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第7話 宝石移送
第7-5話 謁見と帰還
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○王様に謁見
さて、商人さんと一緒に城内に入り、控え室に待たされ、商人さんと入れ違いに国王の前に連れてこられました。私とアンジーだけで行こうと思ったのですが、全員に反対されました。それと、別なグループが、人質にされてしまうのを恐れたからです。
「おもてをあげよ」司祭の言葉に顔を上げる。
「ほう、こうしてみると確かに似ているな」
「何のことでしょうか。」
「ここにあった壺を消した者達じゃ」
「何をおっしゃっているのかわかりません」
「しらを切るか、お主らが水神の言葉などとたばかってわしの壺を盗んだのであろう。」
「何をおっしゃっているのかわかりません。私どもは、街の領主の依頼で宝物をここに運んだだけです。この街に来たこともありませんし、その上、盗むことなどできません。そもそも盗んだとして、その壺を私たちは持っていません。」
「確かに、水神の洞窟に壺は戻っていたがな。」
「そうなんですか。であれば、なおのこと水神様の御技ではないのでしょうか。」
「にしてもお主らはその者達に似すぎている。」
「私どもの勝手な推察ですが、水神様はきっと、私たちの姿をお使いになっただけだと思います。」
「なぜお主らの姿を使う。どうしてじゃ。」
「わかりません。ここから遠い彼の地にある者の姿なら使っても問題が出ないと思ったのではないでしょうか。」
「むしろお主達が水神をかたったのではないか。そして、水神のたたりをかたり盗んだのではないのか。」
「恐れ多くも国王様、私たちがこの国まではるばるやってきて、それをして何の利益がありましょうか。疑われる気持ちはもっともですが、壺を得るわけでもなく、さらにわざわざここまで、宝石の輸送の護衛をしてくることに何のメリットがありますでしょうか。」
「まあ、それは理屈が通っておる。しかしな、そやつらは、理屈に合わないことを成し遂げておるのでなあ。そんなことができるのなら、遠い土地からここまで瞬時に来て壺を奪い、かの洞窟に置き戻ることさえ可能であろう。」
「国王様できないことの証明は私にはできません。ですができません。」
「なるほどな。しかし、その話し方と言い似ているなあ。こやつらが盗んだということで、終わらせようかのう」
私はひとつため息をついてからこう言った。
「もし、その壺の件が水神様のお力ならば、ここで何か起きそうですね。水神様はその時に何か言っていたのではありませんか。」
「ああ、その者達に何かしたら災いが起こると言っておったな。」
「ならば、今起きるかもしれませんよ。」
「なんじゃと」
私は、魔法を使い、私達のコピーを隣に作った。もちろんフードをかぶって顔の見えないようにしたコピーです。それを作るためにわざわざローブとかもう一度買ったので手痛い出費でした。作り方は、前に壺を作った時のように霧を作り姿を投影するやり方です。今回は、その姿を私の着ていた服に
さらに私は、水神様の声をまねて
「国王よ、まだわからんのか、わしは警告した。しかし、従わなかった。これは、国王の罪、それを止められない、王妃、臣下の罪。ここに今一度の警告を行う。」
そうして私は、城を揺らし、窓にヒビを入れて見せ、コピーを消した。
国王は、椅子からずり落ち、揺れが収まる前に土下座を始めました。
「すいませんでした、すいませんでした。」何やらブツブツ言っている。今更ですねえ。どうせ、すぐに忘れるんでしょうけど。
「やはり水神様はいらっしゃるのですねえ。では、私達はこれでおいとまさせていただきます。」
「この後は、わしらはどうなるんんじゃ。」
「水神様は、何もされないと思います。私たちを守ってはくれましたが、それ以上のことは何もしないと思います。ただ、証を示してくれただけで、国王様にもこの国にも何もされないと思います。今後何も国王様がされなければ。よろしいでしょうか?」
そうして、なんとか説得をして解放された。
私は、控えの間で待っていた商人さん達と合流して、城を出ました。
どうやらこれで、この一件が完結したようです。それにしてもカンウさんは、どこにいますか。ちょっとは顔を出してくださいよ。そう思いながら城からの道行きモーラさんに連絡が入りました。
「そうもいかないのよ、ドラゴンの里で騒ぎが起こってそちらに行っていたのよ。行ってみたらたいしたことでは無くて無駄足を踏まされたわ。それって私をこの件から遠ざけるためだったみたいよ。」
「だ、そうじゃ。」
「そういうことですか。しかし、なぜ?」
「今回のもどうやら魔族がらみみたいなのだけれど、証拠がつかめないのよ。」
なるほど、何もわからなかったという事がわかりました。
○帰り道
そして帰り道です。商人さんとその一行と一緒ですから魔獣に襲われないとなりません。
傭兵団の団長さんは、あちらの馬車に乗りました。
「帰りの道も多少は襲われないとね。」
「わしは、完全隔離じゃな。」
「アンジーは、襲われても静かにしていてくださいね。もう、力が無くなったことにしますから。」
「多少は、知らせないと、かえって怪しまれるぞ。わざと隠していると。」
「エルフィとメアさんに頼りましょう。」
「そうじゃな。その方がよいな。」翌日には、アンジーが戻ってくる。
「お役御免になったわよ。でも、ちょっと複雑な気分。お前役に立ってないという冷たい目で傭兵団の人から見られだしたから。そういうところはシビアよね。」
「きっとまたそういう状況になるかもしれませんから。」
「それは、それでまずい事態じゃが」
そうして行きの倍の時間を使ってこの街に帰ってくる。それでもかなり時間が短縮されているようです。
街の城壁が見えてきたときには、御者台のエルフィから見えましたよ~という声がかかり、みんなで御者台に集まりました。
「もどってきましたねえ」
「もうなにもないですよね。」
「さすがにもうないじゃろう。」
「そう願っています~」
帰還して、数日してから領主様主催で商人さんのところで、盛大な帰還祝いがありました。皆さんをつれて参加させていただいた折に、領主様に私の家族で帰還祝いをしていないと話したら、いろいろと食材を提供いただくことになりました。
メアさんいわく。
「大量の食材が届きました。しかし、保存できないものばかりですし、貯蔵庫も手狭ですので、早急に消費しなければなりませんが、この人数では、到底無理です。どなたか招待をして、すぐに来ていただいてください。」
急なことなので、大丈夫かと思いましたが、カンウさんから来るとのお話しで、そういえば紹介したい人がいると言っておられましたので、その方もお連れくださるようお話ししましたら、その方もお連れになるという事でした。
あと魔法使いさんもお見えになれるそうです。しかも、友達も来るといいます。なんと我々が帰ってくるときに後をついてきていたらしいのです。ええ、ストーカーですか?ああ、魔物よけとして利用されていましたか。
