159 / 229
第27話 錬金術師再び
第27-6話 白い壁
しおりを挟む
○砦
翌朝私達は、広場で彼らと別れ、元の道に戻り、再び登山を開始する。
「もうじき光の奴の縄張りも越えるぞ。みんな覚悟せい」
縄張りの終わりらしき場所を越えると、突然雪が降り始め、徐々に雪が積もりだした。そこで、持参した防寒着に着替える。雪がどんどんとそれもひどく降り始める中、服の上からインナーを着て、毛皮の靴、毛皮の手袋、マフラー、毛皮のフード付きのオーバーを着る。そして再び山を登り始める。そのうち、深く積もった雪をかき分けるように進むようになり、ついには吹雪になり視界がゼロになる。お互いをロープで結んで離れないようにして、さらに山を登っていく。徐々に膝まで雪が深くなり、歩くのを拒み始める。
会話をしようにも風と雪がひどく、マフラーはすでに凍り始めている。
『これはひどいですね』
『マーカーは正しく示しています。今回がゆがんだりしていません。しかし道が悪すぎますね』
『おや、先ほど道に蒔いておいたマーカーが現れました。進んでいないのではないですか?』
『いいえ、目標との距離は、徐々にですが短くなっています』
『ふうん』
私はマーカーを拾って確認する。書いてある座標も同じものだ。
『なるほど、同じものを複製してばらまいているのでしょうか。それとも拾ってきて蒔いているのですかねえ』
『どういうことかしら』
『私達のようにメアが正確な場所を知っているから問題なく登っていられますけど、目的地が正しく把握できずに闇雲に登っている人たちなら。自分の置いた目印が前に現れたら、道を迷わされていると思い込むでしょう。そういう仕掛けがしているようですよ』
『なるほど、そうやって攪乱されて、山へ登らせないのですか』パムが言った。
『諦めさせるには、気持ちを折るのが一番ですからねえ』
『さて、私達は大丈夫ですから、このまま進みます』
そうしてさらに前に進みますが、何度も同じマーカーが前に現れてどうやってそれを作っているのか不思議でなりませんでした。途中でマーカーを元の場所に戻さず手に持っていたら、現れなくなりました。当然ですねえ。
1時間ほど歩いたでしょうか。顔の感覚がなくなり、手足の冷えもかなりひどくなってきた。一度休憩を取るために、モーラに雪洞を作ってもらおうとしましたが、土がないので無理と言われて、自分たちで雪を掘って雪洞を作りました。
『あとどのくらいの距離がありますか』私はメアに尋ねる。
『距離はそうありませんが、私達の進む速度があまり速くないのでこのままだと数時間かかるかもしれません』
『モーラに飛んでもらいたいのですが』
『この吹雪ではさすがのわしも無理じゃな。羽が凍り付きそうじゃ』
『では、もう少し先に行った所で雪洞を作って、野宿しましょう』
『この寒さに耐えられますか?』
『魔法を使って交代で暖めるしかないと思いますが』
『じゃあとりあえず出発しましょう』
全員の顔には疲労の色が見て取れる。雪に初めて出会う者達ばかりだ。レイでさえも氷の世界は見慣れていても、圧雪や吹雪には慣れていないという。
『おぬしのことだから、野営することになれば熱い風呂でも用意するのではないのか』
『残念ながら、私の知識の中には、冬山で遭難した時にそんなことをしたら状況が悪化すると危険サインを出していますね。湯冷めしない保証はありませんよ』
『さすがに無理か』
『やってみたいところですがねえ』
『目の前に何か壁が現れました』
立ち止まったメアが叫ぶ。
その声を聞いて全員が立ち止まり、目の前の白い壁を見る。吹雪で全く前が見えない状態で進んでいたとはいえ、さすがに目の前の白い壁に気付かないわけがなかった。しかしそこに壁はある。
全員がその壁に触ったりたたいたりしてみる。本当に壁だ。
『この先に目的地があるんですよね』
『はいそうです。間違いありません』
『信号までの高さはまだありますか』
『まだありますが、この壁の高さほどではありません』
『2手に分かれて壁に沿って扉を探しましょう。立ち止まると体温が低下しますから少しでも動いていないとだめですよ』
『ありました』
パムが積もった雪の下を掘っている。
『え?』
何か肩透かしを食らった気分です。
『多分これではないかと』掘った雪の中に赤いレバーらしきものが壁に埋め込まれた状態で現れた。
『よくわかりましたねえ』
『少し移動した場所に下に向かっている矢印が壁に書かれてありました』
『見せてください。あ、メアさんも見てくださいね』
『はい』
『どうでしょう』パムが心配そうに尋ねる。
『特に何も仕掛けはなさそうですね』
『はい、そう見えます』
『では、発見したパムさん。レバーを回してください』
『はい』
四角くくぼんだ壁の中にレバーは横に置かれていて、手で握ると左下に回せるようになっていた。パムは静かに回す。左の上を支点にしてレバーは左下に向かって動いた。
プシューと圧搾空気の漏れる音がして、壁に四角い筋ができて、その部分が手前に浮き上がり、そして横にスライドする。
『珍しい動きをする扉じゃなあ』
『確かに。私のいた世界の宇宙船のハッチに近いですねえ』
『空を飛ぶ船か。さて、ここに入るのか』
『それはもちろんでし。凍えるよりはましでしょう』
私はそう言ってその中に入る。みんなも一人ずつ順番に中に入っていく。
扉の中はかなり広く、白くてまぶしくて、どのくらいの広さなのかわからない。目がまぶしさに慣れてくると、その部屋の輪郭がおぼろげながらわかってきた。四角く広く天井も高い。そして何もない部屋。正面には黒くて縦長の四角い穴があり、そこが次の部屋に通じる出入り口なのだろう。
全員で服の雪を落としている。暖かいため、毛皮についた雪がボタボタと体から落ちていき、すこしでも体を動かすと汗ばむくらいだ。
「上に来ている毛皮は脱いでも良さそうですね」
私は、真っ先に毛皮の服を脱ぎ始める。みんなも真似して脱ぎ始める。ユーリは背中に大剣を背負い直し、さらに持ってきていた脇差しを腰につける。メアは、毛皮の中に隠し持っていた暗器やら短剣をスカートをたくし上げて太もものガーターベルトに付け直し、パムは小さいからだからいつもの体型に戻している。
私は、正面にぽっかりと空いた縦長の四角い黒い穴に向かって歩き出す。そこは扉ではなくただの穴のあいた入り口で、中に入って進もうとすると行く先に明かりが灯り、次の部屋までの長い廊下であることがわかった。私は、そのまま進んで、みんなもそれに続いて歩いていく。
「ぬし様、不用心ではありませんか」
「誰かが最初に進まなければならないのなら、私が先に行きます。皆さんを危険な目に遭わせたくないので」
「それは私達も同じです。ぬし様に何かあったら」
「きっと大丈夫ですよ。ほら着いた」
そこは、最初の部屋とは違い、少し小さな部屋で、正面にはさきほどと同じ縦長の黒い四角い穴が空いている。そして、部屋の中には応接セットのような豪華な長椅子、椅子、応接テーブルが置いてある。
「私達は休憩するつもりはありませんが」
私はそう言って次の四角い穴へと向かったが、
「警告します。この先は危険です。ここを通るものは死を覚悟してください。そして、この世界で生まれたものは、通ってはいけません。通ろうとすると拒絶されます。よろしいですか」
部屋の中に唐突に無機質な声が響く。
「この世界に生まれたものか、なるほどな」
モーラは、そう言ってその入り口に入ろうとするが、あっけなくはじかれる。
