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第2話 街での生活

第2-5話 エルフと

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○幽霊さんは、エルフ
『ああーそうなんですか。はいはい、でもなんで透明?』
『それは、聞かんか』
 モーラの声からあきれた感じが聞き取れてしまう。そうですよねー。
「ごほん、種族についてはあえて聞きませんので、なぜ透明になったのか教えてください。」
 もうばれていますよーとほのかに匂わせています。
「はい、ありがとうございます。少し前に人族の方達とパーティーを組んでこの近くを通ったときに魔族に追われてパーティーがちりぢりになってしまいました。その時に追い打ちのように盗賊に襲われて、とっさに持っていた姿を消す薬を使い身を隠しました。」
 ふむふむ、そう言うことでしたか。さらに話しは続くようです。
「その場は難を逃れたのですが、どういうわけか透明化が溶けないのです。それと、その時にパーティーの魔法使いの方がみんなに掛けていた、相互に位置がわかる魔法も消えずに継続されてしまっていてそちらも解除できないのです。」
「ピンチは逃れたけど、違うピンチが続いていると。」
「はあ、ピンチというのはスラングですか?」
「はいはい、そうですね。」
『で、どうするのじゃ』
『とりあえず、魔法の成り立ちを見てみないとわかりませんとしか。』
「それで、お願いなのですが、こうして、周囲の草花でしのいでいますが、そろそろ限界なので、なんとか透明化の魔法を解除してもらえませんか。」
「この家にいた理由はなぜですか。」
「はい、効果が切れたときにどういう状況になるかわからないので、パーティーの人に見つけてもらえるまで動かない方がいいかなと。そう思っていたらこの家がありましたので、黙って使っていました。すいません。」
「私たちは迷惑を被っていませんので謝る必要はないですよ。さて、話はわかりました。できるかどうかはわかりませんが、見てみたいのでどこにいるか教えてください。」
「はい、」そう言って気配が近づき、私の顔を手で触れた。はいはい、その手を私が握り目をつぶりました。ええ、見えます。からんでもつれてねじ曲がった魔方陣が見えます。これは、雑な魔方陣ですね、私は素人ですが、私にもわかるような穴がたくさんあります。よくこんな魔法を使って仕事をしていますね。ああ、ここにほころびがあるので、定期的に位置をしらせる魔方陣が魔力を吸って、さらに位置を知らせもせず、透明化の魔法の維持に使われてしまっています。なるほど、こういうデメリットが出るんですね。ふんふん。おもしろいですね。
「あのう、わかるんですか?」手を握られたままなので少し不安なのか聞かれました。
「ああ、すいません。どうも他人が作る魔方陣というのを初めて見るので、めずらしくて見入ってしまいました。こんなにずさんでも魔法は発動するんですねえ。」
「大丈夫でしょうか。」
「ええ、かなり簡単な魔法ですから、透明化の魔方の穴と定期的に位置を知らせる魔法の穴を同時に埋めればおさまりますよ。」
「そうですか。よかった」
「はい、それではいきますよー」
 私は、人の魔方陣を直すことができてうれしくてついすぐに修復させてしまいました。ええ、すぐに。周りの人達は、止めようとしていたのですが。不可視化の魔法が徐々に消えていき、顔が現れる。おお、美人。耳も少し形が違う。
「あ、ちょ、ちょっとまって。きゃー。」
 そこには美人の女性がおりました。ええ、裸で。胸を隠し、しゃがみこんで私を睨みますが、いつもこういうシチュエーションになるので、あまり気にならなくなりましたね。しかもおぱーいもでかくて全裸なのに全然気になりませんおかしいですね、私貧乳派になってしまったのでしょうか。
「ご主人様やっぱりやってしまいましたね。不可視の魔法は、体にしかきかないので、解除したら裸体なのです。」
 メアが冷たく言い放つ。
「知っていましたね」アンジーがジト目で言う。
「知っていたんですか?」ユーリが軽蔑の目で残念そうに言う。
「この場合。知っていても知らなかったと言うじゃろうなあ」ニヤニヤ笑いながらモーラが言う。
「本当に知らなかったです。すいません。すいません。すいません。」何度も平謝りである。
「魔法を改変できるスキルがある人なのに知らなかったのですか?」そのエルフさんも追撃してきました。
「私は、なりたての魔法使いなのです。」
「その歳で、ですか?」
「はい、私もびっくりしています。ごめんなさい。」もう、本当に申し訳なくて謝り倒します。
「わかりましたから。謝るのをもうやめてください。」
「この者がなりたての魔法使いであることは、わしが保証しよう。」
 いや、尊大な態度の幼女に言われても説得力無いわ。
「あ、これを」着ていたローブを肩にかける。
「ありがとうございます。服も外でボロボロになってしまって」
「メアさん。すみませんが、」
「はい、衣類を調達してきます。」そう言ってかき消すようにいなくなる。
「あのう、あなたたちは一体・・」
 今のメアの瞬間移動みたいな動きを見て少し緊張したようです。顔が引きつっています。
「ただの薬売りの行商じゃ。かっかっか」
 どこぞのご老公みたいな物言いですね。私の頭から見ていましたか?
