86 / 229
第16話 DTモフる事を覚える
第16-5話 それから
しおりを挟む
○レイが来てしばらくの事
「レイちゃん~う~ん。獣人さんはいいな~う~んもふもふ~」そう言ってエルフィは、獣人姿のレイを胸に埋もれさせてなでなでし始め、レイは苦しくなって獣化したが、さらにもふもふがとまらず。嫌がってその腕から逃れた。
「あ~逃げられた~」寂しそうですが、それは犬猫に一番嫌われる触り方ですよエルフィ。
外でユーリとレイが遊んでいます。手には私が作ったフリスビーやらブーメランを持っていて、獣化しているレイに見せ、遠くにユーリが投げて、それをくわえて取ってきています。なんで獣化しているのでしょうか。
「レイがこの方が好きだというんですよ」ユーリも困っています。
「はい、この姿でずーっと暮らしてきたので暮らしやすいのです」
「できるだけ獣人化に慣れてくださいね。食事とか洋服とかも」
「やっぱりダメですか?」そのウルウル目には弱いです・・・
「ご主人様こらえてください。ダメと言ってください」メアが横から私を叱ります。
「これから一緒に生活するにあたっては、憶えていかないとダメなことです。いいですか。獣人化して文字とか憶えていかないと町での生活ができなくなります」
「そうですか」耳がしょんぼりたれています。やめてーこっちが悪い事しているみたいじゃないですか。
「しょげてもだめですよ。これは皆さんと暮らす時の最低条件ですから。でも、もふもふですねえ」私はついついモフってしまいました。ああだめです。この誘惑には勝てません。
「いいなあ」
「いや、ご主人様ハアハアしないでください。気持ち悪いです」メアさんの冷たい視線が突き刺さる。
「よう児童虐待男、またやっておるのか」モーラがそこに来ました。
「ひどいですねえ。もふもふしていただけですよ」
「いや、首輪つけてリードで引っ張って歩いていたじゃろう。見られているぞ」
「あら、誰かに見られていましたか。やばいですね」
「そういうことじゃから、変な噂をたてられんように獣人化のまま生活するように」モーラがレイに厳しく言いました。ええ、モーラのオーラです。
「はい」レイはモーラにちょっとだけビビってそう言いました。
「でもこのモフモフとかおなかなでなでとかたまりませんよ」
「あん、ぬし様そこは、だめです。そこはおっぱいです」
「ああっすいません」
「おぬし発情させるなよ」
「はい」
「いいなあ」ユーリ、それをいいなあと言っていけません。
村に連れて行って村長に挨拶しましたが、村では、相変わらずハーレム男と影で言われているそうです。とりあえず奴隷商人よりはましだと思う事にします。
○レイのこれから
「食事の作法も全部最初からになりますね」メアさんがやさしく伝える。
「それから寝る時もできれば獣人のままで寝て欲しいですが」
「すいません、どういうものなのでしょうか?」
「そのベッドで寝るようにお願いできませんか」私とメアで2階の部屋に案内してそう言いました。
「こんなふかふかなベッド。私にはもったいないです」
「こうなると生活全般の見直しが必要になりますね」
「長年こうしてきたというのもあるが、それにしてもほとんど犬扱いだからなあ」モーラもほとほと困ってしまったようです。
「本当なら生まれてきた時に里子に出されていたのかもしれませんね」
「いや、捨てられていたかもしれないな」
「狼を率いる人狼ですか、考えると嫌になりますね」
「この子は、むしろ族長の孫という事で里に置かざるを得ず、むしろつらい日々を送っていたのかもしれませんね」
「そのつらい日々もおぬしと会って報われたのじゃ結果オーライじゃと思うことにせい」
「そうですね」
それでも1ヶ月程度で様になってきました。ただし、服だけは苦手なようです。
○呼称
エリスさんがこちらに来た折りに疑問をぶつけてきました。
「で、今度はなんて呼ばれているの。もう呼び方なんてないでしょう」
「こいつとあんた」アンジー
「おぬし」モーラ
「ご主人様です」メア
「あるじ様です」ユーリ
「旦那様です~」エルフィ
「ぬし様ですね」パム
「・・・飼い主様」・・・レイ
「だからそれはだめですって」
「わが殿ではだめですか?」
「殿はあまり良い響きではないですね」
「親方様ではいかがでしょう」
と言う事で、レイが私を呼ぶ時は親方様になりました。
「意外に安易なのねえ」
そして一時期みんなでその言い方になりました。
「でも、これ以上増えたらどうするの」
「増えないことを祈ります」
「あ、あとししょーと呼んでいる人もいますね」
エリスさんが帰った後の事です。
「親方様~」エルフィが呼びました。もちろん私の反応を見て遊んでいます。
「その間延びした呼び方やめなさい。気持ち悪い」
「よっ!親方!」
「アンジー完全に馬鹿にしていますよね」
「親方様あ~だっこ~」
「モーラも可愛いすぎますが、腹黒さがにじみ出ていますよ」
「親方様」
「ユーリ。様になりすぎです」
「親方様!」