「じゃあ私も試してみようかしら」
アンジーが続いて入ろうとするが、それも拒まれた。
レイ、パム、エルフィと続いて試すが、いずれも拒まれる。
「私が先に行きます」
覚悟をしたようにユーリが試して、ほんの少しだけの間が空いた後、やはり拒まれる。
「先に私が」
そう言ってメアがその入り口に入ろうとすると、しばらく間があって通過できた。メアは先へは進まず、一度こちらに戻ってくる。
「では最後に私が」
私はそう言ってからメアのそばを通り、その入り口に入る。
何事もなく通れた。私は一度戻ってみんなの前に立ち、
「では行ってきます」
「ぬし様、行かない方が良いかと思いますが、どうせ言っても無駄ですね」
パムは、私の表情を見て諦めたように言った。私は、微笑みながら、こう言った。
「パムさん、それから全員に確認します。ここからは渡してある無線機をオンにしてください」
そして、さらに付け加える。
「その無線機は、両方のボタンの裏側にスイッチがついています。何かあったら両方のスイッチを3つ数える間、押し続けてください。家まで飛んで帰ることができます。まあ、ここの雰囲気からしてたぶん大丈夫でしょうけど」
「大丈夫だと思うか?」
「こんな椅子まで用意しておいて、殺すこともないでしょう。下手に動きさえしなければね。それに、モーラとアンジーを殺した段階で問題になりそうですから」
「そういうことなのか?」
「そう信じたいです。では行ってきます」
「気をつけてな」
「ご無事で」
私とメアは、みんなに見送られてその入り口から次の部屋に向かう。細長いその廊下は、私達が近づくと少しの距離だけ明かりがつき、通り過ぎると明かりが消える。振り返ると遙か遠くに小さな白い明かりが見え、そこで見守る家族の陰が見える。かなりまっすぐ歩いているようだ。
「メアさん、近づいていますか」
「はい、もうほとんど近くに、彼は・・・父はいます」
そそうして、長い間歩いて、新しい部屋に着いた。そこは部屋と言うよりは、少し広い廊下だ。長くそして明るい。まだ先がありそうで、その廊下には、大きな石がゴロゴロ転がっている。その石は、一つとして同じものがなく、しかもいびつな形をしている。まるで、人や魔獣が倒れているような形をしている。
「ご主人様、これは石化でしょうか」
メアは言いながらそれらの石をよけながら前に進んでいく。
「ここまで無理矢理進んできて、こんな風にされたのでしょうか」
私は、ひときわ大きな石の前で立ち止まり、その石を凝視して、解析を試みたがただの石にしか見えない。
「何かわかりましたか?」
メアは、私が顔を上げたタイミングで尋ねてきた。
「ただの石であることしかわかりません。お父さんの信号はまだ先ですか?」
「もう少しだと思いますが、この道に沿って進むとどんどん右にずれていきます」
「それでも道を歩かないとだめそうですねえ」
メアの言葉どおり、道は途中で左右に分かれていて、右を選択して歩いて行くと、そこには大きな扉があり、その前に椅子に座っている人の石像があった。
「ご主人様。これが私のご主人・・・いえ、お父様・・・父です」
メアが、その石像を見てそう言った。
「そうでしたか。しかしおかしいですねえ。メアさんには点滅している信号として見えていますよね。でもこれではまるで死んでいるようじゃありませんか?」
「近づいてみます」
メアは、そのペンダントを服の上に出し、その石像に近づける。
すると、石像が全体的にほんのりと赤く光り、光が収まっていくと同時に石像の色が変化して、石化が解け始めてきた。
彼は椅子に座っていて、その状態からゆっくりと目を開ける。
「ご主人様・・・いえ、お父様」
「ああ、メアジストなのか、久しぶりだねえ、母様(かあさま)は、パープルはどこだい?」
ボンヤリとメアを見ながらその男、ブリュネー・アスターテは言った。
メアは近づいて、その足元に跪き、その体を抱きしめる。彼はメアの頭を撫でながら、徐々に意識が覚醒してきたのであろうか、険しい表情になる。しかし、あきらめたようにこう言った。
「そうか、ここまで来られたのだねえ。ありがとう。会えてうれしいよ」
彼はそう言って目を細めてから、私の方を見て、
「あなたが、メアジストの、娘の主人になられた方ですね」と言った。
抱きついているメアをゆっくりと促して立ち上がり、視線を床に移すと、目の前にテーブルと椅子が文字どおり生えてくる。
「座って話しましょう。メア」
そう言われてメアは残念そうに離れ、今度は、私の手を取り彼の向かい側に座る。手を離さないメア。メアの手は震えている。
「初めまして、私は、そこにいるメアジスト・アスターテの父、ブリュネー・アスターテと申します。しばらく石化していましたので、立ってご挨拶できないのはご容赦願います」
彼は座ったまま頭を下げた。
私は、立ち上がり、
「初めまして、私は・・・」
「魔法使いであれば、お名前はお控えください」
厳しい目で私を見る。
「はいそうします」
「不用心です。メアジストの父であるからと言って、敵でないとは限りませんよ」
「失礼しました」
「今のは冗談ですが、残念ですが私はあなたの敵かもしれませんので」
「どういうことなのでしょうか」
「あなたはここまで導かれてきた、そういうことです」
「あなたがメアさんを使って導いたと?」
「そうではありません、ここにたどり着く方法はいくらでもあります。メアを利用したつもりもありません」
「残念ながら私は、あなたが残したペンダントのせいで一緒に暮らしている家族が頭痛を訴え、その原因がメアさんの過去にあると判断して、頭痛の原因を排除したかっただけなんですよ」
「ああそういうことですか。ですがこの塔に入ってしまいました。後戻りはできませんよ」
「どういうことなのでしょうか」
「あなたは、これから話す事を聞く資格を持っていて、その話を聞く義務も持たされたのです」
「資格と義務ですか」
「はい。改めてこれから話す事は、誰にも話さない方が良いと思います。まあ、話したとしても半信半疑になりますし、話した事が知られれば、きっと死ぬまで襲われ続けることになります」
「私としては、聞きたくないですが・・・」
「ここに来てしまった時点で、聞いていないと周囲に言っても到底信じないでしょう。でしたら聞いておいたほうがましでしょう?」
「確かにそうですね。では、せっかくですので聞かせてください」
「やはり魔法使いはそうでなければなりません。では簡単に言います。この世界は箱庭です」
「そうでしたか」
「やはり驚きませんね。あなたは異世界から転生してきたのでしょう?でなければ疑問も持たず、ここに来ることもなかった。異世界から来たなら当然至る疑問ですからね」
「ご主人様、そうなのですか?」メアは私を見てそう言った。
「おや、我が娘メアジストにご主人様と呼ばせているのですか」
「お父様違います。私が勝手にそう呼んでいるだけで。その、ほかの家族の方と呼び分けのために・・・」
メアがそう言うと、彼は、しばらく上の空で何かを見ているようです。
「ふんふんなるほど。ほかにもお妾さんが6人もいると」
「どうしてそれを・・・」
メアが困惑している。
「もしかして、補助脳の記憶を見ていますね」
「わかりましたか。さすがですね。そうです。私にも閲覧の権利があるのですよ」
「お父様ひどいです。恥ずかしいです」