「薬売りにしては、おかしな・・・家族なんですか?」
「ええ、私とこの子達は、家族です。さきほど出て行ったのは、そうですね付き添いのメイドさんですか。」
 ユーリはうれしそうです。アンジーは少しむっとしています。モーラは顔色を変えていません。
「薬売りなのに付き添いのメイドを雇っているのですか?」
「う~ん、彼女は家族同様なので雇っているというのは、ちょっと違いますね。でも、奥さんではないですし。」
「はあ」
「して、おぬし、名前は。」
「失礼しました。私は・・・」
「ちょっとまってください。フルネームを言わないでくださいね。」
「え?どうしてですか?」
「まあ、愛称略称偽名などを名乗るのじゃ。決して真名など、もらすでないぞ」
「ですが、こうして危機を救われた身、私たちの種族では、真名を明らかにしてこれから恩返しをしろと教えられております。」
「してはならぬ、絶対にな」
「そうです。これ以上パーティーメンバーが増えたら収拾がつかなくなります。」
 アンジー変なことを言わないでください。
「パーティーメンバー?やはり冒険者なのですか?」
「いえ、違います。ですが、真名をこの場で言う事や、私に償うとか従うとか言わないで欲しいのです。」
「はあ、そうですか。そうします。それで、私の名前ですが。」
「もどりました。」
 メアが背中に袋を抱えている。いや一人分ではないでしょうそれ。
「は、早い。どういう人なんですか、その人。忍者ですか?」
「いえ、ただのメイドです。」スカートをつまみ、かるくお辞儀をする。
「とりあえず奥の部屋で着替えてください。」
「はい、ありがとうございます。ええと」
「後ろを向いていますから。大丈夫です。」
「おぬしは、外へ出ろ。」
「はいはい。」
 覗くと思っているんですかね、失礼ですね。覗こうと思えばいくらでもできるんですよ。魔法使いなんですから。まあ、しませんけど。
『そうしておけ、信用は大事じゃぞ』
 あら、聞こえていましたか。この魔法すぐ解除されてしまいますねえ。興奮したり混乱したりすると解除になるところは改善したいんですが、とっかかりがわからないのでできません。うっ、師匠が欲しい。
「ほれ、もういいぞ、入れ」
 モーラに促されて、中に入る。まるで叱られて外に出されていた悪ガキのようにしょんぼりと。
「さて、おぬしが外にいる間に我々の事情は話しておいたわ」
「そんなに簡単に話していいんですか?」
「事情を聞いたらのう、しばらく一緒に生活せざるをえんようじゃ。なので、お互いの秘密を守るということで、合意したのじゃ。」
「って、私は呼ばれなかったのですか。」仲間はずれですか、少し寂しいです。私。
「んー、まあおぬしにいえぬ事情もあるらしいのでな。」
 顔を見ると頬を染めている。何か女の子的な事なのだろうと判断して何も聞かないことにします。
「では、しばらく一緒に生活をするということですか。」
「はい、お願いします。あと、できればこれからの旅にも同行させていただきたいのですが。」
「え?他のパーティーの人が迎えに来るのではないのですか。」
「そう思いたいのですが、たぶん期待できないだろうと。」
「はあ、」
「魔物に襲われたとき、町からの依頼に失敗してケンカをしていたときだったのです。」
「マーカーを付与されていたのではないですか?」
「それは、失敗した依頼の前に付与したものです。なので、魔獣に襲われたときには、どこで合流とか決めていませんでした。しかもマーカーが作動しているのに迎えに来ないという事は、他の人達は死んでいるかあるいは、私が取り残されたかだと思います。」
「でもマーカーは、作動していませんでしたよ。」
「ええ?でも魔力は微量ですけど消費していましたよ。」
「マーカーは動作不良で、マーカーが吸い上げた魔力を不可視化の魔法に流していたのです。」
「そうですか、ならば、よけいに探してはいないでしょう。マーカーの発信が消えたということは、死んだと思われたんだと思います。」
「ああ、なるほど。でも、こちらから探した方が良いのではありませんか?」