そして、この人数では、家の中ではさすがに無理でしたので、家の横に簡単なテーブルと椅子を用意して始めました。
準備ができた頃、カンウさんが到着です。ええ、少し離れたところで人型になったそうですが、お2人連れてこられました。
「こんにちは、お連れ様はお二人ですね。」
「ええ、まず、一人目は、竜族の娘なのよ。」ユーリと同じくらいの背丈の子です。
「よろしくお願いします。」利発そうな子が元気に挨拶をする。
「失礼かとは思いますが、伺います。」メアさんが真顔でカンウさんに問いかける。
「何かしら。」
「カンウ様の娘さんですか。」
「!!!」
「あら、そう見える?」
「いえ、魔力の感じが似ていたので。」
「メアさんするどいわね、でも残念。うちの血縁ではあるけど私の娘では無いわよ。」
「なんでまた、連れてきたのじゃ。もちろん大歓迎なのじゃが」
「それはねえ、社会性をつけさせるためよ。誰かのようにならないようにね」
カンウさんがモーラをじっと見て言った。
「わしが言うのもなんじゃが、この家庭は、かなりいびつじゃぞ。そんなもの見せられたら、かえってゆがんだ社会性を身につけそうじゃが。」
「失礼ですねモーラ。私たちに社会性が無いとでも」アンジーが反論します。
「社会性はありすぎるくらいあるが、一般的な社会性とは、かけ離れていると思わんのか。おぬしらおかしいじゃろう。」
「だからよ、社会性と一般常識とは似て非なるものだと知ることがいいのじゃないかしら。」カンウさんがそう言いました。
「またそんなへりくつを」
「へりくつでルールを・・・」
「わかった。もうその二つ名はいい。」
「あの、姉様この方が、」
「そうよ、この方が噂の」
「「「「「「「ルールブロークン」」」」」全員で声をそろえる。ええ、声をそろえて言いました。
「お主らーーーー」モーラは、そう言って、怒りの行き場がなかったのか、私をぽかぽかたたきます。でも、たたいても、ただ、ただ、可愛いだけですよ。
あと、もうひとりは、人間でした。さきほどからずっとカンウさんのうしろにしがみつくようにくっついてこちらの方をじーっと見ている。モーラの背丈よりも小さい。
「この子はね、水神様への供物として預けられた子どもなの。」カンウさんが、前に押し出そうとするが、嫌がってカンウさんの後ろから出たがりません。
「ええ、そんなしきたりあるんですか?」
「今回の壺の件があったじゃない。水神の怒りを抑えるために少女を生け贄にしたのよ。」
「お主そんな非道な水神だったのか。」
「こういうのはね、私がどんなに言い聞かせても、ねじ曲げて解釈するのよ。困ったものだわ。」
「で、その子どうするのじゃ。」
「なんとかならない?」
「うちの所は身寄りの無い子どもの保護施設ではないぞ」
「そうよねえ。」
「お主何とか言ってやれ。これから、もめ事が起きるとわしらに持ってくるようになるぞ。」
「いやいや、私からドラゴンさんに怒れるわけも無いですよ。ですから、いくつか提案させていただきます。ひとつは、このままカンウさんのお世話ができるようにカンウさん自身がいろいろ世話をする。」
「それは、ちょっとねえ。世話をどうするとか私には無理だわ。」
「いいですか、以前に一度だけお付きの人がいて、死なれて悲しかったからとやめてしまわれたそうですが、人との関係をあきらめるのでは無く、これからは良い関係を作っていって欲しいのです。たぶんその子は人間の世界や家族から切り捨てられています。親の元にも戻れず、心細いのです。実際、カンウさんの後ろに隠れて、服から手を離さないでは無いですか。頼る人がカンウさんしかいないのですよ。」
「・・・・」
「もうひとつは、私の元いた町に預けることです。そこならきっと面倒を見てくれると思います。ただ、その子は、今度はカンウさんに捨てられることになります。それは子どもの心にあまり良いとは、思えません。」
「あなたが預かることはできないの?」
「預かることはできますが、私は私の家族のために旅をしているところなのです。路銀が貯まったらここを出て旅をします。普通の小さい子に旅を無理強いしたくはありません。危険すぎます。」
「カンウよ、わしが言うことではないのじゃが、わしもお主も人間と関わらないではいられないのだろうな。」
「そうなのかしら?」
「ああ、本当ならわしらドラゴン種はここまで他の種族の近くにはおらん。じゃが、おぬしは、前のドラゴンからの習わしで水神として関わらざるを得なくなっているのだろう?そんなおぬしと、直接関わってしまったわしのどちらももう後戻りはできんということではないのか。ならば、その子の面倒を見るのはカンウ、お主がせねばならんのではないか。」
「今、私の立場がこちら側になるのは、里のことを考えるとあまりよくないのだけれど。」
「それならば、他の道もあろう。うちのは、お主に面倒を見て欲しいといっておるがな。」
「水神カンウ様。その竜族の娘さんはどうするつもりなんですか?」アンジーが話題を変えた。そう、少し考える時間が必要なのだ。こういう時のアンジーは上手だ。
「あなたに会わせたかったのよ。それだけよ。」カンウさんは、そう言って私を見ます。
「この人は絶対にあげません。あと、うちの家にもこれ以上人は増やしません。」アンジーが自らを盾にカンウ様の前に割り込む。
「大丈夫よ。ここに連れてきて紹介したのは、何かあったときにとても役に立つ人達だと、困ったときに頼るためにお互いに顔を覚えて欲しかったからなのよ。」
「トラブルバスター?」
「いや、そう言ってしまうと元も子もないけど。まあそうね。」
「その子がトラブルメーカーなんですか?」
「いいえ、ただ、人間の世界に興味を持ってしまったので、しばらく人間の中に混じって暮らさせようとしているのだけれど、何かあったら誰か頼れる人を作っておきたいだけよ、他に意図はないわ。」
「やはりトラブルバスターか」
「ではこれをお持ちください。」私は、ある物をその竜の子どもに手渡す。
「なんじゃ、あの犬笛じゃ無いか。でも形が少し違うな。新たに作ったのか。」
「おもしろそうだったので作ってみました。ちょっと吹いてみてください」その竜の子は、首をかしげながら笛をいろいろな角度から見ていた。
「大丈夫です危険はありません。吹いてみてください」その子は思いっきり吹いてみるが、相変わらず音がしない。しかし、モーラとカンウさんと吹いたその子自身が眉をひそめて、吹くのをやめた。
「お主、それは、」眉間にしわを作りながらモーラが言った
「うん、バッチリですね。ドラゴンさん達の可聴域に聞こえるように調整したのです。」
「く、くだらないことに無駄な技術力をつかいよって」
「でも、親御さんに連絡が行くのが一番良いですよね。」
「そうじゃが、本人まで眉をしかめているぞ。」
「本当に緊急の時以外、吹きたくないでしょう。」
「おぬしは本当にそういうことが好きじゃな。まったく余計な事を。」
「それはしようがないですよ。技術は使ってなんぼのものですから。」
「技術バカめ」
「お褒めいただき光栄です。」
「素敵です!!」その子は目を輝かせて私を見ます。こういう目に弱いのです。
