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第25話 DT神から見放される
第24-6話 アンジー到着する
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○方針が決まった
そこで一同沈黙してお茶を飲む。
「あんたがこのまま仲介を続ければ、会談の仲介役であることがバレて、どうあがいても魔王への先兵として、まっさきに切り込まされるのではないかしら。それを拒むと裏切り者として、たぶん辺境の地でもどこでも暮らせなくなりそうね。人類のために戦わないお尋ね者として追い回されそうよ」アンジーが私に向かってバイバイと手を振る。一緒には来てくれなさそうですねえ。
「それも面倒な話じゃのう」
「わかりました。とりあえず私は関与しないで会談を成功させて、何が起こされるかを見極めないとだめですね」
「起こされるかどうかもわからんのになあ」
「まず、アンジーの考えたシナリオ通りなら、今戦争をしている国の主要都市への防衛を考えましょう」
「でも、防衛を行うのは、全部の都市は無理ではありませんか。時間がありませんよ」
「今回可能性のある場所は3カ所しか無いんですよ」
「どこになりますか」
「ロスティア、ハイランディス、マクレスタの3国の首都もしくは、その近くの街です」
「なるほど、会談が行われるところのそばというところか。国王がいない方がむしろ統合しやすいしなあ」
「もしくは違う2国の首都どちらかですねえ」
「妥当な線ね」
「そうじゃな」
「そしてですねえ。敵をあぶり出したいのですよ」
「あぶり出す?」
「というより、情報をリークしている種族を見つけたいのです」
「ああなるほどな」
「それでですねえ。こんな感じで段取りを取って欲しいのですよ」
私は、モーラとアンジーに小声で説明した。
モーラとアンジーは、2人とも何かを考えている。私はいつの間にか私の膝に乗っているレイをもふっていた。レイやりますね。いつの間に私の膝に。でもレイその計算通りみたいなドヤ顔はやめてください。可愛くないです。
「その発想は私たちにはできないわねえ。さすが常識に囚われない異世界転生者ね。知らないわよ、天地がひっくり返ったって」
「そうじゃな。大馬鹿の考えることは我らには理解できぬ」
「まあそう言わずに。どうでしょうか」
「うんよくわかったお前馬鹿だろう」
「お褒めにあずかり光栄です」
「褒めておらんわ。正直に馬鹿と申しておる。いや、おぬしの語彙だとあほだろうおまえ」
「あの世界でもそういうポジションだった気がします。発想力こそがお前の特技だと」
「あんた記憶戻ってないわよね」
「はい、大丈夫です。キリリ」
「怪しい」
アンジーさん、そう言って私の顔をジト目で見るのはやめてください。照れるじゃないですか。
「それでそこの大馬鹿。これが本当にうまくいくと思うのか」
「まあ、ダメでもいいじゃないですか」
「ダメで良いってあんたねえ。やるまえからそのスタンス本当に大丈夫なの?」
「そう言わずに付き合ってくださいよ」
「わしらが静かに暮らすために必要なら仕方が無い。理屈は破綻しているが付き合わせてもらうわ」
「まあねえ、あんたとずっと一緒に暮らすって約束したしねえ」
そう言って恥ずかしそうに私を見るアンジーさん。少し顔が赤いです。
「では、まず一つずつ解決していきましょう。アンジーさん、例の俺様勇者のところに行ってきてください。できれば、宣託があろうとなかろうとアンジー天使様のお力で良い方向へお導きください」
「なんか嫌な言い回しねえ。でも良いわ、行ってくるけど、メアを連れていくわよ。さすがに私ひとりでは、敵が出ても戦えないから」
「わかりました。同行させていただきます。ご主人様よろしいですか?」
「私も一緒に行きたい・・・」
「ダメです」とアンジー
「無理じゃ」とモーラ
そんな2人して同時に言いますか。
「さて、話も終わったことだし、わしがアンジーとメアを乗せて言ってくるわ。あと、パムにもこれを渡してくれば良いのじゃろう?」
「はいお願いします。念のために天使の名前を出さないこと。パムは同行しないようにと念を押してくださいね。それでは私は、歩いてエルフィにこれを渡してきますね」
「あ、僕が行ってきますね」そう言って膝から飛び降りたレイ。
「そうですか。それではこれを渡してきてください」獣人化したレイに通信機を渡す。
「ラジャー」敬礼をしてレイは、胸のポケットに通信機を入れて飛び出していった。
アンジーとメアは、部屋に戻り着替えているようだ。
「なぜか、またみんなバラバラで寂しいですねえ」
「そうじゃな。最近はみんなそれぞれ役目を持って出かけざるを得ない状況になっているのう」
「それこそが、見えない手の陰謀じゃないかと勘ぐってしまいますねえ」
「ああ、戦力の分断。すれ違いによる気持ちの分断か」
「はい。とても不安です」
「おぬし。わしらは隷属という絆を持って、しかも特殊な脳内会話が出来るんじゃぞ。感情が伝わるのだから、気持ちが手に取るようじゃないか」
「だからこそ、気持ちが離れてきたらわかっちゃうじゃないですか」
「ばっかじゃないの」部屋に入ってきたアンジーさんが大きな声で言った。ああ、旅装束も可愛いですねえ。
「だ・か・ら、その脳内感情ダダ漏れな会話やめてって言ってるでしょ」
だからアンジーさん顔が少し赤いですよ、怒りすぎです。
「この朴念仁!」
「まあまあ。ご主人様のその素直な感情こそが私達の絆です」そう言って入ってきたメアさんは、メイド服があまり変わっていないようにも見えますが、ちょっと足下が見えていますねえ。それもまた可愛いです。
『!!』おや、アンジーさんちょっと怒ってますねえ。どうしたのしょうか。
「そうやっておぬしの心がダダ漏れなおかげでな。わしらは安心していられるのじゃ」
「まあそうとも言えるわね」
「確かにその通りでございます。ご主人様はそのままお変わりませぬようお願いします」
「よくわかりませんが、変わりようもありません」
「さて、ではアンジー、メア行くぞ」
「お願いね」
「よろしくお願いします」
「それでは、アンジーさんくれぐれも気をつけて。メアさんアンジーのことよろしくお願いします」
そして3人が出て行く。私は外に出て、モーラが飛び上がってドラゴンになり、メアがアンジーを抱きかかえてその手に飛び乗った。そして、モーラの姿が消えて、羽ばたく音だけが遠ざかるのを聞いていた。
