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第11話 姫騎士誕生
第11-1話 DTオタオタする
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○あの谷を越えて
パムと再び会う約束をした後、パムは故郷への旅に出て、私たちは本来の目的のために馬車を進めています。
壺の国ハイランディスと賢王の国ロスティアとの境界あたりに我々はさしかかっていました。
夕暮れが迫っていたのでどこかで野営しなければなりません。しかし、走っている道をはさんで平原が続き、どちらにも森がありません。できれば平野のど真ん中で野営をしたくはないのです。夜にたき火の明かりは、盗賊にとっても獣にとっても格好の標的です。もっともモーラのおかげで獣たちは襲ってこないと思いますが。そんな事を悩みつつ小高い丘のような所にさしかかりました。
「こんな何も無いところ初めて見たわ」めずらしく御者台にいたアンジーが言った。
「そうですね。木が生えていませんね。もしかして一度焼けていませんか?」私は周囲を見ながら所々に焦げた炭が転がっているのでそんな感じを受けました。
「うむ。どうやら集落があったらしいが、跡形もなく取り壊されたようじゃな」顔を出したモーラが続けて言った。
さらに進むと丘を越えたあたりで遠くに森が見えその傍らに廃墟のような物がいくつか固まって見えました。どうやら村落の跡らしいです。
「あ~集落が見えてきましたよ~」エルフィも幌の上から見ていたようです。
「ちらっとですが人の姿も見えましたわ」アンジーが言いました。さすが皆さん目がよろしいです。
近づくにつれて、焼けた建物の残骸が多数あり、かろうじてそこに集落があったことを示しています。その焼けた崩れた建物のそばからしばらく石の道路が続いているのですが、その道沿いに家らしき物はありません。本当に焼けてしまったのでしょうか。石畳を馬の蹄の蹄鉄のカチカチと打ち付ける音が響いています。荷馬車の車輪も所々でカチカチ音を出しています。
さらにしばらく進むとやっと焼け落ちた廃屋が並んでいて、さらに進んでいくと中央に噴水がある広場のような場所にさしかかりました。
「ここで野営かのう」モーラがそう言い、噴水のあたりで馬車を止めました。みんなで降りて周囲の様子を見て回っています。
「そうですねえ」
「ここがこの集落の中央だとすれば、この噴水に水を流すための水源がどこかにあるはずです。まず水を確保したいと思います」メアがその言葉を残して姿を消しました。行動が早すぎますよ。それにしても先ほど見えたと言っていた人影はどこにもありません。
「人がいませんね。先ほど人影が見えたと言っていましたけど見間違いだったのでしょうか?」私はアンジーに尋ねました。それには答えてくれません。何かを考えているようです。
「幽霊ではないですよね」ユーリが怖がって私の腕を掴みました。
「でました~ユーリの怖がり~」エルフィが言いながらユーリに背中から抱きつく。
「ひゃっ!!」抱きつかれたユーリがびっくりして握っていた私の腕を強く握りしめます。痛いです。
「幽霊などおらんと以前も言ったであろう。もっともネクロマンサーが使役するゾンビだったか?は、いるかもしれんが」モーラがそう言ってユーリにお化けの真似をして見せます。
「そのほうがもっと嫌です~」今度はエルフィがユーリの顔を胸に埋めて強く抱きしめています。おお久しぶりにユーリが窒息死しそうです。眼福眼福。おっとユーリ怒っていますね。すいませんでした。
「おや~ゾンビが出ましたよ~」アンジーがエルフィの真似をして言ったとたん、わらわらと物陰から人の姿をしたゾンビが近寄ってくる。
「ゾンビは、やっぱり焼きましょうかねえ」私はそう言って馬車に近づこうとするゾンビの元へ向かおうとした。
「焼くのはやめてもらえませんか。大事な友達なので」遠くから若い男の子の声が聞こえる。聞き覚えのある声だ。
ゾンビの動きは止まり。暗がりからひとりの男の子が歩いてこちらに来る。
「おや久しぶりですねえ」見覚えのあるその男の子は、ハイランディスで出会った男の子リアンでした。
「お久しぶりです。どうしてこんな辺鄙なところに来られたのですか?」使役しているゾンビを整列させながら彼は言いました。あれから1年以上経っています。彼はだいぶ精悍な顔つきになりましたね。
「ここに暮らしているのですか?」私は彼が以前と同じような服装でいるので不思議に思い尋ねました。
「はい。この先の誰も住んでいない家を直して生活しています」元気そうな返事です。
「そうでしたか。お元気で何よりです」
「これからどちらに向かわれるのですか?」
「とりあえず北を目指しています」
「そうですか。この先にはちゃんとした集落がありますよ。僕もそこで生活用品とかを買ったり、何かを作って売ったりしています」ああそうでしたか。ちゃんと生活できているんですね。
「お主は何か作っているのか?」モーラが尋ねました。やはりその後を気にしているのでしょう。
「小麦粉とか布製品ですね」彼は笑って答えてくれました。
「そんなものまで作れるのか」
「ええ、友人達と一緒に作っていますよ」そう言って彼は後ろにいるゾンビを見る。
「水はどうやって確保していますか?」
「ここは、山との高低差の関係で道路に沿って水路が作ってあります。なので困りません」
「そうみたいです。もしかしたらこの噴水も使えるかも知れません」いつの間にかメアさんが戻って来てそう言いました。
「ああメアさんお久しぶりです」リアンはメアに挨拶をした。
「あらあなた・・・そうですかお久しぶりです。お元気そうで何よりです」メアも挨拶を返す。
「ここで野営するつもりですのでお食事をご一緒しませんか。メアさんどうでしょうか」私はメアに許可も取らずついそう言ってしまいました。
「はい。ついでに手に入れた肉も少しおわけします」魔族との戦いの時にかなりの量の肉が手に入っていましたので、お裾分けできそうです。
「それはありがたいです。では遠慮無く」彼も嬉しそうに言った。
そうして料理を始めるメア。リアンは不思議な粉を持ってきた。
「これを使ってみてくれませんか?」彼はそう言って袋を差し出して自分でその中から赤い粉を指につけて見せてくる。
「どんな味のものですか?」メアさんが怪訝そうな顔で彼を見る。
「大丈夫ですよ。辛みが足りないときに使えます」そうして彼はひとなめしてみせる。メアもその袋に手を入れて指につけてなめてみる。
「香辛料ですね」メアの言葉に私も指につけてなめてみます。ああ辛い。確かに辛いです。
「たぶん唐辛子みたいなものですねえ。珍しいものです。これは売れると思いますよ」私は水を探して、料理用の水をお椀を持ってメアに入れてもらいました。
「近くに生えていたので、試しにかじってみたときにとても辛かったのです。ですがクセになりまして。うまく栽培できたのですが、あいにく販路がありませんので」リアンは困った顔をしている。
「これは欲しがる人がたくさん出ますねえ。生産量を増やしたほうが良いと思いますよ」私はちょっと嬉しくなってそう言いました。
「やはりそうですか。でも私はネクロマンサーですし、ゾンビを見て買いに来た方が嫌がりそうですから、自分で売るのは難しいかもしれません」
「魔法使いの方々はこういうものを欲しがりますので、エリス様を通じて魔法使いの里に話しておきましょう。きっと魔法使いさんが買い取りに来ると思いますので安心してください」メアがそう言いました。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」彼はそう言って頭を下げる。ああ、この子は本当にいい子なのですねえ。
「さて、シチューもできたようですので食事にしましょう」メアの言葉に一同が火の回りに集まってくる。
そうして夕食が始まった。久しぶりに人に出会ったせいか彼は饒舌だった。
「ここにはかつて小さい国があったそうです。ほんの小さな領主と国民の国です。生産性もあまりなく、行商人との交流が主だったみたいですね」その話しぶりは、はしゃいでいるようにも見える。やはり独りでいるのは寂しいのでしょうか。
「そんなものが国と言えるのか?」モーラもなぜか嬉しそうに話しています。
「一応税を徴収して街を作ろうとしていたそうです。この石畳もその成果みたいですよ」彼はそう言って足下の石畳を踏んでいます。
「なかなか考えているじゃない。交通基盤は流通の柱だもの」アンジーがうなずいている。
「税と言っても労働力やら成果品の一部をもらいうけるという形だそうです。通貨は他国のものを使っていたみたいですし」あなたそんな事まで調べているのはむしろすごくないですか?
