。そして2回目からは、私が一人で説明してきます」
「僕も同じです。孤狼族に連なる獣人族全種族を一緒に回った後は僕が頑張ります」
「お二人の決意はわかりました。パムさんにも言いましたが、つらいと思いますよ」
「でも、こればかりは逃げたくないんです」
エルフィがいつもより真剣な目をしています。
「僕の所は孤狼族だけではありません。他の獣人族のところには僕が案内します」
レイも自分なりに爺分の行動を決めているようです。
「確かに他の獣人の所は私では探索できませんでしたから、それは助かりますが」
「ファーンのところの獣人に色々聞きました。彼らのつてをたどれば大丈夫です」
レイが胸を張ってそう言いました。
「わかりました。皆さん一緒に行ってくれますか?」
「「「はい」」」ああ、声が揃っていますねえ。これは良い事です。
そこで一度、椅子に座り直して、周り方、説明の仕方などを話し合いました。3人の準備もあるので、明日からそれぞれの種族を回る事にしました。私の気力はちょっとそがれましたけど、懸念していた事はあっさりと解消されましたから、少しだけ嬉しかったりします。
○ブレンダの決意
「パムさんは、ハズ様と一緒にドワーフの里に行かれるのですね」
全員が部屋に戻った時にブレンダがパムを呼び止めて、居間のテーブルの端に座って話し始めた。
「はい。それがどうかしましたか?」
「私もしばらく家を離れようと思います」
「何をする気ですか?」パムが意外そうにブレンダを見て言いました。
「移住先に害をなす可能性のある者達は、不要だとは思いませんか?」
ブレンダはちょっとだけ恐い目でパムを見つめます。
「ブレンダさん。お気持ちはわかりますがそれはお控えください。あなたが手を汚す必要はありません」
パムはブレンダのやろうとしている事を察したようです。
「私は隷属して、この家族の中での自分の役割に気付いてしまいました」
ブレンダは、そこでまるで空の上を見るように遠い目をしています。
「どんな役割ですか?」
パムは、ブレンダの様子に眉をひそめています。
「不殺ではない道を生きる者であるという事です。すでに私の手は汚れています。この先この手が汚れようとも構わないとも思っています」ブレンダは、そう言って今度は自分の手を見ている。
「ブレンダさん。あなたが見つめている手が震えているのはなぜですか?」
パムはブレンダの手が少しだけ震えているのに気づいてしまった。
「それは・・・」
「ブレンダさん。不殺について、どのようなイメージをお持ちですか?」
パムはゆっくりとブレンダに聞いた。
「自分の身を守り切れなくなるまでは、不殺で戦うものだと聞いていますが」
ブレンダは震えていた手を握って言った。
「それは正しくて、正しくないのです」パムは少しだけ微笑んで答える。
「正しくて、正しくない?」そこでブレンダは顔を上げてパムを見た。
「不殺は、ぬし様の心のありようではありますが、私たちの行っている不殺は、それを体現するための試行錯誤でしかありません。ぬし様からは、不殺を気にするくらいなら、その考えを捨てなさいと言われています」
ブレンダは、パムの話をただ聞いている。
「私たちは、不殺にこだわっているわけではなくて、不殺で事を納めるための努力をいかにするかを考えています。ぬし様は、誰をも憎んでいて、それでいて誰をも殺したくないのです」
パムはそう言った。
「誰をも憎んで、殺さない?」ブレンダはそこでも首をかしげる。
「実際にあなたも、今では殺すことに不安や動揺をお持ちでしょう?それが普通の人の心です。ですが、いつか人を殺さなければならない状況になるだろうと思っていますよね。そして、その時には家族に代わって自分がやらなければならない。そう考えているのですよね」
パムは確認するようにブレンダに語りかける。
「は・・・い」ブレンダはパムのちょっとだけ迫力がある言葉に少しだけ怯えながら頷いた。
「その状況をどう切り抜けるか。それがぬし様の考えている不殺なのです。ぬし様は、そのために何万回もの脳内シミュレーションを行っているのだそうです。それに裏付けられているから不殺でいられるのだと私は思っています。ただ、ユーリもエルフィもレイも、皆さんそれぞれが自分の考える不殺を求めています」
「それぞれの不殺ですか?」その言葉にもブレンダは首をかしげる。
「はい。私の場合は、私たちが置かれた特殊な状況を事前に察知して、調査をして、それを報告して、検討してもらい、事前にそれを回避する事で、不殺への道を探っています。
ユーリは、戦いの場で相手とのコミュニケーションを通して、ユーリの絶対的な力を見せる事で、相手の戦う心を萎えさせ、不殺を成そうとしています。レイも似たような考えですね。
エルフィは、相手に弓で攻撃していますが、回復魔法の矢を使っているので、相手に当たって傷つけても、結果傷が残らない事で不殺としています。
そうやって自分なりのやり方で「不殺」というものを考えているだけなのです。あくまでぬし様の気持ちを察しているだけで、ぬし様からは、そんなものには縛られるなと、仮に殺してしまったとしても、ぬし様がその状況を作ってしまったからで、ぬし様が至らなかったせいなのだから、その時は悔やむなと思われています」