「ホムンクルスとして連れ歩いていたときの行動パターンの確認と修正のために閲覧できるようにしていたのです。もっともその時は、再会するとは考えていなかったのですが。意外なところで役に立ちましたね。それにしても、DTさん、あなたヘタレすぎますよ。全く手を出さないなんて。父親としてはうれしいですが、まるで私の娘に魅力が無いみたいじゃないですか」
「いや、それを言われても、家族なので」
「まあいいでしょう。時間も無いですから。急ぎましょう」
それって、あなたが横道にそれたせいですよねえ。
「さて、この場所はこの世界に生きる者達が神と言っている人が作った箱庭の管理を担っている場所です。そしてしばらく放置されています。私の脳に刷り込まれた記憶によると、最初は、植物を、そして動物を、そして、ホビット、獣人やドワーフなどを徐々に作り出して送り込んだようです。そして人間を送り込みました。そこで、神は人間を制御できなくなり、人間達は世界を侵略し始めます。悩んだ神は、何度か天変地異を起こして、人間を壊滅状態まで追い込みますが、殺すことまではできませんでした。そこで魔族を作り、送り出しました。でも、魔族はその凶暴さと繁殖力が予想以上で、より一層この世界は混沌としたのです。その時に魔法が作り出されました。これが私の知っている事実です。私がここに至り、そして眠らされたときには、すでに世界は混沌を極めていました」
「眠らされたというのは、その神にですか?会ったのですか?」
「神に直接会ったのではなく、神の使いと称する者の声を聞き、そして取引を持ちかけられました」
「取引ですか」
「ええ、殺さない代わりにここで石化して生き続け、訪れる者に説明し、従わないなら石にしろと言われています」
「何に従わないとなりませんか」
「簡単ですよ、「この秘密を誰にも話すな」です。話せばどこにいても殺されると」
「でも、他人に話したという事実をどうやって知るのですか」
「さあ、そこまでは私もわかりません。ここで石になっている人たちは、私が来る以前からここにありますし、私が起こされて出会った者達は、ほんの数組です。それも偶然にここまでたどり着いた者達で、真実に近づいたからここに至った者達ではありません。ただここに何もないのを知って暴れて、私は指示されてしかたなく石にしました」
「あなたの意思でやったわけではないと」
「はい、私は真実の語り部であって、裁定者ではないようです」
「あなたが逃げたらどうなるのですか?」
「仮にあなた達がここからいなくなったとしたら自然に石化するでしょう。もっとも逃げようと思えば何かを代わりにすれば良いのかもしれませんが」
「どういうことですか」
「以前石化する時に暴れた魔族がいまして、目の前で石化が始まったので腕を切って放置してみたのです。すると、魔族の石化が終わった後、その腕の石化が始まった後、私の石化が始まりました。生体反応のあるものを石化するようです。つまり、この部屋に私が残る限りは、石化されるようです」
「では、私と一緒にここから出られれば、石化しないかもしれないのですね」
「ですが、今まで一度もここを出て行った人はいません」
「なるほど、でもやってみる価値は、ありそうですけど」
「いいえ、あまりにもリスクが高すぎます。私としては、娘に会えましたので思い残すことはありませんが、魔法使いとしては、まだ可能性が残されています。ぶっちゃけまだ死にたくありません。急いだ方が良いかもしれませんよ」
少しだけ微かな揺れが始まっています。
「わかりました、またお会いできると思いますので失礼します」
「ああ、待ってください。伝え忘れていました。ここで聞いた事を話さないように魔法がかかりますから注意してくださいね」
「どうしてそれを知っているのですか」
「ここに石化される時に聞きました。その扉を出る前にそう説明されるみたいです」
「まだ時間はありそうですか?」
「今回のケースは初めてなのでなんとも言えませんが、説明は簡単にしろと言われています。何か催促されるかもしれません。ですが何かありましたか」
「この世界に違和感を持った事柄を教えてください」
「ああそうですね。私は天体です」
「星ですか」
「ええ、毎年同じ軌道で動いていますから。しかも雨も風も同様にほとんど誤差無く降ったりしています。ちなみにあなたはどうして気付いたのですか」
「昆虫です。本来このような世界に昆虫は必要不可欠なはずなのにほとんど見かけません。あと、海に誰も行ったことがない。ドラゴンでさえも。そして、ドラゴンは知っているふりをしている」
「あなたはドラゴンと、ああ、土のドラゴンと暮らしているんでしたねえ」
「あなたは、天体に疑問を持ってここまで来たのですね」
「そうなんですよ。どうにも不可解でして、それと山を越えた話を聞かないのです。ですから私は山を越えようと装備を調えて山に入りました。雪に埋もれ氷に阻まれ何度も遭難しかけて、方位まで見失うのです。それで私は位置マーカーを作り、それを山裾から埋め込みながら登ったのです。すると、戻るはずのない元の場所に戻ってきました。道がねじ曲げられている。狂わせる何かがあると認識したところ、突然それは現れました。白い塔が目の前に現れ扉が光り私を招き入れそこには、吹雪はなく暖かく静かな廊下が続いていました」
「さっきのあれは壁ではなく塔だったのですね」
「壁ですか?私の時にはあきらかに塔でした」
「違うルートですかねえ」
「さあどうなのでしょう。壁と見間違うような塔ではありませんでしたから」
「最後にもう一つだけ、先ほど神の使いがと言っていましたが、神はいると思いますか?」
「神というよりこの箱庭の創造主ですね。しかもここの世界の全てをいつでも見ているわけではありません。少なくとも、たまにしか様子を見ていないようです。それが、1年なのか10年なのか100年なのか、決まった周期ではないようです」
「正直に言いますと私は協力者が欲しいのです、今回は準備が不十分ですので、改めて助けに来ても良いですか?」
「私の覚悟が決まったらこちらから連絡と言いたいところですが、あなたがまたここに来られるとは限りませんね。でも、次にここを訪れることができたなら、あなたの可能性にかけてここを出てみたいと思います。それではだめでしょうか」
「もう一つ。石化の魔法を一度見せてもらえませんでしょうか」
「ああ、メアジストの頭の中にあった解析ですね。いいでしょう。私が自分の足に限定して石化して見せましょう」そう言うと彼は、わざと魔方陣を作って見せてくれた。
「ありがとうございました。せっかくですのでひとつだけ」
私は顔を近づけてぼそぼそと小声で話した。
「まあそうですね。気が向いたら遊んでみます」
そう言って彼は、自分の足の石化を解いた。彼は自分の足を見ながら、
「石化を解くなんて今まで考えたこともありませんでした。できるものなのですねえ。ならば周囲にいる魔族や獣人も石化を解除してみましょうか。ついでに遺伝子操作でもしてみますか」なぜかうれしそうに言った。
笑い合っていると、反対側の扉の方が少しだけ薄暗くなり、そして細かい振動が廊下を揺らします。
「そろそろまずそうですね、では私達は戻ります」
私は、そう言って立ち去ろうとする。メアもまた私と一緒に戻ろうとしていた。しかし、先ほどの曲がり角にさしかかった時にメアは立ち止まり、
「ご主人様、まだ時間がありますでしょうか、父様、いえ父に話しておきたいことがあります」
私は、
「時間はまだ大丈夫だと思います。この先に行って待っていますので、気をつけて」