「パムが一番様になっていますが、やめてくださいね。みんなでそうやって私で遊ぶのやめてください」
「では親方様、夕食の準備ができました。こちらへ」メアがそう言って私を誘導しました。
「うむくるしゅうない。とかさせないでください」私もつい調子に乗ってやってしまいました。
「親方様、嫌ですか?」
「レイが言うのは良いですけどね」
「いいなあ」ユーリが寂しそうに言う。しばらくは、パムとユーリが親方様を使っていた。
ここは時代劇ではないんですけど。
○復活の日常
聞こえるか~聞こえるだろう~はる ゲフン
人の育成というのは1年でできるものではありません。ましてや軍隊の兵士の調練などは、10年スパンになります。そのため魔族による襲撃などかなりの間ないと思っています。むしろ、平穏が長く続いて欲しいので、そう思いたいところです。
かわって、人の成長、獣の成長は著しいのです。まあ成長期というのもあるのでしょうが、あっという間にレイは成長しました。しかし、ユーリとそんなに変わらない体格でとまったようです。
「うちの種族は雌雄で体骨格が違いますから~」それでもユーリと比較すると筋肉量は格段にある。
「魔力量が徒になっているのかもしれないなあ」
「一定の体格まで成長すると魔力が成長を抑えるんですかねえ」
「こればっかりはわからないが、魔力が体型を維持しているみたいだしなあ」
「病気というのが存在していないですからねえ。もっとも細菌もいないようですし。この辺は研究しなければいけませんねえ」ああ、私が入ると余計な話になってしまいました。
若者達の朝は早い。メアさんは朝食の用意、ユーリ、パム、レイは、訓練に出かける。たまにアとウンがついて行き勝手に走り回っているらしい。もちろん馬車を引く体力の維持のためとエルフィから聞いている。なにやら魔力による脚力強化に目覚めたという。末恐ろしい馬達だ。
メアさんが朝食の用意が始まる頃、私とアンジーが起きて食器の用意をする。最初の頃メアさんがすごく嫌な顔をしていたがあきらめてもらった。私はその後、馬のま草と水を用意しに厩舎に行く食事の良い匂いが漂う頃、ユーリ達が戻り、私は馬のブラッシングをしてから、家に入る。あと、内緒でレイのブラッシングもしている。
その頃にはモーラも起き出してくる。
最後に起きてくるのがエルフィだ。寝坊して、たまにレイからかじられたりしている。
お祈りはアンジーが行い、みんなは静かに目をつぶっている。「いただきます」の発声は私がしています。食事をしながら今日のそれぞれの予定を話す。まあ、薬草の管理収穫などがありますが、基本は自由時間です。当然時間はけっこう余ります。
今は、メアがレイの礼儀作法、アンジーが孤児院設立のために村へ、パムとユーリが冒険者ギルドの設立手伝いのため村へ行くことにしている。というところですね。
私とモーラは、村長と打ち合わせをしたりしています。モーラは付き添いですね。たまに子ども達と遊んだりしています。
○レイについて
「お手」
「おかわり」
「シット」
「スタンド」
「ステイ」
「だから獣人族に犬のようなことをするのはやめてください。獣人族の権利侵害ですから」メアにたしなめられました。
「本人の希望なのでやってみましたが、たしかに目の知性が気になって素直にできませんね」
「でも、して欲しいと目で訴えていますけど」パムがレイの目を見てそう言いました。
「願望がダダ漏れなんですよ。犬本来の純粋な目ではなくて、こびる感じがいやかもしれません」面倒ですねえ。
「だめです。おなかは触らせません。さわっていいのは親方様だけです」
「そうやって興奮すると獣化するのはやめなさい。その・・・可愛すぎるので」
「もふりたい」
「でもなぜ子犬化するのでしょうか。レイはもう成犬もとい成狼ですよねえ」
「不思議じゃのう魔法による獣人化を繰り返せば徐々に大きくなるのかもしれん。」
「獣化したときの迫力はありませんねえ」
「いいえ、外では大きくなっていますよ」
「そうなんですか?」
「ええ、外で僕たちと戦闘訓練しているときは大きいですよ」
「やはり室内飼いされていたときの影響でしょうか」
「かもしれませんねえ」
○アクセサリー
「レイさん。はい、これがみんなとお揃いのネックレスです」
「これが噂のネックレスですね」
「はい、村では、私がこのネックレスを使って皆さんを操っている事になっている。噂のネックレスです」
「そんな噂が町では流行っているのですか」
「うちのダメエルフが吹聴していますから」
「あのー、できれば首輪にしてもらえませんか?」
「それは倫理的に無理ですよ。それに獣化したら・・・まあそのままですか」
「はい。むしろなじむのですが」
「やめておけ。よけい変な噂が立つわ」
「このネックレスの方が可愛いですよ」
「はい」
それでも村では、相変わらず私は変態ハーレム男と言われている。とほほ。
○レイの性癖
