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第12話 襲撃と告白と会ってはイケない人達
第12-1章 戦いは頭脳戦
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○病気にはならない
- 戦いは~これで決まりさ~ -
あの亡国を離れて、人と魔族の境界線とされている山道を馬車で通っています。まあ、モーラのおかげで魔獣は寄りつきませんので、割と無警戒に馬を走らせています。エルフィが馬のスピードを抑えるのに苦労しています。馬になめられていますよね。そういえば、あの亡国では魔獣が出現しました。変ですねえ?
それでも午前と午後にそれぞれ一度は休憩を取っています。今は午前の休憩中です。近くにあった洞窟の中を見に行った後、その近くで休憩しています。
「そういえば、皆さん体調不良とかあまり聞きませんねえ」
「わしやアンジー、メアは、元々そういうものとは無縁じゃろうしなあ」
「いえ。毎月数日ですがありますよ」メアがさらりと答えた。
「メアさんもしかしてそれは」私はさすがに言えませんけど月のウサギさんですかねえ。
「はいそれです。私は子どもが作れます」メアは親指を立てて私にそう告げました。
「おい!魔法で動いているのであろう?できるのか?」モーラが慌てています。
「できます。残念ながらまだ処女ですので、実証したことはありませんが」メアはそう言いながら私にウィンクをして、舌を少しだして言いました。誘ってますねえ。でも無理ですよ体が反応しませんから。EDなんですよ。
「あわわわわ」ユーリが真っ赤になって下を向き、アンジーがあたふたしている。
「ご主人様いつでも大丈夫です」そうやって両腕を広げて私を迎えるポーズをしてもダメですよ。
「そういう話をしていたわけではないのです。病気をしない体なのかと聞いただけですよ」私は話の方向を修正しました。メアさん残念そうにしないでください。
「私は体細胞の一部は人間を模して作られています。ですので魔力によるエネルギー供給も、食事の摂取によるエネルギー摂取も可能となっています。そして魔法による細胞も人体の細胞もどちらの免疫機能も魔法によりますので大丈夫です」嬉しそうにメアが話しています。
「なるほど。エルフィは?」私はメアの話をよく聞いてからエルフィに聞きます。
「風邪も引きませんね~魔法のおかげでしょうか~」エルフィはそう言って、そこで力こぶを作って見せてきます。でも、力こぶを見せる前にやった”ダッダーンボヨヨンボヨヨン”は余計です。また頭の中から変な情報引き出しましたね。引き出しのかなり奥の古い記憶ですよそれ。どうやって発掘したんですか。
「それはあると思います。魔法力が免疫機能を強化しているらしいですよ」ユーリが饒舌だ。さっきの話題をごまかしにかかっているのでしょうか。そしてエルフィの真似をしています。残念ながらボヨヨンボヨヨンになっていませんけどね。
「そうなんですか。でも毒とか効きますよね」私は新たな疑問がわいてきました。
「細菌レベルと毒素はまた違います。毒素も免疫ができれば別でしょうけど」メアが明確な回答をくれます。
「そうなんですね。勉強になります」思わず私はウンウン頷いてしまいました。
「どうしたんじゃ急にそんな話して」モーラが怪訝そうな顔で私に聞きます。
「そこの洞窟ですよ。これまでの道すがらいろんな山の洞穴を見ましたが、ああいった洞穴はめずらしかったのです」そう言って私は、斜め後ろにある洞窟を指さします。
「モーラ。あそこにはドラゴンが住んでいたのですよね?」
「幼少のドラゴンが作って住んでいたのであろうな。まず横穴を掘って。その後あの煙突のような縦穴を作って、そこから飛び立って外に出かけていたんじゃろう。しかし、脱皮か何かして体が大きくなって穴を通れなくなって放棄したというところじゃろうなあ。この洞窟のある場所を縄張りとしているドラゴンは、いないようだし、ここからどこかに縄張りを移したかもしれぬ。属性は、そうじゃなあ。火か光、金の属性持ちかもしれぬなあ。土系列でもないわ」モーラは手に持った肉をパンに挟んだものを食べながら言った。もぐもぐしながら話さないでください。マナー違反です。
「水と氷の属性はありえないのですか?」
「そばに水気も冷気もないからそれはなかろう」
「おぬし、何で急に洞窟に入ろうと思ったのじゃ」
「ファーンの近くに遺跡があったでしょう?他の地方にもあるかなと思いまして」
「残念じゃが、ここの洞窟の入り口にもそんな気配はないようじゃ」
「遺跡が気になるのですか?」メアが言う。
「科学者的な好奇心ですよ。あと穴は覗いてみたいと思いませんか?」
「穴を覗くものはまた穴から覗かれているのではありませんか」メアが言った。
「確かにそうですねえ」
「それにしても藁やら埃がひどかったですが、やはりドラゴンの中にもずぼらな人もいるんですねえ」
「モーラはきれい好きだったわよね?ドラゴンによるのかしら」アンジーも気になっているようです。
「おぬしが遊びに来るかもしれなかったから割と綺麗にしていたぞ」その言い方では、来なかったらずぼらにしていると言う事ですか?
「それはありがとうございます。確かに放棄したあとの巣とはいえ、あれだけ埃やら藁やらがたまっていたらハウスダストアレルギーを発症していたかもしれませんねえ」
「なんじゃそのハウスダストアレルギーとは」モーラが首をかしげて言いました。
「埃に反応してくしゃみがとまらなくなったり涙が流れっぱなしになったりしますよ」
「わしがくしゃみなんぞしたら、あそこの埃は吹き飛ぶじゃろう。すぐなくなるわ」
「空中に舞うとさらにくしゃみがひどくなりますよ」
「わからん。わしらには病気という概念はないからなあ」
「でしょうねえ」
そこで休憩を取っていたら突然の魔族の襲撃です。
○ 魔族の刺客
「前に3人ほど立っていますよ~」その場所から出発をしようとしたところ、手綱を持ったエルフィが言いました。狭い道に3人並んでいるので馬車はそのままです。馬達もちょっと緊張しているようです。
私は御者台に行って、その人たちを観察します。背格好が明らかに魔族な方が真ん中に立っています。肌の色が違い角があります。あと尻尾もきっとあるのでしょう。運動に適した程度の簡単な衣類を着て、手にはハンドナックルみたいな武器と足には靴を履いています。あの靴破けないんですかねえ。
残る2人は、どちらも容姿は女性です。ひとりは有り余る魔力を放出していて、持っているのは杖ですねえ。もうひとりは飛翔系の大きな翼をすでに出して立っています。こちらも肉体攻撃系なのでしょう。マントとかまとっていませんし。
私たちが彼らに気付いたので真ん中に立っている魔族が言いました。
「俺たちは刺客さ。魔王様直々に依頼された刺客。魔王様は、勇者になりそうなパーティーの中の出来損ないをここで足切りするつもりらしいよ。目障りなんだってさ。お前ら邪魔だから死んでくれって」中央の男性が大きな通る声で笑いながらこちらに話しました。
「別に何もしていないじゃないですか」私は馬車の御者台から言いました。
「ところがね、それじゃあ駄目なんだよ。勇者なら勇者らしく成果を上げて成長しなければいけないんだとさ」なんか投げやりな言い方ですねえ。説明が面倒なのでしょうか。