「そうなのですね」
「もしあなたが、ぬし様の気持ちを汲んでくれるのなら、そのような役割を考えずに、殺さずにその者達を更生させる方に考え方を変えてもよいのではありませんか?」
「相手を・・・更生ですか?」ブレンダはそう言われても理解が追い付いていない。
「はい。アンジー様は、最初の旅の時、偶然とはいえ、旅の途中で襲ってきた盗賊が傭兵団に捕らえられた時に、その者達が殺されるところを助け、アンジー教ができたのです。本人は孤児院を作らせたかっただけらしいのですが、彼らは自発的に更生しました」
「そう・・なのですね」そこでブレンダは考え始めた。
「だ・か・ら、それは誤解だって言ったでしょう?モーラにそそのかされてそうなっただけでねえ・・・」
アンジーが突然後ろから現れてそう言った。二人はビックリしてアンジーを見ている。
「ああ、あれはわしが悪かった。今では大規模な孤児院運営組織になってしまったからな」
そう言いながらモーラも出てくる。
「私としては、アンジー教と名乗るのはやめて欲しいのよ。さてブレンダ。あなたの気持ちもわかるし、私もその考えには賛成だわ。でも考えて欲しいのよ。あいつが、あなたが人を殺した事を知った時にどうするのかを。あいつは、その事を知っても多分何も言わないでしょう。けど、きっと悲しそうな目であなたを見るようになるでしょう。あなたはそれに耐えられるのかしら?」
アンジーはいつもとは違う優しい顔でブレンダを見て言った。
「たった今、その事を考えただけで悲しくなりました」ブレンダは下を向いたまま、悲しそうな表情で小声でそう呟いた。
「でしょう?でもね、ブレンダがあいつのために何かしたいなら、私からお願いをしたい事があるのよ」
「なんでしょうか」ブレンダが顔を上げてアンジーを見た。アンジーは厳しい目をしている。
「あなたのやろうとしている事に近い事よ。各国のスラム街に潜入して、内情を探って欲しいの。 誰と交渉すれば、もっとも上手く人を動かすことができるのか、調べて欲しいのよ」
アンジーのその目は、ブレンダにとって非常に危険な事だと訴えている。
「それは・・・」パムの仕事を奪うのではないかと考えてパムを見た。
「残念ながら私はドワーフです。人族からは一線を引かれてしまい、裏の中心にいる者達まで、接触できた事はありません」
多分ブレンダの感情が伝わったのだろう。パムは残念そうに言った。
「ユーリは名が売れてしまっていて潜入には向かないし、キャロルはまだ経験も浅く子どもだから説得力がないし、近づけば怪しまれるのよ」
アンジーは、少しだけ悲しそうな表情になった。ブレンダしかいないと言っているようなものだ。
「わかりました」ブレンダは決意と共に嬉しそうにそう言った。
「やばいと感じたらすぐに離脱するのよ」アンジーは自分の首にかかったネックレスに触った。
「はい」ブレンダも同じようにネックレスに触る。
「あなたなら転移できるから、もしもの時も大丈夫そうだし、旅をしなくても夜だけでも動けそうだしね」
アンジーが少しだけシニカルに笑いながら言った。
「それに時間がありませんので、主要3国の各都市だけでよろしいかと思います」パムがそう付け加えた。
「では、セリカリナに一度里帰りをするという話にします」
「どうせ、あいつは勘づくとは思うけどねえ」アンジーが地下室の方を見ながら言った。
「確かになあ。そんな事だけには、あやつはアンテナが働くからな」モーラも同じ方を見ながら言った。
「しかも、出発する時に心配するのが目に浮かぶわ」
「ぬし様は、本当に家族に対しては、心配性を発動しますからね」パムが笑っている。
「うかうか遊びにも行けやしないのよ」
「アンジーおぬしも結構あやつから離れたがらないではないか」モーラがアンジー見て笑いながら言った。
「ばっ・・・そうよ。何をやりだすかわからないし、帰ってくるとボロボロだったり、魔力切れ起こして倒れたりするからね。あいつは家にいてもらった方が安心だわ」アンジーの顔が少しだけ赤くなっている。
「アンジー様。最初の印象と違いすぎます」ブレンダがちょっと微笑んでいる。
「はあ?私は一貫しているわよ」何を言い出すのよという感じでアンジーが言った。
「ああ、ツンデレじゃな」
「そうですね。ツンデレです」パムがそう繰り返す。
「そうだったのですね。納得しました」ブレンダが笑いをこらえきれずにいる。
「本当にあんた達は!まあいいわ。ブレンダ。お願いね」
「はい」
「あと色仕掛けはやめておきなさい。色恋が絡むと、男は理性を失って何するかわからないからね」
「はいわかりました」
「本当にツンデレじゃな」
「まったくです」
みんなが笑い出したところで、メアがお茶を持って居間に入って来た。
「メアさんせっかくですから、セリカリナまでは一緒に行きませんか」
「そうですね。今回は、家も大丈夫でしょうから」
「今回は?」
「前回の白き閃光の事件の時にブレンダさんもわかったかと思いますが?」
「そうですね。作れない側の私にとっては、前回はなかなか刺激のない食事になりましたから」
誰かの事をディスっていませんか?