「それはほとんど都市じゃな。でも国を名乗るからには、他国にはお金を納めていなかったのだろうな」モーラがリアンと真剣に話を始めました。
「ええ、隣国のロスティアから当初は属国になれと言われて断って和平条約を結んだようですが、長くは続かなかった見たいですね」そこでリアンは食事の手を止めた。
「それから?」モーラも大体は予想していたようですが結果を尋ねます。
「ロスティアに条約を破棄されて国は滅ぼされて国民は散り散りになったそうです」
「よくある話よねえ。ロスティアってあの賢王の所じゃない?」アンジーが尋ねるが誰も答えない。賢王とは誰が言っているのでしょうねえ。
「では国民はほとんど国外に逃げたのでしょうか?」私が気になるのはやはりそこですね。
「はい。ほとんどは国を離れたようですが、いくつかの小さな集落だけが残っています。集落はこの先の国王の居城から離れてた所にあって廃城から離れて暮らしていますね」
「普通集まって暮らしませんか」
「税の取り立てから逃れるためでしょうか。あえて近づかないようにしているみたいですよ。もっともロスティアは、数回税を徴収に来ただけで、その後は来なくなったそうです」リアンはそこだけはちょっと嬉しそうに話していました。しかし、独りだけあまり食が進んでいないようです。ええ、ユーリがちょっと暗い顔をしています。
「それにしても潰された国家ですか。潰したあとは、再建もせず放置ですか。それもひどい話ですね」私は食事を終えて空を見上げます。それならば滅ぼす必要など無いでしょうにと。
「ここが放置されているのは、ちょうど魔族との境界線なので、魔族が国を攻めようとすれば、ここを通ることになり、事前に発見して対策を取るためなのではないでしょうか。いわゆる緩衝地帯ですね」リアンはそう話します。ああそういうこともあるのですねえ。
「なるほど、放置にも意味があるのですねえ」でもなおのことその国を防波堤にした方が良かったと思うのですが。
「ここから先に進むと国王の居城の跡地も通りますよ。城は大きくないですが装飾品とかがとても良い物でした。もっとも焼けてしまったので見る影もないですけれど」リアンは楽しそうに話しています。
「それではそこに野営しますか」私はその言葉にそう言いました。
「幽霊出ませんか?」ユーリがびびっています。もしかして今まで暗い顔をしていたのはゾンビがそばにいるせいなのでしょうか?
「いやゾンビの方が恐いじゃろう」横に立っているゾンビを見ながらモーラが言った。
「・・・・」ユーリは何も答えない。さすがにネクロマンサーの前で恐いとも言えないのでしょうねえ。
そうして食事も終わり私たちはそこから離れることにした。名残惜しそうな彼に私は言った。
「色々教えてくれてありがとうございます。これを納めてください」そう言ってお金を渡す。
「お金ですか?いりませんよ。食事や肉までもらってさらになんて」この子は本当は欲しいのでしょうけど大人の返事をしました。ああ本当にこの子はいい子に育っていたのですねえ。私はなんだか切なくなってしまいました。
「何かと物入りじゃろう?もらっておけ。まあ情報提供料じゃな」モーラがそう言ってフォローしてくれる。やるじゃないですかロリババア。足を踏まれました。痛い。
「そういうことなら遠慮無くいただきます。ありがとうございます」こうやって話しているとあの時の事件は本当に些細な事だったように感じますね。良い子だったのにどうして両親はこの子に不審を抱いたのでしょうか。やはり魔法というものに対する感情はまだまだなのかもしれません。
「ではその館に行ってみます」
「あの・・・エリスさんにはお会いされるでしょうか?」彼は少しだけ戸惑って言いました。
「エリスさんとは定期的に連絡を取っておりますよ」
「そうですか。もしお話しする機会がありましたら、おかげで目が覚めましたありがとうございます。と言っていたとお伝えください」リアンは私の目を見てそう言いました。
「わかりました」私はそう言いました。
そうして私達は、彼に別れを告げてその城へ向かいます。石造りの外堀が見え始め、その先に黒ずんだ建物が見えてきます。確かに城に近い感じの造りです。稚拙ながらも城壁もあります。
○城跡
その城の門にたどり着いて城を見上げます。質素な作りで城なのか屋敷なのか判断に迷うくらいの大きさです。城壁は焼け焦げていて、しかも所々崩れ落ちています。崩れたところからは中の城が見えていますが、壁に穴が空いているところからは黒い影で城も何も見えません。
「ここでいいですかね」
私達は手前で馬車を降りて、警戒しながら門の中に入ります。周囲を見回して気配もなかったので、門から少し離れたところに馬車を止めて、門から城までの道に戻ってきて全員で中に入ろうとする。
その時、大きな門にかかっていたこの国の紋章がドサリと落ちました。何があったのかと様子を見るために全員で門に戻り、全員でその落ちた紋章を見ました。私はその煤けた紋章を見た時に見覚えがあることに気づきました。
「う・・・」ユーリが胸を押さえて片膝をつきました。顔色が青ざめています。
「ユーリどうしましたか」メアが慌てて駆け寄り体を支えている。私も近づき肩を貸します。それでもユーリの力が抜けてしまっていて、独りで立っていられなくなり、私はユーリを抱きかかえました。
「この中に休める場所がありますでしょうか」皆さんに声を掛けます。
「探してきます」そう言って全員が中に入り、2階の部屋に傾いていないベッドを見つけてそこに寝かせました。
私は顔色の悪いユーリを初めて見たので驚きと共に心配になり。そのベッドのそばに跪いてユーリの顔を見ています。
「落ち着きましたか?」様子を見に来たメアが私に尋ねます。
「呼吸は安定しています。たぶん大丈夫でしょう。アンジー」一緒に入ってきたアンジーに私は声を掛けます。
「いいわよ代わってみているわ」アンジーは私の言葉から意図を察して頷いてベッドの反対側に椅子を持って来て座りました。
「申し訳ありませんがユーリの様子を見ていてあげてください。目が覚めたら教えてください」
「わかったわ。まかせて」アンジーの言葉を聞いた後。私は1階へ降りて、城の中を見て回ります。
「ユーリはどうしたのじゃ」見回っていたモーラと会い、一緒に部屋を見て歩いています。
