上 下
88 / 229
第17話 メイド喫茶 Part2

第17-2話 メイド喫茶ファーン(服屋での激闘編)

しおりを挟む
ー 洗濯、お掃除、窓拭き、お料理、水撒き、お買い物~ ー

○ ダヴィ店長店にいる
「こんにちは。お久しぶりです」私は扉を開けてそう言いました。
「いらっしゃいませ。あ、お久しぶりですDTさん。それとアンジーちゃん久しぶり!!それにユーリさんお久しぶりです」ナナミさんが私達に声をかけてくれました。覚えているものですねえ。
「あ、店長~アンジーちゃんがお見えになりましたよ~」ナナミさんがそう叫んでいます。おや。お店にいたのですねえ。
「やっぱり来た~」そう叫んで裏から出てきたのは、ダヴィ店長です。
「お久しぶりですダヴィ店長」私は挨拶をしましたが、
「あDTおひさ。アンジーちゃん久しぶり~元気してた~」私の事はスルーしてアンジーの所にダッシュしました。彼女は、アンジーに近づき両肩を手で掴んで揺さぶっています。ああ、アンジーの嫌そうなオーラが伝わってきます。
「そうそう、こっちに戻って来たって聞いたからアンジーちゃんのために新作を作っておいたんだけど着てくれないかなあ」
 相変わらずマイペースです。ええ本当に。見ていてあきれるほどに。
「構いませんよ」おお、アンジー塩対応ですねえ。
「じゃあ持ってくるから試着室の方に行っててねー」そう言って店長は再び裏手に回る。
「いいんですか」
「店は変わったけど、最初に来た時もこんな感じで、私は救われていたのよね。羽を見ても気にしない人なんていなかったから」
「そういえばそうでしたねえ」
「ああ、そういえば羽が小さく生えていましたねえ」ユーリが思い出したように言った。
「本当にあんた達は、いい加減というかこだわらないというか。そうやって当たり前にしているけど。本当は差別されても仕方がないのよ」私とユーリを見ながら言いました。
「可愛いんですよねえ」私はそう返します。
「はい。僕も欲しいなあと思ったくらいで。でも自分では見えないので意味ないなあと思ってあきらめましたけど」
「どんなあきらめ方よ」アンジーがあきれている。
「私としては、ユーリに羽が生えた姿も見てみたいですけどね」私は想像しながら言いました。
「えっ」ユーリの顔が真っ赤になった。下を向いて両手の指をつけてクルクル動かしている。
「あんた、それは裸が見たいと行っているのと同じよ。このスケベ」アンジーが私のすねを蹴る。ユーリが顔を赤らめている間に店長さんが試着室に服を持ってきた。
「はいこれ」店長さんはそう言って、少しだけ光を反射しているのかキラキラしているヒラヒラなフリルがこれでもかと付いたドレスを広げて見せる。一目見てアンジーはゲーっという顔をする。
「着て~着て~早く着て~は~や~く~」店長はアンジーに無理矢理服を押しつけ、試着室に押し込み、カーテンを閉める。
「早く見たいな~まだかな~」ウキウキしながら店長は試着室の前でうろうろしている。
 試着室の中では、ため息と共に衣擦れの音がして、静かになったと思ったら中から盛大なため息が聞こえる。そして息を吸ってカーテンが開けられた。
「おおー」私は声を上げた。
「やっぱりイメージ通りだわ~」そう言って小躍りしている店長。仕方なさそうに靴を履いてブースを出て、そこでクルリと回ってみせるアンジー。デザインセンスが良いのか、フリフリがいっぱいついていているのに、全然しつこくない。背中はたぶん意識的に開けていて、小さな羽がちゃんと見えて、しかもそれをうまく衣装の中に溶け込ませるようにデザインされている。まさにアンジーのための一点物の服だ。
「すごく似合ってます。素敵です」ユーリがなぜかうっとりとみている。
「そうでしょうそうでしょう。いやーこれが見たかった。ねえあなたもそう思うでしょ」店長さんが私に向かってそう言った。
「すいません。言葉で表現できません。素敵です」私は心からそう思いました。
「そ、そうなの?自分ではよくわからないから。ありがと」アンジーが赤い顔をして照れています。もえ~
「かーっ。作った甲斐があったわー。これは肖像画として残すレベルだわー」店長が指で窓を作ってアングルをつけてイメージを頭に残しているようだ。
「申し訳ありませんが、買い取りさせてもらえませんか」これはうちで着てもらってみんなで鑑賞会をしないとなりません。
「ダメよ売らない」店長はキッパリと言いました。
「はあ?」
「だって、これを持ち帰られたら、着ているところを私が見られなくなるじゃない。だから、この店に来た時だけ着てもらうの。どう、頭良いでしょ」店長さんはそこでどうよとばかりに胸を張ります。いや頭悪いでしょう。
「天才肌の人ってどうしてこうなるのかしら」頭を抱えるアンジー
「わかりました。買い取りはあきらめます」私はガックリと肩を落とす。
「待って。ねえ店長さん。この服欲しいのだけれど。私が言ってもダメ?」
「ダーメ。だってこの店に来た時にこれを着て訪ねてはくれないでしょ?みんなそうなんだもん。だから売らなーい」
「では、新たなイメージを見せたらそれに合わせて服を作るのかしら?」アンジーが挑発するような顔をしてそう言いました。おおう。アンジーいったいどうしましたか?
「だって、今のアンジーちゃんのイメージからどう変わるって言うのよ」
「じゃあこれを見せてあげるわ」
「なになになにを見せてくれるの」わくわくしながらアンジーを見つめる店長。