「私たちは勇者じゃないですし、何もしていないことが目障りとか言われても困りますよ」私は仕方がなく馬車を降ります。
「それだけの能力者をかかえて、何もしていない方が問題だろうよ。この世界にもう少し貢献したらどうだい?」まあ言っている事は確かに納得できます。皆さん能力はかなりハイレベルですから。私を除いて。
「私は日々の暮らしだけで精一杯なんですよ。この世界なんて大きなものは私の手に余ります」私はそう言いました。実際本当にそう思っていますので。
「まあそんなことはどうでもいい。あのキ○ガイ魔道士と渡り合った実力見せてもらおうか」
「ああそうなのですか。ようやくわかりました。あの方を差し向けたのは魔王様ということなんですね」私はやっとその疑問の答えを得る事ができてちょっと幸せになりました。
「そこからかよ。それにしてもあの時の戦闘の話は聞いているぜ。あんたすごいんだろう?それに、その子もそのハイエルフも、そのホムンクルスもさ」その魔族はそう言ってユーリをエルフィをメアを見ました。
「それで3人できたんですか」
「んーそういうわけでもないんだよね。3人で行ってこいと言われたからきたんだよ。別に俺ひとりでも大丈夫そうだけどな」たいした自信ですねえ。もっとも確かに放出している魔力はかなりのものです。
「なるほど。ではこの2人は馬車と一緒にここにいてもいいんですね」アンジーとモーラを指さす。
「あ?ああ子ども2人か。雰囲気はどっちもやばそうだけどな。まあいいや。足手まといがいたために守りに徹して死なれちゃあ後味が悪いからな。正々堂々戦って正々堂々殺してやるよ。あとは死体を片付ける奴も必要だろうしなあ」なんか良い事を思いついたように笑って言いました。他の2人も笑っていますね。
「別に死体なんてそのまま放置でいいですよ。でも、殺す気なんでしたらこっちも死ぬ気で反撃しますけどいいですね?それでそちらが死んでもいいんですか?こちらが不利みたいですから手加減できませんよ?死にたいんですか?」念のため言質を取っておきましょうか。命乞いをされても困りますので。
「ああ?手加減だって?死ぬつもりはねえよ。殺すつもりはあるけどな」そう言ってクスリと笑いました。
「死んでもいいんですね」一応念は押しておきましょう。
「しつこいな。別に死ぬ気ははないが、殺されても文句は言わねえよ」それを言わせたいんだろうと言うのが伝わったのでしょうか。そのとおりですそれが聞きたかった。
「わかりました。ではここから少し離れましょう」私はそう言ってユーリ、メア、エルフィと一緒に後ろに下がりました。馬車は洞窟の延長線上よりやや左に止めていましたので、少しだけ右にずれるようにして左斜め後ろに洞窟が見えるように少しずつ後ろに下がります。真後ろに洞窟が見えると警戒されそうです。
『わしは参加しなくてもいいのか?』モーラが嬉しそうに言いました。
『そもそも数に入れられないでしょう?これは魔族と私の話ですから。モーラとアンジーはこの世界に介入してはいけません』
『おぬし大丈夫なのか?』モーラは心配そうに尋ねます。
『まあ、アンジーから言われて対策を考えてはいましたので』
『アンジーから?』
『何かあった時に後悔しても遅いから~とか言っていました。本人はまさかこんなことになるとは思っていなかったでしょうけどね』
『それはたまたまじゃろうな』その間にアンジーは返事をしてきません。いつもならツッコミも入りそうなのですけど、口をつぐんでいます。
そうして馬車からかなり離れてから対峙する。あちらは3人、こちらは4人ですが。
「ククク。面白いねえ。全く怖じ気づかないな。あんた」間合いを詰めるためか少しだけ私達について歩いてきた3人の魔族はそこで止まって言った。
「私はそんな理不尽な理由で殺そうとしている事に怒っています。本来ならこの怒りを魔王にぶつけたいくらいですよ」
「まあそうだな。俺でも怒るわ」あなたさっきから笑い通しですねえ。
「馬車からかなり離れました。いいですかね」私は視界の左隅に洞窟が見えているのを確認してそう言いました。
「おう、いつでもいいぜ」そう言ってその魔族は剣を構える。他の2人も同様に体勢を作ったようだ。
「では始めましょう」私はわざと詠唱を始めました。
『さて、道すがら話していた段取りどおりでいきます』
『はい』
そうして私達は、前衛ユーリ、中衛私、後衛エルフィ、遊撃メアのシステムで迎え撃つ。
初撃は、真ん中の男の魔族が高速で剣を構えるユーリに向かってくる。速い。ユーリが一瞬出遅れるくらいには速かった。ぶつかり合った時に一瞬の衝撃波を感じる。しかしユーリはそれを受け止めている。
「ほう一撃目をとめるか。お前すごいな」魔族はそう言って、剣を軽く振り回して連撃してくる。
ユーリは、最初の数発は余裕がなかったが、そのスピードとパターンがわかったのか反撃に転じる。少しだけ押され気味だったのを少しだけ押し返していく。
「すごいな俺が押されるとは。だがここからは少し気合いを入れる・・ぜ」その言葉が終わらないうちに私が氷を降らせる。
「やるじゃないか。だがそんなものは効かねえ」彼の体に当たった氷の魔法が弾かれる。体に耐魔法のオーラをまとっているようです。対策済ですか。それでも魔法は防げてもその質量は防げていません。落ちてくる氷がぶつかるのは止めようがなく、前進する動きが止まる。
「そういう属性の魔法は対策済だ。こちらはお前らを殺すために来ているんだ。準備は万端だぜ」私の言葉を真似しないでください。
「どうした?魔法がきかないぜ。まあこちらも魔法を防御するので精一杯だからその瞬間は動けないけどな」
いちいち解説しなくて良いです。その間も魔法を防御しつつ剣での攻撃をし、その後方では、魔法を使う女魔族が火炎魔法でエルフィを攻撃している。エルフィが防御魔法を構築して私がそれを強化する魔法を重ねる。そうしているうちに残りのひとりが空中から剣で攻撃してくる。メアさんがしのいでくれているが、相手が空中からの攻撃でしかもスピードも速いため十分な反撃もできないまま防御に徹するしか手がなく、結果その繰り返しとなり戦況は膠着している。
反撃どころか、防戦一方でこちらには有利な状況は見当たらない。メインのアタッカーの魔族の男の力が強く、ユーリが力負けしてじりじりと下がっているのがその証拠。想定内ではありますが、かなりしんどい状況が続いています。
「どうした?反撃できないのか?そうだろうなこれだけ能力差があれば防戦一方だろう」いたぶり殺すのを楽しんでいるような物言いですねえ。こちらが不利なのは最初からわかっています。でも、あきらめて死ぬなんてまっぴらごめんです。そこで作戦2の開始です。
『もう少し後退したら森の切れ目です。そのタイミングで一度でかいシールドを張って洞窟の中に逃げます』
その先にはさきほど話していた洞窟がある。
『了解しました』
ジリジリと押されて洞窟が完全に視界に入りました。飛んでいた魔族が一度後退したので、私は『張ります!』
と心の中で叫びながら、魔力をこめてユーリの前に岩の壁を地中から発生させる。
「おおうびっくりした。こんな物も作れるのか。だが子どもだましだな」そう言ってその魔族は一撃でその岩を砕く。すでに私たちは一目散に洞窟へと走っている。
「あ?いない?」岩を砕いたときの砂埃が収まる頃には、我々は姿を消した。
「あの洞窟に向かったわ」空中にいた魔族があの洞窟を指さす。埃の中でも空からなら丸見えですよねえ。