「私にもわかりませんが、たぶんここがユーリの故郷なんだと思います」私は隣に歩いているモーラの顔を見ないままそう言いました。
「なんじゃと?」モーラは私の言葉に一度立ち止まりましたが、私が歩き続けているので私の横に並んで歩き出します。
「門についていたあの紋章と同じ紋様の大きなブローチをユーリの物だからと傭兵団の団長さんから預かりました」
「そうか。ユーリはこの国の王族だったという訳か」
「もしそうなら、たぶん王族唯一の生き残りと言う事になりますかね」私は人ごとのようにぼんやりとそう言いました。
「おじいさんというのは誰だったのじゃ」そういえばその事をモーラも知っていましたねえ。
「騎士団長だった人らしいですよ。もっとも私はブローチを託されただけで何も話は聞いていません。ユーリも団長さんが直接話を聞かせようとしたのを拒否したようですから、はっきりは知らないと思います」
「なるほどな。そうであれば、早くここから離れた方が良いのではないか?」モーラは足早に私の前に回り込んで私の足を止めて私を見上げて言いました。
「そうですねえ」私はモーラの目をうつろな目で見ながらそう言いました。ええ、あまり考えたくなかったのです。
2人でそのまま一回りして、1階中央のフロアに戻るとユーリがみんなと一緒に立っていました。私とモーラに気付いて、エルフィとメアが近づいてきます。
「付近の様子を見に行ってきます」メアがそう言いました。エルフィも頷いています。
「ああそうですね」私はユーリが気になってついユーリを見て言いました。
「僕も行きます」私の視線に気付いてユーリがそう言いました。階段から降りてきたアンジーは心配そうにその様子を見ています。
「大丈夫なのですか?」私は本当に心配で聞きました。
「はい大丈夫です。少し外の空気を吸ってきます」そう言うユーリの顔はまだ青いのです。
「ユーリ。モーラの気配の範囲外まで行くことになりますが、大丈夫なのですか?」メアさんが心配そうに尋ねる。
「この場所を離れて少し考えたいことがありますので」そう言ったユーリの声に力強さはなかった。
「3人とも注意してくださいね。」3人ともそれぞれにうなずいて、3人は出て行きました。
残された私とアンジーとモーラとメアが静かにテーブルに座っている。
「少し整理せんか。城の中で何か見つかったか?」
「肖像画が一枚だけ焼け残っていました。その絵には王妃らしき人と抱きかかえられた赤ん坊の絵が描いてありまして、母親の顔はユーリに似てるかもしれません」私はどうもおかしいです。言葉は正確ですが、心はここにありません。
「あとは伝説の絵というのが残されていてね。笑っちゃうんだけど、男児が生まれたら国を継ぎ、女児が生まれたら騎士としてこの国を離れるという伝説がこの国にはあるそうよ」アンジーが私の気分を察したのかそう言いました。
「この国を建国したのが亡くなった国王だったはずじゃ。伝説が生まれるほどの歴史はないよなあ」先ほどのリアンとの会話からそこまで読み取っていましたか?ああ、一人で部屋を回った時に何か見たかもしれませんね。
「人類滅亡前からここに国があってその生き残りが建国していれば可能性はありますねえ」
「笑ってしまったけど、倉庫に保管してあったという事は、その可能性も捨てきれないわねえ」アンジーがちょっとばつが悪そうです。
「わざわざ伝説にするような事か?まあ男が国に残るのを正当化するのが目的なのかもしれんが」
「女の子を外に出すのはよく聞きますが、その場合には他国に嫁がせますけどねえ。あえて騎士ですか」
「そうなのよ。伝説に文句を言ってもしかたないけどね」
「隠語かも知れぬがなあ」
「国を継ぐのが男で国を出るのが女という事を理屈付けするためなのでしょうかねえ」
「この世界はまだ男が強いのだから、娘はどこかに出されるのが普通であろう」
「そうなのですよ」
メアがユーリとエルフィと歩きながら話している。
「ご主人様は何か知っていますね」メアがそうユーリに言いました。
「はい。僕もそう思いました。何かつらそうなのです」
「何を知っているのでしょうか~」エルフィが少し離れて歩きながらのんびりと言いました。
「あの紋章を見た時からつらそうな気持ちが伝わってきました。たぶん僕の過去に関係があるのだと思います」
「そうなんですか?」
「たぶん」
それからしばらくの間、3人の中に会話はありませんでした。しかしエルフィが何かを見つけました。
「人が襲われています」エルフィの声に他の2人に緊張が走る。
「ここはまだ境界線ではないのにですか?」メアが走り出す。つられて二人が慌てて走り出した。メアが発していくとその視界に獣がいるのが確認できた。魔獣ではなくイノシシのような獣です。
「そういうのは曖昧ですからね~」エルフィは立ち止まって獣に狙いをつけて矢を放つ。矢は魔法がかかっているのか光りながら飛んでいった。
倒れている人に襲いかかろうとしてた獣は、襲おうとした人との間に矢が振ってきて、さらに肩を打ち抜かれて、立ち止まってこちらを見た。3人が向かってくるのを見て、今度はそちらに向かってくる。
エルフィがほとんど真上に向けて矢を放ち、ユーリとメアがそこで待ち受ける。獣がちょうど1メートルくらいの距離に近付いた時に、獣は上空から振ってきた矢に体を射貫かれる。それでも獣は一瞬だけ勢いを殺されたが突進をやめない。すかさずメアが投げナイフを前足の間接に打ち込み足の動きを止める。足の動きを止められた獣は勢いがついたまま体だげ地上を這い進んでやがて停まる。ユーリが首を一気に切り落とした。
3人は、獣が死んだのを確認してから倒れていた人の所に向かう。
「大丈夫ですか?」ユーリが声を掛ける。
「ええ?マリア様がどうしてここへ?死んだはずではなかったのですか?」老婆は声を掛けてきたユーリの顔を見てそう叫んだ。しかし、じっと目を凝らしてユーリの顔を見た後
「ああすいません勘違いです。こんなに若いわけはないのです。すいません変なことを言って」老婆はユーリを見ながらそう言い。自分の中の何かを振り切ろうとしたのか、頭を左右に振った。
「いいえ・・・」ユーリはそう言って助け起こそうとしたが、ユーリ自身が老婆を支えきれずにふらついてしまう。
「ユーリ大丈夫?」エルフィが後ろから肩を抱きかかえる。
「ユーリ?ユリアン様ですか?」下を向いていた老婆が急にユーリを見てそう言いました。
「はい。私はユリアンと申しますが。なんでしょうか?」ユーリは不思議そうに尋ねる。