しばらく立ち続け、家に入り扉を閉めると、私はすごく寂しい感情に包まれた。前回の時よりも一層寂しさを感じた。ひとりなんだと。
「さて、センチメンタルではいられません。私の出来ることをしましょう」
私は気持ちを切り替えて地下室に入っていく。
モーラの手の中で、通信機の機能をみんなで試している。
「あやつは地下に入ったようだから、あやつの魔力を使わないで使えるのか試してみようか。あーあー、レイ聞こえるか。エルフィに届けたか」
『わ、びっくりしました。骨伝導ってすごいです。部屋の中では、二重に聞こえたのですが、すごくはっきり聞こえます』
『おお確かに聞こえやすいな。ってわしらの脳内会話を変換してるってことか』
『確かに私の知っている普通の通信機なら外の音も聞こえるのよ。それが脳内でいつも通り話したら遠くまで話せるって・・・あのバカは、またこの世界の常識をすこしばかり逸脱したものを作ってしまったのねえ』
『でもアンジー様。これは、この世界の常識の範囲内ではありませんか』
『まあ、そもそも私達だけしか出来ない脳内会話を通信に使うって他の人には絶対出来ないわねえ。逸脱はしていても理論は前からあると言えばあるのかしら』
『確かになあ。他の魔法使い達は、わしらの会話の内容は知られなくても会話していることは気付かれているからなあ』
『微妙なところね』
『レイちゃんこれどうやって使うの』
『スイッチがー』
『レイ、左の丸いボタンを3秒以上長く押しなさいと言ってあげなさい』
『ええとー、首に付けて、左の丸いボタンを長く押し続けてください』
『あ、本当だ聞こえるよー、でも違和感あるねー』
『エルフィもそうか』
『あーモーラ様―聞こえますかー今どこですかー』
『ビギナギルは過ぎたぞ』
『エルフィ、私達がいないからといってご主人様にベタベタしないように』
『あ~すごい~メアさんと会話してる~今はどこですか~』
『モーラ様の手の上です』
『そんなに遠いのにこんなにはっきり聞こえるのですか~やっぱり旦那様すごい~』
『さっき言ったことを守ってくださいね』
『え~よく聞こえない~』
『嘘を言いなさい。悪さしたらレイから咬まれますからね』
『ひどい~でも~レイも一緒に旦那様に甘えるから大丈夫~』
『わかりました。2人とも私が家に帰ってからのご飯がどうなるかわかりますね』
『ちゃんと静かにしています~』
『よろしい。レイもわかりましたね』
『はい』
『さすがに遠いと感情までは伝わらんなあ』
『でも、ずーっと脳内会話が続くのですよ、それは厳しくないですか』
『もう一回押すと会話しか伝わらなくなりますよ。さらにもう一回押すと脳内会話だけに切り替わりますし、3秒以上長押しすると通信が切れます』
『おお、地下室から出てきたか』
『ちょっとお湯を沸かしに出てきました。私がいない時でも通話できるようテストしてくれたのでしょう?どうでしたか』
『問題ないわよ』
『非常にクリアです』
『すごいです~』
『親方様すごいです』
『ああ、これはすごいのう。感心したわ』
『なぜか、みんなの声が聞けて少し寂しくなくなりました。ありがとうございます』
『すぐ帰りますよ~』
『はい、洞窟からすぐに戻ります』
『ああ、安心してください。また地下に入りますのでしばらく会えませんから』
『しょぼーん』
『おう、そろそろユーリの気配のそばに降りるぞ。ではな』
『では』
『頑張って~』
そうして、アンジーとメアは地上に降ろされた。
○メアさん出番です
「さて、まずは廃城に行こうかしら」抱き抱えられていたアンジーはメアから下ろしてもらうとそう言った。
「もう少し先ですね。ですが反対方向で何か争っているようです」メアが周囲を見ていたのをやめて、反対側の道路を見て言った。
「とりあえず、ここの住民が襲われている可能性もあるわね。行ってみましょうか」
「はい、先に私が行きましょう」メアが小走りになり、アンジーを見る。
「お願いね」
メアはそう言って走る速度を上げた。アンジーは、それでもかなり速いスピードで走っていたが、あっという間に置いていかれた。
「急ぎすぎないでね、素性がばれるわよ」
「はい。ああ、兵士が子どもの抱えた物資を奪おうとしています。あれは、ネクロマンサーの子ではありませんか」かなり遠いが顔を認識できたようで、さらに加速する。
「ああ、そういえばこの辺に住んでいたわね」アンジーがそう呟いた。
数人の兵士に囲まれ、横に抱えた荷物と共にリアンは座り込んでいた。
「この食料、どこから盗んできた。正直に言え」リアンに剣を向けて兵士が言った。
「違います、私の知り合いからいただいたものです」リアンは必死に荷物をかばっている。
「こんなに丁寧に仕分けされたものがいただいた物なわけあるか」他の兵士も叫んでいる。
「本当です」
「いいや、これは軍隊から盗んだ物だ。そうなんだな」意味ありげに一人の兵士が言った。
「だから違うといっているじゃありませんか」リアンも必死だ。
「まあ、どっちにしろお前は盗賊として殺されて、この食料は俺たちがもらいうける」兵士はニヤリと笑って、周囲の男達も同じようにニヤニヤ笑っている。
「そんな」リアンは悲しそうな顔で呟いた。
「良いから黙って殺さr・・・」
その兵士は、言い終わる前にそこから消えた。リアンを囲んでいた他の兵士達は何があったのかわからずたたずんでいる。
我に返った兵士達が周囲を見渡すと、少し離れたところに兵士が倒れていて、その横にはメイド服を着た女性が立っている。どうやら、ものすごいスピードで跳び蹴りを食らわせ、吹っ飛んだ兵士と共に飛んでいたようだ。
メアは倒れた兵士をそのままに、リアンに近づいて行く。リアンを囲んでいた兵士の輪はメアが近づくにつれ開かれていく。
「大丈夫ですかリアン様」メアはリアンの所に近付いた。
「あ、メアさんでしたよね。助けていただいてありがとうございます」腰が抜けているのかリアンが座ったまま頭だけ下げた。
「いいえ、まだ助かったとは言えないようですよ」
周囲の兵士は、剣を抜きメアとリアンを囲んでいる。
「貴様何者だ。そいつは盗賊。かくまうと貴様も仲間として殺すぞ」
「おや何の罪でしょうか」メアはリアンを背にして立つ。
「軍の物資の窃盗だな。重罪だ」横の兵士がそう言った。
「この荷物のことを言っていますか?」視線を動かすことなくメアは荷物を指さして言った。
「ああ、それは軍の食料だ」なぜか兵士はニヤリと笑った。
「残念ですが誤解ですよ。これは私の家族がこの方におわけした食料に間違いありません」
「嘘をつくな、それは軍の・・・」
「嘘ではありませんよ。この地方には売っていない野菜も入っていますから」メアはそう言ってかごに近づく
「どうしてそんなことを知っている」
「この野菜は私が地元の村で買い付けた物ですから」メアは、そう言ってかごの中にある野菜を見せる。
「・・・」兵士は何も言えない。
「そうやって、ここに暮らす方々から物資を簒奪しているのですね」メアがそう言った。
「・・・」
「さて誤解も解けたことですし、早々にお引き取りください」メアは兵士など気にせずリアンに向き直りリアンを立たせる。
「いいや、力ずくでも食料をいただくぜ」血走った目で兵士が言った。
「あきれた兵士達ですね。後悔しますよ」メアが向き直って言った。
「おもしろい、とりあえずあんたから殺すことにしよう」
「リアン様。荷物と共にそこにいてくださいね」
リアンはうなずいて、小さくなっている。
「先ほどの兵士が飛ばされたのを見てもまだ私と戦う気なのですか?」メアはあくまでも冷静にそう言った。
「さっきは不意打ちだろう。問題ない」
「では行きますよ」メアが右足だけ半歩前に出だして、右拳を胸元にあげる。
「いや、こっちが先だ!」
そう言ってその兵士は、剣で突き刺そうと走り出す。
「どこを狙っているのですか?」
メアは、一瞬で兵士に近づき屈んで胸元に入り、その兵士の顎に右の拳を軽く当てている。
動きを阻まれその兵士は、右腕を伸ばしたまま動けないでいる。
「次はどうしますか?」
メアはそう言って、その場からバックステップして、先ほどと同じ立ち姿に戻る。もちろん兵士が前に動いた分だけ距離は縮まっている。
「隊長やめましょう。まずいですよ」周囲を囲んでいた兵士の一人が体調と呼ばれた男に声を掛ける。
「やめられねえんだよ。なんて言うのか、負けることはわかっているのに体が戦おうとするんだよ。俺にもどうにも出来ねえ」
冷や汗をかきながらその男は怯えた顔で剣を正眼に構え直す。
「お待ちなさい」
大きな声でアンジーが叫んだ。全員がその声の方を見る。そこにはフードをかぶった少女の姿があった。そこによどんでいた空気が一瞬で霧散して周囲が明るくなった。その兵士も、剣を下ろしてほっとしている。
「貴方たちは、兵士という身でありながら一般市民を手に掛けようとしました。反省なさい。そしてここから立ち去りなさい。そこのけが人は、私が治療をしますので、治療が終わった後連れて行きなさい。もう二度とここへは立ち寄らないように」
張りのある澄んだ声があたりに響き渡り、アンジーは倒れている兵士の元に行き治療を施し、兵士達は倒れている兵士を担いでそこから立ち去った。
「アンジー様、ありがとうございました」メアが膝をついてお礼を言った。
「あの兵士は、何者かに魔法を掛けられていたようだわ」アンジーは、立ち去った兵士達の消えた方を見ながら言った。
「はい、自分でも体を制御できていない感じでした」リアンも同意している。
「嫌なものね。さて、お久しぶりねえ。ええとリアンだったかしら」
「アンジー様、そしてメア様ありがとうございました。どうやって私の暮らす廃墟を探し当てたのかわかりませんが、見つかってしまいました。あやうく命まで取られるところでした。
そして私は、ユーリ様にもらったこの物資を取られるわけにはいかないとなぜか思ってしまったのです。どうやらこの辺一帯になにか魔法のようなものがかけられているのではないのでしょうか」
「やはりあなたも魔法使いの端くれね、掛かったことがわかったので、効果が薄れたのかもしれないわねえ」
「なにか執着心を強めるような精神魔法なのかもしれません」
「ああ、食料やプライドとかをね。なるほどさすがに自力で魔法を習得してきただけのことはあるわね。さっきの発言謝らせてちょうだい。端くれなんて言ってごめんなさい。あなたは、魔法使いとしての才能がきっとあるのね」アンジーは頭を下げる。
「いいえ、私はしがないネクロマンサーでしかありません」
「リアン様、卑屈になってはいけませんよ。エリス様も褒めておいででしたから」メアがそう言った。
「そうですか、ありがとうございます」
「ユーリから物資を分けてもらったと言うことは、ユーリに会っているわね。どこにいるか知っているかしら」
「お会いした時に私が、廃城にこの辺の人たちが集まっていると話しましたので、多分そこにいらっしゃるかと思います」リアンは道の先を指さす。
「やっぱりね。さてリアン。この辺にひとりでいるのは物騒よ、一緒に来なさい」アンジーが強く言った。
「でも私はネクロマンサーなのですよ」リアンは悲しそうにそう言った。
「そうね。じゃああなたの友達は、城の裏から入ってもらって、あなたは人見知りだからと言う事にして、食事の時だけ声をかけるようにするから。こんなところに子どもひとり置いていけないでしょう」アンジーは自分より大きいリアンを子ども扱いです。
「差し支えなければ、城の中では私が食事をお持ちしますので。城の中に行きましょう」メアがフォローしています。
「ありがとうございます。そうします。さすがに一緒には行けませんので、友達と一緒に裏手から向かいます」
「ひとつ良いかしら。あなた他にも死体を動かすことが出来るの?」アンジーが尋ねる。
「はい、友人を動かさないでいるなら見えている場所で十数体、見えないところなら5体くらいですね」リアンがそう言った。
「見えないところを操作するのはどうするの?」
「視覚を共有しているので、死体が実際に見ている範囲なら何とかなります」
「ああそうなのね。友達以外に使っている死体はあるのかしら」
「はい。労働用に使っている死体が数体ありますが」
「申し訳ないけどそれも連れてきて欲しいのだけれど良いかしら」
「いいですけど、住民の方々が不安がりませんか?」
「そこは私が説得するわ。でも、説明する前に見せると驚いちゃうので見せないようにね」
「わかりました」
「メア。この辺の音はどうかしら。何かいる気配がある?」
「今のところは大丈夫かと。アンジー様を廃城にお連れして、そこにユーリがいれば、私はこちらに戻ってリアンのサポートに回ります」
「そうしてちょうだい。では行きましょう」
そうして、リアンは自宅に戻り、アンジーとメアは、廃城に向かった。
○天使様
ゆっくり歩いてアンジーとメアが廃城に到着した。見張りが見つけて報告していたようで、ユーリが出迎えてくれた。
「アンジー様、メアさんどうしてこちらに。あるじ様にはこれは私事だとお話ししていたのですが」
「とりあえず託された物を渡すわ」アンジーはそう言って例の通信機を渡す。
「なんですか?これは」アンジーは自分の首にある通信機を指さした。
「ああ、ここにつけるんですね」そう言ってユーリはそれを首につけた。
「左の丸いボタンを3つ数える間長―く押して」アンジーにそう言われて、ユーリはボタンを押した。
「聞こえるかしら」
「声が重なって聞こえます。そうですか遠くにいる私達と連絡を取るための手段なんですね。ということは何か重大なことが起きているのでしょうか」
「理解が早くていいわね。DT!あんた聞こえてるんでしょ返事しなさい。愛しのユーリに無線機渡したんだから早く声をかけなさいよ」
しかし返事がない。
「ああ、また地下室に入ったのね。他の人たちはみんな聞こえているかしら」
「レイです。聞こえてます」
「エルフィです~すごくよく聞こえますね~」
「パムです。聞こえています。これはすごい発明です。やはりぬし様はすごい」
「メアです。一応聞こえています」
「モーラじゃ、本当に脳内会話まで通信できるとはなあ。今はドラゴンなんじゃがこれは本当にすごい発明じゃ。まあ、わしらしか使えないのじゃろうがなあ」
「本当よね私達専用、ワンオフってことでしょ?無駄な技術力だわ」
「だから。こんなものが出回ったら戦争が格段にやばくなりますってば」私は会話に参加を始める。
「あ、旦那様だ。わ~い」
「あるじ様お久しぶりです」
「ユーリの声が聞けただけでもこれを作った甲斐があります。元気にしていましたか?」
「はい。色々とありましたが、無事に周辺の皆さんと廃城に住んでいます」
「ぬし様お久しぶりです。大丈夫です。あとで色々お話しします」
「パム~。お久しぶ・・・さっき会ったばかりじゃないですか」
「そういえばそうでしたね」
「アンジーどうですか。無事に着きましたか」
「ええ、あの子に会ったわよ。ネクロマンサーの子に」
「そうですか。元気にやっていましたか」
「それも後で話すわ」
「ではご主人様。私は少し移動します」
「みんなと会話を繋ぎながら移動してください。寸断する箇所があったら報告を」
「相変わらず技術バカじゃな」
「急に声が途切れたら心配じゃないですか」
「まったく親馬鹿ならぬ家族バカじゃな本当に」
「いや、本当」
「そのようです」
「ですよね~」
「はい、そのとおりです」
「そうですね」レイが締めくくった。
そうして、アンジーとメアを送話のみオープンにして、あとの人たちは聞くだけモードにした。
ユーリはまず、アンジーを城内の人に紹介した。さすがに天使であることは伏せていたが、マジシャンズセブンの名前は広まっていて、その素性を隠しているのは訳があると誤解されたまま、暖かく受け入れてくれた。
城の上の方に崩れかけた鐘楼のところに2人で登って話を始める。
「そうですか。少し前に出会ったのが、やっぱりその俺様勇者一行だったのですね」
「やはり会っていたのね」
「はい。私が城を離れている時に兵士達が廃城に入ろうとするのを防いでくれていました。しかし、兵士達に勇者だと宣言してしまって、兵士達は勇者なら俺たちは殺せないだろうと詰め寄られ、戦うことすら出来なくなっていました。アンジー様、勇者は人を殺してはいけないのですか?」
「絶対ダメと言うことはないけど、殺さないに越したことはないわね。その勇者達のように名声を上げながら各地を回っているのなら、今の知名度で人殺しの汚名を背負うのは、勇者になる上でかなり厳しいものになるでしょうね」
「そうなのですね。それがたとえ理不尽な人たちでも、守らなければならない人たちを見殺しにしても」
「勇者として世間が認めた後であれば理由も聞いてくれるでしょうけど、勇者として認められていない時には無理でしょうねえ」
「あるじ様の言う不殺というのは、結果的に勇者に通じるのではないでしょうか」
「でもね、勇者という名称は、誰に対して使われるのかしらね」
「誰に対してですか?」
「人族の勇者であれば、人族を他の種族から守ったり救ったりした者が勇者と呼ばれるでしょうね」
「そうですね」
「ドワーフの英雄ドゥーワディスであればどうかしら」
「人族の絵本になるくらいのドワーフの英雄ですよね」
「そう、人も助けた英雄。でも、それ以外の種族は殺しているし、人族だって敵となれば殺しているのよ」
「そうなんですか?それは知りませんでした」
「勇者や英雄なんて不殺ではいられないの。所詮そんなものなのよ。彼らが死んだ後に未来の人が美化して作り出す幻想なのかもしれないわよ」
「そうです。祖父は全ての種族をその手で殺しています」パムが口を挟んできた。
「ですから、人間の絵本で英雄として描かれていると聞いて困惑したのです」
「そうだったのですね」
「だからねユーリ。不殺という考えは間違っていない。でも、もしかしたら捨てなければならない時が来るかもしれない。その時にね、私はあなたに死んで欲しくはないのよ。あなたが信念のために死んで欲しくない。もしそう思ってくれるのなら、もしその時が来たら、それにこだわらず、捨てられる覚悟もして欲しいの。あとね、あんたが死んだらあいつがこの世界を滅亡させるから。そのことも頭に置いておいてね」
「相変わらず言い方が素直じゃないですね。アンジー」ユーリはクスリと笑って敬称をつけずに言った。
「ばっ、なに言い出すの。ばっかじゃない」
「さてアンジー様。私と彼らとの出会いは最悪でしたよ。どうしますか」
「どうもしないわ。宣託があったにしろ、なかったにしろ。あの勇者達を煽動して、介入させて、この戦争をやめさせなければ私達の平穏な生活は続けられなくなるのよ」
「そうでしたね」
「しかも私達が、いいえ、あいつが関与していないように完璧に煽動しなければならない」
「難しそうですが」
『そういえばパムの方はどうなの。口挟んできたから会話モードなのでしょう?』
『はい、私の方はジャガーさん達と今一緒に行動していますので、その辺は大丈夫かと思います。すでに話を終えています』
『くれぐれもあのバカジャガーにしゃべらすんじゃないわよ。絶対、口を滑らすに決まっているんだから』
『ふふ。確かにそうですね。いや間違いなくそうですね。大丈夫です。もうひとりパーティーメンバーが増えたので、そちらの方がフォローしてくれると思います』
『『『『ええーーーっ』』』』
『ああ、戻った時話していませんでしたね。不思議な人が加わっています』
『信じられない』
『ジャガーさんではなく、フェイさんの人徳でしょう』
『ああそうね。そうよね。なんか納得したわ』