と言って、無線機のスイッチを切り、白く長い廊下を歩いて戻る。その間も振動は続いていて、少しずつ大きくなっている。
戻って来たメアの姿を見てメアの父は驚いている。
「どうして戻って来た。ああそうだな。私に一言言いたいだろう。おまえをこの世に無理矢理縛り付け、無限に近い生を与えてしまったからな」
「それについては、補助脳に支配されていたときには、多少は恨みもしておりました。今は感謝しております。ご主人様とお会いできて私は幸せです。私の家族と共に末永く暮らして行ければ幸せでいられると思います。そして、ご主人様の子をもうけたいと思うようにまでなりました」
「そうか、伴侶を見つけたか」
「はい」
「うれしくて寂しいなあ。父親の私が言うことではないが、お前にはそれが可能だ。だがまだその時ではないのだろう」
「どういうことですか」
「その時が来れば判るとだけ言っておく。ただ、相手への愛情表現は忘れないようにな」
「何をすれば良いのでしょうか」
「それは私には言えない。恥ずかしいのと悔しいのと半々だな。だが、愛情が増えればその可能性は高まる。そう思っていてくれ」
「ありがとうございます。先ほどのお話では、またお会いできると思います。それまでお元気で」
「ここより逃げてからは、どこかに隠れながらの生活になると思う。もう嫁いだようなものだ。ご主人様のことだけ考えなさい」
「はい。私を死なせず生かしてくれて、私の最愛の人に会わせてくれたこと。本当にありがとうございました。お父さん」
「その言葉だけで十分だ。いいから早く行きなさい。かなり危険になってきているようだ」
「はい」
少ししてからメアが戻ってきた。
「ちゃんと話せたかい?」
「伝えたいことは伝えられたと思います」
「そうですか。では、急いで戻りましょう」
「はい」
私達は、白い廊下が途絶えるところに到着して、そこを通過しようとすると、そこには何かの防壁が張ってあり、
「約束を違えることがないよう魔法をかける。約束を違えた場合には焼きつくすことになる」
そう聞こえて、私達2人それぞれに魔法陣が頭から足先にゆっくりと降りて、そして消えた。
「とりあえず急ぎましょう」
「はい」
長く暗い廊下を走り抜けて、私達は家族の元に戻りました。その時にはかなりの揺れになっています。みんなは、すでに防寒着を着て、私達の帰りを心配していました。
「どうじゃった」
「話は後です」私はそう言って、防寒具を着始めました。メアも着ています。
揺れが大きくなり、壁がきしんでいます。全員でその先の出口の扉のある部屋に走っています。廊下自体が、振動とともに節々がずれていて、走るのも容易ではなくなってきています。扉を開けて一人ずつそこを出るときには、立っているのがやっとの状態になっていました。雪野原に全員で出たときには、振動も止み、壁はなくなっていました。吹雪はおさまっていて、曇天の中、雪がチラチラと降っています。
「メアさん、お父さんの信号はどうなっていますか」
「到着して会話を始めたときからすでに消えていました。今も信号はありません。きっと一度きりの仕掛けだったのだと思います」残念そうにメアが言った。
「会えたのじゃな」モーラが聞いた。
「はい、父様・・・父に会うことができました」
メアは、そこで私達に背中を向ける。肩が震えている。私達にはかける言葉がなかった。
『こういう時にはどうしたら良いのですかねえ』私は心の中でつぶやく。
『しーっバカか、おぬしは、丸聞こえであろう』
『あ』
『ほんっとうにあんたはデリカシーがないわね。あ』アンジーも心の声がダダ漏れです。
震えていたメアの肩がまた震えだし、今度はおなかを抱えて笑い出す。そして、目を拭った後、こちらを向いて、にっこり笑った。
「みなさんありがとうございます。その気持ちだけで十分うれしいです」
そうして全員で下山した。
「残念ですがお話しできることは何もありません。メアさんがお父さんと会えたことだけが今回の成果です」
私がそう言って、メアが頷いたので、そこで誰も詮索しなくなった。
「モーラ様とアンジー様が知りたがらずに、しかも静かなのが気になりますが、どうしたのでしょうか」
パムが私にそう言ったが、私も答えることができずにいる。
「それは確かに気になりますが、お二人とも聞いても答えてくれないでしょうねえ」
パムの問いに私はそう答えた。
何も話さないモーラの手に乗って、私達は、自分たちの家に戻ってきた。もちろん一度、モーラの洞窟まで行ってからですが。
「ここは~祝杯を挙げて~お風呂ですよね~」
エルフィがそう言ってうれしそうに笑った。
「そうですね、そうしましょう」
「やった~。帰りはあの子達を連れて帰らなきゃ~」
エルフィがうれしそうに先に行って、私達はゆっくり歩いて町に向かう。
「そういえば、メアの父を見た、ぬし様の感想は何かないのですか」
「顔、特に目元が似ていました」
「そうでしょうか」
メアは実感があまりなさそうです。
「もともとご両親は似た雰囲気を持っていたように思っていますがどうでしょうか」
「でも、メアさんのお母様には会ったことはありませんよね」
ユーリが鋭いところ突っ込む。
「ああそうですねえ。どうしてそう思ったのでしょうか」
「へんなあるじ様です」
そうして、その夜は、少し長い宴会のあと戻って来ました。
その後のお風呂でのことです。
「父だと知らせず、メイドとしてホムンクルスとして扱う。むずかしいですねえ」
私は天井を見上げてそう呟く。
「葛藤もあったろうなあ」
「ご主人様、一緒に寝ても良いですか」
「これ、もう不眠はないのだろう。順番を守らないか。」
「あの街に言ってから、少し寂しくなりまして、ダメですか?」
「だめです」
「だめですよ」
「それはちょっと~」
「甘えすぎじゃのう」
全員がわかっていながら意地悪しているのがちょっと可愛いですね。
「それでは、これまで私が他の方に遠慮してきた分の精算を行います」
「わかった。わかった。すきにするがいい」
そうして二人っきりでベッドに入る。
「メアさん後ろからどこを触っているのですか。だめです。だめですって」
「後ろで騒ぐな。眠れぬわ」
「今日もお元気ですね。お元気ですね」
「だからそういうのはやめろといっておるじゃろう」
「メアさん出禁にしますよ」
「わかりました反省します」
翌朝には、メアさんの手で朝食が作られて、いつも通りの生活が始まったのです。ええ、エルフィの秘密が気になりだすまでは。
Appendix
「今度は山に向かったんだね」
「はい」
「ついにこの世界の秘密を暴くつもりなのかな」
「阻止するのですか」
「いいや、私達にも阻止する権利はない。阻止するつもりもない」
Appendix
またここに来るみたいだし、その時には、とっても楽しいイベントを用意しておきましょう。
続く
翌朝私達は、広場で彼らと別れ、元の道に戻り、再び登山を開始する。
「もうじき光の奴の縄張りも越えるぞ。みんな覚悟せい」
縄張りの終わりらしき場所を越えると、突然雪が降り始め、徐々に雪が積もりだした。そこで、持参した防寒着に着替える。雪がどんどんとそれもひどく降り始める中、服の上からインナーを着て、毛皮の靴、毛皮の手袋、マフラー、毛皮のフード付きのオーバーを着る。そして再び山を登り始める。そのうち、深く積もった雪をかき分けるように進むようになり、ついには吹雪になり視界がゼロになる。お互いをロープで結んで離れないようにして、さらに山を登っていく。徐々に膝まで雪が深くなり、歩くのを拒み始める。