「悪あがきするねえ」笑いながらその3人組は、洞窟に向かって歩き出す。
洞窟の中の長いトンネルを3人で走っています。とりあえずトレーニングの成果か、私は走っても息が切れていません。魔法で筋力を上げたいところですが、無駄な魔力を一ミリも使いたくないので必死で走っています。
しばらくして、後ろから火炎が飛んできました。私は振り向いてトンネルを塞ぐように土の壁を作って、火が飛んでこないようして、さらに奥へと進みます。岩を崩しながらゆっくりと進んでくる魔族の3人の音が反響して聞こえてきます。笑い声も聞こえています。まるでこちらの慌てる様を楽しむかのようにゆっくり進んできています。土壁を作ると同時にその地面にも魔方陣を構築して先に進みます。私達は、陽光が差し込む広い空間にやっと到着しました。そこはかなりの高さがある空洞で、天井にあいた斜めの穴から降り注ぐ太陽の光の中にきらきらと埃が舞い踊っています。
私たちがその広い空間の入り口から一番遠い壁を背にして立ち止まっていると、ほどなく正面のトンネルの穴から光の中に3人の魔族が現れました。
「何か仕掛けてくると思っていたが、ただ逃げてきただけか」面白くなさそうにその魔族は言った。
「そうなんですよ。ここを知ったのはあなた達と会うちょっと前なので、ここに逃げ込んでも仕方ないんですけどね。とりあえず一息つけましたよ」私はメアとユーリを両脇に立たせて、私だけ少し前に立ちます。
「実力差はわかったろう。じゃあ静かに殺されろよ」トンネルの入り口からさらに前に進んできた魔族の男は言った。
「それはちょっと勘弁して欲しいのですよ。でも、反撃しないで死ぬのも何なので、必死に反撃しますね。行きますよ」そう言って私は、相手に向かって走り始める。相手の3人もこちらに向かって走ってくる。私は途中で止まり、魔法を打つ真似をする。それを見てさらに速度を上げた3人は、途中で壁にぶつかりかけるが止まった。そうですか、あのスピードから止まれますか。すごいですね。
「なるほど見えない壁か。さっきまで色のついたシールドで今回は透明か。なるほど、ぶつかってスキができたらってことか。残念だが想定範囲内だよ」その魔族の男はシールドに手を当てている。破壊しないのですか?
「そうですか。では死んでくださいね」そう言って鳴らない指を鳴らして火炎魔法を打つ。
「バカじゃないのか?シールドに向かって打つとか。あ?おわあ。なんだシールドを通って炎が届いている。どうなっているんだ」シールドが網目状になっていてそこから炎が吹きだして相手に襲いかかる。私はどんどん火力を増していく。焼き肉の網の外から火炎放射器であぶる感じですかねえ。
「このシールドは通気穴が開いているタイプでして炎が通過するのですよ」私は一応説明をする。
「このシールドを破壊して出れば問題ないだろう」少し後退して剣を振ろうとする。しかし、振りかぶろうとして、後ろにもシールドがあることに3人は気付く。
「なんだこれは?シールドで囲まれていた?こんなに大きくシールドを作ったのか?それも一瞬で」魔族の男が驚いている。
「ちょっと細工はしていましたが一瞬ですよ。でも、壊されたら困るので、もう一枚大きいので覆いましょう」私はそう言ってその外側にさらにシールドを追加する。魔族達は四角いシールドの外をさらにシールドで覆われる。
「はあ何をする気だ。蒸し焼きか?でもこんな炎では俺らは倒せないぞ。おや?このシールド、さっきの戦闘の時と硬度が違うぞ」剣で壊そうとしても撥ね返されています。そりゃあ大きく剣を振れるほどの隙間がありませんから力も充分ふるえませんよねえ。
「実はですね、ここに入った時にまず入り口の所に穴の大きさに合わせて狭い部屋を作ったのですよ。先ほどのシールドを何層にも重ねましてね。そして、ここには燃焼物が多かったので、これを燃焼させてから密閉してみようと思います」相手は何を言っているかわからないようで、あわてて自分の周りの壁を壊そうと躍起になっています。しかし、腕を振り回すだけの空間がなく十分に力を発揮できずに壁を破壊できないでいます。さらに私は炎を魔族のいる空間に送り込み続けます。
「いいですか?そうするとフラッシュオーバーという現象がおきて、機密性が高いとそれに続いてバックドラフトという現象が起きます。高温に燃焼して酸素が不足すると一酸化炭素が蓄積します」私は解説しながら、さらに火の魔法でその壁の中を焼き続けます。彼らは焼き尽くされると思い必死になって壁を壊そうとしています。火の魔法に対する耐性があるためか体は焼かれていないようです。さすがに火への耐性はあっても熱さは感じているみたいですけどね。
「熱さは感じているんですか?そうですか。こちらもそろそろまずいのでおしまいにします。この燃焼が続いてその一方が解放されて酸素と結びつくとこうなります」
私は、トンネルの入り口にあった壁を一瞬にして消しました。ドンという鈍い爆発音のあと炎に飲み込まれる3人。その炎は洞窟の中に吸い込まれていき3人を吸い込んでいくだはずでした。しかし、トンネルの中にその3人組は、なにもなかったように立っています。私は、トンネルの入り口付近に行き、3人の様子を確認しました。
「こんな子どもだましの手で俺たちが倒せるとでも思ったか」
少しだけトンネルの中に吹き飛ばされてはいました、元気そうにしています。煤だらけですけどね。
「いいえ思っていませんよ。でも次の攻撃はしのぎきれませんよ」
「まだあるのか」少しだけ魔族の3人は動揺している。
「何のためにこの洞窟に逃げ込んだと思うんですか。上下左右の逃げ道をなくすためです」
「中にいたらお前達も一蓮托生だろう」
「だから、あなた達をトンネルの中に釘付けにしてからエネルギーを外に打ち出す必要があるんですよ」
私は、入ってくる時に事前に設置していた魔方陣を起動する。彼らの上下左右そしてトンネルと入り口の前後に何層もの分厚い壁を構築する。トンネルの中で彼らはさらに小さいトンネルに閉じ込められた形になる。彼らが周囲を見渡している間に彼らの前後に壁を作り空間を2つ作りました。彼らはこちら側の壁を壊そうと必死になって攻撃しています。
「それではいきますよ~まず風を起こして渦を作ります。そしてその渦に水を乗せて、氷を乗せて、炎を乗せます。もちろんちゃんと分離してありますから消えたりしませんよ~そして圧縮しま~す。はい、混合型エアガンのできあがりー」
彼らの前の空間にその渦は広がり、彼らに向けて竜巻を横にしたような渦ができている。
「気体ってね温度が上がれば上がるほど薄くなるんですよそれで圧縮しやすくなるんです。そしてそれを冷やして冷やして圧縮して液化しそうなところまで圧縮します。そしてその先に金属の玉を据えてどんと打ち出すと」私は、そう言って渦の前に大きな金属の玉を生成する。
「でかいエアガンのできあがりです。ドン」そうやって金属の玉は打ち出され、何重にも重なったシールドに向けて突進していく。手前の壁は金属の球に押されながら3人を押しつぶすように挟み込み、じわじわと前に進み、彼らの後ろにあった壁が崩れて、ついに彼らは壁に押しつぶされながら金属の球に挟み込まれたままトンネルの中を何度も何度もぶつかりながら高速で打ち出されます。何回か潰れる音がしながら暗闇を突き進んでいったようです。私達は、音がしなくなった後、トンネルと通って外に出ました。洞窟の入り口のはるか先に吹き飛ばされた3人の魔族が倒れています。どうやら最後の壁を崩してもなお渦は彼らを外にはじき出したようです。一体金属球はどこまで行ったのでしょうか?私はその3人に近づき様子を見ます。なにやらもぞもぞと体を動かしているようです。