彼女にとっては、撫でられることは無上の喜びである。幼少期からずっと獣化したままで生活していて、亡くなった両親からは、大事にされていたらしく、その愛情表現は撫でることだったようだ。だから彼女は撫でることで愛情を確認しようとするし、誰にでも撫でて欲しいと思っている。もちろん彼女の嗅覚で怪しいと感じるものには警戒をする。匂いで敵か味方かを判断することを彼女は、小さい頃から自然と鍛えらたらしく、匂いを嗅いだ瞬間に判断できるそうだ。匂いの種類なのか何なのか聞いてみたが、本人にもよくわかっていない。会った当初は怪しいぐらいだったのが会話の途中で匂いが強く変化することもあるらしく感情による匂いの変化も気づくようだ。彼女にとっての匂いは、力の強さとかではなく。嫌な奴かそうでないかなのだろう。モーラが最初に彼女を持ち上げた時にも怯えるわけでもなかった。今では、自分だけではなく家族にとっても危険と判断すれば牙をむく。
そんな彼女だから獣化しているときは、嬉しそうに人の中を走っていき、撫でられようとする。最近はきれい好きになって、私に頻繁にブラッシングを頼むようになった。ブラッシングは 誰でも良いわけではなくて、つがいとなる者が行う決まりが一族にはあるそうで私にしかやらせていないのだそうだ。みんなやりたそうなのですがねえ。
○別称(蔑称)
「村外れの魔法使い(奴隷商人)、アンジー様の下僕、エルフィの旦那様、レイの飼い主、種なしハーレム男」指折り数えながらアンジーが言いました。
「なんですかそれは」
「あなたの通称よ。いっぱいあるわねえ」
「不名誉な名前ばかりですねえ」
「でも、なんでかは知らないけど悪くは言われてないわねえ」
「ひどくないですか?さすがにまだ奴隷商人と呼ばれているのですよ」
「まあ、うらやましがられているだけなのよねえ。男達が嫉妬しているだけなのよ」
「うらやましいとか。ありえません。私が常に賢者になっていなければならないことを知らないのですか。まあ、ストライクゾーンをみなさんことごとくかわしてくれているのもありますが」
「本当にそうなのかしら?」
○組合を作ろう
さて、この村もどんどん規模が大きくなってきて、人の出入りも多くなり、ちょっと治安も悪くなってきました。
そこで村長さんは、在住の守備隊だけではなく傭兵団もしくは冒険者組合を作る事にしたそうです。
「冒険者組合を作るにあたって、この方をお呼びしました。傭兵団の団長さんです」
「こちらにも駐屯地を作ることになりましてな。その関係の調整も含めてです。お互いの兵を都合しあうことで、外敵からの防衛をしていこうと思っております」マッケインさんが爽やかに挨拶しました。
「なるほど。それは良いことです」
「また家族が増えたそうですが」そうマッケインさんは言いました。興味津々ですねえ。
「パムさんとレイです」
「はじめまして」
「はじめまして」
「これ、レイ緊張しているからと言って、いきなり獣化しないでください」
「は、恥ずかしいです」何をエルフィみたいな事を言っているのですか。
「そう言いながら、新しい人にかまって欲しそうに尻尾を振るのはやめなさい。野生はどこにいったのですか」
「はは、ドワーフさんと獣人さんですか。そうですか」そう言いながらも興味はレイの方に向いていますね。
「そういえば団長さんは獣人に会うのは2度目ですね」
「いいえ、私の街にもあれから結構訪れる人が増えまして慣れてはきましたが、皆さんほとんど、成犬ならぬ成人の方なので、このような幼い方は初めてです」両手がもふもふしたそうです。
「外では大きいのですが室内では大きくならないのです」
「しつけですか?」
「そういう訳ではないのですが」
座った団長さんの膝の上に飛び込んで、もふらせています。おまいは室内愛玩犬か。
団長さんもまんざらではない風でもふっています。
「そういえば、城塞都市の方がきな臭くなってきたのです」そう言いながらモフる手はとまりませんな。レイも幸せそうにモフられていますから、かなりモフりのテクニックを極めていらっしゃいますねえ。
「そうですか、あの街も戦火に襲われそうですか?」
「こちら側ではなく、例の賢王のところと小競り合いしそうになっていますね」
「発端が何かあったのでしょうか」
「昔から双方仲が悪いのです。でも、賢王のところは外敵も多く、民を守ることで精一杯でして、そこを狙って侵攻するつもりなのかもしれません」
「なぜ今なのでしょうか」
「近頃、賢王のレッテルのメッキがはげてきておりまして、娘である王女に糾弾されているのです。城塞都市側は、王制の弱体化が始まっているとみているようですよ。実際にはそうではないのですが」
「魔族が裏で糸を引いているとかは、ありませんか?」
「それはないと思いますが、その線もありますか?念のため領主様には話しておきましょう」
「まあ、こちらに飛び火しないと良いのですが」
「今のところ傭兵募集を始めた程度ですから、1年くらいは大丈夫かと」
「応募されるのですか?」
「私らは軍に隷属したくはありません。そういうのに応募するのはだいたいが食い詰めた元軍人とかでしょうし、真っ先に最前線に送られますから」