会話をしようにも風と雪がひどく、マフラーはすでに凍り始めている。
『これはひどいですね』
『マーカーは正しく示しています。今回がゆがんだりしていません。しかし道が悪すぎますね』
『おや、先ほど道に蒔いておいたマーカーが現れました。進んでいないのではないですか?』
『いいえ、目標との距離は、徐々にですが短くなっています』
『ふうん』
私はマーカーを拾って確認する。書いてある座標も同じものだ。
『なるほど、同じものを複製してばらまいているのでしょうか。それとも拾ってきて蒔いているのですかねえ』
『どういうことかしら』
『私達のようにメアが正確な場所を知っているから問題なく登っていられますけど、目的地が正しく把握できずに闇雲に登っている人たちなら。自分の置いた目印が前に現れたら、道を迷わされていると思い込むでしょう。そういう仕掛けがしているようですよ』
『なるほど、そうやって攪乱されて、山へ登らせないのですか』パムが言った。
『諦めさせるには、気持ちを折るのが一番ですからねえ』
『さて、私達は大丈夫ですから、このまま進みます』
そうしてさらに前に進みますが、何度も同じマーカーが前に現れてどうやってそれを作っているのか不思議でなりませんでした。途中でマーカーを元の場所に戻さず手に持っていたら、現れなくなりました。当然ですねえ。
1時間ほど歩いたでしょうか。顔の感覚がなくなり、手足の冷えもかなりひどくなってきた。一度休憩を取るために、モーラに雪洞を作ってもらおうとしましたが、土がないので無理と言われて、自分たちで雪を掘って雪洞を作りました。
『あとどのくらいの距離がありますか』私はメアに尋ねる。
『距離はそうありませんが、私達の進む速度があまり速くないのでこのままだと数時間かかるかもしれません』
『モーラに飛んでもらいたいのですが』
『この吹雪ではさすがのわしも無理じゃな。羽が凍り付きそうじゃ』
『では、もう少し先に行った所で雪洞を作って、野宿しましょう』
『この寒さに耐えられますか?』
『魔法を使って交代で暖めるしかないと思いますが』
『じゃあとりあえず出発しましょう』
全員の顔には疲労の色が見て取れる。雪に初めて出会う者達ばかりだ。レイでさえも氷の世界は見慣れていても、圧雪や吹雪には慣れていないという。
『おぬしのことだから、野営することになれば熱い風呂でも用意するのではないのか』
『残念ながら、私の知識の中には、冬山で遭難した時にそんなことをしたら状況が悪化すると危険サインを出していますね。湯冷めしない保証はありませんよ』
『さすがに無理か』
『やってみたいところですがねえ』
『目の前に何か壁が現れました』
立ち止まったメアが叫ぶ。
その声を聞いて全員が立ち止まり、目の前の白い壁を見る。吹雪で全く前が見えない状態で進んでいたとはいえ、さすがに目の前の白い壁に気付かないわけがなかった。しかしそこに壁はある。
全員がその壁に触ったりたたいたりしてみる。本当に壁だ。
『この先に目的地があるんですよね』
『はいそうです。間違いありません』
『信号までの高さはまだありますか』
『まだありますが、この壁の高さほどではありません』
『2手に分かれて壁に沿って扉を探しましょう。立ち止まると体温が低下しますから少しでも動いていないとだめですよ』
『ありました』
パムが積もった雪の下を掘っている。
『え?』
何か肩透かしを食らった気分です。
『多分これではないかと』掘った雪の中に赤いレバーらしきものが壁に埋め込まれた状態で現れた。
『よくわかりましたねえ』
『少し移動した場所に下に向かっている矢印が壁に書かれてありました』
『見せてください。あ、メアさんも見てくださいね』
『はい』
『どうでしょう』パムが心配そうに尋ねる。
『特に何も仕掛けはなさそうですね』
『はい、そう見えます』
『では、発見したパムさん。レバーを回してください』
『はい』
四角くくぼんだ壁の中にレバーは横に置かれていて、手で握ると左下に回せるようになっていた。パムは静かに回す。左の上を支点にしてレバーは左下に向かって動いた。
プシューと圧搾空気の漏れる音がして、壁に四角い筋ができて、その部分が手前に浮き上がり、そして横にスライドする。
『珍しい動きをする扉じゃなあ』
『確かに。私のいた世界の宇宙船のハッチに近いですねえ』
『空を飛ぶ船か。さて、ここに入るのか』
『それはもちろんでし。凍えるよりはましでしょう』
私はそう言ってその中に入る。みんなも一人ずつ順番に中に入っていく。
扉の中はかなり広く、白くてまぶしくて、どのくらいの広さなのかわからない。目がまぶしさに慣れてくると、その部屋の輪郭がおぼろげながらわかってきた。四角く広く天井も高い。そして何もない部屋。正面には黒くて縦長の四角い穴があり、そこが次の部屋に通じる出入り口なのだろう。
全員で服の雪を落としている。暖かいため、毛皮についた雪がボタボタと体から落ちていき、すこしでも体を動かすと汗ばむくらいだ。
「上に来ている毛皮は脱いでも良さそうですね」
私は、真っ先に毛皮の服を脱ぎ始める。みんなも真似して脱ぎ始める。ユーリは背中に大剣を背負い直し、さらに持ってきていた脇差しを腰につける。メアは、毛皮の中に隠し持っていた暗器やら短剣をスカートをたくし上げて太もものガーターベルトに付け直し、パムは小さいからだからいつもの体型に戻している。
私は、正面にぽっかりと空いた縦長の四角い黒い穴に向かって歩き出す。そこは扉ではなくただの穴のあいた入り口で、中に入って進もうとすると行く先に明かりが灯り、次の部屋までの長い廊下であることがわかった。私は、そのまま進んで、みんなもそれに続いて歩いていく。
「ぬし様、不用心ではありませんか」
「誰かが最初に進まなければならないのなら、私が先に行きます。皆さんを危険な目に遭わせたくないので」
「それは私達も同じです。ぬし様に何かあったら」
「きっと大丈夫ですよ。ほら着いた」
そこは、最初の部屋とは違い、少し小さな部屋で、正面にはさきほどと同じ縦長の黒い四角い穴が空いている。そして、部屋の中には応接セットのような豪華な長椅子、椅子、応接テーブルが置いてある。
「私達は休憩するつもりはありませんが」
私はそう言って次の四角い穴へと向かったが、
「警告します。この先は危険です。ここを通るものは死を覚悟してください。そして、この世界で生まれたものは、通ってはいけません。通ろうとすると拒絶されます。よろしいですか」
部屋の中に唐突に無機質な声が響く。
「この世界に生まれたものか、なるほどな」
モーラは、そう言ってその入り口に入ろうとするが、あっけなくはじかれる。
「じゃあ私も試してみようかしら」
アンジーが続いて入ろうとするが、それも拒まれた。
レイ、パム、エルフィと続いて試すが、いずれも拒まれる。
「私が先に行きます」
覚悟をしたようにユーリが試して、ほんの少しだけの間が空いた後、やはり拒まれる。
「先に私が」
そう言ってメアがその入り口に入ろうとすると、しばらく間があって通過できた。メアは先へは進まず、一度こちらに戻ってくる。
「では最後に私が」
私はそう言ってからメアのそばを通り、その入り口に入る。
何事もなく通れた。私は一度戻ってみんなの前に立ち、
「では行ってきます」
「ぬし様、行かない方が良いかと思いますが、どうせ言っても無駄ですね」
パムは、私の表情を見て諦めたように言った。私は、微笑みながら、こう言った。