「依頼のために集まったその場限りのパーティーでした。面識もなく連携もめちゃめちゃでしたので、たぶん失敗した段階で解散するつもりだったのではと思います。」
「そうですか、でも依頼主には報告しなければなりませんね。」
「はい、ですので一緒に旅をさせていただきたいと。」
「報告は、その町に行く商隊に頼めば良い。エルフ、おぬしは、少しやすめ」
「ありがとうございます。」
「聞いたであろう。おぬしもそれでいいな。」
「ええ、家も格安で借りられそうですし、よかったですね。でも、なんて呼べば良いですか?」
「一度、救われた身です。前の名前を捨てて、新しい名前をと思います。お好きにお呼びください」
 そう言って彼女は、手を組み、何かを祈るように目をつぶって何かをつぶやいている。
「いいんですか、」
 私は、みんなを見る。モーラがうなずく。アンジーがいやーな顔をしている。ユーリが不安そうな顔をしている。メアは・・・表情が硬くて感情が読み取れません。なんか嫌な予感もしますが。
「じゃあ、エルフなので、エール、エーリッヒ、あ、これは男名か。エルフィ。エルフィでどうです?エルフィ・ドゥ・マリエールとかかっこいいなあ。」
 周囲が一斉に青ざめ、エルフィと呼ばれた彼女の顔が明るく輝きだした。そして、
「私はあなたに従います。」そう言って膝をついた。すでに見慣れたほんわかした光が彼女を包む。
「え?あれ?どうして?」
「わしの頭を覗いたのか?」
「いえ、そんなことするわけないじゃないですか。そんなことできるわけありませんよ。」
「まあ、するわけがないしできんわな。よい、とっと儀式をすませよ」
「これってまさか。」
「ああ、いつものじゃ」
 そう言って横を向くモーラ。私は、膝をつく彼女の頭をなでる。光は収まり、彼女は立ち上がり、私に抱きついた。
「ありがとうございます。生涯ともに歩みます。」
「ええ?どういうことですか?生涯って、しばらく一緒に暮らすだけですよね」
「エルフィ、おぬし図ったな。」
「え?何のことですか~?」そのペコちゃん顔可愛いですね。歳の割に。
「その名が浮かぶように意識に暗示をかけたな。」
「え~、そんなことできませんよ~うふふ。」いやーん、私だまされた?
「ぬかったわこの小娘、かなり年齢をいつわっておるな。エルフだけに。」
「当然ですよ~。これはという男を見つけたら絶対離れるつもりなんてありませんから~。」
「エルフ族は、外からの血を嫌っているのでは無いのか」
「うちの里は~、そんなことは言いませんね~。私も実は少しだけ人間の血が混じっていますし~、むしろ最近の統計では、魔力量の豊富な人間との間では、ほとんどはずれなく、できの良いハーフエルフが生まれているみたいですから、推奨しているくらいなんです~。あ、もっとも~、一族に従順な子だけが優遇されるんですけどね~。」
「ちょっと待ってください。何を騒いでいるのか最初から話して欲しいのですが。」
「はあ、こうなるとは予想していましたが。」アンジーがため息ついて話し出す。
「正式な名前や真名を呼ぶと隷従されることをお話ししました。なので、別な名前をつけてもらうことに同意してくれて、それは、あなたに決めてもらおうとしたのです。しかし、逆手にとって暗示を掛けて隷属するとかありえません。またメンバーが増えてしまいました。神は一体何をさせようというのでしょうか。」
 アンジーさんついに胸の前で十字を切っています。あれ?それ逆じゃないですか。
「まあ、いいじゃないですか~」
 エルフィが、うれしそうにアンジーの背中をぽんぽんとたたく。私は、エルフィに近づき手を取る。
「どれどれ、すぐ解除できるか魔法の跡を見てみましょう。ああ、これは、すごくゆがんでいる。もしかして、あなたは、魔法に対して耐性を持っていませんか?」
「あはは~、わかるんですか~すごいですね~。実はそうなんですよ~。おかげで、治癒の魔法が効いたり効かなかったりして大変なことになったりします。でも~自分でも治癒魔法を使えるので、問題は無いんですよ~。」
「ううむ、これを解除するとなるとかなりかかりますねえ。」
