落ちこぼれの魔獣狩り

織田遥季

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崩壊、そして

もう一つの力

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 シンピの家の外は森の中だった。傾斜があるので正しくは山の中なのかもしれない。



「さて」



 そしてその山中にて、レオンとシンピは向かい合っていた。リンネは傍らで見学しているらしい。



「おまえには魔獣を従えるスキルがあることは伝えたな?」

「はい。それが魔獣王の父から継いだ力であることも聞きました」

「私はその〈魔獣王〉スキルに加えてもう一つ、お前がスキルを持っているんじゃないかと考えている」



 レオンは息を吞む。それはリンネも同じだった。

 人が生まれ持って扱える力、スキル。その発現は百人に一人ほどの確率だと言われている。親がスキル持ちであればスキルを継承する可能性は高くなるが、それでも一人の人間が二つのスキルを持つことなど極めて稀なのだ。



「俺が……スキルを二つ持ってるってことですか?」

「確証はないがな。〈魔獣王〉スキルは基本的に他の〈魔獣王〉の制御下にあるもの、自分より強いものには効果がないと聞いている。そして昨日、レオンが退けたトロルには“奴”のスキルがかかっていたはずなんだ」

「つまり、俺が他のスキルを使って“奴”のコントロールを解除したんじゃないかってことですか」



 シンピは静かに頷いた。



「そのスキルがあるとすればなんなのか、私なら解明まで大して時間はかからない。これまでの生活でなにか違和感を感じたことはないか?」

「違和感……」



 違和感はあった。レオンが生きている上でどうしてと思ったことがこれまでに、何度も。ただ……

――動物にいつも逃げられるって言ってこれがスキルでもなんでもなかったら恥ずかしいな!?

 それだけが気がかりだった。



「えっとですね……」

「どうした。なにかあるなら言ってみてくれ。レオン、お前が強くなるために必要なことだ」



 強くなるために。そうだ、強くなるため、魔獣どもを殺すためには、俺の恥などどうでもいい。気づけば、レオンの中から迷いなどは消えていた。



「狩りをするといつも……逃げられていました。動物に。俺に気づいた様子なんてなかったのに」

「ほう」



 シンピは興味深そうにあごに手をやった。

 レオンの視界の端には「なに言ってんだこいつ」と呆れ顔のリンネがいたが、気づかなかったことにした。



「獲物が逃げたタイミングについてなにか共通点はないか?」

「共通点? そうですね……だいたいは武器を構えると逃げました」



 無表情だったシンピの顔がニヤリと歪む。

 その表情が少し恐ろしく思えて、レオンは少しひるんだ。



「レオン、お前は武器を構える時『こいつを殺してやろう』と思うか?」

「え? そりゃまあ……」



 なにかに気づいたようにリンネが目を見開いた。



「師匠! まさか……」

「ああ。おそらくだがレオン、お前の第二のスキルは」



「〈殺気〉だ」

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