 アンジーは、祈り始めて淡い光に包まれる。体はそのままに小さかった羽がしだいに大きくなってくる。舞い落ちる羽と共に。
「ええええええ」店長の叫び声が落ち着くと共に光が収まる。アンジーは、普段の姿のまま大きな羽を生やした。
「これは!これは!あーーーーイメージがーーーーわいたーーー」そう言ってその場から走り去る店長。いつの間にかアンジーは、羽を元に戻している。というか最近、背中に羽の跡がありませんよね。
「まあこれでこの服は私のものね」うれしそうにアンジーが笑っている。
「そんなに欲しかったんですか?」
「そうね、あんたが言葉に出来ないくらいって、言っていたのが決めてよ。だって・・・あーーーーもう」そう言ってアンジーは試着室のカーテンの中に消えた。そして服を着替えて、店番をしているナナミさんの元にその服を持って行く。
「それは店長が売らないと言っていましたけど」ナナミさんがそう言いました。
「大丈夫よ、事情が変わったから。聞いてもらえばわかるわ」
「そうですか?値段については何か言っていましたか?」
「たぶん次の製作に入ってしまったから勝手に決めてって言うわねえ」アンジーがニヤッと笑って言います。
「やっぱりそうですか。この布地とか高い奴なんですよ、特別に発注して納期が3ヶ月くらいかかる奴なんですよ。いったいいくらになるのか」ナナミさんがそう言って考え込んでいます。
「あの~収穫祭のメイド服の件なんですが」
「それは私の方でお伺いしますね」
「よろしくお願いします」
「DTさん。ここに戻って来てからも色々とお噂はよく耳にしていますよ」
「まあ、あまり良くない噂じゃろうのう」そう言って店の中にモーラが入ってくる。メアも一緒だ。
「あ、モーラちゃんお久しぶりね~」
 そう言いながらも引きつった笑いをしていますよねえ。ねえどんな噂か聞かせてくださいよ。ねえ。
「あ、そうだ。店長ー、モーラちゃんもお見えになりましたよー」
 その声に反応して店長が飛び出してくる。
「モーラちゃん!!よく来てくれたわ。着て欲しい服があるの!こちらに来てくれるかな」
 そう言って店長に引きずられていくモーラ
『ああ思い出した。こやつあの時の面倒な類いの人間だったか』
『そうよ悪意なき天才服飾デザイナーってやつね』
『面倒じゃなあ』
『でも腕は一級品だわ。私のための一着を何とか手に入れたけど大満足よ』
『なるほどな。まあ付き合っておくか』
 そうして先ほどのアンジーと同じように試着させられる。フィッティングルームから出てきたモーラは、さっきのアンジーとは違ったデザインのワンピースのドレスを着ている。本人は、似合っているのかどうかよくわかっていないような顔をしています。
「いやーすごいですね。モーラの腹黒さを隠しきれて、なお純粋に可愛いといえる衣装ですね。確かに可愛い」私はついつい本音がでます。
「そうでしょう?ちょっとエンジがかったこの髪に合うのは、この服の色なのよ~」店長がウキウキしながら、モーラの回りを回って眺めている。やや青色がかったシンプルなデザインのワンピースドレスは、モーラが動くと綺麗に光っているように見える。
「そしてね、要所要所にアクセントとしてフリルをあしらっていて、その可愛らしさを強調するようになっているのよ。どう?」私に向かって店長が言った。
「おうどうだ?」なんかそのじじ臭い台詞でドヤ顔で言われても、可愛いからちょっと許せませんねえ。
「いや本当に一流デザイナーさんなんですねえ。それでこのぴったりなサイズ感。恐れ入りました。似合っているんですよ本当に」その腹黒さが見え隠れしなければねえ。と思ったらスネを蹴られました。だから腹黒いって言ったのに。
「この服は・・・」モーラが言いかけると
「だめよ売らない。ここに来て・・・以下略」
「まあしかたないのう」
「あ、あきらめちゃうんだ」とアンジー。
「しかたなかろう。似合うと言われても着ていく機会もないじゃろうしなあ」
「あ・・・確かに」アンジーがそう言われてちょっとまずったか?とか思ったようです。
「おぬし無理矢理手に入れたのか」
「ええまあ」
 そういう話をしている間に、店員さんとメアさんは細かい打ち合わせをしています。私は少しだけ参加して、2、3点確認しました。
「では、そう言う段取りで」メアが嬉しそうに言いました。
「はい、同士!!」店員さんが親指を立てて挨拶しています。メアも同じように親指を立てています。2人が意気投合しているのは果たして良いことなのでしょうか?ちょっと不安です。
 服屋を出て、私達は次の打ち合わせにむかいました。
 建築設計の打ち合わせには、すでにエルフィが行っていました。
「エルフィ!」わたしは声を掛ける。
「あ、旦那様~」遠くから見えるくらい大きく手を振っています。ついでに胸も揺れています。隣の男の人は目のやり場に困っています。
「場所は決まっているのですか?」
「いえ、今回は広場に作って、それを移す感じですね~。もちろん打ち上げの時にそれを使う予定で作りま~す」
「あまり大きいと、経営できなくなりそうですよね」
「ですから移転の際は、少し小さくしなければと思っていますよ~」
「とりあえず、厨房と事務室はこのぐらいの大きさにしないとまずいのです」
「設計できましたら連絡します」
「よろしくお願いします」
 そうしてその日は一日、色々なところと打ち合わせをして自宅に戻った。