「パムさん、それから全員に確認します。ここからは渡してある無線機をオンにしてください」
そして、さらに付け加える。
「その無線機は、両方のボタンの裏側にスイッチがついています。何かあったら両方のスイッチを3つ数える間、押し続けてください。家まで飛んで帰ることができます。まあ、ここの雰囲気からしてたぶん大丈夫でしょうけど」
「大丈夫だと思うか?」
「こんな椅子まで用意しておいて、殺すこともないでしょう。下手に動きさえしなければね。それに、モーラとアンジーを殺した段階で問題になりそうですから」
「そういうことなのか?」
「そう信じたいです。では行ってきます」
「気をつけてな」
「ご無事で」
私とメアは、みんなに見送られてその入り口から次の部屋に向かう。細長いその廊下は、私達が近づくと少しの距離だけ明かりがつき、通り過ぎると明かりが消える。振り返ると遙か遠くに小さな白い明かりが見え、そこで見守る家族の陰が見える。かなりまっすぐ歩いているようだ。
「メアさん、近づいていますか」
「はい、もうほとんど近くに、彼は・・・父はいます」
そそうして、長い間歩いて、新しい部屋に着いた。そこは部屋と言うよりは、少し広い廊下だ。長くそして明るい。まだ先がありそうで、その廊下には、大きな石がゴロゴロ転がっている。その石は、一つとして同じものがなく、しかもいびつな形をしている。まるで、人や魔獣が倒れているような形をしている。
「ご主人様、これは石化でしょうか」
メアは言いながらそれらの石をよけながら前に進んでいく。
「ここまで無理矢理進んできて、こんな風にされたのでしょうか」
私は、ひときわ大きな石の前で立ち止まり、その石を凝視して、解析を試みたがただの石にしか見えない。
「何かわかりましたか?」
メアは、私が顔を上げたタイミングで尋ねてきた。
「ただの石であることしかわかりません。お父さんの信号はまだ先ですか?」
「もう少しだと思いますが、この道に沿って進むとどんどん右にずれていきます」
「それでも道を歩かないとだめそうですねえ」
メアの言葉どおり、道は途中で左右に分かれていて、右を選択して歩いて行くと、そこには大きな扉があり、その前に椅子に座っている人の石像があった。
「ご主人様。これが私のご主人・・・いえ、お父様・・・父です」
メアが、その石像を見てそう言った。
「そうでしたか。しかしおかしいですねえ。メアさんには点滅している信号として見えていますよね。でもこれではまるで死んでいるようじゃありませんか?」
「近づいてみます」
メアは、そのペンダントを服の上に出し、その石像に近づける。
すると、石像が全体的にほんのりと赤く光り、光が収まっていくと同時に石像の色が変化して、石化が解け始めてきた。
彼は椅子に座っていて、その状態からゆっくりと目を開ける。
「ご主人様・・・いえ、お父様」
「ああ、メアジストなのか、久しぶりだねえ、母様(かあさま)は、パープルはどこだい?」
ボンヤリとメアを見ながらその男、ブリュネー・アスターテは言った。
メアは近づいて、その足元に跪き、その体を抱きしめる。彼はメアの頭を撫でながら、徐々に意識が覚醒してきたのであろうか、険しい表情になる。しかし、あきらめたようにこう言った。
「そうか、ここまで来られたのだねえ。ありがとう。会えてうれしいよ」
彼はそう言って目を細めてから、私の方を見て、
「あなたが、メアジストの、娘の主人になられた方ですね」と言った。
抱きついているメアをゆっくりと促して立ち上がり、視線を床に移すと、目の前にテーブルと椅子が文字どおり生えてくる。
「座って話しましょう。メア」
そう言われてメアは残念そうに離れ、今度は、私の手を取り彼の向かい側に座る。手を離さないメア。メアの手は震えている。
「初めまして、私は、そこにいるメアジスト・アスターテの父、ブリュネー・アスターテと申します。しばらく石化していましたので、立ってご挨拶できないのはご容赦願います」
彼は座ったまま頭を下げた。
私は、立ち上がり、
「初めまして、私は・・・」
「魔法使いであれば、お名前はお控えください」
厳しい目で私を見る。
「はいそうします」
「不用心です。メアジストの父であるからと言って、敵でないとは限りませんよ」
「失礼しました」
「今のは冗談ですが、残念ですが私はあなたの敵かもしれませんので」
「どういうことなのでしょうか」
「あなたはここまで導かれてきた、そういうことです」
「あなたがメアさんを使って導いたと?」
「そうではありません、ここにたどり着く方法はいくらでもあります。メアを利用したつもりもありません」
「残念ながら私は、あなたが残したペンダントのせいで一緒に暮らしている家族が頭痛を訴え、その原因がメアさんの過去にあると判断して、頭痛の原因を排除したかっただけなんですよ」
「ああそういうことですか。ですがこの塔に入ってしまいました。後戻りはできませんよ」
「どういうことなのでしょうか」
「あなたは、これから話す事を聞く資格を持っていて、その話を聞く義務も持たされたのです」
「資格と義務ですか」
「はい。改めてこれから話す事は、誰にも話さない方が良いと思います。まあ、話したとしても半信半疑になりますし、話した事が知られれば、きっと死ぬまで襲われ続けることになります」
「私としては、聞きたくないですが・・・」
「ここに来てしまった時点で、聞いていないと周囲に言っても到底信じないでしょう。でしたら聞いておいたほうがましでしょう?」
「確かにそうですね。では、せっかくですので聞かせてください」
「やはり魔法使いはそうでなければなりません。では簡単に言います。この世界は箱庭です」
「そうでしたか」
「やはり驚きませんね。あなたは異世界から転生してきたのでしょう?でなければ疑問も持たず、ここに来ることもなかった。異世界から来たなら当然至る疑問ですからね」
「ご主人様、そうなのですか?」メアは私を見てそう言った。
「おや、我が娘メアジストにご主人様と呼ばせているのですか」
「お父様違います。私が勝手にそう呼んでいるだけで。その、ほかの家族の方と呼び分けのために・・・」
メアがそう言うと、彼は、しばらく上の空で何かを見ているようです。
「ふんふんなるほど。ほかにもお妾さんが6人もいると」
「どうしてそれを・・・」
メアが困惑している。
「もしかして、補助脳の記憶を見ていますね」
「わかりましたか。さすがですね。そうです。私にも閲覧の権利があるのですよ」
「お父様ひどいです。恥ずかしいです」
「ホムンクルスとして連れ歩いていたときの行動パターンの確認と修正のために閲覧できるようにしていたのです。もっともその時は、再会するとは考えていなかったのですが。意外なところで役に立ちましたね。それにしても、DTさん、あなたヘタレすぎますよ。全く手を出さないなんて。父親としてはうれしいですが、まるで私の娘に魅力が無いみたいじゃないですか」
「いや、それを言われても、家族なので」
「まあいいでしょう。時間も無いですから。急ぎましょう」
それって、あなたが横道にそれたせいですよねえ。