「ああ、そうそう、あなたのところに連れてきたのはね、この子が魔法について研究熱心なのよ。だから、あなたが適任なのよ。なんで、なんで、どうして、どうしてってしつこく聞いてくるから。私は魔法は研究しているけど理論的に解明して研究しているわけではないから答えられないのよ」
「ていのいい押しつけだろうそれ」
「でも私たちではわからない理論もこの人ならちゃんと説明できるでしょ。」
「確かにな、わしらが本能で作っている風よけのシールドを解析して流用しているくらいだからな」
「そんなこともしているの。それは、私も聞いてみたいわ。」
「こやつに言わせれば、本能でやっている人達には当たり前のことじゃから理解は無理と言っておるぞ」
「そういうところよねえ」
「尊敬します。師匠と呼んでも良いですか?」目をキラキラさせて私を見上げてくる。まぶしすぎて抱きしめそうになりました。いや、ユーリそういう目で見ないでください。
「いえ、私はカンウ様のお弟子さんになりたいくらいなんですよ。弟子なんてとれるわけがないじゃないですか。」
「そうなんですか。」その子はしょんぼりしてしまいました。なんか罪悪感がありますね。
「わかりました、そこまで聞いて一つ提案があります。」
「なんじゃ、何をする気じゃ。」
「近くに家を建てましょう。そこにカンウさん達3人で住んでください。」
「ああああああ。やっぱり」アンジーが崩れ落ちる。
「どうしたアンジー」
「わかりませんか?またしばらくここで暮らすことになりますよ。少なくとも季節が一巡りするくらいまでは。」
「ああ、そうなるか。」
「だって、この子に家事炊事洗濯一通りのことを仕込むのですよ。季節が一巡りしないと起きないこともあるんです。」
「そうなるか。」
「あと、ここに家を建てても私たちは最終的にあの町に戻るのですよ。・・・別れることになります。それは、寂しくなる・・・じゃないこの子達が寂しがるじゃ無いですか。」
「アンジーは優しいですね」メアさんがフォローを入れました。
「ばっ、優しくないです。」顔を赤くして言っても説得力がありませんねえ。
「おぬしが寂しがり屋じゃな。」
「わかりました。その時は、私の家のそばに引っ越してもらいましょう。」
「カンウさんの縄張りから・・・ああ、モーラの縄張りにですか。でも、自分の領地を放り出してそっちに住むなんてありなのですか?」ユーリが的確に突っ込む。
「まあ、それはその時に考えましょうか。」
「ならば、短い期間ですが、人の暮らしもしてみましょうかしら。どう?それでいい?」2人の子どもは、ぱああっと明るい笑顔を見せました。いいですねえ子どもの笑顔は。
「もう収拾がつかないかも。」アンジーががっくりと肩を落とす。言った後、深あああいため息をついた。
そして、その次に着いたのが魔法使いさんと連れてきた魔女さんです。少し細い感じの若い方ですねえ。
「こんにちは、よろしくお願いします。」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします。」
「あなたが噂の観察者ですか。そういう風には見えませんが」えらく挑戦的な話しぶりです。ちょっとびっくりしました。
「こら、いきなりなんですか。今日の食事会のホストに対して。」あわててエリスさんがその子をたしなめる。
「でも、この風采の上がらない人が、おねえの・・失礼、姉様が話してくれた人とはとうてい思えません。イメージが違いすぎます。」
「あなたのその素直な言葉でどれだけの人があなたとケンカしていると思うの。少しは自重しなさいと何度も言っているでしょう。」
確かに、その子は、私を睨み付けながら言いました。面白い人ですねえ。でもその目に悪意は感じられませんですねえ。
「はい、でも、今回はどうしても言わずにはいられませんでした。」
「ごめんなさいね、相変わらず人付き合いが下手で」
「いえいえ、お気になさらずに。それにしても観察者というのが私のあだ名ですか。」
「はい、私たちの中では、そう呼ばれています。観察するだけで魔法を取得してしまうすごい人だと。」おや、ちょっと表情が変わりましたね。
「はあ、それは、皆さんに過大評価されていますね。というか、噂がどんどん膨らんでいるだけで、そんなにたいしたことはできていないのですよ。それをわかってもらえないのですよ。そうですね。実際に模倣する能力がたいしたことがないことを証明しましょう。実際見てもらった方が納得できていいですからね。そうですね、何かオリジナルの魔法を見せてください。細かいやつを得意とされていますか?」
「私の魔法を真似するといいますか?」ああ、その面白いやって見せてよみたいな感じの顔がなかなか良いですねえ。
「できるかどうかは、わかりません。見せてもらわないことには。できるだけ真似できそうにない魔法をお願いします。」
「わかりました。今回こちらに来た理由の一つにあなたの能力が言われているとおりなのか確かめたかったというのもありますので。」容姿でそういうのは図れないんですけどねえ、もっとも第一印象は大概あたるとも言いますしねえ。
「ちょっと、ストレートすぎ」
そこで、メアさんが割って入って言いました。
「とりあえず、それは食事後の余興としてとっておいてください。料理が冷めますので。」メアさんいい仕切りです。
そして、夕食が始まりました。
「そういえば、カンウのやつ、わしらが、あの国から帰る前に薬草の栽培から収穫までやってくれたようだぞ。」
「そうなんですか?確かに乾燥室に薬草が置いてありましたけど、あれは、カンウさんがやってくれていたのですねえ。」
「ええ、やりましたよ。あなた達が出かけている間にいろいろとやってみました。」
「そうだったんですか、それであんなに良い物ができているんですねえ。」
「あら、そうなの?」
「ええ、水が良くて土の中の養分を効率的に吸い上げて、しかもその水の魔力量が芳醇だったのが良かったんでしょうか。また効能を確認していませんが、見ただけで魔力があふれていました。」
「その辺はわからないわ。でも、こういうのも悪く無いわね。」
「こういうのとは、どういうものじゃ具体的に言ってくれ。」
「土から芽が出て、葉が開き、花が咲き、実をつけ、その実を土に落とし、次の芽が出てくる。株はそのままで増えていくけど、いつかは枯れていく。これは、生き物の一生を凝縮しているわね。それをまあ、私が操っているのよ。良い草を選び健やかに伸ばし、さらに増やしていく。少なくとも人間よりはよほど素直だわ」
「だが、気持ちは通じないぞ。」
「そんなことはないわよ。水をやらなければしおれ、水をあげすぎれば腐る。魔力も与えることもそう、やり過ぎると枯れてしまう。」
「いろいろやってみたのか。」
「まあ、暇だったからね。」
「さすが、研究熱心じゃなあ」
「自分を構成する水に対しては関心どころか何でも知っているつもりだし、炎や風についても影響があるからある程度知っているけど、木や草については、これまで関心が無かったのよ」
「草木の奴が聞いたら泣くぞ。それ」
「そうだわねえ。今度会ったら謝っておくわ。」
「余計な事をするなよ。よけい傷つく。」