○お披露目会
 食事の後、みんなが見たいというのでアンジーが例の服を着てみせる。ついでに羽も広げた。
「これは本当に絵画として残したいくらいですねえ」パムが感心しながら言った。
「私もこのようなデザインセンスと裁縫のスキルが欲しいと思います」とメア。
「いや、これはすごいのう。あの店長本当にすごいのだなあ。名をなんて言うのか」
「ミケガミ・ダヴィと言う名前だと記憶しております」メアが言った。
「もういいでしょう?けっこうきついのよ。おなかのあたりが」羽をしまったアンジーが言った。
「確かにその手の服は、タイトに作りますからねえ」
「ねえねえ、下着はなにをはいているの」そう言ってレイは、スカートをまくった。
「レイ!あんたねえ!」アンジーがそう言ってしゃがみ込んだ。
「あ、だめでした?」レイが言いました。
「あたりまえでしょ。特にこの生地は薄くて下着のラインが出るんだから、今は履いてないわよ」
「ええーーーっ」全員驚きました。
「だって、鏡に映すとほんのり下着のラインが出るのよ。恥ずかしいでしょ」アンジーがうずくまったままそう言います。
「今度行った時に聞いてみます。この服用のインナーがあるのかどうかを」メアが冷静に答えました。
「お願いそうして」真っ赤な顔で座り込んだアンジーもめっちゃ可愛いですね。
「バカ!!」涙目で私をにらんだアンジーは、自分の部屋に戻った。
「おぬし、もう少し感情を見せぬ努力をせんか?な?」モーラがちょっと怒っています。
「努力はしているんですが、素直な感情はなかなか制御できないのですよ」私も何とかしたいのですけどねえ。
「他の魔法は何とでもできるくせになあ」ため息をつくモーラ。
「本当ですね」とパム
「しようがないですよ~」エルフィが言います。
「あきらめています。でもうれしい時もありますから」とユーリ
「素直じゃダメなんですか?」とレイ
「これからいろいろ憶えていきましょうね」とメアが言いました。
 まあ、大人になるってそういうことですね。

○第1回制服会議
 なにやら家族全員が服屋さんに呼ばれました。
 新しい店は、店の奥に何やら舞台のようなちょっとだけ高い段差の所のある部屋があり、その手前にテーブルが並べてある。周囲には縫製用の機材やマネキンみたいな物が片付けられている。普通は作業場なのでしょうねえ。
 そこに到着してみると、エリスさんも呼ばれていました。
「来たわね。一体何が始まるのかしら?」椅子に座ってエリスさんがぶーたれています。
「多分メイド服についてだと思います」メアが残念そうに言った。
「おや?ビギナギルで製作した服をリメイクするだけだったと思いますが?」私は念のため尋ねます。
「はい。しかし店長によって阻まれました」メアがそう言うと、横手の扉からナナミさんが扉を開けて、開けた扉からスケッチブックのような紙を抱えた店長が現れる。
「はいこれ、この中から選んでちょうだい。これがDTの案、これがナナミーとメアさんの案、これが私のね」そう言って紙をドンとテーブルの上に置き、それをナナミさんがみんなに配る。
「あんた、案なんか出してたの?」アンジーがジト目で私を見る。
「そういえば、少し前にメアさんに聞かれたので私の理想のメイド服を語りましたねえ」私は上を向いて思い出しました。
「でも店長よ。おぬし自分のデザインに自信があるのじゃろう?ならばそれで決定じゃないのか?」モーラがそう尋ねます。
「今回の件は、仕立て直しの依頼を村長からされているのよ。私の趣味ではなくて仕事なのよ。だからクライアントの意向に反する場合は、代案を提示しなければならないのよ」店長が嫌そうに言った。何だかんだ言いながらこの人は仕事人なのですねえ。
「なので、意見を募ってそれをクライアントに提示するのよ。ナナミー説明をお願い」
「はい、クライアントの意向を無視せず新たなものを提示しますので、まずは皆様の了解のとれるデザインでないとなりません。ですので、ラフスケッチになりますが、ここから3案を選び、その実物を作ってクライアントに見せる事になります。それが一番イメージが湧きますから。よろしいでしょうか」
「わしらが選んだ物が選ばれる可能性があるのか?」紙をめくりながらモーラが言う。しかしある紙で手が止まる。
「結局は、店長のデザインなんだから、どれでも似たような・・・ゴクリ」アンジーも手を止めた。
「こ、これは・・・まずいですよ~」エルフィも手を止めた。
「これは、着たくないけど見せたいですね」ユーリの手が震えている。
「いや、これはまずいでしょう。どう考えてもダメですよ」パムさえも何か呟いている。
「よくわかんない~」レイはすでに飽きている。
「これは、私がいつも言っているイメージです。これは、ああ、捨てデザインですねえ。あとこれが本命でしょう。そして、これも微妙に狙ってきていますねえ」私は数枚のデザインの中から3枚を選び出した。
「では、投票します」店長はテーブルに顔を伏せていて、仕切っているのはナナミさんとそばにはメアです。はは~ん。そう言う事ですか。
「3案用意しますので、3枚選んでください」そう言ったナナミさん。メアが紙を回収していきます。
「ちょっと待ってください」私は言いました。
「DT。何よー」店長が顔を上げて言った。
「皆さんの選んだデザインを見せてもらいましょうか」私は全員を見て言いました。全員がドキッとした顔をしています。やはり狙っていましたね。
「私の手元にあるデザインと皆さんの所にあるデザインと同じものかどうか確認させてください」
「大丈夫よ。だって、委任状だもの」
「委任状ですか?」
「そうよ。あんたの選んだ3案に同意するという委任状よ」
「どうして、そうなりますか?」
「まあ朴念仁にはわからないわねえ」
「はあ?」
「と言う事でDTは何を選んだのかしら?」そう言って店長は、素早く動いて私の持っていた紙を奪い取ります。
「何するんですか?」
「ああ、全員安心して良いわ。変なの選んでいないわよ」店長が言いました。全員ホッとしています。
「自分で投票してくださいよ」
「わしらが選ぶとなあ。無難なものを選ぶじゃろう?」
「特にエルフィなんか、多分肌の露出の少ないものを選ぶわよ」アンジーの言葉に大きく頷ずくエルフィ。
「今回のように集金を目的とした場合にはなあ。男目線が一番重要なんじゃよ」
「今回は人数制限をかけると言っていたでしょう?売り上げは変わらないですよね」私は腑に落ちないのでそう返します。
「開催は2日。今回は料理も人数分作っておくの。でも完売しなければビギナギルと同等の売り上げは見込めないのよ」
「人数が違いすぎるしなあ」
「そうなのよ。そもそもが最初から売り上げを期待できないのよ。だからこそどんな形であれ集客に期待が持てる方に賭けたいの」
「そうでしたか。アンジーがそう言うのなら。こちらをこちらに変更します」私は店長から紙を奪い1枚を取り替える。
「へえ、思い切ったわねえ」
「いいえ、本来の私の世界でのメイド喫茶は、もっと丈が短くてですねえ。こんな風になっているのですよ」私は、店長の持っていたデザイン画の隅の方に簡単に描いた。それは、いわゆるアイドルが履くようなミニスカフリフリのメイド服を描く。ただし下半身のスカート部分だけですが。
「あんた絵がうまいわねえ」アンジーがそのイラストを見て言った。全員がそれを回し見している。
「そりゃあ、システムエンジニアと親和性が高いですからね」
