落ちこぼれの魔獣狩り

織田遥季

文字の大きさ
上 下
60 / 101
ブレンダムにて

さらばブレンダム

しおりを挟む
 二週間後の晴れた日、レオン達はブレンダムの町を発つことにした。
 彼らの見送りには、市民の多くが集まった。
 レオンはやはり恥ずかしかったが、彼らの心情を汲んでありがたく受け取ることにした。

「もう少しゆっくりしていけばいいもんを。せっかちな奴らじゃ」

 町民を代表してドグマが一行の前に出る。

「十分ゆっくりしましたよ。ララの傷もほとんど治りましたし、宴なんかも開いてもらって本当によくしてもらいました」

「そうか。町を救ってもらった礼が少しだけ出来たならよかったわい」

 そう言ってドグマは復旧中の建物を見やる。
 ゴーレムによって破壊された日よりは幾らか町の風景が戻ってきていた。

「あれ? そういえばビーディーは?」

 リンネの言葉に、レオン達は辺りを見回す。

「……いないな」

「まったく。恩人が発つというのにあの馬鹿は……」

「誰が馬鹿だくそじじい!」

 人ごみの中から、ビーディーのどこか幼い声が響く。
 人の群れを割って出てきたビーディーは、自身の体よりも大きな荷物を背負っていた。

「……なに持ってきたの?」

 ララの率直な問いに、ビーディーは待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑う。

「あたしの全財産」

「それはつまり……」

 レオンはビーディーの意図をなんとなく察する。

「お前らと一緒に行くってこと。こんな山奥に籠ってるのもいいかげん飽きたしな。シンピともしばらく会ってねぇし……そうだ! お前らと一緒に冒険者やるってのも面白そうじゃねぇか!?」

 ビーディーの唐突な提案にレオン、そしてリンネは絶句。
 そして――

「ええええええええ!?」

 絶叫した。
 そんな二人の後ろで、ベルは楽しげに笑う。

「ははは……ノシュキルがまた賑やかになりそうですね」



「そんじゃあ気をつけていけよ」

「ああ。じじいも簡単にくたばんじゃ……そうだ。ギギルはどうしてる?」

 別れの間際。
 ビーディーの唐突な問いに、リンネとベルも耳を傾ける。
 超巨大ゴーレムの創造主であり術者の彼がどうなったのか、彼女達もやはり気になるようだ。

「ギギルならそうだな……あそこを見ろ」

 そう言ってドグマが指差したのは復旧中の建物群。
 よくよく目を凝らしてみると、復旧作業を行っているのは人ではないなにかだった。

「……なんだありゃ」

「ゴーレムじゃよ。ギギルが創ってんだ」

「は? あいつが?」

「ああ。うちの工房でほとんど寝ずに創り続けてる……あいつなりの償いなんだろうよ」

「そうか……おし。んじゃ、そろそろ行くか~!」

 ビーディーが両腕を掲げ、景気よく宣言する。

「……新しい旅の始まりだ」

 嬉しそうに笑うビーディーに、一行も頷く。
 経験豊富で可愛らしい、新しいパーティーメンバーにそれぞれが期待に胸を膨らませていた。

「行こう」

 レオンの言葉に、五人は一歩を踏み出す。
 新しい季節を告げる冷たい風がブレンダムの谷間に吹き抜けていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

気づいたら隠しルートのバッドエンドだった

かぜかおる
ファンタジー
前世でハマった乙女ゲームのヒロインに転生したので、 お気に入りのサポートキャラを攻略します! ザマァされないように気をつけて気をつけて、両思いっぽくなったし ライバル令嬢かつ悪役である異母姉を断罪しようとしたけれど・・・ 本編完結済順次投稿します。 1話ごとは短め あと、番外編も投稿予定なのでまだ連載中のままにします。 ざまあはあるけど好き嫌いある結末だと思います。 タグなどもしオススメあったら教えて欲しいです_|\○_オネガイシヤァァァァァス!! 感想もくれるとうれしいな・・・|ョ・ω・`)チロッ・・・ R15保険(ちょっと汚い言葉遣い有りです)

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

ジャージ女子高生による異世界無双

れぷ
ファンタジー
異世界ワーランド、そこへ神からのお願いを叶えるために降り立った少女がいた。彼女の名前は山吹コトナ、コトナは貰ったチートスキル【魔改造】と【盗む】を使い神様のお願いをこなしつつ、ほぼ小豆色のジャージ上下でテンプレをこなしたり、悪党を改心させたり、女神になったりするお話です。

その転生幼女、取り扱い注意〜稀代の魔術師は魔王の娘になりました〜

みおな
ファンタジー
かつて、稀代の魔術師と呼ばれた魔女がいた。 魔王をも単独で滅ぼせるほどの力を持った彼女は、周囲に畏怖され、罠にかけて殺されてしまう。 目覚めたら、三歳の幼子に生まれ変わっていた? 国のため、民のために魔法を使っていた彼女は、今度の生は自分のために生きることを決意する。

魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど

富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。 「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。 魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。 ――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?! ――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの? 私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。 今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。 重複投稿ですが、改稿してます

転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)

しゃむしぇる
ファンタジー
 こちらの作品はカクヨム様にて先行公開中です。外部URLを連携しておきましたので、気になる方はそちらから……。  職場の上司に毎日暴力を振るわれていた主人公が、ある日危険なパワハラでお失くなりに!?  そして気付いたら異世界に!?転生した主人公は異世界のまだ見ぬ食材を求め世界中を旅します。  異世界を巡りながらそのついでに世界の危機も救う。  そんなお話です。  普段の料理に使えるような小技やもっと美味しくなる方法等も紹介できたらなと思ってます。  この作品は「小説家になろう」様及び「カクヨム」様、「pixiv」様でも掲載しています。  ご感想はこちらでは受け付けません。他サイトにてお願いいたします。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が子離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

魔術師セナリアンの憂いごと

野村にれ
ファンタジー
エメラルダ王国。優秀な魔術師が多く、大陸から少し離れた場所にある島国である。 偉大なる魔術師であったシャーロット・マクレガーが災い、争いを防ぎ、魔力による弊害を律し、国の礎を作ったとされている。 シャーロットは王家に忠誠を、王家はシャーロットに忠誠を誓い、この国は栄えていった。 現在は魔力が無い者でも、生活や移動するのに便利な魔道具もあり、移住したい国でも挙げられるほどになった。 ルージエ侯爵家の次女・セナリアンは恵まれた人生だと多くの人は言うだろう。 公爵家に嫁ぎ、あまり表舞台に出る質では無かったが、経営や商品開発にも尽力した。 魔術師としても優秀であったようだが、それはただの一端でしかなかったことは、没後に判明することになる。 厄介ごとに溜息を付き、憂鬱だと文句を言いながら、日々生きていたことをほとんど知ることのないままである。

処理中です...