「今回はキャロルがいてくれるので、 大丈夫かと思います」
「それ以外は欠食児童なのですか?」
「前回旅でいなかったパムとユーリでは野営と同じ料理になりますし、エルフィは、お酒しか飲みませんので」
「そうでしたか・・・・」ブレンダはしばらく考え込んでいたが、メアがこう言った。
「やっぱり一緒に行くのはやめておきます。台所が気になってすぐ帰りたくなりそうですから」
「まあなあ」
「そうなのよねえ」アンジーが言ったが、アンジーあなたも台所を手伝いましょうね。
ブレンダの話はそこで終わった。
翌日の朝食の後、私がレイと出掛ける準備をしていると、ブレンダが階段を降りてくる。
ブレンダは、鞄を持ち、ローブを着て、フードを被って降りてくる。
「ブレンダさ・・おっと。ブレンダ。どうしましたか。どこかに行きますか?」
私は、旅装のブレンダを見てそう言いました。
「はい、各都市に行きまして、スラム街などの裏の世界を調査してきます」
「あら、結局正直に話してから行くのね」アンジーが言った。
「はい。嘘をつくのは違う気がしましたので」
「それが正解ね」
「なぜそんな所に行くのですか?必要は無いでしょう」
私は、首をかしげて聞きました。私は、あえて危険なところに行って欲しいとは思っていませんよ。
「各種族の説得が終わったら、各国を説得に回る作業があるのですよね?ならば、国王は別にして、影の部分を味方に引き入れておくと何かと上手く事が運ぶと思いませんか?」
ブレンダは私に微笑みながらそう言った。
「そ、それはそうですが」
「では各国へ行ってまいります」ブレンダは頭を下げた。
「理由はわかりましたが、それでも私としては、あなたに危ない事はさせたくないのですが」
「また始まったわ」アンジーがやれやれという顔をしている。
「まったくじゃ」モーラも同じです。
「モーラもアンジーも、家族が危険なところに行くのにその反応はどうなんですか。 ましてや各国のスラム街に潜入とか、そりゃあ不安にもなりますよ。魔法使いは万能ではないのですよ。後ろから襲われたら何もできないのですから」
私は二人を見て、強い口調でそう言いました。
「ほらね。こうなのよ」アンジーがブレンダを見る。ブレンダはちょっとだけ微笑んで、すぐ真面目か顔に戻った。
「ハズ様それは大丈夫です。私はあなた様と双璧をなす魔法使いだと、ハズ様自身がお認めになられたではありませんか。潜入の際は、ハズ様と同様の防御魔法を使いますから安心してください」
「催眠も麻痺も大丈夫ですか?」私は疑いのまなざしでブレンダを見る。
「はい」私の心配顔を見て笑いながらブレンダが答える。
「笑っていますけど、私は心配です」ちょっとだけ笑っているブレンダを見てちょっとだけ、私は怒りそうになっていました。
「あんた、出かけるにあたっておまじないをしてあげないのかしら」アンジーが私を見てニヤリと笑った。
「ブレンダさん。決心は変わりませんか?私のためであれば、できればやめて欲しいのですが」
「今後、各国の都市で説得を行うのにコネクションづくりは必要な事だと思います」
「そうですか。わかりました。それでは」
私は立ち上がってブレンダに近づく。横にいたパムが跪いて見せ、あわせてブレンダが跪く。
「あなたの旅が安全であり、無事に戻ってこられますように」
私はブレンダの額に長いキスをする。ブレンダは驚き、目を見開いたまま、私の仕草を全部見ていた。そして立ち上がり、ちょっと赤くなっている。
「これはちょっと新鮮です。本当に守られている気がします」
ブレンダはボーッとした感じでそう言うと、すぐに真面目な表情に切り替えた。
「では、行ってまいります」ブレンダは敬礼をした。どうしてそこで敬礼しますか。
全員で玄関を出てブレンダを見送る。ブレンダは右手のタクトを振って、一瞬でその場から消えた。
「玄関の横からとはいえ。転移魔法は風情がないのう」モーラがポツリと呟いた。
「ディー様、行き先のマーカーはどこに置いてあるのでしょうか」エーネが尋ねる。
「紫も含めてこの3人は、元からマーカーなんて必要ないのよ。ただこいつだけは、慎重だからそれをしないだけなのよ」アンジーがあきれながらそう言った。
「転移先に誰かいて、何かされたら嫌じゃないですか」私が言い訳がましくそう返す。
「臆病なだけなのではありませんか?」キャロルが幻滅した目で見て言った。
「確かにな」モーラは鼻で笑った。
「ご主人様は敵が多すぎますから」メアがそう言った。それに納得したように全員が頷いた。
続く
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