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第18話 氷の世界

第18-3話 DT殺意に呑み込まれる

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○殺意の波動
 私は手をあげて、私と彼女の周囲に展開していた魔法をすべてキャンセルした。
「な、何をしたの?」彼女が慌てている。あと数歩まで私に近づいていた彼女に私はこちらから足早に近づき、その額を左手で掴み、掴んだまま持ち上げてこめかみから握りつぶすように頭部を潰しにかかる。持ち上げられ足をジタバタさせながら彼女は、
「痛い痛い痛い。え?なに?自分にかけた無痛化の魔法まで無効にされているの?ねえどうやったの?」
 彼女は、額を握りつぶそうとする私の手を両手で引き剥がそうとする。外れそうにないとわかると指で魔法を使おうとするが、使えない。
「魔法が使えない?どういうこと?ねえ答えなさいよ」
「あなたと話す言葉を私は残念ながら持っていません」私は間を見開き、彼女を見上げてそう言いました。
「やめて。ねえお願いだから。私を殺すと大変なことになるのよ」今度は足までバタバタさせて私を蹴りながらそう言いました。
「命乞いですか」
「この神殿が壊れて麓の町まで土砂崩れを起こすわよ」
「なるほど。そんな些細なことはどうでもいいです。あなたはここで死んでください」一度緩めた手に再び力をいれ始める。
「何よそれ」
「それはあなたのせいで起きることで、私のせいではありませんので」
「あなたが私を殺すからじゃない」
「そこに因果関係はありませんよ。もしあなたが別の原因で死んだって起こるのでしょう?あなたの死が原因なのだから誰が殺そうが自殺しようが関係ないですよね」
「なにその理屈。町の人が死ぬのよ」
「死ぬんじゃなくてあなたが殺すのですよね。これまで何人も殺してきているのでしょう?ならば、この先何千人死人が増えようと人殺しは人殺しです。まあ、私もあなたを殺して人殺しになりますから、これからは何人殺しても人殺しには変わりませんね」そう言って再び手に力を込める。
「どうしてこんな殺し方をするの。さっさと魔法で殺せばいいでしょう」ジョーはそう言いながらも私の左腕を握りなんとが剥がそうとしている。さらに何かを呟いている。
「私の魔法は師匠がいませんので、先ほどあなたが使っていた魔法の無効化を真似してみたのですが、解析が間に合わず、自分も含めて全ての魔法を無効にする以外方法がなかったのですよ。それと、魔法で簡単に殺したりしたら、次からも魔法で簡単に人を殺してしまって、歯止めがきかなさそうなのです。ですからこうやって自分の手でじっくり殺して、人の死を私の中に刻み込まないとならないと思いましてね」私は中々頭蓋骨が割れないのでそうしようか考えていました。しかし、ミシミシと頭蓋にヒビが入ってきているようなのでもう少しで割れるでしょう。
「ふうん、いいことを聞いたわ」彼女は手を下ろし、ローブの中に手を入れて中からナイフを取りだし、私の左腕を切った。私の腕の腱が切られたようで腕はだらりと下がり、ジョーは私の手から逃れた。私の腕からは大量の血が噴き出している。
「さあ動脈を切ったから、魔法が使えないお前はこのままなら失血死するのよ」
「まだあがきますか。さすがですねえ」私は、そうではないと首を振った後、服の中からナイフを取り出す。ほんのり光っている。
「魔法が効果を発揮している?私は今も魔法を使えないのにどうして?」ジョーは驚いてそう言った。
「さあどうしてでしょう」私は、そのナイフを彼女に投げつける。彼女はとっさによけるが、ナイフは軌道を変えて、よけた彼女の腕に突き刺さり、そのまま腕を突き抜けて、腕をちぎり取り、腕はその場に転がり落ちる。傷口からは血が噴き出している。
「うあっ。何よこれ」腕をちぎられて激痛の中腕を取りに行く。
「誘導式のナイフですよ。一撃目には効果的です。これで五分五分ですねえ。まあ、そちらは腕がちぎれていますから、出血量が多そうなのでたぶん先に死ぬでしょう」私はそう言ってジョーを黙って見ている。
「大丈夫よ。これがあるから」そう言ってポケットから薬草を取り出す。
「おやその薬。あなたも持っていたのですねえ。でも即効性はありますが、腕をつけることはできませんよ」
「それがねえ。この薬、限定生産の奴でねえ。ほら」落ちた腕をつけ直すと、腕が直っていく。
「あの時作った薬は、そんなにも高性能だったとは。わからないものですね」私はそれを見てそう言いました。
「ああ、これはあんたが作ったの。あなた本当にすごいわねえ」そう言って彼女は腕を振り回す。
「さて、では私も血を止めましょう」私も薬草を取りだして傷口に貼る。
「それでは続けましょうか」傷のあった左手を握ったり開いたりする。
「そりゃあ、あんたも用意しているわよねえ」ジョーはそう言いながら、何かを胸元から取り出し、床にたたきつける。
 それは煙幕だった。古典的だが肉弾戦の時にこそ役に立つ。もちろん体勢を立て直すための時間稼ぎ程度だが。
 ジョーは思った。さて時間は稼いだ。そう思いながら彼女は、煙の中を壁に向かって移動を始めた。しかし、すぐに肩が糸のような物に引っかかりそれ以上進めなくなる。まずい、これは罠だ。その糸から慎重に体を離し、違う方向に向かって、違う角度でゆっくり移動を始める。今度は腹のあたりと足元に引っかかる。落ち着け、壁まで移動できれば、壁に脱出用の穴がいくつか作ってある。どうしたのだろう、さっきまでの高揚した気分とは違い、生に執着を感じ始めている。そんな自分の心の動きが不思議だった。
 ああ、私はあの男と心中したかったのか。氷の棺桶に二人で入って永遠にそこで結ばれたかったのだ。そして今度は、脳を食べたりはしない。二人とも完全な体のままで手をつないで眠るのだ。
 そんなことを想像しながら移動していると、また糸が体に当り移動を阻まれた。そろそろ壁についてもいいはずなのに壁につかない。こんなに広いわけはないのに。煙幕もそんなには持たない。ああ、また引っかかった。さすがあせってしまい、この神殿のどこにいるのかわからなくなってしまった。どうやら糸が邪魔をして感覚を鈍らせているみたいだ。ああ、また糸だ。一体どうやってこんなに張り巡らしていたのか。そして、空気の流れが無かったはずのその空間に風が起こり煙幕が晴れていく。なんで風が起きている?
 私は立っている場所を確認する。さっき立っていたところからほとんど動いていない。そして、煙幕のカスのせいなのか、糸が浮かび上がって見えている。ああ、糸に阻まれてその場所の回りを回っていただけだったのか。自分の周囲はすべて糸が張られていて動ける状態にはなかった。
「どうやってこんなに糸を張れたのかしら」
「長くなりますけど聞きますか?まあ、自慢したいのですけどね」彼女はあきれたような顔をしているが、私はうれしくて構わず話し続けます。
「これはパムさんに言われて練習させられましてねえ。壁を作られたら利用しろと。床に手を当てて10本の指から魔法の糸をくり出す練習をさせられまして。今回は、魔法の糸に細かいワイヤーをつけて、一緒に壁まで這わせましたよ。そして、戦闘開始前に壁の上の方に昇らせておいたんですよ。練習しました」
「最初から設置していたのね」
「高度な魔法を使う魔法使い同士が戦うと、魔力量や技術の練度より、最終的には肉弾戦になりそうでしたからね」
「さて、では死んでくださいね」私は再び近づき、糸のせいで動く範囲を限定されている彼女に近づきます。
「待って待って待って。これから改心するから。お願い殺さないで」
「だめです。あなたは一度やらかした人です。少なくとも私はあなたから1回、いや家族を含めると2回被害を被っているんですよ。残念ですが、自分の行動を悔やみながら死んでください。そうしないとあなたに殺された人たちが・・」そこで氷の壁にヒビが入り、モーラ達のいる部分の壁が壊れた。その壁に這わせていた糸も当然切れて、彼女はそこから逃げだし、反対側の氷の壁に走り出した。
「無理に決まっているじゃないですか」私は、手元にあった糸を使って、ジョーの体の近くに這わせていたワイヤーを掴み直して、彼女の動きを止める。
「それ以上動こうとすると体が切れますよ」走った体勢で止まらざるをえず、はずみで彼女は転びました。さすがにそんな死に方は許せないので、倒れる寸前に糸を少し緩めて倒れた後また締めなおしました。そんな中モーラが急いで近づいてくる。

○ DT!ステイ!
「おぬしそれ以上はするな」モーラが右手を前に出して走ってくる。
「こればかりは、モーラの意見でも聞けませんねえ。この人を生かしておいたら多分もっと人死にがでます。その中に私も含まれています」私はモーラを冷たい目で見返しながらそう言いました。
「こやつの処分は、魔法使いの里に任せるんじゃ。おぬしが手を出してはいかん。わかるな」モーラが私の腕を掴んでそう言った。
「そうですか。それは仕方ありませんね」でも、私は手元の糸は緩めることができず、少しだけ彼女の体に食い込み肌に血がにじんでいる。それでも彼女は倒れた体勢のまま動かない。その視線はどこ見ているのかわからない。そして聞こえているはずなのに何も言わない。まるで倒された人形のように。
「ちなみに土砂崩れはどうなっていますか?」私は、彼女から目を離さずモーラに聞いた。
「ああ、わしが何とかした。土砂崩れはおきん」
「そうでしたか。話は聞こえていただろうと思うので、対処してくれていると思いました。ありがとうございます」
「相変わらず無茶をする。わしの肝が冷えたわ」
「無茶はしていませんけど」
「あれだけ大量に血を流しておいて何を言うか。ほとんど死ぬ一歩手前だったじゃろう」そう言ってモーラは私のそばにある血だまりを見ている。私も意外な量の血液にちょっとびっくりした。
「そういえば、怒りで痛みが飛んでいましたねえ」私は今になってちょっとビビっている。
「あそこがいちばんヒヤヒヤしたわ」
「ごめんなさい」私は腕を掴んでいるモーラ、集まってきた家族に向き直って頭を下げた。
 そんな話の間にエリスさんが彼女を確保しようとしている。
「あ、一つだけ意趣返しをしておきましょう」私は彼女に近づいていく。
「何をする気?」彼女が怯えながらイヤイヤをする。エリスさんまでが彼女から離れようとしています。あれ?もしかしてエリスさんの方が怯えていませんか?
「そう怯えないでください」そう言って嫌がる彼女の頭に手をかざす。魔法が効果を発揮している。そして、彼女は光に包まれ、おとなしくなっていく。
「あなた一体何をしているのよ」エリスさんが止めようとしてきます。
「彼女の悲しい記憶を和らげているのですよ」
「そうなの?でも記憶まで消していないのでしょうね」
「残念ながら。ではお連れください。しばらくは落ち着いていると思いますから。逃げる気にもならないと思います」
「それはありがたいわ」そうして、何らかの縄のような魔法をかける。彼女はおとなしく従っている。

「あんたどうしたの急にやさしくなって」アンジーが近づいてきて言った。
「彼女と戦っていた時に見た彼女の半生の記憶は、トラウマになりそうな内容でしたからねえ」
「おぬし、記憶まで見ることができるようになったのか?」
「見たくはなかったんですが、「愛しています」と心の声を連発しながら、私の記憶を見て、私の記憶を見てと無理矢理私の頭にねじ込んで見せてくるんですよ。「こんなわたしなんだからあなたは私を愛してそして私のために死んで」とね」私は思い出してしまい頭を抑える。
「それは、すさまじいプロポーズじゃな」
「どちらかと言えば、心中強要ですね」
「ここは棺桶か」モーラが周囲を見回して言った。
「彼女は私を殺すつもりと言っていましたが、本心では一緒に死ぬつもりだったのかもしれません。でも、彼女を彼岸と現世とをつないでいた事はなんだったんですかねえ」私は暗い気持ちになりながらそう呟いた。
 そこに近づいてきた氷のドラゴンクリスタさんに向かって私は言いました。
「さて氷のドラゴンさん。犯人はわかりましたし、たぶんですが、実際に本当の氷の神殿で被害を受けた人は、いないと思われます。噂が収まるまでは少しかかるでしょうが、それはあきらめてくださいね」
「突き詰めればあなたが原因なのよね」氷のドラゴンさんはそう言いました。
「ええ?それを言いますか?それは逆恨みというものですよ。でも、この事件を解決はしましたのでこれで終了です」
「本当にそうなのね?」氷のドラゴンさんの質問に私は頷いて答えました。
「まあわしらは戻るわ。ここが氷の神殿じゃないならいても意味ないしなあ」モーラがそこで言ってくれました。
「壊さなくていいのですか~」どうしてそこで、エルフィはでかい金槌を背負って現れますかねえ。大工さんじゃ無いんですから。馬たちはどうしたのですか?置いて来たのですか?
「ああそうじゃな。わしがやろう。全員外に出るんじゃ」みんなゾロゾロとその建物から出る。壊すことになっても彼女は無反応なままだ。ありゃ?ちょっとやり過ぎたかな?
 そして、モーラが地震を起こし、その山頂の広場に穴ができて、振動ですべて氷塊となった神殿はそこに落ちていった。
「簡単じゃったなあ」
「安普請だったのでしょう」
「そうじゃな」
 そうして、エリスさんはクリスタ様の手に乗って、私たちは馬車と共にモーラの手に乗る。
「のう氷の。念のため本当の氷の神殿の場所を確認したいのだが教えてくれないか」
「ああいいわよ。途中で寄って、そこの空中で停止して教えるから。私達はそのあと魔法使いの里に向かうわ」
「わかった」
 そうして、ほんの少し北にある氷の神殿に到着する。なるほど、先ほどの神殿とは比べものにならないくらい大きい。もっとも神殿をはるか下に見ているから、どのくらい大きいのかはよくわからないですけどね。
「確かに違うな。では帰るわ」
「気をつけて」
「お主もな」
 そうして私たちは、無事に家に到着して、お風呂に直行しました。ええ、神殿壊す時に冷えましたので。旅の疲れと旅の垢も落としました。
 氷の神殿の件は終了し、エースのジョーは、魔法使いの里に保護されました。

○ 数日後、魔王城にて
「またいなくなったからどこに行ったのかと思えば、氷のドラゴンのところとはなあ」
「報告によると正確には違いますが」
「そうか、あのやばい魔法使いはいなくなったのか」
「一応、私達の側で動いていた者ですけど、いいのでしょうか?」
「なにがだい?」
「魔法使いの里に連れて行かれて、事情聴取されているはずですが」
「わしらとの関係が知られると?一応契約はしていましたが、今回のはわたし達の指示では無く、奴の独断専行ですからねえ。ましてや、あの里は事なかれ主義だから、わたしが一枚かんでいたとしても気にしないですよ」
「そうですか。でも、連絡係の話にあった彼女の記憶とはいったい」
「あやつは一体、彼女の記憶の何を見たのかね」
「気になりますか?」
「いいや、あやつがトラウマになると言っていたけど、所詮は元の世界の過去でしょう?こちらに来たなら引きずっていたらだめでしょう。むしろリセットしてこの世界に順応しないとねえ」
「いや無理でしょう。そうそうなじむ奴も珍しいですよ」
「あやつは、記憶が無くて良かったのかもしれないね」

○その記憶は封印された
 小さい時から殴られてばかりだった。両親はどちらも家にいてくれた記憶は無い。家では私はいつもひとりだった。どちらかがたまに帰ってきては、相手がいないのを私のせいにして殴っていた。殴られる事には慣れると誰かが言っていたが、そんなことは決してない。痛いものは痛い。私は慣れることはなかった。そんな時期も過ぎ、回りのくれた施しで栄養不良ながらも成長し、社会に出て働ける年齢になり、そこから逃げ出した。そして、しばらくは生きて行けた。もちろんろくな職には就けなかったが。
 ひとりで生きていたが、こんな私でも愛した男ができた。二人で暮らしていこうと決め、楽しい暮らしが始まった。しかし、そんな私を狙っていた男が逆恨みをした。私は逆恨みをした男に、愛する男と共に襲われ拉致され、なぶり者にされた。男を殺せとナイフを持たされガムテープで両手をまかれ、男の前に立たされた。
 私は無理矢理、最愛の男を刺した。いや、すんでの所で止まっていたのに、後ろ立っていた男から蹴られた。愛する男は逃げる気力もなく。むしろ死ぬために飛び込んできた。腹を刺してしまった私に、愛する男は、私の腕のガムテープを食い破り、あいつらを殺して逃げろとつぶやいた。そして、俺の体の一部を食べてくれと。
 そういえば、死んだらどうすると言う話をした時に、体の一部を食べてくれと言われていたのを思い出した。もし可能なら記憶のある脳をと言われていた。
 ゲラゲラ笑っていた男達の一人が近づいてきたので、用心深く胸を刺した。もちろん他の男達から見えないように静かに。そして、不審に思ったもうひとりの男も近づいた時に同じように刺した。最後のひとりは、それを見て逃げようとしたが、追いかけて後ろから容赦なく刺し殺した。その場で、愛する男の死に顔を見て、泣きながら頭蓋を割り、中の脳みそを食べた。味覚など無い。ただがむしゃらに食べた。頭蓋骨を割った時に脳に混じった骨のかけらが少し痛かった。
 そうしてから、そこを出て警察に保護をされた。死体を食ったのかと聞かれ無理矢理食わされたと言っておいた。