「そうですか。商人さんや領主様は元気ですか」
「軍備増強を進めていますから、軍需品の納品とかで潤ってきているとは聞いています。領主様は、自衛組織の強化を進めています。まあ、もっともそれは、先日の魔獣使いの件が効いているせいで、たまたま今回の件にもマッチしたようですが。ああ、お二人とも元気にしていますよ。あなたに戻ってきて欲しいと思っているようでしきりに動向を私に聞いてきます。もっとも元気にしているとしか私も知りませんので」
「それはすいません。気を遣っていただいて」
「それとですね。賢王の国は、自国の利益のため周辺国を侵略して、併合もしくは放置していました。そのツケが今、回ってきています。反乱がまもなく起こるでしょう」
「それが何か」
「ユーリに気をつけていてください」
「まさかそんな」
「どんな可能性も考えられます」
「わかりました。注意します」
○レイが仲間になってから
「あの男どう思うのクリスタ」
「あの男?あれはおかしいわよヒメツキ」
「そうかしら?」突然後ろにもう一人現れてそう言った。
「おやめずらしい 。風の「ダル」がこんなところに来るなんて。いつもは捕まらないのに、こういう時だけはいるのね」
「彼の件は、私も見守っているからね」風のドラゴンさんはそう言った。
「そうなの?」
「まさか私たちまで見張っているわけではないでしょう?」
「いやあなた達が動けば、どこにいたって風が知らせてくれるわよ」
「ああそうだったわね。ごめんね変な事を言って」
「いやいいの。せっかくだからクリスタの感想も聞かせて欲しいのよ」
「私の感想って、彼の印象の事を聞きたいの?」
「ええ、正直なところをね」
「おかしな所に筋を通すおかしい男ね。あとはドラゴンに対して敬意がないのよ。種族として対等だと思っているのねきっと」そう言いながらも首をかしげてから話を続けた。
「ああ、違うわね。敬意はあるけど心の中では敬っていないのよ。畏敬の念というやつはみじんもないわね」
「なるほど」
「だからと言って彼を評価できないかというと違うのよねえ」どうしてそう言う事になりますか。へそ曲がってませんか?
「はあ?いったい何を言いたいのかしら」
「彼は私の評価に値する者だと認めたので、殺すつもりだったのよ。能力を評価したくてね。でも彼が死んだ時に土のやつが隷属されたままだったので、死によってどう影響が出るかわからなかったから手を出せなかったのよねえ」
「あの男とやる気だったの?」
「まあね。孤狼族の里を見られたのもあるけど、面白そうじゃない?」
「殺す気だったの?」
「わからないわ。そこまでやらないとあいつの評価はできないと思ったのもあるわ。本音は、あの高慢な鼻を折って悔しがらせてみたかっただけなんだけど。やり過ぎると死んじゃうかもしれないしねえ」
「やめて正解よ。あなたが逆に殺されていたかもしれないのよ」
「まさか。人のくせにあり得ないわよ」
「黒い霧の事件を知らないの」
「聞いてはいるけど。もしかしてあの男がそうなの?」
「おやおや。知らなかったとはね。あのとき大半の低級魔族を倒して、さらに魔法攻撃をしのいでいるのよ」
「でもそれくらいではねえ」声が震えていますよ?
「その時あいつは、瀕死状態から回復していて魔力が半分以上なかったそうよ」
「え?何それ」
「魔力がほとんど枯渇していたのよ」
「それはまずい相手だったわ。そんな男が野放しになっていて大丈夫なの?」
「だから土のやつがそばにいるんじゃない」
「ああそういう事か。でもあの男になついているわよ。」
「土のなら大丈夫でしょ」
「まああなたが言うならね。そうかそれは手を出さなくて正解だったわ」
Appendix
「ついに獣人までも取り込んだか」
「意外でしたねえ。ドワーフはまあ想定していましたけど、さすがに孤狼族の族長の孫娘を仲間に引き入れるとは。それも族長の孫息子を残して娘の方だけを手に入れるとか狡猾すぎませんかねえ」
「そうは言うが、娘の方がついていったのであれば、本人の責任ではなかろう。しかたがなかったのであろうなあ。これがあの転生者の持つ特性かもしれないな。どれだけの加護をあやつは受けて転生したのか?もう記憶はもどっているのであろう?わしはもう何もしておらんぞ」
「たぶん少しずつ戻っているとは思いますね」
「なぜ一気に戻らない?」
「そばにいる者が心配していましてね。一気に記憶を戻すと、今まで暮らしていた記憶を忘れてしまうかもしれないらしいのです。そうすると転生直後の状態にリセットされるので、何をするかわからないらしいですよ」
「記憶が戻るときに記憶を忘れるそんなことがあるのか?」
「人の脳ですからねえ。嫌なことは忘れ、都合の悪いことも忘れるようにできていますから」なるほどなあ徐々にもどしているのか」
「たぶん。もっとももう戻っているのかもしれませんが、それは本人に聞くしかないですね」
「まだ暴れる可能性があるという事か?」
「はいそうなりますね」
続く
「レイちゃん~う~ん。獣人さんはいいな~う~んもふもふ~」そう言ってエルフィは、獣人姿のレイを胸に埋もれさせてなでなでし始め、レイは苦しくなって獣化したが、さらにもふもふがとまらず。嫌がってその腕から逃れた。
「あ~逃げられた~」寂しそうですが、それは犬猫に一番嫌われる触り方ですよエルフィ。
外でユーリとレイが遊んでいます。手には私が作ったフリスビーやらブーメランを持っていて、獣化しているレイに見せ、遠くにユーリが投げて、それをくわえて取ってきています。なんで獣化しているのでしょうか。
「レイがこの方が好きだというんですよ」ユーリも困っています。
「はい、この姿でずーっと暮らしてきたので暮らしやすいのです」
「できるだけ獣人化に慣れてくださいね。食事とか洋服とかも」
「やっぱりダメですか?」そのウルウル目には弱いです・・・
「ご主人様こらえてください。ダメと言ってください」メアが横から私を叱ります。
「これから一緒に生活するにあたっては、憶えていかないとダメなことです。いいですか。獣人化して文字とか憶えていかないと町での生活ができなくなります」
「そうですか」耳がしょんぼりたれています。やめてーこっちが悪い事しているみたいじゃないですか。
「しょげてもだめですよ。これは皆さんと暮らす時の最低条件ですから。でも、もふもふですねえ」私はついついモフってしまいました。ああだめです。この誘惑には勝てません。
「いいなあ」
「いや、ご主人様ハアハアしないでください。気持ち悪いです」メアさんの冷たい視線が突き刺さる。
「よう児童虐待男、またやっておるのか」モーラがそこに来ました。
「ひどいですねえ。もふもふしていただけですよ」
「いや、首輪つけてリードで引っ張って歩いていたじゃろう。見られているぞ」
「あら、誰かに見られていましたか。やばいですね」
「そういうことじゃから、変な噂をたてられんように獣人化のまま生活するように」モーラがレイに厳しく言いました。ええ、モーラのオーラです。
「はい」レイはモーラにちょっとだけビビってそう言いました。
「でもこのモフモフとかおなかなでなでとかたまりませんよ」
「あん、ぬし様そこは、だめです。そこはおっぱいです」
「ああっすいません」
「おぬし発情させるなよ」
「はい」
「いいなあ」ユーリ、それをいいなあと言っていけません。
村に連れて行って村長に挨拶しましたが、村では、相変わらずハーレム男と影で言われているそうです。とりあえず奴隷商人よりはましだと思う事にします。
○レイのこれから
「食事の作法も全部最初からになりますね」メアさんがやさしく伝える。
「それから寝る時もできれば獣人のままで寝て欲しいですが」
「すいません、どういうものなのでしょうか?」
「そのベッドで寝るようにお願いできませんか」私とメアで2階の部屋に案内してそう言いました。
「こんなふかふかなベッド。私にはもったいないです」
「こうなると生活全般の見直しが必要になりますね」
「長年こうしてきたというのもあるが、それにしてもほとんど犬扱いだからなあ」モーラもほとほと困ってしまったようです。
「本当なら生まれてきた時に里子に出されていたのかもしれませんね」
「いや、捨てられていたかもしれないな」
「狼を率いる人狼ですか、考えると嫌になりますね」
「この子は、むしろ族長の孫という事で里に置かざるを得ず、むしろつらい日々を送っていたのかもしれませんね」
「そのつらい日々もおぬしと会って報われたのじゃ結果オーライじゃと思うことにせい」
「そうですね」
それでも1ヶ月程度で様になってきました。ただし、服だけは苦手なようです。
○呼称
エリスさんがこちらに来た折りに疑問をぶつけてきました。
「で、今度はなんて呼ばれているの。もう呼び方なんてないでしょう」
「こいつとあんた」アンジー
「おぬし」モーラ
「ご主人様です」メア
「あるじ様です」ユーリ
「旦那様です~」エルフィ
「ぬし様ですね」パム
「・・・飼い主様」・・・レイ
「だからそれはだめですって」
「わが殿ではだめですか?」
「殿はあまり良い響きではないですね」
「親方様ではいかがでしょう」
と言う事で、レイが私を呼ぶ時は親方様になりました。
「意外に安易なのねえ」
そして一時期みんなでその言い方になりました。
「でも、これ以上増えたらどうするの」
「増えないことを祈ります」
「あ、あとししょーと呼んでいる人もいますね」
エリスさんが帰った後の事です。
「親方様~」エルフィが呼びました。もちろん私の反応を見て遊んでいます。
「その間延びした呼び方やめなさい。気持ち悪い」
「よっ!親方!」
「アンジー完全に馬鹿にしていますよね」
「親方様あ~だっこ~」
「モーラも可愛いすぎますが、腹黒さがにじみ出ていますよ」
「親方様」
「ユーリ。様になりすぎです」
「親方様!」
「パムが一番様になっていますが、やめてくださいね。みんなでそうやって私で遊ぶのやめてください」
「では親方様、夕食の準備ができました。こちらへ」メアがそう言って私を誘導しました。
「うむくるしゅうない。とかさせないでください」私もつい調子に乗ってやってしまいました。
「親方様、嫌ですか?」
「レイが言うのは良いですけどね」
「いいなあ」ユーリが寂しそうに言う。しばらくは、パムとユーリが親方様を使っていた。
ここは時代劇ではないんですけど。
○復活の日常
聞こえるか~聞こえるだろう~はる ゲフン
人の育成というのは1年でできるものではありません。ましてや軍隊の兵士の調練などは、10年スパンになります。そのため魔族による襲撃などかなりの間ないと思っています。むしろ、平穏が長く続いて欲しいので、そう思いたいところです。
かわって、人の成長、獣の成長は著しいのです。まあ成長期というのもあるのでしょうが、あっという間にレイは成長しました。しかし、ユーリとそんなに変わらない体格でとまったようです。
「うちの種族は雌雄で体骨格が違いますから~」それでもユーリと比較すると筋肉量は格段にある。
「魔力量が徒になっているのかもしれないなあ」
「一定の体格まで成長すると魔力が成長を抑えるんですかねえ」
「こればっかりはわからないが、魔力が体型を維持しているみたいだしなあ」
「病気というのが存在していないですからねえ。もっとも細菌もいないようですし。この辺は研究しなければいけませんねえ」ああ、私が入ると余計な話になってしまいました。
若者達の朝は早い。メアさんは朝食の用意、ユーリ、パム、レイは、訓練に出かける。たまにアとウンがついて行き勝手に走り回っているらしい。もちろん馬車を引く体力の維持のためとエルフィから聞いている。なにやら魔力による脚力強化に目覚めたという。末恐ろしい馬達だ。
メアさんが朝食の用意が始まる頃、私とアンジーが起きて食器の用意をする。最初の頃メアさんがすごく嫌な顔をしていたがあきらめてもらった。私はその後、馬のま草と水を用意しに厩舎に行く食事の良い匂いが漂う頃、ユーリ達が戻り、私は馬のブラッシングをしてから、家に入る。あと、内緒でレイのブラッシングもしている。
その頃にはモーラも起き出してくる。
最後に起きてくるのがエルフィだ。寝坊して、たまにレイからかじられたりしている。
お祈りはアンジーが行い、みんなは静かに目をつぶっている。「いただきます」の発声は私がしています。食事をしながら今日のそれぞれの予定を話す。まあ、薬草の管理収穫などがありますが、基本は自由時間です。当然時間はけっこう余ります。
今は、メアがレイの礼儀作法、アンジーが孤児院設立のために村へ、パムとユーリが冒険者ギルドの設立手伝いのため村へ行くことにしている。というところですね。
私とモーラは、村長と打ち合わせをしたりしています。モーラは付き添いですね。たまに子ども達と遊んだりしています。
○レイについて
「お手」
「おかわり」
「シット」
「スタンド」
「ステイ」
「だから獣人族に犬のようなことをするのはやめてください。獣人族の権利侵害ですから」メアにたしなめられました。
「本人の希望なのでやってみましたが、たしかに目の知性が気になって素直にできませんね」
「でも、して欲しいと目で訴えていますけど」パムがレイの目を見てそう言いました。
「願望がダダ漏れなんですよ。犬本来の純粋な目ではなくて、こびる感じがいやかもしれません」面倒ですねえ。
「だめです。おなかは触らせません。さわっていいのは親方様だけです」
「そうやって興奮すると獣化するのはやめなさい。その・・・可愛すぎるので」
「もふりたい」
「でもなぜ子犬化するのでしょうか。レイはもう成犬もとい成狼ですよねえ」
「不思議じゃのう魔法による獣人化を繰り返せば徐々に大きくなるのかもしれん。」
「獣化したときの迫力はありませんねえ」
「いいえ、外では大きくなっていますよ」
「そうなんですか?」
「ええ、外で僕たちと戦闘訓練しているときは大きいですよ」
「やはり室内飼いされていたときの影響でしょうか」
「かもしれませんねえ」
○アクセサリー
「レイさん。はい、これがみんなとお揃いのネックレスです」
「これが噂のネックレスですね」
「はい、村では、私がこのネックレスを使って皆さんを操っている事になっている。噂のネックレスです」
「そんな噂が町では流行っているのですか」
「うちのダメエルフが吹聴していますから」
「あのー、できれば首輪にしてもらえませんか?」
「それは倫理的に無理ですよ。それに獣化したら・・・まあそのままですか」
「はい。むしろなじむのですが」
「やめておけ。よけい変な噂が立つわ」
「このネックレスの方が可愛いですよ」
「はい」
それでも村では、相変わらず私は変態ハーレム男と言われている。とほほ。
○レイの性癖
彼女にとっては、撫でられることは無上の喜びである。幼少期からずっと獣化したままで生活していて、亡くなった両親からは、大事にされていたらしく、その愛情表現は撫でることだったようだ。だから彼女は撫でることで愛情を確認しようとするし、誰にでも撫でて欲しいと思っている。もちろん彼女の嗅覚で怪しいと感じるものには警戒をする。匂いで敵か味方かを判断することを彼女は、小さい頃から自然と鍛えらたらしく、匂いを嗅いだ瞬間に判断できるそうだ。匂いの種類なのか何なのか聞いてみたが、本人にもよくわかっていない。会った当初は怪しいぐらいだったのが会話の途中で匂いが強く変化することもあるらしく感情による匂いの変化も気づくようだ。彼女にとっての匂いは、力の強さとかではなく。嫌な奴かそうでないかなのだろう。モーラが最初に彼女を持ち上げた時にも怯えるわけでもなかった。今では、自分だけではなく家族にとっても危険と判断すれば牙をむく。
そんな彼女だから獣化しているときは、嬉しそうに人の中を走っていき、撫でられようとする。最近はきれい好きになって、私に頻繁にブラッシングを頼むようになった。ブラッシングは 誰でも良いわけではなくて、つがいとなる者が行う決まりが一族にはあるそうで私にしかやらせていないのだそうだ。みんなやりたそうなのですがねえ。
○別称(蔑称)
「村外れの魔法使い(奴隷商人)、アンジー様の下僕、エルフィの旦那様、レイの飼い主、種なしハーレム男」指折り数えながらアンジーが言いました。
「なんですかそれは」
「あなたの通称よ。いっぱいあるわねえ」
「不名誉な名前ばかりですねえ」
「でも、なんでかは知らないけど悪くは言われてないわねえ」
「ひどくないですか?さすがにまだ奴隷商人と呼ばれているのですよ」
「まあ、うらやましがられているだけなのよねえ。男達が嫉妬しているだけなのよ」
「うらやましいとか。ありえません。私が常に賢者になっていなければならないことを知らないのですか。まあ、ストライクゾーンをみなさんことごとくかわしてくれているのもありますが」
「本当にそうなのかしら?」
○組合を作ろう
さて、この村もどんどん規模が大きくなってきて、人の出入りも多くなり、ちょっと治安も悪くなってきました。
そこで村長さんは、在住の守備隊だけではなく傭兵団もしくは冒険者組合を作る事にしたそうです。
「冒険者組合を作るにあたって、この方をお呼びしました。傭兵団の団長さんです」
「こちらにも駐屯地を作ることになりましてな。その関係の調整も含めてです。お互いの兵を都合しあうことで、外敵からの防衛をしていこうと思っております」マッケインさんが爽やかに挨拶しました。
「なるほど。それは良いことです」
「また家族が増えたそうですが」そうマッケインさんは言いました。興味津々ですねえ。
「パムさんとレイです」
「はじめまして」
「はじめまして」
「これ、レイ緊張しているからと言って、いきなり獣化しないでください」
「は、恥ずかしいです」何をエルフィみたいな事を言っているのですか。
「そう言いながら、新しい人にかまって欲しそうに尻尾を振るのはやめなさい。野生はどこにいったのですか」
「はは、ドワーフさんと獣人さんですか。そうですか」そう言いながらも興味はレイの方に向いていますね。
「そういえば団長さんは獣人に会うのは2度目ですね」
「いいえ、私の街にもあれから結構訪れる人が増えまして慣れてはきましたが、皆さんほとんど、成犬ならぬ成人の方なので、このような幼い方は初めてです」両手がもふもふしたそうです。
「外では大きいのですが室内では大きくならないのです」
「しつけですか?」
「そういう訳ではないのですが」
座った団長さんの膝の上に飛び込んで、もふらせています。おまいは室内愛玩犬か。
団長さんもまんざらではない風でもふっています。
「そういえば、城塞都市の方がきな臭くなってきたのです」そう言いながらモフる手はとまりませんな。レイも幸せそうにモフられていますから、かなりモフりのテクニックを極めていらっしゃいますねえ。
「そうですか、あの街も戦火に襲われそうですか?」
「こちら側ではなく、例の賢王のところと小競り合いしそうになっていますね」
「発端が何かあったのでしょうか」
「昔から双方仲が悪いのです。でも、賢王のところは外敵も多く、民を守ることで精一杯でして、そこを狙って侵攻するつもりなのかもしれません」
「なぜ今なのでしょうか」
「近頃、賢王のレッテルのメッキがはげてきておりまして、娘である王女に糾弾されているのです。城塞都市側は、王制の弱体化が始まっているとみているようですよ。実際にはそうではないのですが」
「魔族が裏で糸を引いているとかは、ありませんか?」
「それはないと思いますが、その線もありますか?念のため領主様には話しておきましょう」
「まあ、こちらに飛び火しないと良いのですが」
「今のところ傭兵募集を始めた程度ですから、1年くらいは大丈夫かと」
「応募されるのですか?」
「私らは軍に隷属したくはありません。そういうのに応募するのはだいたいが食い詰めた元軍人とかでしょうし、真っ先に最前線に送られますから」
「そうですか。商人さんや領主様は元気ですか」
「軍備増強を進めていますから、軍需品の納品とかで潤ってきているとは聞いています。領主様は、自衛組織の強化を進めています。まあ、もっともそれは、先日の魔獣使いの件が効いているせいで、たまたま今回の件にもマッチしたようですが。ああ、お二人とも元気にしていますよ。あなたに戻ってきて欲しいと思っているようでしきりに動向を私に聞いてきます。もっとも元気にしているとしか私も知りませんので」
「それはすいません。気を遣っていただいて」
「それとですね。賢王の国は、自国の利益のため周辺国を侵略して、併合もしくは放置していました。そのツケが今、回ってきています。反乱がまもなく起こるでしょう」
「それが何か」
「ユーリに気をつけていてください」
「まさかそんな」
「どんな可能性も考えられます」
「わかりました。注意します」
○レイが仲間になってから
「あの男どう思うのクリスタ」
「あの男?あれはおかしいわよヒメツキ」
「そうかしら?」突然後ろにもう一人現れてそう言った。
「おやめずらしい 。風の「ダル」がこんなところに来るなんて。いつもは捕まらないのに、こういう時だけはいるのね」
「彼の件は、私も見守っているからね」風のドラゴンさんはそう言った。
「そうなの?」
「まさか私たちまで見張っているわけではないでしょう?」
「いやあなた達が動けば、どこにいたって風が知らせてくれるわよ」
「ああそうだったわね。ごめんね変な事を言って」
「いやいいの。せっかくだからクリスタの感想も聞かせて欲しいのよ」
「私の感想って、彼の印象の事を聞きたいの?」
「ええ、正直なところをね」
「おかしな所に筋を通すおかしい男ね。あとはドラゴンに対して敬意がないのよ。種族として対等だと思っているのねきっと」そう言いながらも首をかしげてから話を続けた。
「ああ、違うわね。敬意はあるけど心の中では敬っていないのよ。畏敬の念というやつはみじんもないわね」
「なるほど」
「だからと言って彼を評価できないかというと違うのよねえ」どうしてそう言う事になりますか。へそ曲がってませんか?
「はあ?いったい何を言いたいのかしら」
「彼は私の評価に値する者だと認めたので、殺すつもりだったのよ。能力を評価したくてね。でも彼が死んだ時に土のやつが隷属されたままだったので、死によってどう影響が出るかわからなかったから手を出せなかったのよねえ」
「あの男とやる気だったの?」
「まあね。孤狼族の里を見られたのもあるけど、面白そうじゃない?」
「殺す気だったの?」
「わからないわ。そこまでやらないとあいつの評価はできないと思ったのもあるわ。本音は、あの高慢な鼻を折って悔しがらせてみたかっただけなんだけど。やり過ぎると死んじゃうかもしれないしねえ」
「やめて正解よ。あなたが逆に殺されていたかもしれないのよ」
「まさか。人のくせにあり得ないわよ」
「黒い霧の事件を知らないの」
「聞いてはいるけど。もしかしてあの男がそうなの?」
「おやおや。知らなかったとはね。あのとき大半の低級魔族を倒して、さらに魔法攻撃をしのいでいるのよ」
「でもそれくらいではねえ」声が震えていますよ?
「その時あいつは、瀕死状態から回復していて魔力が半分以上なかったそうよ」
「え?何それ」
「魔力がほとんど枯渇していたのよ」
「それはまずい相手だったわ。そんな男が野放しになっていて大丈夫なの?」
「だから土のやつがそばにいるんじゃない」
「ああそういう事か。でもあの男になついているわよ。」
「土のなら大丈夫でしょ」
「まああなたが言うならね。そうかそれは手を出さなくて正解だったわ」
Appendix
「ついに獣人までも取り込んだか」
「意外でしたねえ。ドワーフはまあ想定していましたけど、さすがに孤狼族の族長の孫娘を仲間に引き入れるとは。それも族長の孫息子を残して娘の方だけを手に入れるとか狡猾すぎませんかねえ」
「そうは言うが、娘の方がついていったのであれば、本人の責任ではなかろう。しかたがなかったのであろうなあ。これがあの転生者の持つ特性かもしれないな。どれだけの加護をあやつは受けて転生したのか?もう記憶はもどっているのであろう?わしはもう何もしておらんぞ」
「たぶん少しずつ戻っているとは思いますね」
「なぜ一気に戻らない?」
「そばにいる者が心配していましてね。一気に記憶を戻すと、今まで暮らしていた記憶を忘れてしまうかもしれないらしいのです。そうすると転生直後の状態にリセットされるので、何をするかわからないらしいですよ」
「記憶が戻るときに記憶を忘れるそんなことがあるのか?」
「人の脳ですからねえ。嫌なことは忘れ、都合の悪いことも忘れるようにできていますから」なるほどなあ徐々にもどしているのか」
「たぶん。もっとももう戻っているのかもしれませんが、それは本人に聞くしかないですね」
「まだ暴れる可能性があるという事か?」
「はいそうなりますね」
続く
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる