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第9話 DT同居人が増える

第9-6話 収穫祭といえばメイド喫茶(前編)

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○ 収穫祭
 ビギナギルほどの街になりますと、収穫が終わって一段落すると、収穫祭を行っているそうです。
 この街は、物流を主な産業としていますが、生活を支えているのは農耕牧畜なのです。当然、秋になると今年の収穫を祝い、来年の豊作祈願のため収穫祭を行うそうです。まあ冬ごもり前の重要なイベントですね。
 そんな頃に領主様から直々のお呼び出しです。ええ、それも私ひとりです。いつもならそばにいるはずのモーラとアンジーは、ミカと一緒に、地域の子ども達と遊びに行ってしまいました。
 言い訳は、「ああ、地域の子どもからだって貴重な情報は手に入るものじゃ。」とか言っていましたが、多分ガチで遊んでいるはずです。
 いつもの応接室で待っていると領主さんが部屋にうれしそうに入ってきました。
「実はお願いがあるのです。」座って話し始めた領主様の隣には、いつの間にかメイド服を着たキャロルが座っています。ああ可愛いですねえ。おっと見とれていてはいけません。集中集中。
「どんなことでしょう。」と私は真面目な顔に戻って言いました。
「近々収穫祭があるのですが、例年同じような中身でマンネリ化していたのです。街の人達にどんな催しが良いかと聞いたのですが、あなたの家族に参加してもらったらどうかという意見がありまして。」
「はあ、どんなことをして欲しいか聞いたのでしょうか。」何をやらせるつもりでしょうか?
「それがですね。誰が言い出したのかわかりませんが。ある王国では、お茶を飲む習慣があり、制服を統一して、お茶やお菓子を出している店があると言うんです。」領主様が真面目な顔でそう言いました。
「はあ、それをやれと言うんですね。」私のイメージ通りならあれの事ですよねえ。
「ええまあ。気乗りしなければ断っていただいても良いのですが、何か噂が先行してしまいまして。すでに店の場所やら制服のイメージやらが出回ってしまっていて、私たちも後戻りできないところに来ています。できれば家族の方を説得していただいて収穫祭に華を添えていただきたいと思いまして。」そう言って領主様が私に頭を下げました、それを見てあわててキャロルも頭を下げました。なるほど、子どもをダシに使うところは領主様もけっこうえげつないですねえ。
「とりあえず家族のみんなに聞いてみますが、人見知りもいますので。」おもにおぱーいの大きい人の事を言っていますが、居酒屋では大丈夫みたいなのであの人にだけ居酒屋でやらせてみましょうか。
「こちらからお願いする前に噂が街に広がっていますので、お怒りになる方がいらっしゃるかも知れませんが、ひとつよろしくお願いします。」再び頭を下げる領主様。それを見てあわててキャロルも頭を下げる。その仕草カワユス。
「わかりました」
 私は、キャロルに手を振って領主様の館を出ました。どう言って頼もうかと考えながら歩いていると。露天雑貨の並ぶ通りで荷物を持ったメアとユーリに会い、その後広場の方に行くとモーラとアンジー、ミカさんがいました。ええ、子ども達と遊んでいます。
 子ども達に領主様がくれたお菓子を配って、さよならの手を振り、酒場にエルフィを迎えに行き、みんなでそのまま家路につきました。そういえば、今日はヒメツキさんが戻ってくるのでキャロルも家に来て一泊するのでしたねえ。
「何を悩んでいるのかしら?」隣を歩いていて、のぞき込むように私を見て、意地悪そうな顔でアンジーが言いました。
「領主からの頼み事じゃろう?たいした話ではなかろう」モーラ肩車してもらいながら言うセリフですか。
「とりあえず、帰ってヒメツキさんも交えて話しましょう。」
「先に話さんか」モーラが肩で暴れます。いやそんな事をするとあえて落としますよ。
「すでに噂を聞いているのでしょう?」
「まあな。お店をやれと言われたそうだな。衣装を統一して」
「はい。どう思いますか?」
「まあ、聞いてみれば良いであろう。恥ずかしがるのは2人くらいじゃないか」
「エルフィとああ、ユーリもそうですね。」
「わしはやるぞ。おもしろそうじゃ」そう言ってモーラは足をバタバタさせます。だから落ちますって。
「やるのはかまいませんが大変ですよ」私は、お店経営が大変な事をなぜか知っています。昔バイトでもしていたのでしょうか。
「わしとアンジーは、店の売り子や居酒屋の給仕などやっているからな。むしろ得意じゃ」
「なるほど。でもお給料は出ませんよ。お祭りの出し物ですから」
「日頃からここの者達には世話になっているからのう。サービスじゃ」
「さいですか」
「なんじゃそのやる気のなさは!」頭をポカポカ叩かないでください。
「いや~な予感しかしませんよ。トラブル満載そうです」
「トラブルも楽しまんとな」
 そして夕食になりました。食事中の話題としては食が進まなくなるかもしれませんが、まあ仕方ありません。
「今日はそれぞれ自由行動で街に出ていましたから、たぶんいろいろ言われていると思いますが、その話です」
「もしかして~お店の話でしょうか~」
 エルフィがぐったりしています。食事中だというのに!やっぱりお酒飲んできましたか?