 それでも、周囲の目は同情ではなく奇異の目で見られ、そこから転々とし始めた。
 ああそうだ、それからだ。愛してしまうと殺したくなり、脳みそを食べたくなる。そこまでが私の愛情になってしまい。ついに警察に捕まって精神鑑定の結果釈放される。元々愛してしまう男は、どこか浮世離れをした男ばかりで、家族もない独り身だったりで、家族から石を投げられることもなかった。だが、その男の中のひとりは、愛人を捨てて私と関係を持っていた。そう、その愛人に刺され私の生涯は終わった。裏路地に大の字に倒れて、雨に打たれながら、私の人生はいったいなんだったのだろうと思いながら記憶が無くなった。
 目を覚ますと森の中だった。どうして生きているのかわからない。左の胸や脇腹にはナイフが刺さった跡があり、血もついている。でも、傷もなく生きている。そして、出くわした獣に襲われて、とっさに右腕を獣の前に出して何か出ろと念じて、炎の魔法を使った。ああ、そういう仕組みかと瞬時に魔法を理解して、火に怯えた獣を焼き尽くした。楽しかった。これまでは暴力に屈して生きてきた。でも今は違う。それでも街に入り込み、魔法使いであることを隠して暮らそうとした。でも生きる糧のためには非力な私は、魔法を使わざるを得なかった。理不尽な暴力に対する時に使った。そう容赦なく。そうしなければ反撃され自分が死ぬのだ。どうしても非合法な奴が寄ってくる。そして、魔法使いの掟なんかに縛られないアウトローな魔法使いになった。
 強そうな魔法使いと戦い、ノウハウを吸収していく。そうやって能力を向上させていった。
 そして、何人かの男を愛して、そして殺して、脳を食べた。
 魔族がある男を調べろと言ってきた。風采の上がらない男だ。しかし回りには、数人の女達が一緒に生活してるという。こんな奴がまともであるはずがない。だが、幸せそうに笑い合いまるで家族のようだ。どうして女達はあんなに幸せそうに笑っていられるのだろうか。不思議なので、女達から襲ってみることにした。おもしろいことにすごい手練ればかり。剣の達人に魔法使い。そしてホムンクルス。一度は退散してその一家の様子を探る。ああ、こんなにも彼女らはその男を愛しているのか。会ってみたい、ぜひ会って殺したい。こんな感情は初めてだ。そして、適当な男をだまして揺動して、さらに家族を誘拐したように見せて、わざと恨みを作ってその男と戦う。ああ、女達の心配そうな顔、そして怒っている男の顔。この男だ、求めた男はこの男だ。好きになってしまった。人質をなんとも思わないクールさ。そして自分でも、殺したいのか殺されたいのか不思議な感情が生まれた。これが本当の恋なのかもしれない。
 しかし、邪魔が入って死にはしなかった。その男の素性、魔法特性などを調べて、ついに罠に掛けることができた。だがそこまでだった。私の記憶はそこで消えてしまった。

Appendix
さて、居場所の特定のためにここまで来ましたが、割と簡単に居場所がわかってしまいましたねえ。
無防備に暮らしているように見えますが、家の周囲に完全な魔法の監視網が張ってありますね。
しかもハイエルフの二重監視付きですか。これは本当にやっかいです。
それでも村までの往復については、意外に緩いですね。どういうことなのでしょうか。こんな辺境まで調べに来る者などいないと思っているのですかねえ。
とりあえずしばらく様子を見ましょうか。成程。ここが監視しやすい場所になりますが、 逆にここから監視をすると簡単に見破られるようになっているのですね。こういう考え方ができるのはすごいですねえ。
24時間監視をする必要はありませんけど、日々の暮らしのパターンは知りたいですね。
とりあえず、一週間から10日間監視をしてみましょう。それでだいたいのローテーションが確認できますね。
それにしても定期的にこの場所を確認に来るドワーフの女性はなかなかに勘が良いみたいです。あとハイエルフのそうですね、ちょっとした変化を気にしているようです。人見知りだと聞いていましたがその影響なのでしょうか
あとは獣人ですね。匂いに気を付けないと、簡単にばれてしまいますね。これは魔法の防壁よりも厄介そうです。近づくことはできませんね。
はい。そうですか。あなたからの依頼であればやぶさかではありませんねえ。その依頼受けましょうか。ここから移動して、縄張りに入る直前で殺した方がいいですね。
では、村を大きく迂回してから待ち受けましょうか。


Appendix
「やっぱり誰かここに来ていますね」
「そうなの~チラッと一瞬だけ誰かの気配がするの~でもすぐ消えるから~気になる~」
「レイどうですか?」
「微かに魔族みたいな匂いがしましたけど、この強烈な匂いにかき消されています」
「相手は手強いですね」


続く
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