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第一章
約束ととんでも爆弾
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「え、リュヌも学校来るの!」
「うん。まあまだ入れるかはわからないけど」
新学期に向けて、寮へ戻るために荷造りをしているフォル兄に学校へ行くことになった話をすると、ぱあっと顔をほころばせて喜んでくれた。うんうん俺も大好きな兄弟と同じ学校に行けるのは嬉しいよ。
でもどうやら入学試験というものがあるらしいんだよなぁ……。俺、まじでなんもしてないけど大丈夫なんだろうか。
「? 何が心配なんだ?」
「いやあ入学試験に対してなんもしてないし……」
「あー、あれはあくまでも入学時にどれくらいのレベルなのかとか、今後どんな分野を学ぶのが良いかとか適性を見るものだからお前が考えてるようなもんじゃないよ」
「え? 入学できるかどうか決めるための試験じゃないの?」
どうやら俺の考えている入学試験とは意味合いが違うらしい。俺が全然学校についてわかっていないことを案じて、フォル兄は丁寧に学校について説明してくれた。
どうやら、この世界では学校というのは各国に1つだけ設立されていて、入学時の年齢も均一ではないそうだ。それに、希望者は誰でも学校に入れるらしい。国によっては最低何年かは学校に通わなければならないところもあるそうだが、俺が今暮らしている国ではあくまでも希望者のみ、後は今回の俺のように学校側から入学してみないかと推薦のような形で声がかかった者だけ学校に通うそうだ。
「ちなみにフォル兄が入学したのっていつだっけ」
「たしか8歳の時だから……おぉ、もう5年も経つんだ」
俺がこれから行く予定の学校、ルーナ学院では入学時の年齢が6歳から10歳と定められていて、マウ兄やフォル兄は自ら希望して学校へ通うことにしたそうだ。ちなみにマウ兄は自分で調べて他国の学校に通っている。……すごすぎん?
俺は今まで学校なんて考えてなかったもんだからギリギリの入学になったというわけらしい。あれかな、お前んとこの末っ子もう入学年齢ギリギリだけど大丈夫か? みたいな感じで話が来たのかな……。
「そうそう、入学試験で良い成績を残したら飛び級もできるぞ」
「へぇ~」
「たしかマウ兄は魔道具に関する論文を提出して一気に飛び級してた気がする」
「まってそれ何歳の時?」
「あー7歳の時だったかな? まあマウ兄ならあり得る話だよな」
ま、僕は精々2学年くらいしか飛び級できなかったけどなんて笑いながら話すフォル兄に内心引きつつ、より詳しく学校に関して話を聞いた。てか飛び級前提なの恐ろしすぎない? 俺の家族ネット小説の主人公すぎるだろ。
まあ俺はゆっくり一番下の初等部から順に上がっていけば良いや……。
少し話がそれたが、ルーナ学院では前世の記憶にあるような学校と同じように、学年が分かれているそうだ。入学して兄たちのようにぶっ飛んだ能力を持っていなければ初等部にまず配属される。また、初等部の中でもクラスが別れており、下からソール、アウローラ、ルーナの3つに分けられるらしい。どうやらこの世界で信仰されている3女神の名前を採用しているようだ。このクラスはその学年に在学中に行われる色々な試験や、日々の活動によって変動するらしい。初等部は6年、中等部と高等部は3年期間があるから、結構変動するそう。どうやら兄はずっと一番上のルーナクラスにいるらしいけど!
「初等部の次は中等部、中等部の次は高等部に上がって、高等部からは各々専攻を選んで学べるんだよ」
「僕は今中等部で2年目だから、もうそろそろ専攻を考えなきゃだけど迷って迷って……」
「フォル兄はなんでもできそうだけどね。専攻ってそんないっぱいあるの?」
「いや、大まかに分けたら3つなんだけど、大きな選択だからな」
高等部から選択できる専攻は、大きく分けると武、創造、魔術の3つに分かれるらしい。そこから更に枝分かれしており、武だと冒険者コース、創造だと錬金術コース、魔術だと魔導士コースが人気だそう。また、稀にだが試験を受けてある一定の能力があると認められると、複数の専攻を一緒に選ぶこともできるそうだ。
「マウ兄はこっちでいう創造専攻の魔道具コースと、魔術専攻の付与魔術特化コースを受けてるらしいよ」
「当たり前のように複数の専攻選んでるんだねマウ兄……」
「マウ兄だからなあ……僕は今のところ冒険者コースが良いんだけど、もし行けたら創造専攻の薬学コースも行ってみたいし魔術専攻も気になるし……って今はリュヌのことだよな。ごめんごめん」
「全然気にしてないよ。色々教えてくれてありがとう!」
「可愛い弟のためだからな! とりあえず、あんまり難しく考えすぎないようにな?」
フォル兄は俺の頭を優しく撫で、荷造りを再開した。
あと2週間で長期休暇は終わり、新学期が始まる。そんな忙しい中俺に時間を割いてくれたフォル兄に感謝しつつ、俺は部屋を後にした。
「学校かぁ……。友達、できると良いなあ」
自室へ戻り、ベッドに寝転がりながら俺は新生活へ思いを馳せた。フォル兄の話に出てきた色々なコースの話も気になるが、せっかくのスクールライフなら友達が欲しい。いかんせん俺は自宅近辺からほとんど出たことが無い。友達といえばトールかあとは最近知り合ったリリーくらいだ。……本人に言ったら怒られるかもしれないが。
「そういえば、リリーも学校に来るって言ってたっけ」
「ええ、そのつもりよ」
「うわぁっ!?」
なんとなく呟いた独り言に突然返答があり、俺は情けない声を上げながらベッドから転げ落ちてしまった。
「あんたってほんと変な人間よね」
「いや、突然目の前に妖精が出てきたら誰だって驚くって!」
「あんたがビビりなだけよ。ってそんなんはどうでも良いんだけど」
「人の心臓止まらせかけたくせにどうでも良いんかい」
「うるさいわねぇ。とにかく、今日はあんたのこれからに関することで来たのよ」
リリーは俺の膝頭あたりにちょこんと乗っかると、どこからか取り出した眼鏡をかけ、わざとらしくくいっと上げた。なんでこんな小道具の用意が良いんだこの妖精。
「学校に通うにあたって私と三つ約束してほしいことがあるの」
「何? 改まって」
リリーは真面目そうな顔を作ってそう言った。
「まず一つ目、私以外の妖精に安易に名乗らないこと。普通の自己紹介とかなら良いけど、相手に対して何か関係性を持ちたいと強く願ったらダメ」
「散々名乗りの怖さについて脅されたしね……。わかった」
「素直でよろしい。二つ目は、あんたがヘイアン家だとばれないこと」
「? なんで?」
普通自己紹介の時って名字名乗るもんじゃないのか? 学校に通うにあたって俺がどこの家の子なのかばれないようにするって大変そうなんだけど。
「いーい? あんたら一族の生業は一部の人間、まあ人間以外の存在もいるけど、そいつらにとってめちゃくちゃ重要なものなの。だからヘイアンって名前を聞いてピンとくる奴もいるし、よからぬことを考える奴もいる。きっと親から何か道具はもらえると思うけど、それを絶対に身に着けること」
「あーこれのこと?」
俺は父さんに渡されてクローゼットにしまいっぱなしだったあの怪しいローブを取り出した。
「相変わらずえげつない術式が組み込まれてるわねえ。そうそれよ。私とかトールくらいの存在にはそこまで効果抜群ではないけど、大抵はあんたが空気みたいに見えるはずよ」
「えー、友達作りたいのにすっごい邪魔な効果じゃん」
「大丈夫よ。そのローブ着た時のあんたと同じくらい地味な奴と友達になれば良いじゃない」
「なんか多方面にすごく失礼な気がする」
リリーの物言いに若干複雑な思いを抱きつつ、とりあえず言うことは聞くことにした。まあ、俺には教室の隅っこで大人しくするのがお似合いってことだな……。
「じゃあ最後、三つ目ね」
リリーは一呼吸置いて最後の約束を切り出した。
「本当に自分の力で解決できないことがあったら私に頼ること! 以上!」
そう言い切るとリリーは照れ隠しなのかすぐに部屋から出ていってしまった。言葉の勢いにぽかーんとしている間の早業だった。
「ありがと、リリー」
宙に向かって一人そう呟く。なんだかんだこちらを心配してくれているリリーのその気遣いがなんだかこそばゆかった。
「ん?」
リリーがいなくなった後をよく見ると、小さいながらもなんだか存在感を放っている白い綺麗な花の形の石が落ちていた。……なんだこれ? 落とし物か?
「うぉ、大妖精……?」
石を手に取り、じーっと見つめているとなんだか脳内に「大妖精」という言葉が浮かんできた。大妖精ってなんだ? リリーのことか? 全然そんな大層な感じしないけど……。
石についてもっと思考をめぐらすと、脳内に突然色々な情報が浮かんできた。
「大妖精リリーの召喚石……?」
頭に浮かんだ言葉をそのまま口に出してみる。……え、これってもしかして?
「異世界ものあるあるの鑑定ってやつか?」
そう口に出した途端、手の中の石からもやもやと文字が浮かび上がってきた。そこには大妖精リリーの召喚石という先ほど脳内に浮かんだ言葉が記されている。さらに細かいことも書いてあった。
「やべえまじ鑑定じゃん……。どれどれ、大変貴重なもので、リリーの認めた者にのみ与えられるもの。これを与えられた者は一時的に大妖精リリーの力を扱うことができる……」
まてまて、最後にとんでもない爆弾を残していったなあの妖精……!
