落ちこぼれの魔獣狩り

織田遥季

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ブレンダムにて

悪を滅ぼすのは

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 息を切らし、リンネは完全に崩壊しきったゴーレムの足元を目指す。
 レオンらしき人影が落ちるところを見たからだ。

「レオン! レオン!!」

 瓦礫の山の中、リンネはレオンの名前を呼び続ける。
 しかし、すぐに返事が聞こえてくるということはなかった。

「レオン……」

 彼女は俯き、強く拳を握りこんで己の無力を嚙み締める。
 私がゴーレムを倒せるほど強ければ、と。
 その時、ほど近い所から足音がした。

「呼んだか?」

 聞きなれた声に、リンネが顔を上げる。
 そこにいたのは、足を引きずり歩くレオンだった。

「よかった……! 無事だったのね!」

 リンネが駆け寄ろうとする。
 が、その途中で彼女は足を止めた。
 目の前にいるレオンの様子になんとも言えない違和感を覚えたのだ。

「なぁリンネ」

 レオンがゆっくりと口を開く。
 姿も、声も同じ。
 しかしリンネは、今のレオンになにか異質なものを感じて仕方がなかった。

「悪とは、なにによって打ち倒されるものだと考える?」

「え……?」

「悪を滅ぼすのは正義か? ……違う。悪を滅ぼすのはいつだって別の悪だ」

「レオン、何言って……」

 リンネは、その時理解した。
 恍惚とした笑みを浮かべるレオンの表情を見て、理解したのだ。

――レオンじゃない

 その時、レオンがどさりと膝を着く。
 肉体の限界が来たのだ。

「もう時間か」

 ひとり呟き、レオンは再度リンネを見やる。
 その瞳が赤く輝いていることに、リンネは気がついた。

「リンネ、よければ考えておいてくれ。悪とは、なにによって打ち倒されるものなのか……次に会う時、その答えを聞かせてくれ」

 それだけ言うと、レオンはまるで糸が切れたかのように、その場に倒れ伏した。
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