「今回の魔法も~もしかしたら成功しないかもと思いましたけど~、じわじわとー屈服させるように魔法が効きましたよ~。すごい魔力量ですね~。私、からだが熱くなりました。はあはあ」何、恍惚とした表情浮かべて興奮しているんですか。こういう人は、スルーするのが一番です。
「とりあえず、そのエルフィさんが着替えられたので、みんなで、大家さんのところへ行きましょう。」
 メアが冷静にこの場を仕切ってくれました。ありがとうございます。
「幽霊騒ぎの結果はどうするのじゃ。」
「幻覚でも見ていたことにしましょう。私たちには何も起こらなかったと。」
「値段をつり上げられるかもしれんぞ」
「そこは、最初に確認済です。あちらにしても風評被害のある家に短期間でも住んでくれれば、安心して次の人に貸せるでしょう?」
「その線で行きましょう。レッツゴー」う
 れしそうにエルフィが同意する。
「あなたが口を挟むことではありませんよ。」
「てへ」
「うむ、年齢を申してみい」
「てへ、今年20歳です。」
「下二桁だけ言うんじゃない。」
「百20歳です」
「本当か?」
「暦が無かったので正確ではないですが~。季節はそのくらい巡っていましたよ~。」
「ふむ、まさかそんなところでサバは読まんじゃろう。」
「さて、本当に行きますよ。」
「途中で何か食べ物が欲しいのですが~。」
「植物以外たべられんのじゃろう。干し草でも食っておけ。」
「ひどいーそんなことはないのです。偏見です。」
 おなかを空かせたエルフにフードをかぶせ、街を歩いていると、皆さんの私を見る目が、さながら新しい奴隷を連れた奴隷商人を見るような目になっています。まあ、その周囲の目も最近はとっても快感・・・・なわけないです。
家主さんに問題は解決したことと、しばらく住んで様子を見ますと話すと、猛烈に感謝されました。取り決めは、ほとんどこちらの要望どおり。壊れたらこちらで補修して、出るときには現状を見てもらい直しが必要なところは、こちらで直す。というものです。問題なく契約できました。はい、しかもお安くです。
 お昼ご飯とエルフィの生活用品を買い足して宿屋に戻ったところ。やはり宿屋の主人に睨まれました。しかし、数日中に出て行くことを話すと少し寂しそうな顔をしたのを私は見逃しませんでしたよ。やっぱり楽しみにしていたんですね。あ、宿賃が入らなくなるからですか。そうでしたか。
 引っ越し前に、家主さんと一緒に家の中を見てもらいました。幽霊騒ぎからほとんど近づいていなかったそうで、ほとんど変わっていないと安心していました。
「荷物はほとんどないので、厩舎を横に作りますが、良いですかねえ。」
「かまいませんけど、無駄になりませんか。」
「はい、簡単な物でひさし程度ですから。」
「かまいませんご自由にどうぞ。」
「ありがとうございます。助かります。」
そうして家主は帰っていった。
「さて、改造しますか。」
「そうじゃのう。人数も多いからのう。」
「ですね~。頑張ります~」エルフィやる気ですねえ。
「何を改造するんですか。」
「ここは、正面玄関から入ってすぐが居間兼売り場で、その奥に部屋が3つ、居間の横に厨房がある作りで、トイレは外、厨房から奥に食料庫がある作りですね。」
「まあ、そもそも森の中に家があって、裏手の方は森に隠れて見えないから改造にはうってつけだのう」
「だから改造の必要はないんじゃないですか?」ユーリが言った。
「ここにはないものを作るのじゃ、そうじゃろう」
 モーラがニヤリと笑う。
「はいはい。皆さんにはお願いがあります。この改造のことは、内緒にしてください。お願いします。魔法の使用法が、この世界のレベル的にちょっと問題がありますので。」
「はあ?風呂を作るんじゃ無いのか」
「では、とりかかります。」
 私は、厨房の奥の壁の一部を壊しにかかる。ドアを作るのだ。
「何を作るのですか」メアさんが不思議そうにしています。
「風呂じゃよ。」
 モーラが偉そうに言いましたが、いや、そうじゃないんですよ。
「え?水浴びの場所を作ったって水の確保が難しいのでは?」エルフィそこですか。
「まあ、そこはほれ、魔法使いが何とかするのじゃ。」
「はあ、そんな大量な水を扱える魔法使いなんて、小さいときから、重宝されて、この地方には一人もいないんじゃないですか?」
「そうじゃろうなあ。じゃがここにいる」
「もしかして?」
「そうですよ。私たちに隷従の呪文をかけられる高位の魔法使いがここにいます。」
「あれが?」
「ええ、あれじゃ。」
「あれです」
「あの方です。」
「そうなんですか?」
「ええ、不本意ながら。」

「できましたよー」
「早いのう。昔はけっこうかかっておったろう。」
「あの時は、町の人に知られると困るので、できていないフリをしていましたからねえ。」
「そうじゃったのか」
「今回は、火力調節を可能にしましたから、保温できます。高性能ですよ。」
「どうやったのじゃ」
「企業秘密です。」
「まあ、よいか。どれ、見せてみろ。」
「はい、どうぞ。」
「なんじゃ、あそこの家のと同じじゃ無いか。」
「ええ、同じです。だって、家のお風呂と空間をつないだだけですから」
「ああ、今なんと申した。」
「だからうちのお風呂を改造して高性能にしてみました。」
「その後じゃ。うちのお風呂と空間をつないだ、じゃと」
「はい。だから内緒なんですよ」
「当たり前じゃ。空間をつなぐとか。わしでもできんぞ」
「いや、できますよ。この世界にはその発想と理論がないだけなんですよ。私の元いた世界・・あ、やばかったですね」
 得意げにしゃべってしまいましたが、エルフィがワナワナ震えています。
「ごほん、しゃべりすぎました。ということで、我が家のお風呂に行って入れます。冷蔵庫も冷凍庫も使い放題。」
「この世界に転生して来たどころか、この世界の法則までねじ曲げる気か。」
「いや、だからそこまではしませんよ、あくまで秘密です。さらに空間維持がけっこう微妙なので、たまに空間が開かなかったりするかもしれませんので、あちらに行って帰ってこられなくなるかもしれませんが。」
「そんな危険な物取り付けるな。普通の風呂でよいわ」
「ええ?そんな。また作るのは面倒くさいんですよ。けっこうあの風呂こだわりを持って作っていますから、同じ物つくるとなると手間がかかるんですよ。」
「さっきはすぐできたと言っていたではないか。」
「すぐといいましたが、数日かかりますよ、その間お風呂入れませんよ。しかもこの人数ですからこれより大きいのを作らないとなりませんから、もっとかかるかもしれませんよ。」
「う、今日はとりあえず簡易な物でもよかろう。」
「であれば、露天風呂のままで良いですか?確かに気持ちが良いのでそっちでもいいですけど。」
「う~む。本当は、屋根があって、広い方がよいのじゃが」
「でも今日は無理ですね。露天風呂に簡易の壁と床ですか。モーラさんに土壁作ってもらいます。」
「なるほど、しようがないのう。じゃから空間維持の魔法とか使うでない。」
「まあ、できるのは、行ったことのあるところだけですけどね。そこにマーカーを打たないとできません。」
「なるほどそういうことですか。空間をゆがませるのは、どうやってやるのですか?」
「えーっと説明が難しいのですが、魔法で時間軸と座標軸をゆがめて空間にひずみを作るのです。その後その先に行きたい場所の座標軸を展開するといいのですが、少し間違うと全然違う場所につながったりしますから。海の底とか宇宙とか」
「海?宇宙?」
「この子達にそんな事わかるわけないでしょ。海なんて見たことないし、空だって行ったことがないのだから。」
「ああ、そうでしたね。すいませんでした。」
「海は聞いたことがあります。川と違って大きいとか聞きました。行ってみたいです。」
「そうね、これからいろいろなところを回るからきっと行けるわよ」
「本当ですか?」
「ええ、たぶん。」
 お風呂は私の案は却下され、ふつうに家風呂(全員が入れる位なのでかなり大きいのですが)を作ることになりました。でも作るのけっこう面倒なのですよ。

そうして、この街での生活が始まりました。しかも6人の大所帯で。

第3章へ続く


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