「そういうものよねえ。」
食事会はわいわいと進む
私以外女性ばかりですので、私はメアさんとともに給仕に従事していました。ホストなんですから当然です。
エルフィが人見知りを発動させて、拾い子に対して敬語を使っていたり、それを不思議そうに見る拾い子とか、カンウさんに緊張して、片言で会話する若い魔法追加いさんとか大変でしたが、少しの時間でなんとか打ち解けて宴は続いています。
食後のデザートに子ども達が目をキラキラさせた時にエルフィに我慢させていたお酒を解禁しました。誰も見ていないのでモーラもアンジーも軽く飲んでいます。他の子達に見つからないようにお願いします。特に人の子には知られないようにしてください。
夕暮れが過ぎ、手元が見えなくなってきました。外では難しくなっていましたので、中に移動して、テーブルを分割して居間でお菓子とつまみ程度のものを食べています。頃合いかなと私は、若い魔法使いさんに向かって
「では、先ほど約束した余興を始めましょう。」そう言うと、若い魔法使いさんは、がたりと椅子を跳ね飛ばして立ち上がりました。みんなびっくりして見ています。その若い魔法使いさんは、周囲の反応に少し恥ずかしそうです。あら可愛い。
「では、外でお見せしますので、こちらにおいでください。」若い魔法使いさんが、外へと誘導する。みんなで外に出て玄関のあかりが届かないところまで移動してひとつに固まる。
「どんな魔法を見せていただけますか?」
「できたての魔法ですので失敗するかもしれませんが、あなたが見たことがない、今まで見て憶えていないと思われる魔法を使います。すこし派手なので外で空に打ち上げます。」そう言って裏庭の方に移動して離れたところに立つ。みんなぞろぞろついて行き、建物を背に並んで立っている。私は、少し近づいて傍らに立った。
「観察する用意はできましたか?」自信満々にその若い魔法使いさんは、私を見ます。
「はい、お願いします。」
「では、いきます。」目を閉じて詠唱を始める。杖の先の魔方陣がキラキラと光り帯になって流れていき、光の球ができます。そしてそれを空に飛ばしました。
「えい!」爆発して火の花が咲く。ああ、花火ですね。
「きれい」誰かがつぶやく。拍手があがる。
「どうですか?」
「もう一回だけ良いですか?」
「いいですけど何回も見ないとダメですか?」
「いえ、もう一回だけ見せてください。」
「では、」そう言って詠唱を始めて空に打ち上げる。私も見とれて拍手をしました。
「今のは、花火自体を見ていましたね。」ちょっと不満そうです。
「たぶん真似できないのであきらめて見納めにしようと思いまして。」
「やはりその程度ですか。」がっかりしたようにその子は言った。
「何をおっしゃりたいのかわかりませんが、私なんてその程度ですよ。でも、そう言われてしまうとちょっと悔しいので、見てわかった部分だけやって見せましょう。」
「そうですか、どうぞ。」あまり期待していない感じですねえ。
「その前にメアさんちょっと。」メアさんに耳打ちをして、メアさんはすぐに家の中に入り何かを持ってくる。
「みなさん近くに寄ってください。」みんなが周囲に寄ってくる。
「これを」そう言ってメアさんからこよりをみなさんに渡してもらう。もちろん若い魔法使いさんにも。不思議そうにみんなそれを持っています。
「では、」私の指先に炎と小さく赤い球体が現れる。それぞれのこよりにその球体を吊り下げる。私にとってはなつかしい線香花火だ、こよりに引火するとすぐに小さな火花を放つ。
「ほほう、これは、おもしろいな。」
「あんな大きな花火はさすがに無理でしたので、小さい花火にしてみました。いかがですか?」
「大きい花火もいいですけど、小さいのも可愛いですね。」カンウさんがそう言ってくれた。傍らの拾い子もうれしそうに見ている。
「そうですね。」
「残念ですが余興がしよぼい物になってしまいましたので、もう一度大きい花火を打ち上げてもらえませんか?」
「ええ?はい、わかりました。」そう言って若い魔法使いさんは、先ほどの勢いはどこへやら、元気なく花火を上げてくれました。子ども達は大はしゃぎで若い魔法使いさんのところへ行って話を聞いている。
「のう、なんであの若い魔法使いは元気がないんじゃ、勝ったのであろう?」
「そうなんですよ。どうしたのでしょうか。」
そのすぐ後、魔法使いさんは、若い魔法使いさんにせかされて早々にお帰りになりました。
そして、カンウさんがまだ残っています。子ども達がお泊まりしたいとごねていましたので、お泊まりが決定して、メアさんが連れて部屋に行ったところで、さきほどの様子を聞いてみました。
「相変わらず天然ね。あれは、花火の大小じゃ計れないのよ。」
「でも、あちらの方が綺麗でしたし、火花も大きさもちゃんと揃っていましたよ?」
「そういう事ではありませんよ。まずね、あの魔法は、彼女が最初から構築していたもので、同じ構成でなんどでも正確な物を作り出せるの。」
「それは、普通ですよね」
「あなたは、それを初見で真似したの。しかも小型化してね。」
「だって、あの花火のひとつの小さいパターンを真似できただけですよ。」
「あの花火でしたっけ。一度にたくさんの同じ爆発が起こるように構築してしまえば、大きくたくさん打ち上げるのは、何でも無いのよ。でもね、火力を絞ってあれだけ細かい火花に仕上げるのは難しいのよ。技術力がいるの。それをあなたは、初見で小型化したの。しかも事前に構築もせず、即興でね」
「なるほど、落ち込んでいるのはそういうことですか。」
「彼女にとっては、見せても絶対に真似できないと思ってみせたのだと思うけど、初見で真似されてしかも自分より優れた技術に昇華されたのよ。へこんであたりまえね。」
「まずいですよ。魔法使いの里から睨まれてしまう。」
「本人がそんなことそのとおりに話せると思う?プライドズタズタにされたのよ。」
「それは申し訳ないことをしてしまいました。完全コピーでなければ、私の技術力はたいしたことはないと思ってくれないかなあと考えていたのですが、完全に当てが外れました。」
「そういうところでよけいな気を回すからですね。」
「ああ、いつものパターンじゃな。」
「とほほ、どうしましょう。」
「どうにもならんじゃろ、あとは、天に任せるしかない。」
「ですよねー」
「なら、さっきの大きい花火を真似できるのじゃな」
「ええ、できますけど、少し構築に時間はかかりますが。」
「おお、お前ら喜べ、さっきの花火がみられるぞ。」部屋から戻っていた子ども達は、
「わーい」ああ、子ども達のまぶしいキラキラした目。やらずにはいられません。
「それでは、少しだけアレンジして色など変えてみましょう。」
「そこまでできるの?」
「その辺は転生者だからですね。色を変える方法を知っているのです。」
「なるほど、花火の基礎を知っていると。」
「はい、たまたま知っているからなんですが。それでは、いきます。」
ドーンという音は魔法なので出ませんが。爆発音は発生させました。
「おお、音があると迫力じゃのう。」
「ですね。」
「それにしても、今回の一番の収穫は、発火の方法を憶えられたことです。幸運でした。」
「そこなの?」カンウさんがこめかみに手をあてた。
続く
さて、商人さんと一緒に城内に入り、控え室に待たされ、商人さんと入れ違いに国王の前に連れてこられました。私とアンジーだけで行こうと思ったのですが、全員に反対されました。それと、別なグループが、人質にされてしまうのを恐れたからです。
「おもてをあげよ」司祭の言葉に顔を上げる。
「ほう、こうしてみると確かに似ているな」
「何のことでしょうか。」
「ここにあった壺を消した者達じゃ」
「何をおっしゃっているのかわかりません」
「しらを切るか、お主らが水神の言葉などとたばかってわしの壺を盗んだのであろう。」
「何をおっしゃっているのかわかりません。私どもは、街の領主の依頼で宝物をここに運んだだけです。この街に来たこともありませんし、その上、盗むことなどできません。そもそも盗んだとして、その壺を私たちは持っていません。」
「確かに、水神の洞窟に壺は戻っていたがな。」
「そうなんですか。であれば、なおのこと水神様の御技ではないのでしょうか。」
「にしてもお主らはその者達に似すぎている。」
「私どもの勝手な推察ですが、水神様はきっと、私たちの姿をお使いになっただけだと思います。」
「なぜお主らの姿を使う。どうしてじゃ。」
「わかりません。ここから遠い彼の地にある者の姿なら使っても問題が出ないと思ったのではないでしょうか。」
「むしろお主達が水神をかたったのではないか。そして、水神のたたりをかたり盗んだのではないのか。」
「恐れ多くも国王様、私たちがこの国まではるばるやってきて、それをして何の利益がありましょうか。疑われる気持ちはもっともですが、壺を得るわけでもなく、さらにわざわざここまで、宝石の輸送の護衛をしてくることに何のメリットがありますでしょうか。」
「まあ、それは理屈が通っておる。しかしな、そやつらは、理屈に合わないことを成し遂げておるのでなあ。そんなことができるのなら、遠い土地からここまで瞬時に来て壺を奪い、かの洞窟に置き戻ることさえ可能であろう。」
「国王様できないことの証明は私にはできません。ですができません。」
「なるほどな。しかし、その話し方と言い似ているなあ。こやつらが盗んだということで、終わらせようかのう」
私はひとつため息をついてからこう言った。
「もし、その壺の件が水神様のお力ならば、ここで何か起きそうですね。水神様はその時に何か言っていたのではありませんか。」
「ああ、その者達に何かしたら災いが起こると言っておったな。」
「ならば、今起きるかもしれませんよ。」
「なんじゃと」
私は、魔法を使い、私達のコピーを隣に作った。もちろんフードをかぶって顔の見えないようにしたコピーです。それを作るためにわざわざローブとかもう一度買ったので手痛い出費でした。作り方は、前に壺を作った時のように霧を作り姿を投影するやり方です。今回は、その姿を私の着ていた服に
さらに私は、水神様の声をまねて
「国王よ、まだわからんのか、わしは警告した。しかし、従わなかった。これは、国王の罪、それを止められない、王妃、臣下の罪。ここに今一度の警告を行う。」
そうして私は、城を揺らし、窓にヒビを入れて見せ、コピーを消した。
国王は、椅子からずり落ち、揺れが収まる前に土下座を始めました。
「すいませんでした、すいませんでした。」何やらブツブツ言っている。今更ですねえ。どうせ、すぐに忘れるんでしょうけど。
「やはり水神様はいらっしゃるのですねえ。では、私達はこれでおいとまさせていただきます。」
「この後は、わしらはどうなるんんじゃ。」
「水神様は、何もされないと思います。私たちを守ってはくれましたが、それ以上のことは何もしないと思います。ただ、証を示してくれただけで、国王様にもこの国にも何もされないと思います。今後何も国王様がされなければ。よろしいでしょうか?」
そうして、なんとか説得をして解放された。
私は、控えの間で待っていた商人さん達と合流して、城を出ました。
どうやらこれで、この一件が完結したようです。それにしてもカンウさんは、どこにいますか。ちょっとは顔を出してくださいよ。そう思いながら城からの道行きモーラさんに連絡が入りました。
「そうもいかないのよ、ドラゴンの里で騒ぎが起こってそちらに行っていたのよ。行ってみたらたいしたことでは無くて無駄足を踏まされたわ。それって私をこの件から遠ざけるためだったみたいよ。」
「だ、そうじゃ。」
「そういうことですか。しかし、なぜ?」
「今回のもどうやら魔族がらみみたいなのだけれど、証拠がつかめないのよ。」
なるほど、何もわからなかったという事がわかりました。
○帰り道
そして帰り道です。商人さんとその一行と一緒ですから魔獣に襲われないとなりません。
傭兵団の団長さんは、あちらの馬車に乗りました。
「帰りの道も多少は襲われないとね。」
「わしは、完全隔離じゃな。」
「アンジーは、襲われても静かにしていてくださいね。もう、力が無くなったことにしますから。」
「多少は、知らせないと、かえって怪しまれるぞ。わざと隠していると。」
「エルフィとメアさんに頼りましょう。」
「そうじゃな。その方がよいな。」翌日には、アンジーが戻ってくる。
「お役御免になったわよ。でも、ちょっと複雑な気分。お前役に立ってないという冷たい目で傭兵団の人から見られだしたから。そういうところはシビアよね。」
「きっとまたそういう状況になるかもしれませんから。」
「それは、それでまずい事態じゃが」
そうして行きの倍の時間を使ってこの街に帰ってくる。それでもかなり時間が短縮されているようです。
街の城壁が見えてきたときには、御者台のエルフィから見えましたよ~という声がかかり、みんなで御者台に集まりました。
「もどってきましたねえ」
「もうなにもないですよね。」
「さすがにもうないじゃろう。」
「そう願っています~」
帰還して、数日してから領主様主催で商人さんのところで、盛大な帰還祝いがありました。皆さんをつれて参加させていただいた折に、領主様に私の家族で帰還祝いをしていないと話したら、いろいろと食材を提供いただくことになりました。
メアさんいわく。
「大量の食材が届きました。しかし、保存できないものばかりですし、貯蔵庫も手狭ですので、早急に消費しなければなりませんが、この人数では、到底無理です。どなたか招待をして、すぐに来ていただいてください。」
急なことなので、大丈夫かと思いましたが、カンウさんから来るとのお話しで、そういえば紹介したい人がいると言っておられましたので、その方もお連れくださるようお話ししましたら、その方もお連れになるという事でした。
あと魔法使いさんもお見えになれるそうです。しかも、友達も来るといいます。なんと我々が帰ってくるときに後をついてきていたらしいのです。ええ、ストーカーですか?ああ、魔物よけとして利用されていましたか。
そして、この人数では、家の中ではさすがに無理でしたので、家の横に簡単なテーブルと椅子を用意して始めました。
準備ができた頃、カンウさんが到着です。ええ、少し離れたところで人型になったそうですが、お2人連れてこられました。