「いや。でも女の子ですね」ユーリの姿を何度も見直してそう老婆は言いました。
「はい」ユーリは男の子と見間違われる事もあるのでそう気にもしないでそう答えた。
「この国の亡くなったマリアン王妃に似ていたものですから。他人のそら似でしょう。すいません混乱させて」
「いいえ、大丈夫ですから」そう言ったもののユーリは、足がおぼつかない。
「こちらは大丈夫ですのでお気をつけてお帰りください」メアは、その老婆とユーリの間に入るように立ち、その人に早くこの場を離れるように促す。その老婆はそそくさとその場から離れ消えていった。
「ユーリ大丈夫ですか?」
メアが振り返りユーリを見る。だいぶ落ち着きを取り戻したようだ。
「すいません。たぶん小さいときの記憶が少しずつ思い出されているようです」
「ここはあなたの故郷なんですか?」
「たぶん。どうやら先ほどの城にも記憶があるような気がします。僕は城の関係者だったのかも知れませんね。城内の様子にも見覚えがあるのです」ユーリは顔を右手で覆いながらそう言いました。
「とりあえず周囲はだいたい見回りましたから大丈夫でしょう。城跡に戻りましょう」メアがそう促す。エルフィはユーリの後ろでオロオロしています。
「はい。あるじ様と話をしなければいけません」ユーリは顔は青ざめていましたが決心した目でそう言いました。
「そうですか。では夕食のためにこの獣の死体を持ち帰りましょうか」メアはエルフィに向かって言った。
そうして3人は、獣の死体を引きずって城跡に戻ってきた。
ユーリ達を待っている間に、1階中央のフロアにテーブル椅子など使えそうな物を各部屋から持ち込み、座って話せるようにしていました。そこにユーリ達が帰ってきました。
「あるじ様お話しがあります」ユーリが私を真剣な目で見てこう言いました。
「そうですね」私も覚悟を決めました。メアがアンジーに尋ねて厨房を聞いて、お茶を入れに席を外し、その間は誰も何も話さず静かな時が流れました。そしてメアさんが茶器とお茶を入れたポットを手に現れ、それぞれにお茶を配り、メアさんも空いていた席に座りました。
「私がここの生まれだと知っていましたか?」タイミングを見計らってユーリが私をじっと見つめながら言った。
「残念ながら知りませんでした」私は感情の壁をあえて取り払って話をしています。嘘を言っていない事をわかってもらうために。
「でも、門の所にある紋章を見たときに急に感情が声の調子が暗くなりました。どうしてですか?」強い口調で言われました。
「それは同じ紋章のついた大きなペンダントを団長さんに渡されていたからです」私はあらかじめ馬車から取ってきておいた包みをテーブルの上に置きました。包んでいた布を広げてユーリに見えるように斜めに傾けて見せた後、ユーリの手元に置き直しました。
「そうですか。やはり過去は避けて通れませんか」ユーリはそう言ってそのペンダントを包み直して受け取りました。
「私は無理を言いたくありません。なのでこのままここを去ることも・・」
「いえ、いつかはこうなるだろうと思っていました。この城に近づき始めると、どんどん小さいときの記憶が断片的にですが思い出されてきています」ユーリは両手で顔を覆っています。
「悪い思い出に行き当たるかも知れませんよ」
「避けては通れないでしょう」
「とりあえず今日の所はここで眠りましょう」
「そうですね。そうします。僕も疲れてしまったので」
それでも夕食は食べることにして、先ほど狩ってきた獣を簡単に捌いて焼いて食べました。
ユーリには2階のあのベッドで寝てもらうことにして、私達は、1階にある空いている部屋などを探して寝ることにしました。
夜半を過ぎた頃、玄関のドアを大きな音を立てて開ける音がして、数人の男女が入ってきました。
私達は、門の辺りの気配には気付いていたので、私、メア、モーラが広い玄関の広間で待っていました。
代表らしい男が先頭となって私の前に立ちました。
「ここにユリアンという者が一緒にいると聞いてきたが」なんとも無礼千万な物言いの人です。
「ごめんなさい。深夜に挨拶もなしにぶしつけすぎるとは思いませんか」私は言いました。
「ここで野宿するのは無礼では無いのか」
「ここは立ち入り禁止ではないですよね。なぜ野宿してはいけないのですか?」
「そ・・それは、この国の王がいた城だからだ。敬意を払え」
「敬意を払おうにもその事情を知らせるものも何も無く、施錠もされていませんでしたが。あなたが管理をしていたのですか?」
「管理をしてはいないが、とにかくこの国の王が住んでいた城だ、お前達みたいのが泊まって良い場所ではない」
「それはわかりました。では、ここから立ち退きましょう。立ち退きの準備がありますので、ここで失礼します。あなた達もお帰りください」
「ユリアンという者がいるであろう」
「深夜に挨拶もなしに来訪する者は無礼ではないのですか?」
「そ・・・それについては謝る。だが」
「残念ながらお取り次ぎはできません。野宿の先を変えますので改めて昼間にお越しください」
「まあそういじめるな」そう言ってモーラが後ろから声をかける。
「なんだその子どもは」
「まあ聞け。この夜中に来るような緊急な用事なのか」そう言ったモーラの後ろにドラゴンのオーラが見えます。その迫力にその男はちょっと怯えている。
「いやそう言われれば・・・しかし明日の早朝に旅立ってしまったら会えなくなってしまうかもしれなかったのでな」なんか言い方まで萎縮していますよ。
「そうであれば今約束していけ。こちらも明日はすぐ旅立たぬ。お主達と会ってから旅立つとな」
「だますつもりか」
「それならこんな事を言わずそのままここからいなくなるわ。いいからとっとと帰れ。睡眠を邪魔するな」
「わかった。すまなかったな」一応代表の男が頭を下げ、一緒についてきた者達も頭を下げた。
「明日またおいでください」
そうしてその人達は帰って行きました。
その騒ぎの中でもユーリは降りてきませんでした。エルフィにお願いをしてぐっすり眠れるよう軽い魔法をかけてもらっていました。
しかし、ユーリの眠りは浅く、何かを掴むように手を伸ばしてうなされていたようです。
Appendix
ユリアンを名乗る者が現れたと言いますか。
はい、私はその方とお供の者達に助けられました。
この集落の他の人たちはどこへ行ったのですか?
たぶん会いに行ったのではないでしょうか
夜中に会いに行くなどバカな事を・・・
どうしましょうか
いずれにしても女性であればユリアン様でないのでしょう
彼らが帰ってくるのを待ちましょう
はい
続く
パムと再び会う約束をした後、パムは故郷への旅に出て、私たちは本来の目的のために馬車を進めています。
壺の国ハイランディスと賢王の国ロスティアとの境界あたりに我々はさしかかっていました。
夕暮れが迫っていたのでどこかで野営しなければなりません。しかし、走っている道をはさんで平原が続き、どちらにも森がありません。できれば平野のど真ん中で野営をしたくはないのです。夜にたき火の明かりは、盗賊にとっても獣にとっても格好の標的です。もっともモーラのおかげで獣たちは襲ってこないと思いますが。そんな事を悩みつつ小高い丘のような所にさしかかりました。
「こんな何も無いところ初めて見たわ」めずらしく御者台にいたアンジーが言った。
「そうですね。木が生えていませんね。もしかして一度焼けていませんか?」私は周囲を見ながら所々に焦げた炭が転がっているのでそんな感じを受けました。
「うむ。どうやら集落があったらしいが、跡形もなく取り壊されたようじゃな」顔を出したモーラが続けて言った。
さらに進むと丘を越えたあたりで遠くに森が見えその傍らに廃墟のような物がいくつか固まって見えました。どうやら村落の跡らしいです。
「あ~集落が見えてきましたよ~」エルフィも幌の上から見ていたようです。
「ちらっとですが人の姿も見えましたわ」アンジーが言いました。さすが皆さん目がよろしいです。
近づくにつれて、焼けた建物の残骸が多数あり、かろうじてそこに集落があったことを示しています。その焼けた崩れた建物のそばからしばらく石の道路が続いているのですが、その道沿いに家らしき物はありません。本当に焼けてしまったのでしょうか。石畳を馬の蹄の蹄鉄のカチカチと打ち付ける音が響いています。荷馬車の車輪も所々でカチカチ音を出しています。
さらにしばらく進むとやっと焼け落ちた廃屋が並んでいて、さらに進んでいくと中央に噴水がある広場のような場所にさしかかりました。
「ここで野営かのう」モーラがそう言い、噴水のあたりで馬車を止めました。みんなで降りて周囲の様子を見て回っています。
「そうですねえ」
「ここがこの集落の中央だとすれば、この噴水に水を流すための水源がどこかにあるはずです。まず水を確保したいと思います」メアがその言葉を残して姿を消しました。行動が早すぎますよ。それにしても先ほど見えたと言っていた人影はどこにもありません。
「人がいませんね。先ほど人影が見えたと言っていましたけど見間違いだったのでしょうか?」私はアンジーに尋ねました。それには答えてくれません。何かを考えているようです。
「幽霊ではないですよね」ユーリが怖がって私の腕を掴みました。
「でました~ユーリの怖がり~」エルフィが言いながらユーリに背中から抱きつく。
「ひゃっ!!」抱きつかれたユーリがびっくりして握っていた私の腕を強く握りしめます。痛いです。
「幽霊などおらんと以前も言ったであろう。もっともネクロマンサーが使役するゾンビだったか?は、いるかもしれんが」モーラがそう言ってユーリにお化けの真似をして見せます。
「そのほうがもっと嫌です~」今度はエルフィがユーリの顔を胸に埋めて強く抱きしめています。おお久しぶりにユーリが窒息死しそうです。眼福眼福。おっとユーリ怒っていますね。すいませんでした。
「おや~ゾンビが出ましたよ~」アンジーがエルフィの真似をして言ったとたん、わらわらと物陰から人の姿をしたゾンビが近寄ってくる。
「ゾンビは、やっぱり焼きましょうかねえ」私はそう言って馬車に近づこうとするゾンビの元へ向かおうとした。
「焼くのはやめてもらえませんか。大事な友達なので」遠くから若い男の子の声が聞こえる。聞き覚えのある声だ。
ゾンビの動きは止まり。暗がりからひとりの男の子が歩いてこちらに来る。
「おや久しぶりですねえ」見覚えのあるその男の子は、ハイランディスで出会った男の子リアンでした。
「お久しぶりです。どうしてこんな辺鄙なところに来られたのですか?」使役しているゾンビを整列させながら彼は言いました。あれから1年以上経っています。彼はだいぶ精悍な顔つきになりましたね。
「ここに暮らしているのですか?」私は彼が以前と同じような服装でいるので不思議に思い尋ねました。
「はい。この先の誰も住んでいない家を直して生活しています」元気そうな返事です。
「そうでしたか。お元気で何よりです」
「これからどちらに向かわれるのですか?」
「とりあえず北を目指しています」
「そうですか。この先にはちゃんとした集落がありますよ。僕もそこで生活用品とかを買ったり、何かを作って売ったりしています」ああそうでしたか。ちゃんと生活できているんですね。
「お主は何か作っているのか?」モーラが尋ねました。やはりその後を気にしているのでしょう。
「小麦粉とか布製品ですね」彼は笑って答えてくれました。
「そんなものまで作れるのか」
「ええ、友人達と一緒に作っていますよ」そう言って彼は後ろにいるゾンビを見る。
「水はどうやって確保していますか?」
「ここは、山との高低差の関係で道路に沿って水路が作ってあります。なので困りません」
「そうみたいです。もしかしたらこの噴水も使えるかも知れません」いつの間にかメアさんが戻って来てそう言いました。
「ああメアさんお久しぶりです」リアンはメアに挨拶をした。
「あらあなた・・・そうですかお久しぶりです。お元気そうで何よりです」メアも挨拶を返す。
「ここで野営するつもりですのでお食事をご一緒しませんか。メアさんどうでしょうか」私はメアに許可も取らずついそう言ってしまいました。
「はい。ついでに手に入れた肉も少しおわけします」魔族との戦いの時にかなりの量の肉が手に入っていましたので、お裾分けできそうです。
「それはありがたいです。では遠慮無く」彼も嬉しそうに言った。
そうして料理を始めるメア。リアンは不思議な粉を持ってきた。
「これを使ってみてくれませんか?」彼はそう言って袋を差し出して自分でその中から赤い粉を指につけて見せてくる。
「どんな味のものですか?」メアさんが怪訝そうな顔で彼を見る。
「大丈夫ですよ。辛みが足りないときに使えます」そうして彼はひとなめしてみせる。メアもその袋に手を入れて指につけてなめてみる。
「香辛料ですね」メアの言葉に私も指につけてなめてみます。ああ辛い。確かに辛いです。
「たぶん唐辛子みたいなものですねえ。珍しいものです。これは売れると思いますよ」私は水を探して、料理用の水をお椀を持ってメアに入れてもらいました。
「近くに生えていたので、試しにかじってみたときにとても辛かったのです。ですがクセになりまして。うまく栽培できたのですが、あいにく販路がありませんので」リアンは困った顔をしている。
「これは欲しがる人がたくさん出ますねえ。生産量を増やしたほうが良いと思いますよ」私はちょっと嬉しくなってそう言いました。
「やはりそうですか。でも私はネクロマンサーですし、ゾンビを見て買いに来た方が嫌がりそうですから、自分で売るのは難しいかもしれません」
「魔法使いの方々はこういうものを欲しがりますので、エリス様を通じて魔法使いの里に話しておきましょう。きっと魔法使いさんが買い取りに来ると思いますので安心してください」メアがそう言いました。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」彼はそう言って頭を下げる。ああ、この子は本当にいい子なのですねえ。
「さて、シチューもできたようですので食事にしましょう」メアの言葉に一同が火の回りに集まってくる。
そうして夕食が始まった。久しぶりに人に出会ったせいか彼は饒舌だった。
「ここにはかつて小さい国があったそうです。ほんの小さな領主と国民の国です。生産性もあまりなく、行商人との交流が主だったみたいですね」その話しぶりは、はしゃいでいるようにも見える。やはり独りでいるのは寂しいのでしょうか。
「そんなものが国と言えるのか?」モーラもなぜか嬉しそうに話しています。
「一応税を徴収して街を作ろうとしていたそうです。この石畳もその成果みたいですよ」彼はそう言って足下の石畳を踏んでいます。
「なかなか考えているじゃない。交通基盤は流通の柱だもの」アンジーがうなずいている。
「税と言っても労働力やら成果品の一部をもらいうけるという形だそうです。通貨は他国のものを使っていたみたいですし」あなたそんな事まで調べているのはむしろすごくないですか?
「それはほとんど都市じゃな。でも国を名乗るからには、他国にはお金を納めていなかったのだろうな」モーラがリアンと真剣に話を始めました。
「ええ、隣国のロスティアから当初は属国になれと言われて断って和平条約を結んだようですが、長くは続かなかった見たいですね」そこでリアンは食事の手を止めた。
「それから?」モーラも大体は予想していたようですが結果を尋ねます。
「ロスティアに条約を破棄されて国は滅ぼされて国民は散り散りになったそうです」
「よくある話よねえ。ロスティアってあの賢王の所じゃない?」アンジーが尋ねるが誰も答えない。賢王とは誰が言っているのでしょうねえ。
「では国民はほとんど国外に逃げたのでしょうか?」私が気になるのはやはりそこですね。
「はい。ほとんどは国を離れたようですが、いくつかの小さな集落だけが残っています。集落はこの先の国王の居城から離れてた所にあって廃城から離れて暮らしていますね」
「普通集まって暮らしませんか」
「税の取り立てから逃れるためでしょうか。あえて近づかないようにしているみたいですよ。もっともロスティアは、数回税を徴収に来ただけで、その後は来なくなったそうです」リアンはそこだけはちょっと嬉しそうに話していました。しかし、独りだけあまり食が進んでいないようです。ええ、ユーリがちょっと暗い顔をしています。
「それにしても潰された国家ですか。潰したあとは、再建もせず放置ですか。それもひどい話ですね」私は食事を終えて空を見上げます。それならば滅ぼす必要など無いでしょうにと。
「ここが放置されているのは、ちょうど魔族との境界線なので、魔族が国を攻めようとすれば、ここを通ることになり、事前に発見して対策を取るためなのではないでしょうか。いわゆる緩衝地帯ですね」リアンはそう話します。ああそういうこともあるのですねえ。
「なるほど、放置にも意味があるのですねえ」でもなおのことその国を防波堤にした方が良かったと思うのですが。
「ここから先に進むと国王の居城の跡地も通りますよ。城は大きくないですが装飾品とかがとても良い物でした。もっとも焼けてしまったので見る影もないですけれど」リアンは楽しそうに話しています。
「それではそこに野営しますか」私はその言葉にそう言いました。
「幽霊出ませんか?」ユーリがびびっています。もしかして今まで暗い顔をしていたのはゾンビがそばにいるせいなのでしょうか?
「いやゾンビの方が恐いじゃろう」横に立っているゾンビを見ながらモーラが言った。
「・・・・」ユーリは何も答えない。さすがにネクロマンサーの前で恐いとも言えないのでしょうねえ。
そうして食事も終わり私たちはそこから離れることにした。名残惜しそうな彼に私は言った。
「色々教えてくれてありがとうございます。これを納めてください」そう言ってお金を渡す。
「お金ですか?いりませんよ。食事や肉までもらってさらになんて」この子は本当は欲しいのでしょうけど大人の返事をしました。ああ本当にこの子はいい子に育っていたのですねえ。私はなんだか切なくなってしまいました。
「何かと物入りじゃろう?もらっておけ。まあ情報提供料じゃな」モーラがそう言ってフォローしてくれる。やるじゃないですかロリババア。足を踏まれました。痛い。
「そういうことなら遠慮無くいただきます。ありがとうございます」こうやって話しているとあの時の事件は本当に些細な事だったように感じますね。良い子だったのにどうして両親はこの子に不審を抱いたのでしょうか。やはり魔法というものに対する感情はまだまだなのかもしれません。
「ではその館に行ってみます」
「あの・・・エリスさんにはお会いされるでしょうか?」彼は少しだけ戸惑って言いました。
「エリスさんとは定期的に連絡を取っておりますよ」
「そうですか。もしお話しする機会がありましたら、おかげで目が覚めましたありがとうございます。と言っていたとお伝えください」リアンは私の目を見てそう言いました。
「わかりました」私はそう言いました。
そうして私達は、彼に別れを告げてその城へ向かいます。石造りの外堀が見え始め、その先に黒ずんだ建物が見えてきます。確かに城に近い感じの造りです。稚拙ながらも城壁もあります。
○城跡
その城の門にたどり着いて城を見上げます。質素な作りで城なのか屋敷なのか判断に迷うくらいの大きさです。城壁は焼け焦げていて、しかも所々崩れ落ちています。崩れたところからは中の城が見えていますが、壁に穴が空いているところからは黒い影で城も何も見えません。
「ここでいいですかね」
私達は手前で馬車を降りて、警戒しながら門の中に入ります。周囲を見回して気配もなかったので、門から少し離れたところに馬車を止めて、門から城までの道に戻ってきて全員で中に入ろうとする。
その時、大きな門にかかっていたこの国の紋章がドサリと落ちました。何があったのかと様子を見るために全員で門に戻り、全員でその落ちた紋章を見ました。私はその煤けた紋章を見た時に見覚えがあることに気づきました。
「う・・・」ユーリが胸を押さえて片膝をつきました。顔色が青ざめています。
「ユーリどうしましたか」メアが慌てて駆け寄り体を支えている。私も近づき肩を貸します。それでもユーリの力が抜けてしまっていて、独りで立っていられなくなり、私はユーリを抱きかかえました。
「この中に休める場所がありますでしょうか」皆さんに声を掛けます。
「探してきます」そう言って全員が中に入り、2階の部屋に傾いていないベッドを見つけてそこに寝かせました。
私は顔色の悪いユーリを初めて見たので驚きと共に心配になり。そのベッドのそばに跪いてユーリの顔を見ています。
「落ち着きましたか?」様子を見に来たメアが私に尋ねます。
「呼吸は安定しています。たぶん大丈夫でしょう。アンジー」一緒に入ってきたアンジーに私は声を掛けます。
「いいわよ代わってみているわ」アンジーは私の言葉から意図を察して頷いてベッドの反対側に椅子を持って来て座りました。
「申し訳ありませんがユーリの様子を見ていてあげてください。目が覚めたら教えてください」
「わかったわ。まかせて」アンジーの言葉を聞いた後。私は1階へ降りて、城の中を見て回ります。
「ユーリはどうしたのじゃ」見回っていたモーラと会い、一緒に部屋を見て歩いています。
「私にもわかりませんが、たぶんここがユーリの故郷なんだと思います」私は隣に歩いているモーラの顔を見ないままそう言いました。
「なんじゃと?」モーラは私の言葉に一度立ち止まりましたが、私が歩き続けているので私の横に並んで歩き出します。
「門についていたあの紋章と同じ紋様の大きなブローチをユーリの物だからと傭兵団の団長さんから預かりました」
「そうか。ユーリはこの国の王族だったという訳か」
「もしそうなら、たぶん王族唯一の生き残りと言う事になりますかね」私は人ごとのようにぼんやりとそう言いました。
「おじいさんというのは誰だったのじゃ」そういえばその事をモーラも知っていましたねえ。
「騎士団長だった人らしいですよ。もっとも私はブローチを託されただけで何も話は聞いていません。ユーリも団長さんが直接話を聞かせようとしたのを拒否したようですから、はっきりは知らないと思います」
「なるほどな。そうであれば、早くここから離れた方が良いのではないか?」モーラは足早に私の前に回り込んで私の足を止めて私を見上げて言いました。
「そうですねえ」私はモーラの目をうつろな目で見ながらそう言いました。ええ、あまり考えたくなかったのです。
2人でそのまま一回りして、1階中央のフロアに戻るとユーリがみんなと一緒に立っていました。私とモーラに気付いて、エルフィとメアが近づいてきます。
「付近の様子を見に行ってきます」メアがそう言いました。エルフィも頷いています。
「ああそうですね」私はユーリが気になってついユーリを見て言いました。
「僕も行きます」私の視線に気付いてユーリがそう言いました。階段から降りてきたアンジーは心配そうにその様子を見ています。
「大丈夫なのですか?」私は本当に心配で聞きました。
「はい大丈夫です。少し外の空気を吸ってきます」そう言うユーリの顔はまだ青いのです。
「ユーリ。モーラの気配の範囲外まで行くことになりますが、大丈夫なのですか?」メアさんが心配そうに尋ねる。
「この場所を離れて少し考えたいことがありますので」そう言ったユーリの声に力強さはなかった。
「3人とも注意してくださいね。」3人ともそれぞれにうなずいて、3人は出て行きました。
残された私とアンジーとモーラとメアが静かにテーブルに座っている。
「少し整理せんか。城の中で何か見つかったか?」
「肖像画が一枚だけ焼け残っていました。その絵には王妃らしき人と抱きかかえられた赤ん坊の絵が描いてありまして、母親の顔はユーリに似てるかもしれません」私はどうもおかしいです。言葉は正確ですが、心はここにありません。
「あとは伝説の絵というのが残されていてね。笑っちゃうんだけど、男児が生まれたら国を継ぎ、女児が生まれたら騎士としてこの国を離れるという伝説がこの国にはあるそうよ」アンジーが私の気分を察したのかそう言いました。
「この国を建国したのが亡くなった国王だったはずじゃ。伝説が生まれるほどの歴史はないよなあ」先ほどのリアンとの会話からそこまで読み取っていましたか?ああ、一人で部屋を回った時に何か見たかもしれませんね。
「人類滅亡前からここに国があってその生き残りが建国していれば可能性はありますねえ」
「笑ってしまったけど、倉庫に保管してあったという事は、その可能性も捨てきれないわねえ」アンジーがちょっとばつが悪そうです。
「わざわざ伝説にするような事か?まあ男が国に残るのを正当化するのが目的なのかもしれんが」
「女の子を外に出すのはよく聞きますが、その場合には他国に嫁がせますけどねえ。あえて騎士ですか」
「そうなのよ。伝説に文句を言ってもしかたないけどね」
「隠語かも知れぬがなあ」
「国を継ぐのが男で国を出るのが女という事を理屈付けするためなのでしょうかねえ」
「この世界はまだ男が強いのだから、娘はどこかに出されるのが普通であろう」
「そうなのですよ」
メアがユーリとエルフィと歩きながら話している。
「ご主人様は何か知っていますね」メアがそうユーリに言いました。
「はい。僕もそう思いました。何かつらそうなのです」
「何を知っているのでしょうか~」エルフィが少し離れて歩きながらのんびりと言いました。
「あの紋章を見た時からつらそうな気持ちが伝わってきました。たぶん僕の過去に関係があるのだと思います」
「そうなんですか?」
「たぶん」
それからしばらくの間、3人の中に会話はありませんでした。しかしエルフィが何かを見つけました。
「人が襲われています」エルフィの声に他の2人に緊張が走る。
「ここはまだ境界線ではないのにですか?」メアが走り出す。つられて二人が慌てて走り出した。メアが発していくとその視界に獣がいるのが確認できた。魔獣ではなくイノシシのような獣です。
「そういうのは曖昧ですからね~」エルフィは立ち止まって獣に狙いをつけて矢を放つ。矢は魔法がかかっているのか光りながら飛んでいった。
倒れている人に襲いかかろうとしてた獣は、襲おうとした人との間に矢が振ってきて、さらに肩を打ち抜かれて、立ち止まってこちらを見た。3人が向かってくるのを見て、今度はそちらに向かってくる。
エルフィがほとんど真上に向けて矢を放ち、ユーリとメアがそこで待ち受ける。獣がちょうど1メートルくらいの距離に近付いた時に、獣は上空から振ってきた矢に体を射貫かれる。それでも獣は一瞬だけ勢いを殺されたが突進をやめない。すかさずメアが投げナイフを前足の間接に打ち込み足の動きを止める。足の動きを止められた獣は勢いがついたまま体だげ地上を這い進んでやがて停まる。ユーリが首を一気に切り落とした。
3人は、獣が死んだのを確認してから倒れていた人の所に向かう。
「大丈夫ですか?」ユーリが声を掛ける。
「ええ?マリア様がどうしてここへ?死んだはずではなかったのですか?」老婆は声を掛けてきたユーリの顔を見てそう叫んだ。しかし、じっと目を凝らしてユーリの顔を見た後
「ああすいません勘違いです。こんなに若いわけはないのです。すいません変なことを言って」老婆はユーリを見ながらそう言い。自分の中の何かを振り切ろうとしたのか、頭を左右に振った。
「いいえ・・・」ユーリはそう言って助け起こそうとしたが、ユーリ自身が老婆を支えきれずにふらついてしまう。
「ユーリ大丈夫?」エルフィが後ろから肩を抱きかかえる。
「ユーリ?ユリアン様ですか?」下を向いていた老婆が急にユーリを見てそう言いました。
「はい。私はユリアンと申しますが。なんでしょうか?」ユーリは不思議そうに尋ねる。
「いや。でも女の子ですね」ユーリの姿を何度も見直してそう老婆は言いました。
「はい」ユーリは男の子と見間違われる事もあるのでそう気にもしないでそう答えた。
「この国の亡くなったマリアン王妃に似ていたものですから。他人のそら似でしょう。すいません混乱させて」
「いいえ、大丈夫ですから」そう言ったもののユーリは、足がおぼつかない。
「こちらは大丈夫ですのでお気をつけてお帰りください」メアは、その老婆とユーリの間に入るように立ち、その人に早くこの場を離れるように促す。その老婆はそそくさとその場から離れ消えていった。
「ユーリ大丈夫ですか?」
メアが振り返りユーリを見る。だいぶ落ち着きを取り戻したようだ。
「すいません。たぶん小さいときの記憶が少しずつ思い出されているようです」
「ここはあなたの故郷なんですか?」
「たぶん。どうやら先ほどの城にも記憶があるような気がします。僕は城の関係者だったのかも知れませんね。城内の様子にも見覚えがあるのです」ユーリは顔を右手で覆いながらそう言いました。
「とりあえず周囲はだいたい見回りましたから大丈夫でしょう。城跡に戻りましょう」メアがそう促す。エルフィはユーリの後ろでオロオロしています。
「はい。あるじ様と話をしなければいけません」ユーリは顔は青ざめていましたが決心した目でそう言いました。
「そうですか。では夕食のためにこの獣の死体を持ち帰りましょうか」メアはエルフィに向かって言った。
そうして3人は、獣の死体を引きずって城跡に戻ってきた。
ユーリ達を待っている間に、1階中央のフロアにテーブル椅子など使えそうな物を各部屋から持ち込み、座って話せるようにしていました。そこにユーリ達が帰ってきました。
「あるじ様お話しがあります」ユーリが私を真剣な目で見てこう言いました。
「そうですね」私も覚悟を決めました。メアがアンジーに尋ねて厨房を聞いて、お茶を入れに席を外し、その間は誰も何も話さず静かな時が流れました。そしてメアさんが茶器とお茶を入れたポットを手に現れ、それぞれにお茶を配り、メアさんも空いていた席に座りました。
「私がここの生まれだと知っていましたか?」タイミングを見計らってユーリが私をじっと見つめながら言った。
「残念ながら知りませんでした」私は感情の壁をあえて取り払って話をしています。嘘を言っていない事をわかってもらうために。
「でも、門の所にある紋章を見たときに急に感情が声の調子が暗くなりました。どうしてですか?」強い口調で言われました。
「それは同じ紋章のついた大きなペンダントを団長さんに渡されていたからです」私はあらかじめ馬車から取ってきておいた包みをテーブルの上に置きました。包んでいた布を広げてユーリに見えるように斜めに傾けて見せた後、ユーリの手元に置き直しました。
「そうですか。やはり過去は避けて通れませんか」ユーリはそう言ってそのペンダントを包み直して受け取りました。
「私は無理を言いたくありません。なのでこのままここを去ることも・・」
「いえ、いつかはこうなるだろうと思っていました。この城に近づき始めると、どんどん小さいときの記憶が断片的にですが思い出されてきています」ユーリは両手で顔を覆っています。
「悪い思い出に行き当たるかも知れませんよ」
「避けては通れないでしょう」
「とりあえず今日の所はここで眠りましょう」
「そうですね。そうします。僕も疲れてしまったので」
それでも夕食は食べることにして、先ほど狩ってきた獣を簡単に捌いて焼いて食べました。
ユーリには2階のあのベッドで寝てもらうことにして、私達は、1階にある空いている部屋などを探して寝ることにしました。
夜半を過ぎた頃、玄関のドアを大きな音を立てて開ける音がして、数人の男女が入ってきました。
私達は、門の辺りの気配には気付いていたので、私、メア、モーラが広い玄関の広間で待っていました。
代表らしい男が先頭となって私の前に立ちました。
「ここにユリアンという者が一緒にいると聞いてきたが」なんとも無礼千万な物言いの人です。
「ごめんなさい。深夜に挨拶もなしにぶしつけすぎるとは思いませんか」私は言いました。
「ここで野宿するのは無礼では無いのか」
「ここは立ち入り禁止ではないですよね。なぜ野宿してはいけないのですか?」
「そ・・それは、この国の王がいた城だからだ。敬意を払え」
「敬意を払おうにもその事情を知らせるものも何も無く、施錠もされていませんでしたが。あなたが管理をしていたのですか?」
「管理をしてはいないが、とにかくこの国の王が住んでいた城だ、お前達みたいのが泊まって良い場所ではない」
「それはわかりました。では、ここから立ち退きましょう。立ち退きの準備がありますので、ここで失礼します。あなた達もお帰りください」
「ユリアンという者がいるであろう」
「深夜に挨拶もなしに来訪する者は無礼ではないのですか?」
「そ・・・それについては謝る。だが」
「残念ながらお取り次ぎはできません。野宿の先を変えますので改めて昼間にお越しください」
「まあそういじめるな」そう言ってモーラが後ろから声をかける。
「なんだその子どもは」
「まあ聞け。この夜中に来るような緊急な用事なのか」そう言ったモーラの後ろにドラゴンのオーラが見えます。その迫力にその男はちょっと怯えている。
「いやそう言われれば・・・しかし明日の早朝に旅立ってしまったら会えなくなってしまうかもしれなかったのでな」なんか言い方まで萎縮していますよ。
「そうであれば今約束していけ。こちらも明日はすぐ旅立たぬ。お主達と会ってから旅立つとな」
「だますつもりか」
「それならこんな事を言わずそのままここからいなくなるわ。いいからとっとと帰れ。睡眠を邪魔するな」
「わかった。すまなかったな」一応代表の男が頭を下げ、一緒についてきた者達も頭を下げた。
「明日またおいでください」
そうしてその人達は帰って行きました。
その騒ぎの中でもユーリは降りてきませんでした。エルフィにお願いをしてぐっすり眠れるよう軽い魔法をかけてもらっていました。
しかし、ユーリの眠りは浅く、何かを掴むように手を伸ばしてうなされていたようです。
Appendix
ユリアンを名乗る者が現れたと言いますか。
はい、私はその方とお供の者達に助けられました。
この集落の他の人たちはどこへ行ったのですか?
たぶん会いに行ったのではないでしょうか
夜中に会いに行くなどバカな事を・・・
どうしましょうか
いずれにしても女性であればユリアン様でないのでしょう
彼らが帰ってくるのを待ちましょう
はい
続く
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