「偏見ねえ。システムエンジニアから怒られるわよ」
「あくまで一個人の見解です」
「それで逃げるのねえ」アンジーが笑っている。
「さて、じゃあデザインはこれでいいのかしら」店長はそう言って“私の描いたデザイン”を示す。
「ちょっと店長。それは、私の描いたデザインです。しかも下半身だけです。しかもそれは間違っていますよ」
「ええっ?これが一番客を引っ張りこめるし、私も賛成よ」
「おぬしこれはやりすぎではないか?」
「それは恥ずかしいですね」メアも言いました。ユーリもアンジーもエリスさんもうなずいています。
「店長。生足は無理ですよ」私も言います。そして自分で描いた絵を受け取り、膝上に横線を入れます。
「え?どうして?」店長は私の描いている様子を覗きながら言った。
「この丈の場合はニーハイじゃないと格好が悪いのです」描いた絵を見せる。
「あっそうなるのか。どうしよう?でもこのフレアスカート見栄えがいいのよねえ」私の絵を見ながら、あごに手を当てて考えています。そうです何かに気付いたようです。この人はやはりデザイナーでした。
「ナナミー、これどう思う?」
「この村でここまで刺激的なのはやめたほうがいいと思いますよ」
「そうよねえ」
「あとですね、この時代の靴下だと太ももで押さえきれずずり落ちると思いますよ」
「そうなのよね。素材開発に時間がなさすぎるわねえ」
「ご主人様」
「ああ、ガーターベルトですね」
「それは私も考えたのよ。でもね、このデザインにはそれは無粋なのよ」
「いっそ糊で接着しますか?」
「それはだめ。肌が痛むわ」
「やはり今回は店長デザインの方でいきましょうか」
「ねえDT。これはスカートまでだけど、この上の方の衣装デザインはあるのかしら?」
「色々ありますけど。こんな感じですよ。胸も強調されますし、エプロンだって下の方だけです。メイド服からはやや離れますよ」私は何種類かのメイド服を描く。まあ空想のものもありますがね。
「これって神戸屋じゃないの。ああ、アンミラなくなったしねえ」
「私はプリムヴェール派です。オプションとか必要ありませんよ。あそこも潰れましたけど」
「わしらにわかるように話せ」
「わからなくても良いのよ。ああ、それは見たことないわ。何かのゲームじゃないの?」
「解らなくても良いですよ。歴史として知っているだけの古いゲームですから」
「こうしてみると。あるじ様って色々変な事知っているんですねえ」
「色々付き合わされたのですよ。メイド喫茶に興味を持った人が自分一人じゃいけないから一緒に行こうと言われてね」
「記憶がもどっておるのか?」
「いや、おぼろげながらですね」
「じーッ。本当なのかしら?」
「さて、こんなところですね」
「全部胸が強調される衣装ですねえ」
「だって男の客を釣るために着ていますから」
「その一人だったわけね」
「こんなところに頻繁に行っていたらお金がいくらあっても足りませんよ。私は何回かに一回だけでした」
「楽しそうねえ」
「ごほん。このデザイン買取りたいのだけれど。どう?」
「お金はいりません。私のデザインではないので」
「いいの?」
「では、今度できる孤児院の子ども達の服や下着を無償で提供してください」
「これまでも提供しているわよ」
「昔は仕立て直していたとナナミさんから聞いていました」
「よく覚えているわねえ。そうね、在庫品から出すことにするわ」
「孤児院の子の方がいいもの着ることになりますね」
「まあ下着くらいはわからないわよ。服はそうね、下取りした服でも提供しようかしらね」
「では、今回は・・・」
「もう一度デザインして、形にするからそれを見てからにして」
「時間大丈夫ですか?」
「大丈夫よね~ナナミー」
「は・・・い」がっくりと肩を落とし、げっそりとしているナナミさん。たぶん期限までに徹夜で作らされるに違いない。



制服試着編に続く

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:887

Chivalry - 異国のサムライ達 -

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:88

中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:14

クズすぎる男、女神に暴言吐いたら異世界の森に捨てられた。 【修正版】

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:753pt お気に入り:11

実力主義に拾われた鑑定士 奴隷扱いだった母国を捨てて、敵国の英雄はじめました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,136pt お気に入り:16,603

魔剣士と光の魔女(完結)

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:16

龍魂

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:15

おちこぼれ召喚士見習いだけどなぜかモフモフにモテモテです

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:67

処理中です...