「それでも生きていますか。すごい生命力ですねえ」
「早く殺せよ。ちっ腕も足も折れたのか動かねえ」口から血を吐き、多分首も動かせない状態なのでしょう。しゃべられるだけでもすごいことですけどね。
「そりゃあシールドと圧縮空気の玉に挟まれて何度も潰されているんですから手足の骨は砕けていると思いますよ。回復にはしばらくかかるでしょう」
「そうか、自分で死ぬこともできないのか。なあ、あんたどうして魔王と戦う勇者にならないんだ。そこが聞きてえ」
「そうですね。戦う理由がないからです。少なくとも人間が魔族を敵視して襲っていて魔族がそれに対抗しているようにしか見えないんですよ。ですから魔族が戦っているのは、人間側の自業自得だと思っていますよ。魔族側からすれば良い迷惑なんじゃないですか」
「だが、魔族はそんな人間を滅ぼそうとしているんだぜ」
「そうは見えないんですよね。今の人間なら簡単に滅ぼせるでしょう。でもしていないじゃないですか」
「そりゃあ魔族の中でもいろいろあるからよ。共存派もいるんだよ」
「お互い自分の身内同士でケンカしている間はだめですねえ」
「今の魔王はまだ成り代わったばかりで、体制固めをしているというところなのさ」
「成り代わった?」
「前の魔王は共存派だったのさ。それで他の魔族の反感を買って放逐されたんだ」
「殺されたわけではないんですか」
「殺さねえよ。少なくとも表向きは同族殺しはしねえ。それがルールだ」
「そうですか。少しお話を聞きたいので、エルフィさん傷の治療を」
「無理です~私たちの回復魔法は魔族には効きませんよ~」
「そうですか。それならアンジーもダメでしょうしねえ。そうだった。これが使えるんだった」私は自分の作った薬草を取り出す。メアさんはそれを察して追加分を取りに馬車に戻っていったようです。
「なんだそれは。傷薬か」少しだけ首が動かせるようになっています。さすが魔族。でも他の2人はほとんど動けていません。
「私が作ったので保証はできませんが獣人さんには効果があったので使ってみましょう」私はとりあえず胸の部分と手足の関節部分に貼り付けました。メアもエルフィと協力して他の2人にも同様に処置しているようです。
「は?なんだこれは、傷が治っていく。おまえそれ」
「この薬草は魔力で代謝をあげるだけなのです。そうですかこの薬草は魔族にも効くんですねえ」
「はは、どうしてそんなことをする。回復したらまた襲うかもしれないぞ」
「無理ですよ。私があなたに一度でも触れたなら、あなたには無理です」
「どういうことだ」
「傷を治したついでに骨にちょっと細工をしました」
「はあ?」
「骨と骨との接合部にちゃんとくっつかないようにしてあります」
「どういうことだ」
「ちょっと力を入れすぎるとぽきりと折れるんですよ。ですから無理できなくしてあります。特に私に殴りかかろうと早く動かしたり動いたりすると検知して折れます」
「言っている意味がわからん」
「そうですか。では立ち上がってください」そう言うとその男は簡単に立ち上がり腕と足の動きを確認している。
「ああ本当に回復している。すごいなその薬草。さて、せっかく直してもらったんだ仕切り直すぜ」その男は、言い終わらないうちに振り向きざま私に拳を入れてくる。しかし腕はあらぬ方向に曲がり言う事をきかない。
「折れたぞ」驚きの表情をするその魔族。右腕が関節からだらりと下に垂れ下がってブラブラしている。それを見た他の2人も驚いている。私は近づいて腕を正しい位置に直してあげます。
「どうですか?」
「なんだこれは」その魔族は元に戻った手を握ったり開いたりしています。確かに指も関節も動きます。
「何回もやると腕が元に戻らなくなりますから気をつけてくださいね」
「はは、はははは。これはすごい。すごいじゃないか。あんた本当に人間かい?その発想はすでに魔族の側じゃないか」
「失礼ですね。私は人間ですよ。ちなみにそれは、私の家族に対しても効果がありますから他の人に乱暴をしようとしてもダメですよ」
「そうか!本当におまえすごいんだな。確かにこれまで聞いた話ではこんなにすごいとはわからないわなあ」何を感心しているんですか。
「私はこの世界で魔法を習っていないんですよ。誰かがそばで魔法を使ってくれなければ憶えられないんです。だから一生懸命自分の知っている魔法を工夫して使うしかないんですよ」
「だが、その応用力はなんだ。変な方向にねじ曲がっていないか?」
「そうなんですよ。回りからは生活に便利な方向にしか使えないと言われまして」
「これのどこが生活に便利なんだ」
「はい、壊れた棒を直したり、より便利なように曲がるように加工したりとかに使っていますよ」
「俺の腕は壊れた棒か」なんか悲しそうにそう言いました。だって
「骨はそもそもカルシウムですからね」
「なんだそのカルシウムって」
「石灰ですね」
「なるほど転生者だからなのか」わからない事は全て転生者のせいになりますか。まあそうですね。異世界の知識ですからねえ。
「そうじゃ転生者じゃ」おやモーラ来ましたか。
「ああん、おまえドラゴンか。仲間にそんなやばいのがいるなんて聞いてないぞ」びっくりしています。さっき気付いていない訳ないでしょう?
「わしは一切手を出しておらん。この世界に不干渉じゃからな」
「ああそうか。確かそうだったな。それにしてもお前なら世界のバランスを崩しそうだな」どうしてそこで嬉しそうにするんですか。わかりません。
「この事を魔族側に知られたくないのですがねえ」
「どう考えたってそれは無理だ。俺たちがやられているんだ、戻ったら当然理由を聞かれるだろう」
「引き分けにしておいてくださいませんか。なんかしらないがうまく逃げられたと」
「それはまあ。そうしといてやるが」
「ですので、しばらくは動けないようにします」シールドの成分で縄を作り拘束する。
「これはなんだ」
「時限式のロープです。魔獣が来る前に解除されれば良いですが」
「なんだと」
「それでは無事を祈っています」
「ちょっとまてえええ」縛られて動けないその魔族は芋虫のように私達に近付こうとしていますが、私達は馬車に乗り込みました。
「いいのか?」モーラが心配しています。
「誰か近づいたら解除されます。戦えますよ」私はそんなに鬼畜ではありませんよ。
「なるほどはったりか」モーラが苦笑しています。
「それくらいは怖がってもらわないとね」私は出来ないウィンクをして見せます。馬車の中にいた全員がそれをみてゲンナリしています。ひどい。
そうして旅はまだ続くのです。
Appendix
ほうこの都市に向かっているというのか
はい噂の鬼畜奴隷商人がこちらに近付いていると連絡がありました
うむ私が成敗しよう
お願いします
続く
- 戦いは~これで決まりさ~ -
あの亡国を離れて、人と魔族の境界線とされている山道を馬車で通っています。まあ、モーラのおかげで魔獣は寄りつきませんので、割と無警戒に馬を走らせています。エルフィが馬のスピードを抑えるのに苦労しています。馬になめられていますよね。そういえば、あの亡国では魔獣が出現しました。変ですねえ?