「そのとおりです」と私。
「その話で~居酒屋は持ちきりですよ~誰に給仕してもらう~とかその話ばかりなのです~そもそもそんな話は聞いていないのです~」ぐったりしているのは別の理由だったのですねえ。
「そうでしょう。私も先ほど領主様から初めて聞かされましたから。ですからお断りすることもできますよ」
「断ったら~あとで何を言われるか~恨まれますよ~」嫌なのは食事の方なのかそれとも話題なのか。ちゃんと食べてくださいね。作った人に悪いので。こんなおいしいものを残したら今度から禁酒ですよ。
 心の声が通じたのかエルフィは一生懸命食べ始めました。
「領主様はこれが狙いだったのではありませんか?私たちに断れなくするには一番効果的かと思いますので」メアさんがみんなに食後のお茶を配りながら言った。
「そうなのよ。噂が早すぎるのよ。会う人ごとに当日は必ずお店に行きますね。とか言われているんですから。これはどう考えたって確信犯よね」アンジーが出された食後のデザートのゼリーに強くフォークを突き刺す。表現がちょっとオーバーですよねえ
「はめられましたか?」そう思いますよねえ。
「私も皆様の服を見に古着屋に行ったのですが、全員のサイズを聞かれました」メアが何でも無い事のように言いました。
「全員のサイズを憶えているのですか?」ユーリはびっくりしながら尋ねる。
「はい。だいたいですが」メアはそう言いながら、目の焦点を変えながらユーリをじっと見ます。
「そうなの?そんなに変化するものなの?」アンジーはゼリーにスプーンを刺そうとします。すごい弾力ですねえ。スプーンがはじき返されています。アンジーの顔がむくれ顔になりました。
「実は、身長が伸びてきているのはユーリ様とキャロル様。胸が育っているのはエルフィさんです」
「なるほど。他は変わらないわよねえ」ヒメツキさんがキャロルを見ながら言いました。
「ええ。ですが、ドラゴンの皆さんも少しずつですが大きくなっています」
「そういうものなの?」アンジーがやっとゼリーを一口食べられてそのスプーンをくわえながら言いました。はしたないです。
「そんなの知らんぞ。ヒメツキそういうものなのか?」驚いたようにモーラがヒメツキを見る。
「私も初めて知ったわ。そんなことあるのかしら」顎に手を当てて考え込んでいます。
「はい、0.1ミリほどですが」メアが当たり前のように言いました。
「そりゃあ誤差の範囲じゃろう」モーラが椅子からずり落ちそうになります。
「そういえばサイズを聞かれたと言っていましたが、私たちも入っているのかしら」ヒメツキさんはメアを見て言った。
「ヒメツキ様。サイズはすべての方のを聞かれました」
「キャロルやミカも?もしかして私のもですか?」おやヒメツキさんあせっていませんか?
「はい聞かれました」
「教えたの?」おやキャロルを呼んで膝に座らせて、平静を保とうとしていませんか?
「いえまだです」
「そうよかった」なぜそこで安心しますか。体型変わらないですよねえ。
 そこで、ガン!ガン!ガン!と玄関の扉をけたたましく”殴る”音が聞こえます。叩くではなく殴っているっぽいです。
「おや来客ですねえ。家まで無事に通れたということは・・・」言い終わる前に扉が開き、見慣れた人が入ってきました。
「どういうことよ!!」その声はエリス様ですね
「何がどういうことなのじゃ。話が見えんぞ」モーラがニヤニヤしながら対応する。
「あなた、今度の収穫祭に喫茶店を出すそうじゃないの」私を指さして言わないでください。そんなの知りませんよ。
「喫茶店ってなんじゃ?」モーラがわざと首をかしげる。
「ああ、怒りについ出てしまったわ。お茶を出すお店を出すそうじゃない」息を整えながらエリスさんが言った。
「さきほど領主様からお願いされましたけど」
「さきほどって、今日聞かされたの?事前に話を聞いていたわけではないの?」エリスさんキョトンとしています。そういう顔もおきれいですね。おっと皆さんの冷たい視線が。
「はい今日突然言われました」
「なるほど。で、誰が給仕をすることになっているのかしら」
 そう言って私をにらみつけながらも、エリスさんは少し冷静になったようだ。
「私の家族。あと同居している3人と思っていますが」
 私は両手の指を折りながらそう言いました。もう少しで両手が埋まりますねえ。
「なるほど噂なのね」少し安心したようです。かぶっていたフードと外套を脱いで横のコートかけにかけて、空いている椅子に座りました。そこにメアがお茶を持ってきました。
「お主も街で言われたのか」
「ええ。元締めさんが私に「収穫祭に参加するなんて初めてじゃないか?」と言ったので何のことか聞いてみたら、あなたの出す店で給仕をすることになっていると言われたわよ」テーブルの上に片肘をついて顎を載せてふてくされた顔をして言いました。おや珍しい。
「はあ、街ぐるみで私たちをはめましたねえ」私は深くため息をついた。
「そうなるな」モーラは笑っている。
「まあ、はめられたのはしゃくですが、すねて参加しないというのも大人げないと思います。それに、エリスさんに期待する街の人の気持ちもわかりますからねえ」私はそう言いました。
「どうわかるのよ」そこでにらまないでください。綺麗な顔が台無しですよ。
「まず、あの魔獣使いの襲撃を撃退したときに一番活躍した魔法使いさんに興味を持つのは当たり前ではないでしょうか?特にその美貌はこれまで表に出していませんでしたし」私はさらっとそう言った。
「確かにこれまでは顔は隠していましたね」そこで美貌とか褒められて少しうれしそうですねえ。褒められ慣れていないのでしょうか。
「陰気くさい裏路地の薬屋でばばあしゃべりしていた人が、実は「美人」で「大活躍」していたとなれば、誰だって興味もわくでしょうから」私はカギ括弧の部分を強調してそう言いました。
「そうかしらねえ」いや、顔を赤くしてますねえ。まんざらでもなさそうです。意外にこの人チョロいかもしれません。私の脳内の言葉に家族全員が私をジト目で見ています。
「あと、ヒメツキさんもミカさんもたまに街に顔を出す程度ですが、お二人がとても綺麗なので、気にはなっていますでしょうし、キャロルが家族として紹介している人ですから、どんな人か実際会ってみたいと思っていると思うのですよ。どうですか?」
「確かにそうじゃのう」そう言ってニヤニヤし続けているモーラ。
「その立ち居振る舞いが見られる給仕姿やお客様との会話を通して、おのずと心根も見えるというものですよ」私はさりげなく適当な理由をでっちあげて言いました。こじつけとも言いますね。
「そういうことですか」ヒメツキさんは思案しています。
「さて、私の手札はすべてさらしました。レイズするもベットするも降りるも自由ですよ」私は両手を広げてまるでカジノのディーラーのように言いました。
「おやおや異世界の言葉が出てきましたね」エリスさんが面白がっている。
「最近、ポーカーやらなんやらトランプをやり始めてなあ。夜も結構盛り上がっているのじゃ」
「野中の一軒家だからいいけど見つからないでね」エリスさんがため息をついて言いました。
「はいはい。じゃあ今回の話から降りる人いますか?」アンジーがみんなに声をかける。ミカさんさえも手を上げない。
「おや誰もいませんか。ユーリやエルフィは恥ずかしくて断りそうですけど」
「もうさんざんいじられたから大丈夫~」それでも少し恥ずかしそうです。
「僕は・・・恥ずかしいのですけど。いろいろ相談に乗ってもらっている女の子達から嘆願書をもらってしまって、やらざるをえなくなっています」ユーリの顔に困惑と言う文字が書いてあります。
「なるほど。女の子の友達ができて、その子達からお願いされたのですね」
「ええ男装してくれと」そこで一同椅子からずり落ちかける。コントみたいですねえ。
「そういうことですか。でも私としては、是非とも可愛い服を着て欲しいのですが、ダメですかねえ?」
「それはもちろん着たいのですが、すでに服を用意されていまして」そう言ってユーリは自分の部屋から服を持ってくる。おおタキシードですねえ。仕立ても良さそうです。
「なんですかそれ?」ミカさんが不思議そうに見る。タキシードを見る事になるとは、さすが魔法使いの里が衣類のデザインを流通しているだけありますね。
「洋服の相談をしたときにサイズを測られて、可愛い服を作ってあげると言われたのですが、実際にはこれを作ってくれました」そう言って燕尾服を広げてみせる。
「センス良いわね。ちょっと着てみなさいよ」アンジーの声にウキウキ感があり、ユーリはちょっとひいている。
「あとで着てみせます」
「なるほど。そういうニーズもあるのですねえ」一応知らないフリをしておきましょうか。
「モーラやアンジーはどうなのですか?」ユーリが二人に聞きます。
「私らはねえ。いつも居酒屋手伝っているし、新鮮味は衣装くらいかしらねえ」アンジーはモーラを意味ありげに見ながら言った。
「そうじゃなあ。まあやっても良いなあ」さっきまでの笑っているモーラとはちょっと雰囲気が違います。
「おや、いつもの切れがないですね。もしかして裏取引しましたか?」私はカマをかけてみました。
「ふ、おぬしさすがじゃのう。ここでばれるとはなあ」
「あんた演技下手すぎよ。ちゃんと演技しなさいよ」あなたのオーバーアクションも大概でしたがねえ。アンジーさん。
「こんなもの後になればなるだけ後ろめたくなるじゃろう。このぐらいが潮時じゃ」
「なるほどそういうことなのね」ヒメツキさんの後ろに陽炎が見えます。炎というより津波ですね。
「まあなあ。こういう形でもないとお主らもこの街になじまんじゃろう。確かにヒメツキとミカは、もう少しでいなくなるじゃろうから良いかもしれんが、キャロルにはおぬし達との思い出が、この街でのみんなとの思い出くらいあっても良いかなとか思ったのじゃ」珍しくいい事を言っていますけど。それって・・・
「そう言えば私が断れないと思ってですか。まったくあなたは。この男やアンジーと一緒に暮らすようになってさらに口が達者になったわね」ヒメツキさんがあきれている。
「こやつの頭の中におぬしらに思い出を作ってあげたいと、少しだけそう言う考えがあってな、それを拝借しただけじゃ。悪く思うな」
「あなたのせいとは知りませんでしたよ」ヒメツキさんあきれたような目で私を見ないでください。良い事しようと思っていただけで、こんな悪意にねじ曲げられるとは思いませんでしたよ。
「私は考えていただけでそれを頼んだわけではありませんよ」
「でもその気持ちはありがたいわ。ありがとう」
「他には、何か言っておきたいことはありませんか」
 まあ、ここまできてやっぱりやめるような人はいませんね。
「では、今度はせっかくやるのですから、こうしたいという案はありますか?」
「はい」メアが手を上げてさらに立ち上がって言いました。
「メアさんどうぞ」
「やるからには制服はメイド服でお願いします!」メアさんが胸を張って言います。確かにその通りです。私も大賛成です。
「なるほどメイド服ですか。今着ているのでいいですか?」
「メイド服については、前のご主人と様々な試行錯誤をしておりまして、結局おとなしめの現在のこのタイプに落ち着いたのですが、前の主人は、超フリフリのメイド服をデザインしまして、それを着ていた時期があります」
「ああそうそう。そうなのよ。あの人はフリフリのついた可愛いものが好きでしたからねえ」エリスさんが何かを思い出しながらそう言いました。
「はい。家においてフリフリは作業の邪魔ですし、汚れもつきやすいので嫌だったのですが、デザインは気に入っていました」ふむ、私と似たような人だったのでしょうか。
「なるほど。今のヴィクトリアンメイドではなくてフレンチメイド風だったと言う事ですね」私は頷きながらそう言いました。もちろん目をつぶってイメージを頭の中に投影しながら言いました。脳内映像を見せられた家族はドン引きです。
「ご主人様。さすが造詣が深いですね。そのとおりです」
「あんた本当にくだらない知識ばかり持っているわねえ。フリフリなんて実際に見てみないと着られるかどうかわからないでしょう?」アンジーが私の頭の中のイメージを見てあきれている。
「私の所に一着だけあります。こんな事もあろうかと一着だけ残してありました」メア、あなたはどんな事を想定してとっておいたのですか。単にそのメイド服が好きだったからでしょう?
「話が先に進まんが、わしらにはメイド服のイメージがメアの着ているものしかないからのう、とりあえずサイズの合いそうな人だけ着てみてくれんか」モーラの言う事も一理ありますね。モーラ私の脳内映像では不十分でしたか。とほほ。
「では私が着て参ります」メアはそう言ってひらりと居間をでて自分の部屋に戻っていった。そうしてしばらくして、居間に入ってきて一度くるりと回り、まるでバレリーナのように右足を少し前に出して止まり、少し広がったスカートの裾をつまみ軽くお辞儀をする。エプロンドレスになっていてエプロンは縁がほとんどヒラヒラで、スカートはプリーツスカートですが、”裾が短くて膝上”まで、スカート裾には白いフリルがついています。ニーハイソックスに黒い靴をはいています。メイド喫茶そのままじゃあないですか。前のご主人様。あなたは残念な人です。メイド服の事をわかっていない。私はテーブルに突っ伏してしまいました。ユーリがわざわざ私の所に来て背中を撫でてくれました。ユーリは優しいねえ。
「これは・・・ヒラヒラがいっぱいで、少し足の露出が高いなあ。確かに仕事着とは言えんしろものじゃ」モーラその通りです。
「でも、サイズもぴったりだし似合いますねえ。特に脚の線とか綺麗ですねえ」私は立ち直り、ついついその美脚に見惚れてしまう。そこにいるほぼ全員が私を冷たい目で見ています。
「確かにそうじゃなあ」おや、さすが年寄り。思考が合いますねえ。モーラ睨まないでください。
「違うわ!美しいと言っただけじゃ。おぬしのは思考にもイヤらしさが出ておる。さて次。エリスどうじゃ着てみないか?」そう言うとエリスさんが嫌がらずにメアと一緒に着替えに行きます。やはり着てみたかったのでしょうか。
少ししてメアと一緒に居間に入ってくる。
「胸がねえちょっと苦しいけど。どうかしら」エルフィは、しきり胸元を気にして何度も服を持ち上げています。たしかにはち切れんばかりそのおぱーいはこぼれ落ちそうですねえ。
「いやあ大丈夫ですよ。それにしても綺麗です。さすがにサイズが違うのでつらそうですけど、ジャストサイズの服を仕立てたらきっともっといいでしょうねえ」私の言葉にちょっと頬を染めています。
「ああ。あの胸のあたりがはち切れんばかりなのがいいのう」モーラエロいです。でもそこがいい。
「モーラいったいどこ見てんのよ」エリスさんがちょっと怒って言いましたが、妙に嬉しそうです。
「これは~少しエロい~」エルフィまでもが言っています。
 エリスさんは、エルフィのその言葉に胸を隠して、恥ずかしそうにメアの部屋に戻って行った。
「まあ、ヒメツキも着てみないか。いつもパンツ姿だからなあ。わしは見てみたいぞ」モーラがほとんどエロ親父状態です。
 しかしそう言われて、キャロルとミカを見るヒメツキさん。キャロルのキラキラした瞳に負けて、ため息をつきながら立ち上がってメアの部屋に向かった。きっとキャロルがいなければ着てくれなかったでしょうねえ。
「さてヒメツキの番か。ほほうこれはこれは」モーラがなぜか何度も頷いています。
 入ってきたヒメツキさんは、似合っているんですが、そうですね。メイド服が負けています。ちょっとくるりと回ってみても、メイド服と言うよりはコスプレをしたアイドルですねえ。
「そうですね。映えますねえ」私はそう言ってモーラと頷き合っています。
 ユーリもエルフィも口を開けて見ています。普段あまりこういうヒラヒラな服を着ていない人が着るからギャップもあるのでしょうが、すごく似合ってますねえ。
「ヒメ様お綺麗です」そう言ったキャロルの瞳がキラキラしています。両手を組んでまるで神を見るようです。
「ヒメツキ様これはお似合いです」なぜかミカがうっとりしています。
 ヒメツキさん自身は、”そうなの?”程度の表情ですが、ちょっとだけうれしそうに見えます。モーラがユーリに目で合図をして、ユーリが嫌そうに立ち上がります。そしてヒメツキさんと一緒に居間を出て行きました。
「次はユーリか・・・まあ、体格とサイズが違うから仕方がないが、きっと似合うぞ」モーラフォローになっていませんよ。
 そうして入ってきたユーリは、多少手直ししてありますが、サイズが少し大きめで服に着られている感じがします。かえって本当にお人形さんのようです。ああ、ショートカットなのも一段とメイドさんらしいですねえ。
「お願いです。右足を軸にしてくるりと一回転してみてください」私はついお願いしてしまいます。
「こうですか?」そう言って私の前でくるりと回りました。
「サイズの合う服を着ればこれもいいですね。若いメイドさんな初々しさがありますね」
「わーい、あるじ様に言われるとうれしいです」ユーリは、そう言って嬉しそうにその場で跳びはねて見せたが、みんなに見られているのにハッと気付いて、そこでうつむいて耳まで真っ赤にしています。いやそう言うところも可愛いのですよねえ。
「私も着た~い」そう言って手を上げながらアピールするエルフィ。
「無理じゃ」モーラが一刀両断です。
「え~」エルフィが残念そうですが。わざとじゃないところがあざと可愛いです。
「乳がはいらんじゃろう」
「ダメですか~」エルフィががっつり肩を落としてテーブルに突っ伏します。しかし、胸が邪魔で顔がテーブルに着きません。ええ、乳の上に頭が乗っています。いや、そのボリュームでは服が破けますよ。
「あたりまえじゃ。無理して着たら破くであろう」
「ちぇ~」胸をテーブルからずらして頭だけテーブルに載せて足をジタバタさせています。ウザ可愛い。
「どうしますか。この線で行きますか」
「お主らに不満がなければこの制服で行くぞ」
「キャロルに言われてはねえ」
「わ~い。ヒメ様ありがと~」キャロルがヒメツキさんに飛びついた。
「あとですね。あるじ様にもお願いがありまして」ユーリがうれしそうにそう言った。
「まさか私にメイド服を着ろとか言わないですよね」それではさすがに変態ですよ。
「いいえ、僕とお揃いになりますが、この給仕服を着て欲しいのです」着替えて背中に隠していた服を見せる。
「やるなら全員でということですね。わかりました。そのくらいは協力しましょう」
「あるじ様ありがとうございます。楽しみです」
「次はメニューですね。軽食としましょう回転率高くなりますし。」
「これは醤油の出番じゃろう」
「そうねそれしかないわ。品目はやっぱり肉よねえ。」
「少し重いなあ、」
「パンに肉挟みましょう。」
「スイーツはどうしますか。」
「プリンとゼリーが簡単ですね」
「生クリーム添えますか」
「でも大量に作れますかねえ?」
「2日くらいしか無いのなら、冷凍してストックして、その場で作って冷やせばできますよ」
「ではさっそくこの話を領主様に伝えてきますね」
「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」ああ、声が揃ってますねえ。

 翌日私は、キャロルと一緒に領主様のところに行って、具体的な話を詰めてきました。食材は収穫祭のまとめ役の方から資金が出るそうで相談して欲しいと言われて、経費の見積りを出して了承を得ました。というか、制服代まで経費で出してくれることになりました。仕立ても別発注してくれることになりました。まあ、メアさんが直接行って布地の選定、型紙おこしまでやるらしいのですが、あそこの店は高くつきませんかねえ。
 その日から始まったメアによる給仕のレッスンは、過酷を極めました。
「き、筋肉痛が・・・」全員床に突っ伏して倒れています。
「いつも使わない筋肉を使って筋が痛いです」珍しくユーリが音を上げている。
「どうして光なのにこういうとこだけ人間らしいのかしら」アンジーがふくらはぎを揉んでいる。パンツ見えますからあまり足を上げないでください。
「確かに。わしらは擬態しているだけじゃというのに」そこで腰をさすりますか老人は。
「エルフィ胸にお盆を載せないでください」エルフィは、両手にお盆を持って、さらに胸にお盆を乗せている。
「え~この方が食器の片付け楽なんですけど~」
「そんなわけあるか!」とアンジーが突っ込んでいます。

 数日後、家で仮縫いの終わったメイド服の試着です。もちろんデザインはダビィさんですからまあ、キュートでエロいメイド服になっています。ひらひらですよフリフリですよ。
「皆さんあまりくるくる回らないでくださいね。修正の必要なところのピンが落ちますから」メイド長は、手を叩いて皆さんを止める。日頃の訓練の成果かピタリと動きを止める。ダンス教室ですかここは。
 それでもミカ、キャロル、ユーリ、エルフィは黙っていられる訳がありません。一度は止まったものの、鏡の前とそれぞれの姿を見比べたりして、きゃいきゃい騒いでいます。キャロルは下着姿のまま走り回っていて、それを追いかけているメア。なんか親子を見ているようで微笑ましいです。
「あと。ドロワースは基本下着と同様とお考えください。確かにターンする時などに見えてしかたがないものではありますが、頻繁に見せていい物ではありません。ご注意ください」メアのその微妙な言い回しに子供達は首をかしげています。私にはわかりますけどねえ。
「見せパンですか。そう言われるとちらっと見えるとエロいですねえ」私は思った事をついつい口にしてしまいました。しまった!
「変態~」エルフィでさえ私を見て軽蔑しています。え?そうですか?
「あるじ様変態です」いつも味方のユーリでさえ冷たい目で見ています。
「ドロワーズとか本当にあんた変態ね」とアンジーが見下すような視線になっています。それは何かご褒美です。
「おぬし、さすがにそれはきもいぞ、普通口に出さんじゃろう」モーラ、嫌そうな目で見て言わないでください。
「でも私はOKです」とメアはくるりと一回転しました。見えていないのですが、この見えそうで見えない絶妙な感じがたまりません。
「僕も」くるりとユーリが回ります。さすがにスカート丈に個人差がつけてあって、ユーリのは、おとなしめに作ってあるだけにそんなに広がりませんね。とても清楚な感じで可愛いです。
 あとからメアに尋ねると、ユーリのスカートの丈が長いのは、ユーリの動きが大雑把もといモーションが大きいので同じ長さにすると本当に見えてしまうからなんだそうです。さすがメアさん。
「あ、私も~」
 エルフィがぶんぶんとダンサーのように片足をあげて回っています。ドロワーズが丸見えです。だからそういう節度をわきまえない行動は萎えるだけです。やめてください。
「おぬし、心の中で何を叫んでいるのじゃ」モーラ。ため息をつきながら私を見て言わないでください。
「ああ嘆かわしい」私は頭を抱えました。
 メア曰く、エルフィは、ボディスタイルからエロいのでドロワーズが見えたところでほとんど変わらないから、むしろ広げたそうです。そうですか。だからよけいヒラヒラするのですね。それならむしろドロワーズではなく、パン・・・
「旦那様のエッチ~」エルフィの一言に再び家族の白い目が突き刺さります。とほほ


Appendix
私は子どもが嫌いだ・・間違った

私はメイド服が好きだ。
エプロンドレスも下半分がエプロンでも、
ジャンパースカートになっていても上下が分かれていても
フリルのないブラウスでもフリルがフリフリでもメイド服なら良い!

でも私は言いたい。
やはり至高はヴィクトリアン。ハウスメイド。
頭はカチューシャではなくキャップ。
エプロンは胸からスカートまでで、フリルは不要
けれど服の肩はバルーンスリーブであってほしい。
スカートはフレアでもプリーツでもいい
でもジャンパースカートが好き
そして、下着は・・・
コルセットとドロワースでなければいけない!絶対にだ!!
これだけは譲れない。

いい加減にしなさい!!!妄想ダダ漏れよ!!!良い迷惑だわ!!!
・・・・はい

続く

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