『じゃあそちらは大丈夫なのですね』
『はい、ぬし様それは大丈夫です』
「じゃあ、私も頑張りましょうか」
続く
そこで一同沈黙してお茶を飲む。
「あんたがこのまま仲介を続ければ、会談の仲介役であることがバレて、どうあがいても魔王への先兵として、まっさきに切り込まされるのではないかしら。それを拒むと裏切り者として、たぶん辺境の地でもどこでも暮らせなくなりそうね。人類のために戦わないお尋ね者として追い回されそうよ」アンジーが私に向かってバイバイと手を振る。一緒には来てくれなさそうですねえ。
「それも面倒な話じゃのう」
「わかりました。とりあえず私は関与しないで会談を成功させて、何が起こされるかを見極めないとだめですね」
「起こされるかどうかもわからんのになあ」
「まず、アンジーの考えたシナリオ通りなら、今戦争をしている国の主要都市への防衛を考えましょう」
「でも、防衛を行うのは、全部の都市は無理ではありませんか。時間がありませんよ」
「今回可能性のある場所は3カ所しか無いんですよ」
「どこになりますか」
「ロスティア、ハイランディス、マクレスタの3国の首都もしくは、その近くの街です」
「なるほど、会談が行われるところのそばというところか。国王がいない方がむしろ統合しやすいしなあ」
「もしくは違う2国の首都どちらかですねえ」
「妥当な線ね」
「そうじゃな」
「そしてですねえ。敵をあぶり出したいのですよ」
「あぶり出す?」
「というより、情報をリークしている種族を見つけたいのです」
「ああなるほどな」
「それでですねえ。こんな感じで段取りを取って欲しいのですよ」
私は、モーラとアンジーに小声で説明した。
モーラとアンジーは、2人とも何かを考えている。私はいつの間にか私の膝に乗っているレイをもふっていた。レイやりますね。いつの間に私の膝に。でもレイその計算通りみたいなドヤ顔はやめてください。可愛くないです。
「その発想は私たちにはできないわねえ。さすが常識に囚われない異世界転生者ね。知らないわよ、天地がひっくり返ったって」
「そうじゃな。大馬鹿の考えることは我らには理解できぬ」
「まあそう言わずに。どうでしょうか」
「うんよくわかったお前馬鹿だろう」
「お褒めにあずかり光栄です」
「褒めておらんわ。正直に馬鹿と申しておる。いや、おぬしの語彙だとあほだろうおまえ」
「あの世界でもそういうポジションだった気がします。発想力こそがお前の特技だと」
「あんた記憶戻ってないわよね」
「はい、大丈夫です。キリリ」
「怪しい」
アンジーさん、そう言って私の顔をジト目で見るのはやめてください。照れるじゃないですか。
「それでそこの大馬鹿。これが本当にうまくいくと思うのか」
「まあ、ダメでもいいじゃないですか」
「ダメで良いってあんたねえ。やるまえからそのスタンス本当に大丈夫なの?」
「そう言わずに付き合ってくださいよ」
「わしらが静かに暮らすために必要なら仕方が無い。理屈は破綻しているが付き合わせてもらうわ」
「まあねえ、あんたとずっと一緒に暮らすって約束したしねえ」
そう言って恥ずかしそうに私を見るアンジーさん。少し顔が赤いです。
「では、まず一つずつ解決していきましょう。アンジーさん、例の俺様勇者のところに行ってきてください。できれば、宣託があろうとなかろうとアンジー天使様のお力で良い方向へお導きください」
「なんか嫌な言い回しねえ。でも良いわ、行ってくるけど、メアを連れていくわよ。さすがに私ひとりでは、敵が出ても戦えないから」
「わかりました。同行させていただきます。ご主人様よろしいですか?」
「私も一緒に行きたい・・・」
「ダメです」とアンジー
「無理じゃ」とモーラ
そんな2人して同時に言いますか。
「さて、話も終わったことだし、わしがアンジーとメアを乗せて言ってくるわ。あと、パムにもこれを渡してくれば良いのじゃろう?」
「はいお願いします。念のために天使の名前を出さないこと。パムは同行しないようにと念を押してくださいね。それでは私は、歩いてエルフィにこれを渡してきますね」
「あ、僕が行ってきますね」そう言って膝から飛び降りたレイ。
「そうですか。それではこれを渡してきてください」獣人化したレイに通信機を渡す。
「ラジャー」敬礼をしてレイは、胸のポケットに通信機を入れて飛び出していった。
アンジーとメアは、部屋に戻り着替えているようだ。
「なぜか、またみんなバラバラで寂しいですねえ」
「そうじゃな。最近はみんなそれぞれ役目を持って出かけざるを得ない状況になっているのう」
「それこそが、見えない手の陰謀じゃないかと勘ぐってしまいますねえ」
「ああ、戦力の分断。すれ違いによる気持ちの分断か」
「はい。とても不安です」
「おぬし。わしらは隷属という絆を持って、しかも特殊な脳内会話が出来るんじゃぞ。感情が伝わるのだから、気持ちが手に取るようじゃないか」
「だからこそ、気持ちが離れてきたらわかっちゃうじゃないですか」
「ばっかじゃないの」部屋に入ってきたアンジーさんが大きな声で言った。ああ、旅装束も可愛いですねえ。
「だ・か・ら、その脳内感情ダダ漏れな会話やめてって言ってるでしょ」
だからアンジーさん顔が少し赤いですよ、怒りすぎです。
「この朴念仁!」
「まあまあ。ご主人様のその素直な感情こそが私達の絆です」そう言って入ってきたメアさんは、メイド服があまり変わっていないようにも見えますが、ちょっと足下が見えていますねえ。それもまた可愛いです。
『!!』おや、アンジーさんちょっと怒ってますねえ。どうしたのしょうか。
「そうやっておぬしの心がダダ漏れなおかげでな。わしらは安心していられるのじゃ」
「まあそうとも言えるわね」
「確かにその通りでございます。ご主人様はそのままお変わりませぬようお願いします」
「よくわかりませんが、変わりようもありません」
「さて、ではアンジー、メア行くぞ」
「お願いね」
「よろしくお願いします」
「それでは、アンジーさんくれぐれも気をつけて。メアさんアンジーのことよろしくお願いします」
そして3人が出て行く。私は外に出て、モーラが飛び上がってドラゴンになり、メアがアンジーを抱きかかえてその手に飛び乗った。そして、モーラの姿が消えて、羽ばたく音だけが遠ざかるのを聞いていた。
しばらく立ち続け、家に入り扉を閉めると、私はすごく寂しい感情に包まれた。前回の時よりも一層寂しさを感じた。ひとりなんだと。
「さて、センチメンタルではいられません。私の出来ることをしましょう」
私は気持ちを切り替えて地下室に入っていく。
モーラの手の中で、通信機の機能をみんなで試している。
「あやつは地下に入ったようだから、あやつの魔力を使わないで使えるのか試してみようか。あーあー、レイ聞こえるか。エルフィに届けたか」
『わ、びっくりしました。骨伝導ってすごいです。部屋の中では、二重に聞こえたのですが、すごくはっきり聞こえます』
『おお確かに聞こえやすいな。ってわしらの脳内会話を変換してるってことか』
『確かに私の知っている普通の通信機なら外の音も聞こえるのよ。それが脳内でいつも通り話したら遠くまで話せるって・・・あのバカは、またこの世界の常識をすこしばかり逸脱したものを作ってしまったのねえ』
『でもアンジー様。これは、この世界の常識の範囲内ではありませんか』
『まあ、そもそも私達だけしか出来ない脳内会話を通信に使うって他の人には絶対出来ないわねえ。逸脱はしていても理論は前からあると言えばあるのかしら』
『確かになあ。他の魔法使い達は、わしらの会話の内容は知られなくても会話していることは気付かれているからなあ』
『微妙なところね』
『レイちゃんこれどうやって使うの』
『スイッチがー』
『レイ、左の丸いボタンを3秒以上長く押しなさいと言ってあげなさい』
『ええとー、首に付けて、左の丸いボタンを長く押し続けてください』
『あ、本当だ聞こえるよー、でも違和感あるねー』
『エルフィもそうか』
『あーモーラ様―聞こえますかー今どこですかー』
『ビギナギルは過ぎたぞ』
『エルフィ、私達がいないからといってご主人様にベタベタしないように』
『あ~すごい~メアさんと会話してる~今はどこですか~』
『モーラ様の手の上です』
『そんなに遠いのにこんなにはっきり聞こえるのですか~やっぱり旦那様すごい~』
『さっき言ったことを守ってくださいね』
『え~よく聞こえない~』
『嘘を言いなさい。悪さしたらレイから咬まれますからね』
『ひどい~でも~レイも一緒に旦那様に甘えるから大丈夫~』
『わかりました。2人とも私が家に帰ってからのご飯がどうなるかわかりますね』
『ちゃんと静かにしています~』
『よろしい。レイもわかりましたね』
『はい』
『さすがに遠いと感情までは伝わらんなあ』
『でも、ずーっと脳内会話が続くのですよ、それは厳しくないですか』
『もう一回押すと会話しか伝わらなくなりますよ。さらにもう一回押すと脳内会話だけに切り替わりますし、3秒以上長押しすると通信が切れます』
『おお、地下室から出てきたか』
『ちょっとお湯を沸かしに出てきました。私がいない時でも通話できるようテストしてくれたのでしょう?どうでしたか』
『問題ないわよ』
『非常にクリアです』
『すごいです~』
『親方様すごいです』
『ああ、これはすごいのう。感心したわ』
『なぜか、みんなの声が聞けて少し寂しくなくなりました。ありがとうございます』
『すぐ帰りますよ~』
『はい、洞窟からすぐに戻ります』
『ああ、安心してください。また地下に入りますのでしばらく会えませんから』
『しょぼーん』
『おう、そろそろユーリの気配のそばに降りるぞ。ではな』
『では』
『頑張って~』
そうして、アンジーとメアは地上に降ろされた。
○メアさん出番です
「さて、まずは廃城に行こうかしら」抱き抱えられていたアンジーはメアから下ろしてもらうとそう言った。
「もう少し先ですね。ですが反対方向で何か争っているようです」メアが周囲を見ていたのをやめて、反対側の道路を見て言った。
「とりあえず、ここの住民が襲われている可能性もあるわね。行ってみましょうか」
「はい、先に私が行きましょう」メアが小走りになり、アンジーを見る。
「お願いね」
メアはそう言って走る速度を上げた。アンジーは、それでもかなり速いスピードで走っていたが、あっという間に置いていかれた。
「急ぎすぎないでね、素性がばれるわよ」
「はい。ああ、兵士が子どもの抱えた物資を奪おうとしています。あれは、ネクロマンサーの子ではありませんか」かなり遠いが顔を認識できたようで、さらに加速する。
「ああ、そういえばこの辺に住んでいたわね」アンジーがそう呟いた。
数人の兵士に囲まれ、横に抱えた荷物と共にリアンは座り込んでいた。
「この食料、どこから盗んできた。正直に言え」リアンに剣を向けて兵士が言った。
「違います、私の知り合いからいただいたものです」リアンは必死に荷物をかばっている。
「こんなに丁寧に仕分けされたものがいただいた物なわけあるか」他の兵士も叫んでいる。
「本当です」
「いいや、これは軍隊から盗んだ物だ。そうなんだな」意味ありげに一人の兵士が言った。
「だから違うといっているじゃありませんか」リアンも必死だ。
「まあ、どっちにしろお前は盗賊として殺されて、この食料は俺たちがもらいうける」兵士はニヤリと笑って、周囲の男達も同じようにニヤニヤ笑っている。
「そんな」リアンは悲しそうな顔で呟いた。
「良いから黙って殺さr・・・」
その兵士は、言い終わる前にそこから消えた。リアンを囲んでいた他の兵士達は何があったのかわからずたたずんでいる。
我に返った兵士達が周囲を見渡すと、少し離れたところに兵士が倒れていて、その横にはメイド服を着た女性が立っている。どうやら、ものすごいスピードで跳び蹴りを食らわせ、吹っ飛んだ兵士と共に飛んでいたようだ。
メアは倒れた兵士をそのままに、リアンに近づいて行く。リアンを囲んでいた兵士の輪はメアが近づくにつれ開かれていく。
「大丈夫ですかリアン様」メアはリアンの所に近付いた。
「あ、メアさんでしたよね。助けていただいてありがとうございます」腰が抜けているのかリアンが座ったまま頭だけ下げた。
「いいえ、まだ助かったとは言えないようですよ」
周囲の兵士は、剣を抜きメアとリアンを囲んでいる。
「貴様何者だ。そいつは盗賊。かくまうと貴様も仲間として殺すぞ」
「おや何の罪でしょうか」メアはリアンを背にして立つ。
「軍の物資の窃盗だな。重罪だ」横の兵士がそう言った。
「この荷物のことを言っていますか?」視線を動かすことなくメアは荷物を指さして言った。
「ああ、それは軍の食料だ」なぜか兵士はニヤリと笑った。
「残念ですが誤解ですよ。これは私の家族がこの方におわけした食料に間違いありません」
「嘘をつくな、それは軍の・・・」
「嘘ではありませんよ。この地方には売っていない野菜も入っていますから」メアはそう言ってかごに近づく
「どうしてそんなことを知っている」
「この野菜は私が地元の村で買い付けた物ですから」メアは、そう言ってかごの中にある野菜を見せる。
「・・・」兵士は何も言えない。
「そうやって、ここに暮らす方々から物資を簒奪しているのですね」メアがそう言った。
「・・・」
「さて誤解も解けたことですし、早々にお引き取りください」メアは兵士など気にせずリアンに向き直りリアンを立たせる。
「いいや、力ずくでも食料をいただくぜ」血走った目で兵士が言った。
「あきれた兵士達ですね。後悔しますよ」メアが向き直って言った。
「おもしろい、とりあえずあんたから殺すことにしよう」
「リアン様。荷物と共にそこにいてくださいね」
リアンはうなずいて、小さくなっている。
「先ほどの兵士が飛ばされたのを見てもまだ私と戦う気なのですか?」メアはあくまでも冷静にそう言った。
「さっきは不意打ちだろう。問題ない」
「では行きますよ」メアが右足だけ半歩前に出だして、右拳を胸元にあげる。
「いや、こっちが先だ!」
そう言ってその兵士は、剣で突き刺そうと走り出す。
「どこを狙っているのですか?」
メアは、一瞬で兵士に近づき屈んで胸元に入り、その兵士の顎に右の拳を軽く当てている。
動きを阻まれその兵士は、右腕を伸ばしたまま動けないでいる。
「次はどうしますか?」
メアはそう言って、その場からバックステップして、先ほどと同じ立ち姿に戻る。もちろん兵士が前に動いた分だけ距離は縮まっている。
「隊長やめましょう。まずいですよ」周囲を囲んでいた兵士の一人が体調と呼ばれた男に声を掛ける。
「やめられねえんだよ。なんて言うのか、負けることはわかっているのに体が戦おうとするんだよ。俺にもどうにも出来ねえ」
冷や汗をかきながらその男は怯えた顔で剣を正眼に構え直す。
「お待ちなさい」
大きな声でアンジーが叫んだ。全員がその声の方を見る。そこにはフードをかぶった少女の姿があった。そこによどんでいた空気が一瞬で霧散して周囲が明るくなった。その兵士も、剣を下ろしてほっとしている。
「貴方たちは、兵士という身でありながら一般市民を手に掛けようとしました。反省なさい。そしてここから立ち去りなさい。そこのけが人は、私が治療をしますので、治療が終わった後連れて行きなさい。もう二度とここへは立ち寄らないように」
張りのある澄んだ声があたりに響き渡り、アンジーは倒れている兵士の元に行き治療を施し、兵士達は倒れている兵士を担いでそこから立ち去った。
「アンジー様、ありがとうございました」メアが膝をついてお礼を言った。
「あの兵士は、何者かに魔法を掛けられていたようだわ」アンジーは、立ち去った兵士達の消えた方を見ながら言った。
「はい、自分でも体を制御できていない感じでした」リアンも同意している。
「嫌なものね。さて、お久しぶりねえ。ええとリアンだったかしら」
「アンジー様、そしてメア様ありがとうございました。どうやって私の暮らす廃墟を探し当てたのかわかりませんが、見つかってしまいました。あやうく命まで取られるところでした。
そして私は、ユーリ様にもらったこの物資を取られるわけにはいかないとなぜか思ってしまったのです。どうやらこの辺一帯になにか魔法のようなものがかけられているのではないのでしょうか」
「やはりあなたも魔法使いの端くれね、掛かったことがわかったので、効果が薄れたのかもしれないわねえ」
「なにか執着心を強めるような精神魔法なのかもしれません」
「ああ、食料やプライドとかをね。なるほどさすがに自力で魔法を習得してきただけのことはあるわね。さっきの発言謝らせてちょうだい。端くれなんて言ってごめんなさい。あなたは、魔法使いとしての才能がきっとあるのね」アンジーは頭を下げる。
「いいえ、私はしがないネクロマンサーでしかありません」
「リアン様、卑屈になってはいけませんよ。エリス様も褒めておいででしたから」メアがそう言った。
「そうですか、ありがとうございます」
「ユーリから物資を分けてもらったと言うことは、ユーリに会っているわね。どこにいるか知っているかしら」
「お会いした時に私が、廃城にこの辺の人たちが集まっていると話しましたので、多分そこにいらっしゃるかと思います」リアンは道の先を指さす。
「やっぱりね。さてリアン。この辺にひとりでいるのは物騒よ、一緒に来なさい」アンジーが強く言った。
「でも私はネクロマンサーなのですよ」リアンは悲しそうにそう言った。
「そうね。じゃああなたの友達は、城の裏から入ってもらって、あなたは人見知りだからと言う事にして、食事の時だけ声をかけるようにするから。こんなところに子どもひとり置いていけないでしょう」アンジーは自分より大きいリアンを子ども扱いです。
「差し支えなければ、城の中では私が食事をお持ちしますので。城の中に行きましょう」メアがフォローしています。
「ありがとうございます。そうします。さすがに一緒には行けませんので、友達と一緒に裏手から向かいます」
「ひとつ良いかしら。あなた他にも死体を動かすことが出来るの?」アンジーが尋ねる。
「はい、友人を動かさないでいるなら見えている場所で十数体、見えないところなら5体くらいですね」リアンがそう言った。
「見えないところを操作するのはどうするの?」
「視覚を共有しているので、死体が実際に見ている範囲なら何とかなります」
「ああそうなのね。友達以外に使っている死体はあるのかしら」
「はい。労働用に使っている死体が数体ありますが」
「申し訳ないけどそれも連れてきて欲しいのだけれど良いかしら」
「いいですけど、住民の方々が不安がりませんか?」
「そこは私が説得するわ。でも、説明する前に見せると驚いちゃうので見せないようにね」
「わかりました」
「メア。この辺の音はどうかしら。何かいる気配がある?」
「今のところは大丈夫かと。アンジー様を廃城にお連れして、そこにユーリがいれば、私はこちらに戻ってリアンのサポートに回ります」
「そうしてちょうだい。では行きましょう」
そうして、リアンは自宅に戻り、アンジーとメアは、廃城に向かった。
○天使様
ゆっくり歩いてアンジーとメアが廃城に到着した。見張りが見つけて報告していたようで、ユーリが出迎えてくれた。
「アンジー様、メアさんどうしてこちらに。あるじ様にはこれは私事だとお話ししていたのですが」
「とりあえず託された物を渡すわ」アンジーはそう言って例の通信機を渡す。
「なんですか?これは」アンジーは自分の首にある通信機を指さした。
「ああ、ここにつけるんですね」そう言ってユーリはそれを首につけた。
「左の丸いボタンを3つ数える間長―く押して」アンジーにそう言われて、ユーリはボタンを押した。
「聞こえるかしら」
「声が重なって聞こえます。そうですか遠くにいる私達と連絡を取るための手段なんですね。ということは何か重大なことが起きているのでしょうか」
「理解が早くていいわね。DT!あんた聞こえてるんでしょ返事しなさい。愛しのユーリに無線機渡したんだから早く声をかけなさいよ」
しかし返事がない。
「ああ、また地下室に入ったのね。他の人たちはみんな聞こえているかしら」
「レイです。聞こえてます」
「エルフィです~すごくよく聞こえますね~」
「パムです。聞こえています。これはすごい発明です。やはりぬし様はすごい」
「メアです。一応聞こえています」
「モーラじゃ、本当に脳内会話まで通信できるとはなあ。今はドラゴンなんじゃがこれは本当にすごい発明じゃ。まあ、わしらしか使えないのじゃろうがなあ」
「本当よね私達専用、ワンオフってことでしょ?無駄な技術力だわ」
「だから。こんなものが出回ったら戦争が格段にやばくなりますってば」私は会話に参加を始める。
「あ、旦那様だ。わ~い」
「あるじ様お久しぶりです」
「ユーリの声が聞けただけでもこれを作った甲斐があります。元気にしていましたか?」
「はい。色々とありましたが、無事に周辺の皆さんと廃城に住んでいます」
「ぬし様お久しぶりです。大丈夫です。あとで色々お話しします」
「パム~。お久しぶ・・・さっき会ったばかりじゃないですか」
「そういえばそうでしたね」
「アンジーどうですか。無事に着きましたか」
「ええ、あの子に会ったわよ。ネクロマンサーの子に」
「そうですか。元気にやっていましたか」
「それも後で話すわ」
「ではご主人様。私は少し移動します」
「みんなと会話を繋ぎながら移動してください。寸断する箇所があったら報告を」
「相変わらず技術バカじゃな」
「急に声が途切れたら心配じゃないですか」
「まったく親馬鹿ならぬ家族バカじゃな本当に」
「いや、本当」
「そのようです」
「ですよね~」
「はい、そのとおりです」
「そうですね」レイが締めくくった。
そうして、アンジーとメアを送話のみオープンにして、あとの人たちは聞くだけモードにした。
ユーリはまず、アンジーを城内の人に紹介した。さすがに天使であることは伏せていたが、マジシャンズセブンの名前は広まっていて、その素性を隠しているのは訳があると誤解されたまま、暖かく受け入れてくれた。
城の上の方に崩れかけた鐘楼のところに2人で登って話を始める。
「そうですか。少し前に出会ったのが、やっぱりその俺様勇者一行だったのですね」
「やはり会っていたのね」
「はい。私が城を離れている時に兵士達が廃城に入ろうとするのを防いでくれていました。しかし、兵士達に勇者だと宣言してしまって、兵士達は勇者なら俺たちは殺せないだろうと詰め寄られ、戦うことすら出来なくなっていました。アンジー様、勇者は人を殺してはいけないのですか?」
「絶対ダメと言うことはないけど、殺さないに越したことはないわね。その勇者達のように名声を上げながら各地を回っているのなら、今の知名度で人殺しの汚名を背負うのは、勇者になる上でかなり厳しいものになるでしょうね」
「そうなのですね。それがたとえ理不尽な人たちでも、守らなければならない人たちを見殺しにしても」
「勇者として世間が認めた後であれば理由も聞いてくれるでしょうけど、勇者として認められていない時には無理でしょうねえ」
「あるじ様の言う不殺というのは、結果的に勇者に通じるのではないでしょうか」
「でもね、勇者という名称は、誰に対して使われるのかしらね」
「誰に対してですか?」
「人族の勇者であれば、人族を他の種族から守ったり救ったりした者が勇者と呼ばれるでしょうね」
「そうですね」
「ドワーフの英雄ドゥーワディスであればどうかしら」
「人族の絵本になるくらいのドワーフの英雄ですよね」
「そう、人も助けた英雄。でも、それ以外の種族は殺しているし、人族だって敵となれば殺しているのよ」
「そうなんですか?それは知りませんでした」
「勇者や英雄なんて不殺ではいられないの。所詮そんなものなのよ。彼らが死んだ後に未来の人が美化して作り出す幻想なのかもしれないわよ」
「そうです。祖父は全ての種族をその手で殺しています」パムが口を挟んできた。
「ですから、人間の絵本で英雄として描かれていると聞いて困惑したのです」
「そうだったのですね」
「だからねユーリ。不殺という考えは間違っていない。でも、もしかしたら捨てなければならない時が来るかもしれない。その時にね、私はあなたに死んで欲しくはないのよ。あなたが信念のために死んで欲しくない。もしそう思ってくれるのなら、もしその時が来たら、それにこだわらず、捨てられる覚悟もして欲しいの。あとね、あんたが死んだらあいつがこの世界を滅亡させるから。そのことも頭に置いておいてね」
「相変わらず言い方が素直じゃないですね。アンジー」ユーリはクスリと笑って敬称をつけずに言った。
「ばっ、なに言い出すの。ばっかじゃない」
「さてアンジー様。私と彼らとの出会いは最悪でしたよ。どうしますか」
「どうもしないわ。宣託があったにしろ、なかったにしろ。あの勇者達を煽動して、介入させて、この戦争をやめさせなければ私達の平穏な生活は続けられなくなるのよ」
「そうでしたね」
「しかも私達が、いいえ、あいつが関与していないように完璧に煽動しなければならない」
「難しそうですが」
『そういえばパムの方はどうなの。口挟んできたから会話モードなのでしょう?』
『はい、私の方はジャガーさん達と今一緒に行動していますので、その辺は大丈夫かと思います。すでに話を終えています』
『くれぐれもあのバカジャガーにしゃべらすんじゃないわよ。絶対、口を滑らすに決まっているんだから』
『ふふ。確かにそうですね。いや間違いなくそうですね。大丈夫です。もうひとりパーティーメンバーが増えたので、そちらの方がフォローしてくれると思います』
『『『『ええーーーっ』』』』
『ああ、戻った時話していませんでしたね。不思議な人が加わっています』
『信じられない』
『ジャガーさんではなく、フェイさんの人徳でしょう』
『ああそうね。そうよね。なんか納得したわ』
『じゃあそちらは大丈夫なのですね』
『はい、ぬし様それは大丈夫です』
「じゃあ、私も頑張りましょうか」
続く
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