それでも午前と午後にそれぞれ一度は休憩を取っています。今は午前の休憩中です。近くにあった洞窟の中を見に行った後、その近くで休憩しています。
「そういえば、皆さん体調不良とかあまり聞きませんねえ」
「わしやアンジー、メアは、元々そういうものとは無縁じゃろうしなあ」
「いえ。毎月数日ですがありますよ」メアがさらりと答えた。
「メアさんもしかしてそれは」私はさすがに言えませんけど月のウサギさんですかねえ。
「はいそれです。私は子どもが作れます」メアは親指を立てて私にそう告げました。
「おい!魔法で動いているのであろう?できるのか?」モーラが慌てています。
「できます。残念ながらまだ処女ですので、実証したことはありませんが」メアはそう言いながら私にウィンクをして、舌を少しだして言いました。誘ってますねえ。でも無理ですよ体が反応しませんから。EDなんですよ。
「あわわわわ」ユーリが真っ赤になって下を向き、アンジーがあたふたしている。
「ご主人様いつでも大丈夫です」そうやって両腕を広げて私を迎えるポーズをしてもダメですよ。
「そういう話をしていたわけではないのです。病気をしない体なのかと聞いただけですよ」私は話の方向を修正しました。メアさん残念そうにしないでください。
「私は体細胞の一部は人間を模して作られています。ですので魔力によるエネルギー供給も、食事の摂取によるエネルギー摂取も可能となっています。そして魔法による細胞も人体の細胞もどちらの免疫機能も魔法によりますので大丈夫です」嬉しそうにメアが話しています。
「なるほど。エルフィは?」私はメアの話をよく聞いてからエルフィに聞きます。
「風邪も引きませんね~魔法のおかげでしょうか~」エルフィはそう言って、そこで力こぶを作って見せてきます。でも、力こぶを見せる前にやった”ダッダーンボヨヨンボヨヨン”は余計です。また頭の中から変な情報引き出しましたね。引き出しのかなり奥の古い記憶ですよそれ。どうやって発掘したんですか。
「それはあると思います。魔法力が免疫機能を強化しているらしいですよ」ユーリが饒舌だ。さっきの話題をごまかしにかかっているのでしょうか。そしてエルフィの真似をしています。残念ながらボヨヨンボヨヨンになっていませんけどね。
「そうなんですか。でも毒とか効きますよね」私は新たな疑問がわいてきました。
「細菌レベルと毒素はまた違います。毒素も免疫ができれば別でしょうけど」メアが明確な回答をくれます。
「そうなんですね。勉強になります」思わず私はウンウン頷いてしまいました。
「どうしたんじゃ急にそんな話して」モーラが怪訝そうな顔で私に聞きます。
「そこの洞窟ですよ。これまでの道すがらいろんな山の洞穴を見ましたが、ああいった洞穴はめずらしかったのです」そう言って私は、斜め後ろにある洞窟を指さします。
「モーラ。あそこにはドラゴンが住んでいたのですよね?」
「幼少のドラゴンが作って住んでいたのであろうな。まず横穴を掘って。その後あの煙突のような縦穴を作って、そこから飛び立って外に出かけていたんじゃろう。しかし、脱皮か何かして体が大きくなって穴を通れなくなって放棄したというところじゃろうなあ。この洞窟のある場所を縄張りとしているドラゴンは、いないようだし、ここからどこかに縄張りを移したかもしれぬ。属性は、そうじゃなあ。火か光、金の属性持ちかもしれぬなあ。土系列でもないわ」モーラは手に持った肉をパンに挟んだものを食べながら言った。もぐもぐしながら話さないでください。マナー違反です。
「水と氷の属性はありえないのですか?」
「そばに水気も冷気もないからそれはなかろう」
「おぬし、何で急に洞窟に入ろうと思ったのじゃ」
「ファーンの近くに遺跡があったでしょう?他の地方にもあるかなと思いまして」
「残念じゃが、ここの洞窟の入り口にもそんな気配はないようじゃ」
「遺跡が気になるのですか?」メアが言う。
「科学者的な好奇心ですよ。あと穴は覗いてみたいと思いませんか?」
「穴を覗くものはまた穴から覗かれているのではありませんか」メアが言った。
「確かにそうですねえ」
「それにしても藁やら埃がひどかったですが、やはりドラゴンの中にもずぼらな人もいるんですねえ」
「モーラはきれい好きだったわよね?ドラゴンによるのかしら」アンジーも気になっているようです。
「おぬしが遊びに来るかもしれなかったから割と綺麗にしていたぞ」その言い方では、来なかったらずぼらにしていると言う事ですか?
「それはありがとうございます。確かに放棄したあとの巣とはいえ、あれだけ埃やら藁やらがたまっていたらハウスダストアレルギーを発症していたかもしれませんねえ」
「なんじゃそのハウスダストアレルギーとは」モーラが首をかしげて言いました。
「埃に反応してくしゃみがとまらなくなったり涙が流れっぱなしになったりしますよ」
「わしがくしゃみなんぞしたら、あそこの埃は吹き飛ぶじゃろう。すぐなくなるわ」
「空中に舞うとさらにくしゃみがひどくなりますよ」
「わからん。わしらには病気という概念はないからなあ」
「でしょうねえ」
そこで休憩を取っていたら突然の魔族の襲撃です。
○ 魔族の刺客
「前に3人ほど立っていますよ~」その場所から出発をしようとしたところ、手綱を持ったエルフィが言いました。狭い道に3人並んでいるので馬車はそのままです。馬達もちょっと緊張しているようです。
私は御者台に行って、その人たちを観察します。背格好が明らかに魔族な方が真ん中に立っています。肌の色が違い角があります。あと尻尾もきっとあるのでしょう。運動に適した程度の簡単な衣類を着て、手にはハンドナックルみたいな武器と足には靴を履いています。あの靴破けないんですかねえ。
残る2人は、どちらも容姿は女性です。ひとりは有り余る魔力を放出していて、持っているのは杖ですねえ。もうひとりは飛翔系の大きな翼をすでに出して立っています。こちらも肉体攻撃系なのでしょう。マントとかまとっていませんし。
私たちが彼らに気付いたので真ん中に立っている魔族が言いました。
「俺たちは刺客さ。魔王様直々に依頼された刺客。魔王様は、勇者になりそうなパーティーの中の出来損ないをここで足切りするつもりらしいよ。目障りなんだってさ。お前ら邪魔だから死んでくれって」中央の男性が大きな通る声で笑いながらこちらに話しました。
「別に何もしていないじゃないですか」私は馬車の御者台から言いました。
「ところがね、それじゃあ駄目なんだよ。勇者なら勇者らしく成果を上げて成長しなければいけないんだとさ」なんか投げやりな言い方ですねえ。説明が面倒なのでしょうか。
「私たちは勇者じゃないですし、何もしていないことが目障りとか言われても困りますよ」私は仕方がなく馬車を降ります。
「それだけの能力者をかかえて、何もしていない方が問題だろうよ。この世界にもう少し貢献したらどうだい?」まあ言っている事は確かに納得できます。皆さん能力はかなりハイレベルですから。私を除いて。
「私は日々の暮らしだけで精一杯なんですよ。この世界なんて大きなものは私の手に余ります」私はそう言いました。実際本当にそう思っていますので。