「さて、この場所はこの世界に生きる者達が神と言っている人が作った箱庭の管理を担っている場所です。そしてしばらく放置されています。私の脳に刷り込まれた記憶によると、最初は、植物を、そして動物を、そして、ホビット、獣人やドワーフなどを徐々に作り出して送り込んだようです。そして人間を送り込みました。そこで、神は人間を制御できなくなり、人間達は世界を侵略し始めます。悩んだ神は、何度か天変地異を起こして、人間を壊滅状態まで追い込みますが、殺すことまではできませんでした。そこで魔族を作り、送り出しました。でも、魔族はその凶暴さと繁殖力が予想以上で、より一層この世界は混沌としたのです。その時に魔法が作り出されました。これが私の知っている事実です。私がここに至り、そして眠らされたときには、すでに世界は混沌を極めていました」
「眠らされたというのは、その神にですか?会ったのですか?」
「神に直接会ったのではなく、神の使いと称する者の声を聞き、そして取引を持ちかけられました」
「取引ですか」
「ええ、殺さない代わりにここで石化して生き続け、訪れる者に説明し、従わないなら石にしろと言われています」
「何に従わないとなりませんか」
「簡単ですよ、「この秘密を誰にも話すな」です。話せばどこにいても殺されると」
「でも、他人に話したという事実をどうやって知るのですか」
「さあ、そこまでは私もわかりません。ここで石になっている人たちは、私が来る以前からここにありますし、私が起こされて出会った者達は、ほんの数組です。それも偶然にここまでたどり着いた者達で、真実に近づいたからここに至った者達ではありません。ただここに何もないのを知って暴れて、私は指示されてしかたなく石にしました」
「あなたの意思でやったわけではないと」
「はい、私は真実の語り部であって、裁定者ではないようです」
「あなたが逃げたらどうなるのですか?」
「仮にあなた達がここからいなくなったとしたら自然に石化するでしょう。もっとも逃げようと思えば何かを代わりにすれば良いのかもしれませんが」
「どういうことですか」
「以前石化する時に暴れた魔族がいまして、目の前で石化が始まったので腕を切って放置してみたのです。すると、魔族の石化が終わった後、その腕の石化が始まった後、私の石化が始まりました。生体反応のあるものを石化するようです。つまり、この部屋に私が残る限りは、石化されるようです」
「では、私と一緒にここから出られれば、石化しないかもしれないのですね」
「ですが、今まで一度もここを出て行った人はいません」
「なるほど、でもやってみる価値は、ありそうですけど」
「いいえ、あまりにもリスクが高すぎます。私としては、娘に会えましたので思い残すことはありませんが、魔法使いとしては、まだ可能性が残されています。ぶっちゃけまだ死にたくありません。急いだ方が良いかもしれませんよ」
少しだけ微かな揺れが始まっています。
「わかりました、またお会いできると思いますので失礼します」
「ああ、待ってください。伝え忘れていました。ここで聞いた事を話さないように魔法がかかりますから注意してくださいね」
「どうしてそれを知っているのですか」
「ここに石化される時に聞きました。その扉を出る前にそう説明されるみたいです」
「まだ時間はありそうですか?」
「今回のケースは初めてなのでなんとも言えませんが、説明は簡単にしろと言われています。何か催促されるかもしれません。ですが何かありましたか」
「この世界に違和感を持った事柄を教えてください」
「ああそうですね。私は天体です」
「星ですか」
「ええ、毎年同じ軌道で動いていますから。しかも雨も風も同様にほとんど誤差無く降ったりしています。ちなみにあなたはどうして気付いたのですか」
「昆虫です。本来このような世界に昆虫は必要不可欠なはずなのにほとんど見かけません。あと、海に誰も行ったことがない。ドラゴンでさえも。そして、ドラゴンは知っているふりをしている」
「あなたはドラゴンと、ああ、土のドラゴンと暮らしているんでしたねえ」
「あなたは、天体に疑問を持ってここまで来たのですね」
「そうなんですよ。どうにも不可解でして、それと山を越えた話を聞かないのです。ですから私は山を越えようと装備を調えて山に入りました。雪に埋もれ氷に阻まれ何度も遭難しかけて、方位まで見失うのです。それで私は位置マーカーを作り、それを山裾から埋め込みながら登ったのです。すると、戻るはずのない元の場所に戻ってきました。道がねじ曲げられている。狂わせる何かがあると認識したところ、突然それは現れました。白い塔が目の前に現れ扉が光り私を招き入れそこには、吹雪はなく暖かく静かな廊下が続いていました」
「さっきのあれは壁ではなく塔だったのですね」
「壁ですか?私の時にはあきらかに塔でした」
「違うルートですかねえ」
「さあどうなのでしょう。壁と見間違うような塔ではありませんでしたから」
「最後にもう一つだけ、先ほど神の使いがと言っていましたが、神はいると思いますか?」
「神というよりこの箱庭の創造主ですね。しかもここの世界の全てをいつでも見ているわけではありません。少なくとも、たまにしか様子を見ていないようです。それが、1年なのか10年なのか100年なのか、決まった周期ではないようです」
「正直に言いますと私は協力者が欲しいのです、今回は準備が不十分ですので、改めて助けに来ても良いですか?」
「私の覚悟が決まったらこちらから連絡と言いたいところですが、あなたがまたここに来られるとは限りませんね。でも、次にここを訪れることができたなら、あなたの可能性にかけてここを出てみたいと思います。それではだめでしょうか」
「もう一つ。石化の魔法を一度見せてもらえませんでしょうか」
「ああ、メアジストの頭の中にあった解析ですね。いいでしょう。私が自分の足に限定して石化して見せましょう」そう言うと彼は、わざと魔方陣を作って見せてくれた。
「ありがとうございました。せっかくですのでひとつだけ」
私は顔を近づけてぼそぼそと小声で話した。
「まあそうですね。気が向いたら遊んでみます」
そう言って彼は、自分の足の石化を解いた。彼は自分の足を見ながら、
「石化を解くなんて今まで考えたこともありませんでした。できるものなのですねえ。ならば周囲にいる魔族や獣人も石化を解除してみましょうか。ついでに遺伝子操作でもしてみますか」なぜかうれしそうに言った。
笑い合っていると、反対側の扉の方が少しだけ薄暗くなり、そして細かい振動が廊下を揺らします。
「そろそろまずそうですね、では私達は戻ります」
私は、そう言って立ち去ろうとする。メアもまた私と一緒に戻ろうとしていた。しかし、先ほどの曲がり角にさしかかった時にメアは立ち止まり、
「ご主人様、まだ時間がありますでしょうか、父様、いえ父に話しておきたいことがあります」
私は、
「時間はまだ大丈夫だと思います。この先に行って待っていますので、気をつけて」
と言って、無線機のスイッチを切り、白く長い廊下を歩いて戻る。その間も振動は続いていて、少しずつ大きくなっている。
戻って来たメアの姿を見てメアの父は驚いている。
「どうして戻って来た。ああそうだな。私に一言言いたいだろう。おまえをこの世に無理矢理縛り付け、無限に近い生を与えてしまったからな」
「それについては、補助脳に支配されていたときには、多少は恨みもしておりました。今は感謝しております。ご主人様とお会いできて私は幸せです。私の家族と共に末永く暮らして行ければ幸せでいられると思います。そして、ご主人様の子をもうけたいと思うようにまでなりました」
「そうか、伴侶を見つけたか」
「はい」
「うれしくて寂しいなあ。父親の私が言うことではないが、お前にはそれが可能だ。だがまだその時ではないのだろう」
「どういうことですか」
「その時が来れば判るとだけ言っておく。ただ、相手への愛情表現は忘れないようにな」
「何をすれば良いのでしょうか」
「それは私には言えない。恥ずかしいのと悔しいのと半々だな。だが、愛情が増えればその可能性は高まる。そう思っていてくれ」
「ありがとうございます。先ほどのお話では、またお会いできると思います。それまでお元気で」
「ここより逃げてからは、どこかに隠れながらの生活になると思う。もう嫁いだようなものだ。ご主人様のことだけ考えなさい」
「はい。私を死なせず生かしてくれて、私の最愛の人に会わせてくれたこと。本当にありがとうございました。お父さん」
「その言葉だけで十分だ。いいから早く行きなさい。かなり危険になってきているようだ」
「はい」
少ししてからメアが戻ってきた。
「ちゃんと話せたかい?」
「伝えたいことは伝えられたと思います」
「そうですか。では、急いで戻りましょう」
「はい」
私達は、白い廊下が途絶えるところに到着して、そこを通過しようとすると、そこには何かの防壁が張ってあり、
「約束を違えることがないよう魔法をかける。約束を違えた場合には焼きつくすことになる」
そう聞こえて、私達2人それぞれに魔法陣が頭から足先にゆっくりと降りて、そして消えた。
「とりあえず急ぎましょう」
「はい」
長く暗い廊下を走り抜けて、私達は家族の元に戻りました。その時にはかなりの揺れになっています。みんなは、すでに防寒着を着て、私達の帰りを心配していました。
「どうじゃった」
「話は後です」私はそう言って、防寒具を着始めました。メアも着ています。
揺れが大きくなり、壁がきしんでいます。全員でその先の出口の扉のある部屋に走っています。廊下自体が、振動とともに節々がずれていて、走るのも容易ではなくなってきています。扉を開けて一人ずつそこを出るときには、立っているのがやっとの状態になっていました。雪野原に全員で出たときには、振動も止み、壁はなくなっていました。吹雪はおさまっていて、曇天の中、雪がチラチラと降っています。
「メアさん、お父さんの信号はどうなっていますか」
「到着して会話を始めたときからすでに消えていました。今も信号はありません。きっと一度きりの仕掛けだったのだと思います」残念そうにメアが言った。
「会えたのじゃな」モーラが聞いた。
「はい、父様・・・父に会うことができました」
メアは、そこで私達に背中を向ける。肩が震えている。私達にはかける言葉がなかった。
『こういう時にはどうしたら良いのですかねえ』私は心の中でつぶやく。
『しーっバカか、おぬしは、丸聞こえであろう』
『あ』
『ほんっとうにあんたはデリカシーがないわね。あ』アンジーも心の声がダダ漏れです。
震えていたメアの肩がまた震えだし、今度はおなかを抱えて笑い出す。そして、目を拭った後、こちらを向いて、にっこり笑った。
「みなさんありがとうございます。その気持ちだけで十分うれしいです」
そうして全員で下山した。
「残念ですがお話しできることは何もありません。メアさんがお父さんと会えたことだけが今回の成果です」
私がそう言って、メアが頷いたので、そこで誰も詮索しなくなった。
「モーラ様とアンジー様が知りたがらずに、しかも静かなのが気になりますが、どうしたのでしょうか」
パムが私にそう言ったが、私も答えることができずにいる。
「それは確かに気になりますが、お二人とも聞いても答えてくれないでしょうねえ」
パムの問いに私はそう答えた。
何も話さないモーラの手に乗って、私達は、自分たちの家に戻ってきた。もちろん一度、モーラの洞窟まで行ってからですが。
「ここは~祝杯を挙げて~お風呂ですよね~」
エルフィがそう言ってうれしそうに笑った。
「そうですね、そうしましょう」
「やった~。帰りはあの子達を連れて帰らなきゃ~」
エルフィがうれしそうに先に行って、私達はゆっくり歩いて町に向かう。
「そういえば、メアの父を見た、ぬし様の感想は何かないのですか」
「顔、特に目元が似ていました」
「そうでしょうか」
メアは実感があまりなさそうです。
「もともとご両親は似た雰囲気を持っていたように思っていますがどうでしょうか」
「でも、メアさんのお母様には会ったことはありませんよね」
ユーリが鋭いところ突っ込む。
「ああそうですねえ。どうしてそう思ったのでしょうか」
「へんなあるじ様です」
そうして、その夜は、少し長い宴会のあと戻って来ました。
その後のお風呂でのことです。
「父だと知らせず、メイドとしてホムンクルスとして扱う。むずかしいですねえ」
私は天井を見上げてそう呟く。
「葛藤もあったろうなあ」
「ご主人様、一緒に寝ても良いですか」
「これ、もう不眠はないのだろう。順番を守らないか。」
「あの街に言ってから、少し寂しくなりまして、ダメですか?」
「だめです」
「だめですよ」
「それはちょっと~」
「甘えすぎじゃのう」
全員がわかっていながら意地悪しているのがちょっと可愛いですね。
「それでは、これまで私が他の方に遠慮してきた分の精算を行います」
「わかった。わかった。すきにするがいい」
そうして二人っきりでベッドに入る。
「メアさん後ろからどこを触っているのですか。だめです。だめですって」
「後ろで騒ぐな。眠れぬわ」
「今日もお元気ですね。お元気ですね」
「だからそういうのはやめろといっておるじゃろう」
「メアさん出禁にしますよ」
「わかりました反省します」
翌朝には、メアさんの手で朝食が作られて、いつも通りの生活が始まったのです。ええ、エルフィの秘密が気になりだすまでは。
Appendix
「今度は山に向かったんだね」
「はい」
「ついにこの世界の秘密を暴くつもりなのかな」
「阻止するのですか」
「いいや、私達にも阻止する権利はない。阻止するつもりもない」
Appendix
またここに来るみたいだし、その時には、とっても楽しいイベントを用意しておきましょう。
続く
0
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
【完結】ちびっこ錬金術師は愛される
あろえ
ファンタジー
「もう大丈夫だから。もう、大丈夫だから……」
生死を彷徨い続けた子供のジルは、献身的に看病してくれた姉エリスと、エリクサーを譲ってくれた錬金術師アーニャのおかげで、苦しめられた呪いから解放される。
三年にわたって寝込み続けたジルは、その間に蘇った前世の記憶を夢だと勘違いした。朧げな記憶には、不器用な父親と料理を作った思い出しかないものの、料理と錬金術の作業が似ていることから、恩を返すために錬金術師を目指す。
しかし、錬金術ギルドで試験を受けていると、エリクサーにまつわる不思議な疑問が浮かび上がってきて……。
これは、『ありがとう』を形にしようと思うジルが、錬金術師アーニャにリードされ、無邪気な心でアイテムを作り始めるハートフルストーリー!
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ
犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。
僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。
僕の夢……どこいった?
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる