巻き込まれ体質な私、転生させられ、記憶も封印され、それでも魔法使い(異種族ハーレム付き)として辺境で生きてます。

秋.水

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第22章 過去との再会

第22-3話 魔女とエルミラ

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○ 街へ
 そして馬車は道なりに走っている。
「この地図によりますと、確かにいくつかの町がありますね。」
 メアの記憶と照合してみると、一部不整合する地域があり、そこを目指すことにした。
 オリオネア公国と以前行ったスペイパル公国の中間あたりにさしかかり、地図にはよるとセリカリナと言う街があり、そこらしき街にに近づいた。
 近づくにつれて、その街には、今は亡きチューデント・フェルバーン王国と同様に石畳の街道が整備されていて、しかも石畳だけではなく、街の外れからその街全体を囲うように丁寧に石畳が敷きつめてある。かなり大規模な土木工事を行っているようだ。そして、それだけの規模の街の割に城壁が巡らされていないことが遠くから見てもわかる。
「あれ~馬車が止まりましたよ~。あ~ちゃん先導しないの?どうしたの?」
 エルフィが馬たちに声をかけるが、馬車が止まり、馬たちがそこから一歩も進まなくなった。
「ほう、さすがじゃな。何かあると気付いたのか。本当にうちの馬達は優秀じゃな。」
 そうして、全員が馬車から降りる。見えてきていた石畳の手前で止まったようだ。
「城壁がないということは、魔獣よけの結界を張っているのであろうなあ。これだけの範囲なら、かなり強力な結界を張らなければならないのであろう?魔力を感じぬが。どうなんじゃ」
「どうやら、街の端に魔法によるセンサーがありまして、魔獣や獣が近づくと、そこだけ電気のシールドを張るみたいですねえ。」
「しびれさせて追い返す訳か。」
「なかなか良い発想ですねえ。なのでそれを察したのか、馬たちは危険と判断したようです。」
「馬たちが優秀すぎます。実は獣人じゃないんですか?」
「よしてくれ、馬形の獣人なんて見たことないわ。」
「でも~魔族にはいましたよ~」
「なるほど未分化なのですかねえ。」
「いや、それは違うじゃろ」
 私はその石畳に近づき周囲を調べてみる。私は調べた後、石畳にゆっくりと歩いて近づいて行く。さらに石畳の上を歩いてみる。
「おい、大丈夫なのか」モーラが私の行動を見て驚いている。
「大丈夫みたいですよ。」
「相変わらず無鉄砲ですね」
「解析では白と出ていましたので。」
「狙撃されたかもしれませんよ。」パムが心配そうに言った。
「ああ、それは。エルフィが」
「大丈夫ですよ~半径数キロには敵はいません~」
 荷馬車の上で弓を構えたエルフィがいつも通り笑いながら言った。
「なるほどな。」
「さて、中に入りますか。」
「不思議な街ですねえ。」
 私達は、馬車でその石畳を走る。蹄鉄がカチカチと音を立てている。レンガで作られた建物が多く、明らかに他の町とは文化のレベルが違っていた。町並みのデザインがきれいで整っていた。瀟洒な町並みといえば良いのか。しかし、人影もまばらで、活気があまりない。
 歩いているのは成人ばかりで子どもがほとんどいない。
「街並みと同じように住んでいる人も違って見えますね。」
 パムが幌をめくって周囲を見ている。反対側はユーリが後ろはメアとレイが周囲を見ている。
「こどもがいないのかなあ。」
 レイがつぶやいた。確かに他の街だと道にまで子どもがあふれて遊んでいるのにここでは見ない。
「水も潤沢そうだしなあ。」
 街の中央なのか大きな公園になっていて、中心には大きな噴水のようなものが置かれていて、水がなみなみと張られていた。
 よく見るとその公園の脇には停車場があり、馬が数頭止められている。私達はそこに馬を止めて、時間も中途半端だったので、周囲を散策することにした。
「この噴水、立派じゃのう。」
「ちょっとどういう構造になっているのか見てみたいですねえ。」
「ああ、そうだなあ。おもしろそうだ。」
 馬車を降りた時にメアの表情が変わる。噴水を見ていた私に近づいて、こう言った。
「ご主人様、この街に私はいました。もしかしたら何か思い出すかもしれませんので、少し一人で散歩させてください。」
「大丈夫ですか、少し顔が険しいですが。」
「ここに到着した時に思い出したのですが、親書を配った帰りにここを通ったはずなのです。ですが、その記憶がありません。」
「この街の手前で睡眠を取り、ここを通過して、また睡眠を取っていてその間が空白になっています。ただ、時間的には1日の距離を走った距離なので、自分自身1日分の空白になっていたので気づいていませんでした。その間は、何もなかったとは思うのですが。」
「そこの部分の記憶が削除されている?」
「というか意識の外になっていた感じです。無意識状態で行動していたようです。やはりなにかこの街にはあるのでしょう。」
 そうして、メアと別れた私達は、それぞれ別行動を取ることにして、私はモーラと、パムはレイと、ユーリはエルフィと組になって情報を集めに回っています。アンジーは、ひとりで何かを探しに行きました。
 私とモーラは、その街の魔法使いを探していましたが、どうやら街の中にはいないようで、歩いている人に尋ねながら探して、街に長く住む老人のところにうかがった。
 その方の話では、この街は、かつて魔法使いが文化を伝え、他の町には無い、多様な生活を享受できていた。しかし、その魔法使いは、気がふれてしまい、この街を混乱に陥れ、そしてこの街から追放されたのだそうだ。それで魔法使いに対して否定的になってしまったそうです。それでも、少し街を離れたところに住む魔法使いがいると教えてもらい、そこに行ってみることにしました。
 私とモーラは歩いて街からでました。街から少し離れると小高い丘が見え、丘の周囲が森になっていて、森まで続く草原の中腹にポツンと小屋が建っていました。立ち止まって振り返ると街を一望できます。こんな見晴らしの良いところに家を建てて盗賊とか魔獣とかに襲われないのでしょうか、家の周囲に結界があるとしても。見晴らしが良すぎます。
 私達は、家の前に到着してその扉を叩く。
「こんにちは、こちらは魔法使いさんのおうちですか?」
「はい、そうですよ・・・ああ、お久しぶりです。賢者様」
 扉を開けて私を見たその女の子は、そう言った。ああ、確かに見覚えがあります。
「おや、あなたはロスティアの王女様のところにいた魔法使いさんではありませんか。死んだのではなかったのですか」
「まだ死んだことになっているのですね。それはよかったです。」
「そうですか、いつからここにいらっしゃるのですか。」
「はい、賢者様とお会いして、私が王女様にいろいろ進言するようになったのを上級魔法士の方が疎ましくなったのでしょう。たぶんいずれ賢者様とぶつかるであろう事を想定して、王女様の怒りを賢者様に向かわせるために、私は命を狙われたようです。私は、とっさに死んだことにしてあの国を逃れました。私としては、王女様にはわかるように伝えてもらったつもりだったんですが、伝わっていなかったのですね。」
「ええ、残念ながら死んだと思い込んでいましたよ。たぶん洗脳されていたのでではないでしょうか。」
「やはりそうでしたか。それで、どうしてこちらに?」
「実は、ここに昔から住んでいる魔法使いさんがいると聞いて、ぜひお目にかかりたいと思って来たのですが、」
「はい、私のお師匠様がここに住んでいますよ。」
「そうですか、今はいらっしゃいますか?」
「街に食料品などを買いに行っていると思います。」
「おぬし、わしらが来るのをわかっていたな。」
「は・・・はい。どうしてそれがわかりましたか?」
「簡単に扉を開けたからじゃ。おぬしを追ってきた者かもしれないじゃろう」
「ああ、確かにそうですね。実は、出かける時にお師匠様から、たぶん尋ねてくる魔法使いがいると言われていました。」
「なるほど、魔女じゃなあ」
「あら、そんなことはないわよ。私はただの魔法使いです。」扉を開けたのがわからないくらい静かに部屋の中に入ってきました。
「初めまして、私は、」
「自己紹介はいいわよ。解析する魔法使いさんでしょ?」
「よくご存じで。」
「それと最果ての賢者と呼ばれている土のドラゴンさんね。」
「あ、ああ、よろしく頼む。」
「それは、こちらの方ですよ。もしかして、これから災いが起きるのではなくて?」
「そんなつもりで来たわけではありませんよ。私の家族の調子が悪くて、その原因を追ってこちらまで来たのです。」
「ですから、その事ですよ。その事実を尋ねてくる者が来たらこの地は災いに襲われると言われているのですから。」
「そんな話がこの地方にはあるのですか。」
「でも、あくまで言い伝えでしかないですけどね」
「実は、その辺の話をお聞かせいただきたいのです。もちろん対価はお支払いします。」
「今回の対価は決まっているわ。この街に起きるであろう災いを止めて欲しいの。それだけよ。」
「ふむ、確実に起きるとなぜわかる?噂でしかないのであろう?何か知っておるな。魔女よ。」
「まあ、そうなるかどうかわからない、でも何か起きた時には何かをしてもらう。それでは、どうかしら。」
「そこまでしなくてはならないのか。」
「あくまで起きた事実を受け止め、その被害を最小限に抑えるために努力する。それがその街に住む魔法使いの習わしなのですから。」
「そういうものですか」
「あなたも、もうじきそうなるのよ。」
「私ですか、私は家族を守るのが精一杯で。」
「そんな言い訳は通用しなくなりますよ。町の人達は必ずあなたに期待するの。わかるでしょう。ましてや土のドラゴンの恩恵を受ける魔法使いさんならね」
「その災いとやらがどんなものなのかわからないのか。」
「私がここにいるのは、この街を追われた錬金術師からお願いされたからよ。その人とは、それまでいろいろとあったのでね。騒動が収まったらいなくなろうとしたけど、ことのほか静かで暮らしやすくてね、そのまま居着いてしまったというところね。なので、その災いは、推測はできるけど知らないわ」
「推測ですか」
「はい、あなたの連れているホムンクルスに何かが起こった時に何かが起きるのではなくて?もしかしたら土の中から何か出てくるかもしれないですし、それならば、防げるのはあなたぐらいでしょう。土のドラゴンさん。」
「できることならなあ。ここを縄張りとするドラゴンはどうしているのかのう」
「ここはねえ、ドラゴンの里から魔法使いの里が許可をもらったドラゴンの縄張りに属さない土地なのよ。だからドラゴンの干渉はありませんよ。あなたが何かしても大丈夫です。」
「なるほど、魔族の領土や魔法使いの里の所有する土地のようなもののひとつというわけか」
「そうよ。だからこの土地を縄張りとするドラゴンはいませんよ。」
「では、それについての対価は、それでよろしいのですね。」
「それとねえ、そのホムンクルスの子を連れてきて欲しいのよ。その時に一緒に話をしてあげるわ。何度も話すのも面倒ですし。」
「そうですか。では、明日改めて。お伺いします。」
「あとね、この街には、もうひとり魔法使いがいるわ。錬金術師と名乗って街の中に住んでいる男の人がいるのよ。まあ、やっていることは魔法使いと同じですけど。今日はその人に話を聞いてみたらどうかしら。」
「情報ありがとうございます。こちらに来るのは朝早くからでもかまいませんか。」
「かまいませんよ、ぜひそうしてください。私もあなたの口からこれまでの事をお聞きしたいわ。噂ほど信用できないものはありませんからね。」
「はい、お待ちしています。」
 そして、モーラと2人でその家を出る。
「モーラは、ほとんど話をしませんでしたね。」
「ああ、考え事をしていたのでなあ。あの魔法使い、自分は魔女ではないと言っていたが、実のところほとんど原初の魔女ではないかと思ってずっと考えていた。」
「原初の魔女であれば、魔法使いの里にいるのではありませんか。」
「そこなのだよ。魔女ともなれば長命だし、引退はあまり考えないものだ、だからこそ人との交わりを捨てて里に引きこもるか、色々なところを放浪して自分が長命であることを隠して生きるのだが、ひとつの所に住み続けるのは珍しいと思ってな。」
「そういえば、どうしてここはドラゴンの里の縄張りではなくなったのですかねえ。」
「さあなあ。その辺の話はさすがにわからんわ。元魔王に聞いた話にも出てこなかったなあ。」
 そこを出て、街への道を2人で歩いていると、レイが獣化してこちらに走ってくるのが見えた。
『どうしましたか』
『ああ、やっとつながったー。街の中では連絡が取れませんでした。無線機の故障ではないみたいですね。』
 獣化しているので、通信機ではなくてこれは、脳内通信の方ですね。
『おや、静かだったのは何もないからではなく、聞こえなかったからだったのですね』
『はい、大変です。メアさんが倒れました。』
「なんですって。」おっとびっくりすぎて女言葉になってしまいました。
「何があったのじゃ。」
 そこでレイは私達のところに到着し、獣人化した。
「メアさんと同じ顔をした女性と出くわしたら急に倒れました。」
「同じ顔じゃと。」
「はい、そっくりでしたよ。」
「とりあえずメアさんのところに行きましょう。どこにいるのですか。」
「たぶんその子のところに連れて行くってパムさんが言っていました。」
「パムが一緒なのだな」
「はい。」
「急ぎましょう。」
 私達は街の中へ急いだ。

 その少し前の事です。
 パムは、メアの後ろをついて歩いていました。上の空のメアは、いつもなら気付くパムを気にするでもなく、ふわふわと歩いていて非常に危なげです。それでも、街並みを見回しながら次々と角を曲がっていきます。
 時に道を戻り、時に手前で思案しながら歩いています。そんな時、角を曲がってきた女の子とぶつかりそうになりました。
「ごめんなさい。」その子はぶつかりかけたメアの顔を見て驚く。
「あ・・」その声にメアさんもその子の顔を見る。お互いの顔を見つめる。年齢差に応じた顔は、ほとんど同じ顔だった。そして、メアは、その場に膝をついて倒れ込み。その子は助け起こそうとそばに寄った。パムは近づき見上げるその子の顔を見て驚いた。
「あなた、メアさんの親戚ですか?」と尋ねてしまう。
「私には残念ながら身寄りはありません。母も数年前に死にました。でも、確かにこの方は私に似ていますね。それよりもどこかに休ませないと。」
「私が背負いますので、どこか休める場所があれば教えてください。」
「あなたは?」
「私は、家族です。ああ、そう言っても信じてもらえないかもしれませんね。仲間であることは間違いありません。」
「そうですか。では、私の家にお連れしてください。」
「わかりました。レイ、そこにいるのでしょう?」その場に狼が現れる。
「ぬし様に連絡を取ってください。」レイは、頷きその場から消えた。
「あの子もこの女性。メアさんの家族なんですよ。」
「この方の名前は、メアと言うのですか。正式には何という名前なのですか。」
「メアジストよ」その声に、パムとその子が振り返るとアンジーが立っていて、さらに続けた。
「メアジスト・アスターテと言うのよ。アメジストの言い間違えらしいわ。どう、何か思い出した?」
「はい、私のおばあさんのさらにおばあさんになるのでしょうか。祖母も母もその事を言っていました。私たちの先祖には、メアジストと言う名の女性がいたと。」
「そう、そうだったの。」
 そうして、その子の家にみんなが集まっていった。

『あるじ様聞こえますか?』
『ああ、ユーリ聞こえますよ。』
『あんたどこに行っていたのよ。連絡が取れなくて心配したわよ。』
『旦那様~。どこ~』
『今、街中に入りました。もしかしたらこの結界は、魔法自体も遮断するのでしょうか。』
『ぬし様、ああ、見つかりましたか。エルフィ、聞こえますか。ぬし様を誘導してください。』
『ラジャー』
 そうしてその子の家に到着し、家の中に入れてもらった。寝室のあるおそらく彼女の私室のベッドにメアは寝ていてその横に彼女が座ってメアの手を握っていた。
「メアさん。」かなり大きな声になっていたのでしょう。その子は静かにするように口に一刺し指を当てた。私はベッドに近づき跪いてメアの顔を見た。顔色は悪いが落ち着いた表情をしている。
「大丈夫だとそちらのアンジーさんがいっていましたよ。」その子の声に私はその子の方に顔を向ける。
「声までよく似ていますね。」私はこの子の顔を驚いて凝視してしまう。
「そうなんですね。」困ったように私から視線を外して下を向いた。
「ああ、初めまして。私、メアの・・・」
「ご主人様なんですね。そして家族なんですね。」顔を上げて私をじっと見る。
「ええ、家族です。その、倒れたメアさんを家に入れてくれてベッドまでお貸しいただいて。ありがとうございます。」
「いいえ、私の肉親ですもの問題ありません。」
「肉親ですか?」
「はい、彼女の、メアさんの姓である、アスターテは、曾祖父の名前ですので、」
「ああ、そうでしたか。ってメアさんは、ホム・・・」そこで後ろに立っていたモーラが私の口を塞ぐ。
「わしの家族が迷惑をかけてすまん。わしはモーラじゃよろしくな。ああ、この口調は昔からなのでなあ直りはせぬ。すまんが勘弁してくれ。」
「はい、よろしくお願いします。私は、エルミラ・クロックワークと申します。」
 そう言ってその子は、椅子に座ったまま軽くお辞儀をする。
「落ち着いているようだから。私達は宿屋に戻っているわ。夕方には一度顔を出すからその時はみんなで一緒にご飯を食べましょう。エルミラさんも一緒にね。」
「よろしいのでしょうか」
「メアにとって親戚なら私達にとっても、家族のようなものだもの。それとも一緒は嫌かしら?」
「そんなことはありません。ぜひ。」
「あんた、わかっているわね。」アンジーは、私に言った。
「ええ、わかっていますよ。」
「本当かしらねえ、まあ、メアが目を覚ますまではちゃんと見ているのよ。」
「了解しました。アンジー様」
「もう、ではね。」アンジーは、最後に扉を閉めた。
「私は残ってしまいましたがよろしかったですか?」
「かまいません。私も話し相手が欲しかったところなので。メアさんの事をいろいろ教えてください。」
「そうですね、まず私と家族になったことからお話ししましょう。」
 そして彼女と私は話し始めました。

 一方、モーラと他のみんなは、馬車のある噴水の前に集まってそれぞれ、街を回っていろいろ聞いて来たことをまとめはじめていたようです。
「ここは、どの国にも属さない街だったわ。そして子どもはまったくいない。ここには住めないそうよ。」
 ひとりで歩き回っていたアンジーが話し始める。
「それは、どういうことなのですか。」パムが尋ねた。
「人は、生まれて老いて死ぬまで50年くらいなのよ。でもこの街の人は、200歳以上生きるそうよ。そして、子どもが生まれにくい。まあ長命になればなるほど、その傾向が強くなるから、しかたがないのかも知れないわね。
 そして、生まれて青年になる頃までは、ここで暮らすからみんなが同じスピードで歳を取っていくから、長命であることを知らないのよ。でも、仕事を探しに他の街に行ったり、ここでの暮らしに飽きて旅をしたりして自分たちが普通の人達と違うことがわかってしまう。そうなると、この街以外の人の中では生きられなくなり、この街に戻ってくるしかなくなるのよ。」
「不老不死ではないのですね。」
「ええ、例えば、腕を切断したり、大きなけがをしたら再生して、その分生命力を削られ死期が近くなるみたいよ。もちろん致命的なけがなら死ぬこともある。もっとも生命力は強いみたいなので、瀕死の状態でも生き残るとこが出来るみたいで、その場合は、死期の訪れは早くなるみたいね。つまり最初に300という生命力を持っていて、腕が切断したら生命力50を使って再生して、残り250をこれからの生活で消費していき、それが無くなったら。突然死ぬみたいな感じかしらね。それでも200年は長いわね。他の人たちと同じ所に住んでいたら、さすがに不思議がられるでしょう。」
「あまり人と接触しないで世捨て人のように生きるしかないと。」
「この街以外ではそうなるわねえ。」
「なるほどのう。それは、この魔法の障壁と関係するのじゃろうか。」
「たぶん。モーラからの話と組み合わせると、あいつの解析を待たなくても推論できるわ。この街は魔法使いの里の実験場で、その実験はまだ続いているのではないかしら。」
「ここが実験場ですか」私は、ついつい脳内会話の言葉をつぶやいてしまう。
「実験・・・ですか?」彼女は首をかしげる。
「ああ、すいません。別なことをぼんやり考えてしまって。」
「そういえば、祖母もそんなことを言っていました。この街は呪われた街だ。神の実験に使われた街だと。」
「あなたは、そんな呪われた場所が怖くはないのですか?」
「私は、母からここを離れては生きていけないからここに住み続けなさいと言われていました。祖母から呪われている街と言われても私にはよくわからなくて。私は、外の世界にもあまり興味が持てなかったので、友人達は違う街に行って、寂しそうに戻って来たりして、外の話を聞かせてくれなかったりするので、ここより厳しい世界なんだろうなあと。だから出て行かない方が良いと思って暮らしています。」
「あなたは何か仕事をしているのですか?」
「趣味の手芸をしていて、それが結構良い値段で買ってくれるので、それで生活しています。」
「食事とか衣類とかもそのお金で買っているのですか?」
「食料品は必要な品物が売っていますし、衣類などの雑貨も売っていますので、お金はそんなにかかっていませんよ。町の税金でまかなわれているのです。」
「お金は、かかっていないと。」
「お金は払うのですが、税金の還付金というのですか、ほとんど全額戻ってきます。」
「では、お金はあまり減らないんですねえ。優秀な街ですね。」
「そうみたいです。」
 メアの手がピクリと動いて、彼女の手を握った。そして、うっすらと目を開ける。
「メアさん」彼女は手を両手で握りしめる。そして互いに見つめ合う。メアの瞳から涙がこぼれる。
「ああ、あなた。お名前は、何というのでしょうか。」
「私は、エルミラです。エルミラ・クロックワークです。初めまして。」
「エルミラ・・・クロックワーク。ああ、私の母方の姓ですね。そうですか。」
「憶えていらっしゃったのですね。」
「はい、今、はっきりと。」・・・そう言いながら私の気配に気付くメア。
「ご主人様。ああ、私は、私は」私の顔を見ながらうろたえる。
「メアさんには、記憶があったのですか。」
「記憶。私にはないはずの記憶。今、思い出しました。私は、メアジスト・アスターテ。父はブリュネー・アスターテ、母はパープル・アスターテ。その夫婦の長女です。そう、死んだ長女。なのです。」
「死んだ?」
「はい、私は8歳の時に死に、その後父親に蘇らされました。」
「そ、そんな。」エルミラは、驚いている。
「ごめんなさい。死んだというのは誤解を生みますね、私の頭を死なないように保存して、ボディを魔法で作り出して中に入れたのです。」
「そんな事が出来るのですか。」
「はい、私の父は錬金術師を名乗っていた魔法使いなのです。そう聞いてエルミラさんは、私のことが怖いですか。」
「いいえ、怖くないです。よくここに尋ねてくる錬金術師の方もそんな話をしてくれていましたから。でもそれが本当だったなんて。」
「どんな話ですか」
「はい、人が不治の病を患った時、頭だけを生きながらえさせて、その間に新しい体を作って、その体に入れ替えることが出来るとか、そんな話ですね。」
「ああ、そういう話を聞かされていたのですね。その錬金術師さんは、こちらの街にお住まいなのですか。」
「はい、いらっしゃいますよ。」
「ご主人様。私はもう大丈夫です。エルミラさんお願いですが、その錬金術師さんのところに連れて行ってくれませんか。」
「メアさん、いえ、メアジスト様、私のことはルミとお呼びください。言われ慣れていますので。」
「ではルミ、私のことは先ほどのようにメアと呼んでもらえますか。」
「はい、その、メア様、一緒に行かせてください。」
「ありがとうルミ。」そう言ってメアは、ベッドから起き上がる。
「メア様」
「では、ご主人様参りましょう。」
 そう言ってその家を出たが、エルミラさんは、メアの手を握ったままで、玄関の扉に鍵もかけずにそのまま歩いている。
「玄関の鍵はよろしいのですか」
「ここに鍵をかける習慣は、ありませんよ。」
「ああ、そうなんですね。」
『そこにいるのは、おぬしとメアか?』
『はいそうですが。メアもこの会話聞いていますよ。』
『いや、聞かれても構わぬ。わしが察知しているメアの魔力が切り替わった感じがするのじゃ。何か変わったことでもあったのか。エルフィも同じ事を言っておるので気になってな。』
『ああ、メアさんの記憶が戻ったのです。全部ではないようですが。もしかしてそれで変わったのかと思います。』
『はい、そうなのです。私はホムンクルスではなく。魔力を筐体とした生体サイボーグになります。』
『ああ、そうなのか。人だったのじゃな。』
『はい、戦闘などの特殊な状況下ではホムンクルスとして動き、それ以外の時は、感情を優先して動いておりました。ですから脳はその行動をバックアップしていました。』
『では、私が出会った時にメアさんが私に隷属したのは、もしかして、ホムンクルスとしてなのでしょうか?』
『最初に出会った時には、この方なら一緒にいて安心であるという期待値が一定以上超えたので宿主を変更しました。』
『宿主ですか。』
『その期待値のうちには、愛情も含まれております。ええ、私の好みだったと言うことです。』
 メアは、エルミラと話しながら、こちらを振り向いて頬を赤らめた。
『これからエルミラさんと一緒に錬金術師さんに会いにいってきます。』
『そうか。わしらはもう少しこの街を回ってみる。何かあったら連絡する。』
『通信機なしで大丈夫ですか?』
『街の中なら大丈夫だろう、だが連絡は怠るな。メアの兆候を見逃すな。』
『わかりました。気をつけます。』


 続く

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