「まあそんなことはどうでもいい。あのキ○ガイ魔道士と渡り合った実力見せてもらおうか」
「ああそうなのですか。ようやくわかりました。あの方を差し向けたのは魔王様ということなんですね」私はやっとその疑問の答えを得る事ができてちょっと幸せになりました。
「そこからかよ。それにしてもあの時の戦闘の話は聞いているぜ。あんたすごいんだろう?それに、その子もそのハイエルフも、そのホムンクルスもさ」その魔族はそう言ってユーリをエルフィをメアを見ました。
「それで3人できたんですか」
「んーそういうわけでもないんだよね。3人で行ってこいと言われたからきたんだよ。別に俺ひとりでも大丈夫そうだけどな」たいした自信ですねえ。もっとも確かに放出している魔力はかなりのものです。
「なるほど。ではこの2人は馬車と一緒にここにいてもいいんですね」アンジーとモーラを指さす。
「あ?ああ子ども2人か。雰囲気はどっちもやばそうだけどな。まあいいや。足手まといがいたために守りに徹して死なれちゃあ後味が悪いからな。正々堂々戦って正々堂々殺してやるよ。あとは死体を片付ける奴も必要だろうしなあ」なんか良い事を思いついたように笑って言いました。他の2人も笑っていますね。
「別に死体なんてそのまま放置でいいですよ。でも、殺す気なんでしたらこっちも死ぬ気で反撃しますけどいいですね?それでそちらが死んでもいいんですか?こちらが不利みたいですから手加減できませんよ?死にたいんですか?」念のため言質を取っておきましょうか。命乞いをされても困りますので。
「ああ?手加減だって?死ぬつもりはねえよ。殺すつもりはあるけどな」そう言ってクスリと笑いました。
「死んでもいいんですね」一応念は押しておきましょう。
「しつこいな。別に死ぬ気ははないが、殺されても文句は言わねえよ」それを言わせたいんだろうと言うのが伝わったのでしょうか。そのとおりですそれが聞きたかった。
「わかりました。ではここから少し離れましょう」私はそう言ってユーリ、メア、エルフィと一緒に後ろに下がりました。馬車は洞窟の延長線上よりやや左に止めていましたので、少しだけ右にずれるようにして左斜め後ろに洞窟が見えるように少しずつ後ろに下がります。真後ろに洞窟が見えると警戒されそうです。
『わしは参加しなくてもいいのか?』モーラが嬉しそうに言いました。
『そもそも数に入れられないでしょう?これは魔族と私の話ですから。モーラとアンジーはこの世界に介入してはいけません』
『おぬし大丈夫なのか?』モーラは心配そうに尋ねます。
『まあ、アンジーから言われて対策を考えてはいましたので』
『アンジーから?』
『何かあった時に後悔しても遅いから~とか言っていました。本人はまさかこんなことになるとは思っていなかったでしょうけどね』
『それはたまたまじゃろうな』その間にアンジーは返事をしてきません。いつもならツッコミも入りそうなのですけど、口をつぐんでいます。
そうして馬車からかなり離れてから対峙する。あちらは3人、こちらは4人ですが。
「ククク。面白いねえ。全く怖じ気づかないな。あんた」間合いを詰めるためか少しだけ私達について歩いてきた3人の魔族はそこで止まって言った。
「私はそんな理不尽な理由で殺そうとしている事に怒っています。本来ならこの怒りを魔王にぶつけたいくらいですよ」
「まあそうだな。俺でも怒るわ」あなたさっきから笑い通しですねえ。
「馬車からかなり離れました。いいですかね」私は視界の左隅に洞窟が見えているのを確認してそう言いました。
「おう、いつでもいいぜ」そう言ってその魔族は剣を構える。他の2人も同様に体勢を作ったようだ。
「では始めましょう」私はわざと詠唱を始めました。
『さて、道すがら話していた段取りどおりでいきます』
『はい』
そうして私達は、前衛ユーリ、中衛私、後衛エルフィ、遊撃メアのシステムで迎え撃つ。
初撃は、真ん中の男の魔族が高速で剣を構えるユーリに向かってくる。速い。ユーリが一瞬出遅れるくらいには速かった。ぶつかり合った時に一瞬の衝撃波を感じる。しかしユーリはそれを受け止めている。
「ほう一撃目をとめるか。お前すごいな」魔族はそう言って、剣を軽く振り回して連撃してくる。
ユーリは、最初の数発は余裕がなかったが、そのスピードとパターンがわかったのか反撃に転じる。少しだけ押され気味だったのを少しだけ押し返していく。
「すごいな俺が押されるとは。だがここからは少し気合いを入れる・・ぜ」その言葉が終わらないうちに私が氷を降らせる。
「やるじゃないか。だがそんなものは効かねえ」彼の体に当たった氷の魔法が弾かれる。体に耐魔法のオーラをまとっているようです。対策済ですか。それでも魔法は防げてもその質量は防げていません。落ちてくる氷がぶつかるのは止めようがなく、前進する動きが止まる。
「そういう属性の魔法は対策済だ。こちらはお前らを殺すために来ているんだ。準備は万端だぜ」私の言葉を真似しないでください。
「どうした?魔法がきかないぜ。まあこちらも魔法を防御するので精一杯だからその瞬間は動けないけどな」
いちいち解説しなくて良いです。その間も魔法を防御しつつ剣での攻撃をし、その後方では、魔法を使う女魔族が火炎魔法でエルフィを攻撃している。エルフィが防御魔法を構築して私がそれを強化する魔法を重ねる。そうしているうちに残りのひとりが空中から剣で攻撃してくる。メアさんがしのいでくれているが、相手が空中からの攻撃でしかもスピードも速いため十分な反撃もできないまま防御に徹するしか手がなく、結果その繰り返しとなり戦況は膠着している。
反撃どころか、防戦一方でこちらには有利な状況は見当たらない。メインのアタッカーの魔族の男の力が強く、ユーリが力負けしてじりじりと下がっているのがその証拠。想定内ではありますが、かなりしんどい状況が続いています。
「どうした?反撃できないのか?そうだろうなこれだけ能力差があれば防戦一方だろう」いたぶり殺すのを楽しんでいるような物言いですねえ。こちらが不利なのは最初からわかっています。でも、あきらめて死ぬなんてまっぴらごめんです。そこで作戦2の開始です。
『もう少し後退したら森の切れ目です。そのタイミングで一度でかいシールドを張って洞窟の中に逃げます』
その先にはさきほど話していた洞窟がある。
『了解しました』
ジリジリと押されて洞窟が完全に視界に入りました。飛んでいた魔族が一度後退したので、私は『張ります!』
と心の中で叫びながら、魔力をこめてユーリの前に岩の壁を地中から発生させる。
「おおうびっくりした。こんな物も作れるのか。だが子どもだましだな」そう言ってその魔族は一撃でその岩を砕く。すでに私たちは一目散に洞窟へと走っている。
「あ?いない?」岩を砕いたときの砂埃が収まる頃には、我々は姿を消した。
「あの洞窟に向かったわ」空中にいた魔族があの洞窟を指さす。埃の中でも空からなら丸見えですよねえ。
「悪あがきするねえ」笑いながらその3人組は、洞窟に向かって歩き出す。
洞窟の中の長いトンネルを3人で走っています。とりあえずトレーニングの成果か、私は走っても息が切れていません。魔法で筋力を上げたいところですが、無駄な魔力を一ミリも使いたくないので必死で走っています。