「こんにちは、お連れ様はお二人ですね。」
「ええ、まず、一人目は、竜族の娘なのよ。」ユーリと同じくらいの背丈の子です。
「よろしくお願いします。」利発そうな子が元気に挨拶をする。
「失礼かとは思いますが、伺います。」メアさんが真顔でカンウさんに問いかける。
「何かしら。」
「カンウ様の娘さんですか。」
「!!!」
「あら、そう見える?」
「いえ、魔力の感じが似ていたので。」
「メアさんするどいわね、でも残念。うちの血縁ではあるけど私の娘では無いわよ。」
「なんでまた、連れてきたのじゃ。もちろん大歓迎なのじゃが」
「それはねえ、社会性をつけさせるためよ。誰かのようにならないようにね」
カンウさんがモーラをじっと見て言った。
「わしが言うのもなんじゃが、この家庭は、かなりいびつじゃぞ。そんなもの見せられたら、かえってゆがんだ社会性を身につけそうじゃが。」
「失礼ですねモーラ。私たちに社会性が無いとでも」アンジーが反論します。
「社会性はありすぎるくらいあるが、一般的な社会性とは、かけ離れていると思わんのか。おぬしらおかしいじゃろう。」
「だからよ、社会性と一般常識とは似て非なるものだと知ることがいいのじゃないかしら。」カンウさんがそう言いました。
「またそんなへりくつを」
「へりくつでルールを・・・」
「わかった。もうその二つ名はいい。」
「あの、姉様この方が、」
「そうよ、この方が噂の」
「「「「「「「ルールブロークン」」」」」全員で声をそろえる。ええ、声をそろえて言いました。
「お主らーーーー」モーラは、そう言って、怒りの行き場がなかったのか、私をぽかぽかたたきます。でも、たたいても、ただ、ただ、可愛いだけですよ。
あと、もうひとりは、人間でした。さきほどからずっとカンウさんのうしろにしがみつくようにくっついてこちらの方をじーっと見ている。モーラの背丈よりも小さい。
「この子はね、水神様への供物として預けられた子どもなの。」カンウさんが、前に押し出そうとするが、嫌がってカンウさんの後ろから出たがりません。
「ええ、そんなしきたりあるんですか?」
「今回の壺の件があったじゃない。水神の怒りを抑えるために少女を生け贄にしたのよ。」
「お主そんな非道な水神だったのか。」
「こういうのはね、私がどんなに言い聞かせても、ねじ曲げて解釈するのよ。困ったものだわ。」
「で、その子どうするのじゃ。」
「なんとかならない?」
「うちの所は身寄りの無い子どもの保護施設ではないぞ」
「そうよねえ。」
「お主何とか言ってやれ。これから、もめ事が起きるとわしらに持ってくるようになるぞ。」
「いやいや、私からドラゴンさんに怒れるわけも無いですよ。ですから、いくつか提案させていただきます。ひとつは、このままカンウさんのお世話ができるようにカンウさん自身がいろいろ世話をする。」
「それは、ちょっとねえ。世話をどうするとか私には無理だわ。」
「いいですか、以前に一度だけお付きの人がいて、死なれて悲しかったからとやめてしまわれたそうですが、人との関係をあきらめるのでは無く、これからは良い関係を作っていって欲しいのです。たぶんその子は人間の世界や家族から切り捨てられています。親の元にも戻れず、心細いのです。実際、カンウさんの後ろに隠れて、服から手を離さないでは無いですか。頼る人がカンウさんしかいないのですよ。」
「・・・・」
「もうひとつは、私の元いた町に預けることです。そこならきっと面倒を見てくれると思います。ただ、その子は、今度はカンウさんに捨てられることになります。それは子どもの心にあまり良いとは、思えません。」
「あなたが預かることはできないの?」
「預かることはできますが、私は私の家族のために旅をしているところなのです。路銀が貯まったらここを出て旅をします。普通の小さい子に旅を無理強いしたくはありません。危険すぎます。」
「カンウよ、わしが言うことではないのじゃが、わしもお主も人間と関わらないではいられないのだろうな。」
「そうなのかしら?」
「ああ、本当ならわしらドラゴン種はここまで他の種族の近くにはおらん。じゃが、おぬしは、前のドラゴンからの習わしで水神として関わらざるを得なくなっているのだろう?そんなおぬしと、直接関わってしまったわしのどちらももう後戻りはできんということではないのか。ならば、その子の面倒を見るのはカンウ、お主がせねばならんのではないか。」
「今、私の立場がこちら側になるのは、里のことを考えるとあまりよくないのだけれど。」
「それならば、他の道もあろう。うちのは、お主に面倒を見て欲しいといっておるがな。」
「水神カンウ様。その竜族の娘さんはどうするつもりなんですか?」アンジーが話題を変えた。そう、少し考える時間が必要なのだ。こういう時のアンジーは上手だ。
「あなたに会わせたかったのよ。それだけよ。」カンウさんは、そう言って私を見ます。
「この人は絶対にあげません。あと、うちの家にもこれ以上人は増やしません。」アンジーが自らを盾にカンウ様の前に割り込む。
「大丈夫よ。ここに連れてきて紹介したのは、何かあったときにとても役に立つ人達だと、困ったときに頼るためにお互いに顔を覚えて欲しかったからなのよ。」
「トラブルバスター?」
「いや、そう言ってしまうと元も子もないけど。まあそうね。」
「その子がトラブルメーカーなんですか?」
「いいえ、ただ、人間の世界に興味を持ってしまったので、しばらく人間の中に混じって暮らさせようとしているのだけれど、何かあったら誰か頼れる人を作っておきたいだけよ、他に意図はないわ。」
「やはりトラブルバスターか」
「ではこれをお持ちください。」私は、ある物をその竜の子どもに手渡す。
「なんじゃ、あの犬笛じゃ無いか。でも形が少し違うな。新たに作ったのか。」
「おもしろそうだったので作ってみました。ちょっと吹いてみてください」その竜の子は、首をかしげながら笛をいろいろな角度から見ていた。
「大丈夫です危険はありません。吹いてみてください」その子は思いっきり吹いてみるが、相変わらず音がしない。しかし、モーラとカンウさんと吹いたその子自身が眉をひそめて、吹くのをやめた。
「お主、それは、」眉間にしわを作りながらモーラが言った
「うん、バッチリですね。ドラゴンさん達の可聴域に聞こえるように調整したのです。」
「く、くだらないことに無駄な技術力をつかいよって」
「でも、親御さんに連絡が行くのが一番良いですよね。」
「そうじゃが、本人まで眉をしかめているぞ。」
「本当に緊急の時以外、吹きたくないでしょう。」
「おぬしは本当にそういうことが好きじゃな。まったく余計な事を。」
「それはしようがないですよ。技術は使ってなんぼのものですから。」
「技術バカめ」
「お褒めいただき光栄です。」
「素敵です!!」その子は目を輝かせて私を見ます。こういう目に弱いのです。
「ああ、そうそう、あなたのところに連れてきたのはね、この子が魔法について研究熱心なのよ。だから、あなたが適任なのよ。なんで、なんで、どうして、どうしてってしつこく聞いてくるから。私は魔法は研究しているけど理論的に解明して研究しているわけではないから答えられないのよ」
「ていのいい押しつけだろうそれ」
「でも私たちではわからない理論もこの人ならちゃんと説明できるでしょ。」
「確かにな、わしらが本能で作っている風よけのシールドを解析して流用しているくらいだからな」
「そんなこともしているの。それは、私も聞いてみたいわ。」
「こやつに言わせれば、本能でやっている人達には当たり前のことじゃから理解は無理と言っておるぞ」
「そういうところよねえ」
「尊敬します。師匠と呼んでも良いですか?」目をキラキラさせて私を見上げてくる。まぶしすぎて抱きしめそうになりました。いや、ユーリそういう目で見ないでください。
「いえ、私はカンウ様のお弟子さんになりたいくらいなんですよ。弟子なんてとれるわけがないじゃないですか。」
「そうなんですか。」その子はしょんぼりしてしまいました。なんか罪悪感がありますね。
「わかりました、そこまで聞いて一つ提案があります。」
「なんじゃ、何をする気じゃ。」
「近くに家を建てましょう。そこにカンウさん達3人で住んでください。」
「ああああああ。やっぱり」アンジーが崩れ落ちる。
「どうしたアンジー」
「わかりませんか?またしばらくここで暮らすことになりますよ。少なくとも季節が一巡りするくらいまでは。」
「ああ、そうなるか。」
「だって、この子に家事炊事洗濯一通りのことを仕込むのですよ。季節が一巡りしないと起きないこともあるんです。」
「そうなるか。」
「あと、ここに家を建てても私たちは最終的にあの町に戻るのですよ。・・・別れることになります。それは、寂しくなる・・・じゃないこの子達が寂しがるじゃ無いですか。」
「アンジーは優しいですね」メアさんがフォローを入れました。
「ばっ、優しくないです。」顔を赤くして言っても説得力がありませんねえ。
「おぬしが寂しがり屋じゃな。」
「わかりました。その時は、私の家のそばに引っ越してもらいましょう。」
「カンウさんの縄張りから・・・ああ、モーラの縄張りにですか。でも、自分の領地を放り出してそっちに住むなんてありなのですか?」ユーリが的確に突っ込む。
「まあ、それはその時に考えましょうか。」
「ならば、短い期間ですが、人の暮らしもしてみましょうかしら。どう?それでいい?」2人の子どもは、ぱああっと明るい笑顔を見せました。いいですねえ子どもの笑顔は。
「もう収拾がつかないかも。」アンジーががっくりと肩を落とす。言った後、深あああいため息をついた。
そして、その次に着いたのが魔法使いさんと連れてきた魔女さんです。少し細い感じの若い方ですねえ。
「こんにちは、よろしくお願いします。」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします。」
「あなたが噂の観察者ですか。そういう風には見えませんが」えらく挑戦的な話しぶりです。ちょっとびっくりしました。
「こら、いきなりなんですか。今日の食事会のホストに対して。」あわててエリスさんがその子をたしなめる。
「でも、この風采の上がらない人が、おねえの・・失礼、姉様が話してくれた人とはとうてい思えません。イメージが違いすぎます。」
「あなたのその素直な言葉でどれだけの人があなたとケンカしていると思うの。少しは自重しなさいと何度も言っているでしょう。」
確かに、その子は、私を睨み付けながら言いました。面白い人ですねえ。でもその目に悪意は感じられませんですねえ。
「はい、でも、今回はどうしても言わずにはいられませんでした。」
「ごめんなさいね、相変わらず人付き合いが下手で」
「いえいえ、お気になさらずに。それにしても観察者というのが私のあだ名ですか。」
「はい、私たちの中では、そう呼ばれています。観察するだけで魔法を取得してしまうすごい人だと。」おや、ちょっと表情が変わりましたね。
「はあ、それは、皆さんに過大評価されていますね。というか、噂がどんどん膨らんでいるだけで、そんなにたいしたことはできていないのですよ。それをわかってもらえないのですよ。そうですね。実際に模倣する能力がたいしたことがないことを証明しましょう。実際見てもらった方が納得できていいですからね。そうですね、何かオリジナルの魔法を見せてください。細かいやつを得意とされていますか?」
「私の魔法を真似するといいますか?」ああ、その面白いやって見せてよみたいな感じの顔がなかなか良いですねえ。
「できるかどうかは、わかりません。見せてもらわないことには。できるだけ真似できそうにない魔法をお願いします。」
「わかりました。今回こちらに来た理由の一つにあなたの能力が言われているとおりなのか確かめたかったというのもありますので。」容姿でそういうのは図れないんですけどねえ、もっとも第一印象は大概あたるとも言いますしねえ。
「ちょっと、ストレートすぎ」
そこで、メアさんが割って入って言いました。
「とりあえず、それは食事後の余興としてとっておいてください。料理が冷めますので。」メアさんいい仕切りです。
そして、夕食が始まりました。
「そういえば、カンウのやつ、わしらが、あの国から帰る前に薬草の栽培から収穫までやってくれたようだぞ。」
「そうなんですか?確かに乾燥室に薬草が置いてありましたけど、あれは、カンウさんがやってくれていたのですねえ。」
「ええ、やりましたよ。あなた達が出かけている間にいろいろとやってみました。」
「そうだったんですか、それであんなに良い物ができているんですねえ。」
「あら、そうなの?」
「ええ、水が良くて土の中の養分を効率的に吸い上げて、しかもその水の魔力量が芳醇だったのが良かったんでしょうか。また効能を確認していませんが、見ただけで魔力があふれていました。」
「その辺はわからないわ。でも、こういうのも悪く無いわね。」
「こういうのとは、どういうものじゃ具体的に言ってくれ。」
「土から芽が出て、葉が開き、花が咲き、実をつけ、その実を土に落とし、次の芽が出てくる。株はそのままで増えていくけど、いつかは枯れていく。これは、生き物の一生を凝縮しているわね。それをまあ、私が操っているのよ。良い草を選び健やかに伸ばし、さらに増やしていく。少なくとも人間よりはよほど素直だわ」
「だが、気持ちは通じないぞ。」
「そんなことはないわよ。水をやらなければしおれ、水をあげすぎれば腐る。魔力も与えることもそう、やり過ぎると枯れてしまう。」
「いろいろやってみたのか。」
「まあ、暇だったからね。」
「さすが、研究熱心じゃなあ」
「自分を構成する水に対しては関心どころか何でも知っているつもりだし、炎や風についても影響があるからある程度知っているけど、木や草については、これまで関心が無かったのよ」
「草木の奴が聞いたら泣くぞ。それ」
「そうだわねえ。今度会ったら謝っておくわ。」
「余計な事をするなよ。よけい傷つく。」
「そういうものよねえ。」
食事会はわいわいと進む
私以外女性ばかりですので、私はメアさんとともに給仕に従事していました。ホストなんですから当然です。
エルフィが人見知りを発動させて、拾い子に対して敬語を使っていたり、それを不思議そうに見る拾い子とか、カンウさんに緊張して、片言で会話する若い魔法追加いさんとか大変でしたが、少しの時間でなんとか打ち解けて宴は続いています。
食後のデザートに子ども達が目をキラキラさせた時にエルフィに我慢させていたお酒を解禁しました。誰も見ていないのでモーラもアンジーも軽く飲んでいます。他の子達に見つからないようにお願いします。特に人の子には知られないようにしてください。
夕暮れが過ぎ、手元が見えなくなってきました。外では難しくなっていましたので、中に移動して、テーブルを分割して居間でお菓子とつまみ程度のものを食べています。頃合いかなと私は、若い魔法使いさんに向かって
「では、先ほど約束した余興を始めましょう。」そう言うと、若い魔法使いさんは、がたりと椅子を跳ね飛ばして立ち上がりました。みんなびっくりして見ています。その若い魔法使いさんは、周囲の反応に少し恥ずかしそうです。あら可愛い。
「では、外でお見せしますので、こちらにおいでください。」若い魔法使いさんが、外へと誘導する。みんなで外に出て玄関のあかりが届かないところまで移動してひとつに固まる。
「どんな魔法を見せていただけますか?」
「できたての魔法ですので失敗するかもしれませんが、あなたが見たことがない、今まで見て憶えていないと思われる魔法を使います。すこし派手なので外で空に打ち上げます。」そう言って裏庭の方に移動して離れたところに立つ。みんなぞろぞろついて行き、建物を背に並んで立っている。私は、少し近づいて傍らに立った。
「観察する用意はできましたか?」自信満々にその若い魔法使いさんは、私を見ます。
「はい、お願いします。」
「では、いきます。」目を閉じて詠唱を始める。杖の先の魔方陣がキラキラと光り帯になって流れていき、光の球ができます。そしてそれを空に飛ばしました。
「えい!」爆発して火の花が咲く。ああ、花火ですね。
「きれい」誰かがつぶやく。拍手があがる。
「どうですか?」
「もう一回だけ良いですか?」
「いいですけど何回も見ないとダメですか?」
「いえ、もう一回だけ見せてください。」
「では、」そう言って詠唱を始めて空に打ち上げる。私も見とれて拍手をしました。
「今のは、花火自体を見ていましたね。」ちょっと不満そうです。
「たぶん真似できないのであきらめて見納めにしようと思いまして。」
「やはりその程度ですか。」がっかりしたようにその子は言った。
「何をおっしゃりたいのかわかりませんが、私なんてその程度ですよ。でも、そう言われてしまうとちょっと悔しいので、見てわかった部分だけやって見せましょう。」
「そうですか、どうぞ。」あまり期待していない感じですねえ。
「その前にメアさんちょっと。」メアさんに耳打ちをして、メアさんはすぐに家の中に入り何かを持ってくる。
「みなさん近くに寄ってください。」みんなが周囲に寄ってくる。
「これを」そう言ってメアさんからこよりをみなさんに渡してもらう。もちろん若い魔法使いさんにも。不思議そうにみんなそれを持っています。
「では、」私の指先に炎と小さく赤い球体が現れる。それぞれのこよりにその球体を吊り下げる。私にとってはなつかしい線香花火だ、こよりに引火するとすぐに小さな火花を放つ。
「ほほう、これは、おもしろいな。」
「あんな大きな花火はさすがに無理でしたので、小さい花火にしてみました。いかがですか?」
「大きい花火もいいですけど、小さいのも可愛いですね。」カンウさんがそう言ってくれた。傍らの拾い子もうれしそうに見ている。
「そうですね。」
「残念ですが余興がしよぼい物になってしまいましたので、もう一度大きい花火を打ち上げてもらえませんか?」
「ええ?はい、わかりました。」そう言って若い魔法使いさんは、先ほどの勢いはどこへやら、元気なく花火を上げてくれました。子ども達は大はしゃぎで若い魔法使いさんのところへ行って話を聞いている。
「のう、なんであの若い魔法使いは元気がないんじゃ、勝ったのであろう?」
「そうなんですよ。どうしたのでしょうか。」
そのすぐ後、魔法使いさんは、若い魔法使いさんにせかされて早々にお帰りになりました。
そして、カンウさんがまだ残っています。子ども達がお泊まりしたいとごねていましたので、お泊まりが決定して、メアさんが連れて部屋に行ったところで、さきほどの様子を聞いてみました。
「相変わらず天然ね。あれは、花火の大小じゃ計れないのよ。」
「でも、あちらの方が綺麗でしたし、火花も大きさもちゃんと揃っていましたよ?」
「そういう事ではありませんよ。まずね、あの魔法は、彼女が最初から構築していたもので、同じ構成でなんどでも正確な物を作り出せるの。」
「それは、普通ですよね」
「あなたは、それを初見で真似したの。しかも小型化してね。」
「だって、あの花火のひとつの小さいパターンを真似できただけですよ。」
「あの花火でしたっけ。一度にたくさんの同じ爆発が起こるように構築してしまえば、大きくたくさん打ち上げるのは、何でも無いのよ。でもね、火力を絞ってあれだけ細かい火花に仕上げるのは難しいのよ。技術力がいるの。それをあなたは、初見で小型化したの。しかも事前に構築もせず、即興でね」
「なるほど、落ち込んでいるのはそういうことですか。」
「彼女にとっては、見せても絶対に真似できないと思ってみせたのだと思うけど、初見で真似されてしかも自分より優れた技術に昇華されたのよ。へこんであたりまえね。」
「まずいですよ。魔法使いの里から睨まれてしまう。」
「本人がそんなことそのとおりに話せると思う?プライドズタズタにされたのよ。」
「それは申し訳ないことをしてしまいました。完全コピーでなければ、私の技術力はたいしたことはないと思ってくれないかなあと考えていたのですが、完全に当てが外れました。」
「そういうところでよけいな気を回すからですね。」
「ああ、いつものパターンじゃな。」
「とほほ、どうしましょう。」
「どうにもならんじゃろ、あとは、天に任せるしかない。」
「ですよねー」
「なら、さっきの大きい花火を真似できるのじゃな」
「ええ、できますけど、少し構築に時間はかかりますが。」
「おお、お前ら喜べ、さっきの花火がみられるぞ。」部屋から戻っていた子ども達は、
「わーい」ああ、子ども達のまぶしいキラキラした目。やらずにはいられません。
「それでは、少しだけアレンジして色など変えてみましょう。」
「そこまでできるの?」
「その辺は転生者だからですね。色を変える方法を知っているのです。」
「なるほど、花火の基礎を知っていると。」
「はい、たまたま知っているからなんですが。それでは、いきます。」
ドーンという音は魔法なので出ませんが。爆発音は発生させました。
「おお、音があると迫力じゃのう。」
「ですね。」
「それにしても、今回の一番の収穫は、発火の方法を憶えられたことです。幸運でした。」
「そこなの?」カンウさんがこめかみに手をあてた。
続く
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