しばらくして、後ろから火炎が飛んできました。私は振り向いてトンネルを塞ぐように土の壁を作って、火が飛んでこないようして、さらに奥へと進みます。岩を崩しながらゆっくりと進んでくる魔族の3人の音が反響して聞こえてきます。笑い声も聞こえています。まるでこちらの慌てる様を楽しむかのようにゆっくり進んできています。土壁を作ると同時にその地面にも魔方陣を構築して先に進みます。私達は、陽光が差し込む広い空間にやっと到着しました。そこはかなりの高さがある空洞で、天井にあいた斜めの穴から降り注ぐ太陽の光の中にきらきらと埃が舞い踊っています。
私たちがその広い空間の入り口から一番遠い壁を背にして立ち止まっていると、ほどなく正面のトンネルの穴から光の中に3人の魔族が現れました。
「何か仕掛けてくると思っていたが、ただ逃げてきただけか」面白くなさそうにその魔族は言った。
「そうなんですよ。ここを知ったのはあなた達と会うちょっと前なので、ここに逃げ込んでも仕方ないんですけどね。とりあえず一息つけましたよ」私はメアとユーリを両脇に立たせて、私だけ少し前に立ちます。
「実力差はわかったろう。じゃあ静かに殺されろよ」トンネルの入り口からさらに前に進んできた魔族の男は言った。
「それはちょっと勘弁して欲しいのですよ。でも、反撃しないで死ぬのも何なので、必死に反撃しますね。行きますよ」そう言って私は、相手に向かって走り始める。相手の3人もこちらに向かって走ってくる。私は途中で止まり、魔法を打つ真似をする。それを見てさらに速度を上げた3人は、途中で壁にぶつかりかけるが止まった。そうですか、あのスピードから止まれますか。すごいですね。
「なるほど見えない壁か。さっきまで色のついたシールドで今回は透明か。なるほど、ぶつかってスキができたらってことか。残念だが想定範囲内だよ」その魔族の男はシールドに手を当てている。破壊しないのですか?
「そうですか。では死んでくださいね」そう言って鳴らない指を鳴らして火炎魔法を打つ。
「バカじゃないのか?シールドに向かって打つとか。あ?おわあ。なんだシールドを通って炎が届いている。どうなっているんだ」シールドが網目状になっていてそこから炎が吹きだして相手に襲いかかる。私はどんどん火力を増していく。焼き肉の網の外から火炎放射器であぶる感じですかねえ。
「このシールドは通気穴が開いているタイプでして炎が通過するのですよ」私は一応説明をする。
「このシールドを破壊して出れば問題ないだろう」少し後退して剣を振ろうとする。しかし、振りかぶろうとして、後ろにもシールドがあることに3人は気付く。
「なんだこれは?シールドで囲まれていた?こんなに大きくシールドを作ったのか?それも一瞬で」魔族の男が驚いている。
「ちょっと細工はしていましたが一瞬ですよ。でも、壊されたら困るので、もう一枚大きいので覆いましょう」私はそう言ってその外側にさらにシールドを追加する。魔族達は四角いシールドの外をさらにシールドで覆われる。
「はあ何をする気だ。蒸し焼きか?でもこんな炎では俺らは倒せないぞ。おや?このシールド、さっきの戦闘の時と硬度が違うぞ」剣で壊そうとしても撥ね返されています。そりゃあ大きく剣を振れるほどの隙間がありませんから力も充分ふるえませんよねえ。
「実はですね、ここに入った時にまず入り口の所に穴の大きさに合わせて狭い部屋を作ったのですよ。先ほどのシールドを何層にも重ねましてね。そして、ここには燃焼物が多かったので、これを燃焼させてから密閉してみようと思います」相手は何を言っているかわからないようで、あわてて自分の周りの壁を壊そうと躍起になっています。しかし、腕を振り回すだけの空間がなく十分に力を発揮できずに壁を破壊できないでいます。さらに私は炎を魔族のいる空間に送り込み続けます。
「いいですか?そうするとフラッシュオーバーという現象がおきて、機密性が高いとそれに続いてバックドラフトという現象が起きます。高温に燃焼して酸素が不足すると一酸化炭素が蓄積します」私は解説しながら、さらに火の魔法でその壁の中を焼き続けます。彼らは焼き尽くされると思い必死になって壁を壊そうとしています。火の魔法に対する耐性があるためか体は焼かれていないようです。さすがに火への耐性はあっても熱さは感じているみたいですけどね。
「熱さは感じているんですか?そうですか。こちらもそろそろまずいのでおしまいにします。この燃焼が続いてその一方が解放されて酸素と結びつくとこうなります」
私は、トンネルの入り口にあった壁を一瞬にして消しました。ドンという鈍い爆発音のあと炎に飲み込まれる3人。その炎は洞窟の中に吸い込まれていき3人を吸い込んでいくだはずでした。しかし、トンネルの中にその3人組は、なにもなかったように立っています。私は、トンネルの入り口付近に行き、3人の様子を確認しました。
「こんな子どもだましの手で俺たちが倒せるとでも思ったか」
少しだけトンネルの中に吹き飛ばされてはいました、元気そうにしています。煤だらけですけどね。
「いいえ思っていませんよ。でも次の攻撃はしのぎきれませんよ」
「まだあるのか」少しだけ魔族の3人は動揺している。
「何のためにこの洞窟に逃げ込んだと思うんですか。上下左右の逃げ道をなくすためです」
「中にいたらお前達も一蓮托生だろう」
「だから、あなた達をトンネルの中に釘付けにしてからエネルギーを外に打ち出す必要があるんですよ」
私は、入ってくる時に事前に設置していた魔方陣を起動する。彼らの上下左右そしてトンネルと入り口の前後に何層もの分厚い壁を構築する。トンネルの中で彼らはさらに小さいトンネルに閉じ込められた形になる。彼らが周囲を見渡している間に彼らの前後に壁を作り空間を2つ作りました。彼らはこちら側の壁を壊そうと必死になって攻撃しています。
「それではいきますよ~まず風を起こして渦を作ります。そしてその渦に水を乗せて、氷を乗せて、炎を乗せます。もちろんちゃんと分離してありますから消えたりしませんよ~そして圧縮しま~す。はい、混合型エアガンのできあがりー」
彼らの前の空間にその渦は広がり、彼らに向けて竜巻を横にしたような渦ができている。
「気体ってね温度が上がれば上がるほど薄くなるんですよそれで圧縮しやすくなるんです。そしてそれを冷やして冷やして圧縮して液化しそうなところまで圧縮します。そしてその先に金属の玉を据えてどんと打ち出すと」私は、そう言って渦の前に大きな金属の玉を生成する。
「でかいエアガンのできあがりです。ドン」そうやって金属の玉は打ち出され、何重にも重なったシールドに向けて突進していく。手前の壁は金属の球に押されながら3人を押しつぶすように挟み込み、じわじわと前に進み、彼らの後ろにあった壁が崩れて、ついに彼らは壁に押しつぶされながら金属の球に挟み込まれたままトンネルの中を何度も何度もぶつかりながら高速で打ち出されます。何回か潰れる音がしながら暗闇を突き進んでいったようです。私達は、音がしなくなった後、トンネルと通って外に出ました。洞窟の入り口のはるか先に吹き飛ばされた3人の魔族が倒れています。どうやら最後の壁を崩してもなお渦は彼らを外にはじき出したようです。一体金属球はどこまで行ったのでしょうか?私はその3人に近づき様子を見ます。なにやらもぞもぞと体を動かしているようです。
「それでも生きていますか。すごい生命力ですねえ」
「早く殺せよ。ちっ腕も足も折れたのか動かねえ」口から血を吐き、多分首も動かせない状態なのでしょう。しゃべられるだけでもすごいことですけどね。
「そりゃあシールドと圧縮空気の玉に挟まれて何度も潰されているんですから手足の骨は砕けていると思いますよ。回復にはしばらくかかるでしょう」
「そうか、自分で死ぬこともできないのか。なあ、あんたどうして魔王と戦う勇者にならないんだ。そこが聞きてえ」
「そうですね。戦う理由がないからです。少なくとも人間が魔族を敵視して襲っていて魔族がそれに対抗しているようにしか見えないんですよ。ですから魔族が戦っているのは、人間側の自業自得だと思っていますよ。魔族側からすれば良い迷惑なんじゃないですか」
「だが、魔族はそんな人間を滅ぼそうとしているんだぜ」
「そうは見えないんですよね。今の人間なら簡単に滅ぼせるでしょう。でもしていないじゃないですか」
「そりゃあ魔族の中でもいろいろあるからよ。共存派もいるんだよ」
「お互い自分の身内同士でケンカしている間はだめですねえ」
「今の魔王はまだ成り代わったばかりで、体制固めをしているというところなのさ」
「成り代わった?」
「前の魔王は共存派だったのさ。それで他の魔族の反感を買って放逐されたんだ」
「殺されたわけではないんですか」
「殺さねえよ。少なくとも表向きは同族殺しはしねえ。それがルールだ」
「そうですか。少しお話を聞きたいので、エルフィさん傷の治療を」
「無理です~私たちの回復魔法は魔族には効きませんよ~」
「そうですか。それならアンジーもダメでしょうしねえ。そうだった。これが使えるんだった」私は自分の作った薬草を取り出す。メアさんはそれを察して追加分を取りに馬車に戻っていったようです。
「なんだそれは。傷薬か」少しだけ首が動かせるようになっています。さすが魔族。でも他の2人はほとんど動けていません。
「私が作ったので保証はできませんが獣人さんには効果があったので使ってみましょう」私はとりあえず胸の部分と手足の関節部分に貼り付けました。メアもエルフィと協力して他の2人にも同様に処置しているようです。
「は?なんだこれは、傷が治っていく。おまえそれ」
「この薬草は魔力で代謝をあげるだけなのです。そうですかこの薬草は魔族にも効くんですねえ」
「はは、どうしてそんなことをする。回復したらまた襲うかもしれないぞ」
「無理ですよ。私があなたに一度でも触れたなら、あなたには無理です」
「どういうことだ」
「傷を治したついでに骨にちょっと細工をしました」
「はあ?」
「骨と骨との接合部にちゃんとくっつかないようにしてあります」
「どういうことだ」
「ちょっと力を入れすぎるとぽきりと折れるんですよ。ですから無理できなくしてあります。特に私に殴りかかろうと早く動かしたり動いたりすると検知して折れます」
「言っている意味がわからん」
「そうですか。では立ち上がってください」そう言うとその男は簡単に立ち上がり腕と足の動きを確認している。
「ああ本当に回復している。すごいなその薬草。さて、せっかく直してもらったんだ仕切り直すぜ」その男は、言い終わらないうちに振り向きざま私に拳を入れてくる。しかし腕はあらぬ方向に曲がり言う事をきかない。
「折れたぞ」驚きの表情をするその魔族。右腕が関節からだらりと下に垂れ下がってブラブラしている。それを見た他の2人も驚いている。私は近づいて腕を正しい位置に直してあげます。
「どうですか?」
「なんだこれは」その魔族は元に戻った手を握ったり開いたりしています。確かに指も関節も動きます。
「何回もやると腕が元に戻らなくなりますから気をつけてくださいね」
「はは、はははは。これはすごい。すごいじゃないか。あんた本当に人間かい?その発想はすでに魔族の側じゃないか」
「失礼ですね。私は人間ですよ。ちなみにそれは、私の家族に対しても効果がありますから他の人に乱暴をしようとしてもダメですよ」
「そうか!本当におまえすごいんだな。確かにこれまで聞いた話ではこんなにすごいとはわからないわなあ」何を感心しているんですか。
「私はこの世界で魔法を習っていないんですよ。誰かがそばで魔法を使ってくれなければ憶えられないんです。だから一生懸命自分の知っている魔法を工夫して使うしかないんですよ」
「だが、その応用力はなんだ。変な方向にねじ曲がっていないか?」
「そうなんですよ。回りからは生活に便利な方向にしか使えないと言われまして」
「これのどこが生活に便利なんだ」
「はい、壊れた棒を直したり、より便利なように曲がるように加工したりとかに使っていますよ」
「俺の腕は壊れた棒か」なんか悲しそうにそう言いました。だって
「骨はそもそもカルシウムですからね」
「なんだそのカルシウムって」
「石灰ですね」
「なるほど転生者だからなのか」わからない事は全て転生者のせいになりますか。まあそうですね。異世界の知識ですからねえ。
「そうじゃ転生者じゃ」おやモーラ来ましたか。
「ああん、おまえドラゴンか。仲間にそんなやばいのがいるなんて聞いてないぞ」びっくりしています。さっき気付いていない訳ないでしょう?
「わしは一切手を出しておらん。この世界に不干渉じゃからな」
「ああそうか。確かそうだったな。それにしてもお前なら世界のバランスを崩しそうだな」どうしてそこで嬉しそうにするんですか。わかりません。
「この事を魔族側に知られたくないのですがねえ」
「どう考えたってそれは無理だ。俺たちがやられているんだ、戻ったら当然理由を聞かれるだろう」
「引き分けにしておいてくださいませんか。なんかしらないがうまく逃げられたと」
「それはまあ。そうしといてやるが」
「ですので、しばらくは動けないようにします」シールドの成分で縄を作り拘束する。
「これはなんだ」
「時限式のロープです。魔獣が来る前に解除されれば良いですが」
「なんだと」
「それでは無事を祈っています」
「ちょっとまてえええ」縛られて動けないその魔族は芋虫のように私達に近付こうとしていますが、私達は馬車に乗り込みました。
「いいのか?」モーラが心配しています。
「誰か近づいたら解除されます。戦えますよ」私はそんなに鬼畜ではありませんよ。
「なるほどはったりか」モーラが苦笑しています。
「それくらいは怖がってもらわないとね」私は出来ないウィンクをして見せます。馬車の中にいた全員がそれをみてゲンナリしています。ひどい。
そうして旅はまだ続くのです。
Appendix
ほうこの都市に向かっているというのか
はい噂の鬼畜奴隷商人がこちらに近付いていると連絡がありました
うむ私が成敗しよう
お願いします
続く
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