「てか、大妖精ってなんだよその肩書!」
俺は一人でそう叫びながらこれはしばらく封印だと、いつか両親からお土産としてもらったマジックボックスにしまい込んだ。うん、よく考えたら見た目と容量が合わないこのアイテムも十分おかしい。
「……まあ、いっか」
俺は思考を放棄し、とりあえずもう一回ベッドに寝転んだ。
「とりあえず学校について考えよう。うん」
後々、俺より詳しく鑑定が行える両親や兄によって俺の鑑定スキル的なものがばれ、少し複雑な気持ちになるとは知らず、学校について考える傍ら中二心を刺激する鑑定や大妖精といったワードにテンションが上がってしまった。
しょうがない。俺は夢見る10歳男児なのだ。
「うん。まあまだ入れるかはわからないけど」
新学期に向けて、寮へ戻るために荷造りをしているフォル兄に学校へ行くことになった話をすると、ぱあっと顔をほころばせて喜んでくれた。うんうん俺も大好きな兄弟と同じ学校に行けるのは嬉しいよ。
でもどうやら入学試験というものがあるらしいんだよなぁ……。俺、まじでなんもしてないけど大丈夫なんだろうか。
「? 何が心配なんだ?」
「いやあ入学試験に対してなんもしてないし……」
「あー、あれはあくまでも入学時にどれくらいのレベルなのかとか、今後どんな分野を学ぶのが良いかとか適性を見るものだからお前が考えてるようなもんじゃないよ」
「え? 入学できるかどうか決めるための試験じゃないの?」
どうやら俺の考えている入学試験とは意味合いが違うらしい。俺が全然学校についてわかっていないことを案じて、フォル兄は丁寧に学校について説明してくれた。
どうやら、この世界では学校というのは各国に1つだけ設立されていて、入学時の年齢も均一ではないそうだ。それに、希望者は誰でも学校に入れるらしい。国によっては最低何年かは学校に通わなければならないところもあるそうだが、俺が今暮らしている国ではあくまでも希望者のみ、後は今回の俺のように学校側から入学してみないかと推薦のような形で声がかかった者だけ学校に通うそうだ。
「ちなみにフォル兄が入学したのっていつだっけ」
「たしか8歳の時だから……おぉ、もう5年も経つんだ」
俺がこれから行く予定の学校、ルーナ学院では入学時の年齢が6歳から10歳と定められていて、マウ兄やフォル兄は自ら希望して学校へ通うことにしたそうだ。ちなみにマウ兄は自分で調べて他国の学校に通っている。……すごすぎん?
俺は今まで学校なんて考えてなかったもんだからギリギリの入学になったというわけらしい。あれかな、お前んとこの末っ子もう入学年齢ギリギリだけど大丈夫か? みたいな感じで話が来たのかな……。
「そうそう、入学試験で良い成績を残したら飛び級もできるぞ」
「へぇ~」
「たしかマウ兄は魔道具に関する論文を提出して一気に飛び級してた気がする」
「まってそれ何歳の時?」
「あー7歳の時だったかな? まあマウ兄ならあり得る話だよな」
ま、僕は精々2学年くらいしか飛び級できなかったけどなんて笑いながら話すフォル兄に内心引きつつ、より詳しく学校に関して話を聞いた。てか飛び級前提なの恐ろしすぎない? 俺の家族ネット小説の主人公すぎるだろ。
まあ俺はゆっくり一番下の初等部から順に上がっていけば良いや……。
少し話がそれたが、ルーナ学院では前世の記憶にあるような学校と同じように、学年が分かれているそうだ。入学して兄たちのようにぶっ飛んだ能力を持っていなければ初等部にまず配属される。また、初等部の中でもクラスが別れており、下からソール、アウローラ、ルーナの3つに分けられるらしい。どうやらこの世界で信仰されている3女神の名前を採用しているようだ。このクラスはその学年に在学中に行われる色々な試験や、日々の活動によって変動するらしい。初等部は6年、中等部と高等部は3年期間があるから、結構変動するそう。どうやら兄はずっと一番上のルーナクラスにいるらしいけど!
「初等部の次は中等部、中等部の次は高等部に上がって、高等部からは各々専攻を選んで学べるんだよ」
「僕は今中等部で2年目だから、もうそろそろ専攻を考えなきゃだけど迷って迷って……」
「フォル兄はなんでもできそうだけどね。専攻ってそんないっぱいあるの?」
「いや、大まかに分けたら3つなんだけど、大きな選択だからな」
高等部から選択できる専攻は、大きく分けると武、創造、魔術の3つに分かれるらしい。そこから更に枝分かれしており、武だと冒険者コース、創造だと錬金術コース、魔術だと魔導士コースが人気だそう。また、稀にだが試験を受けてある一定の能力があると認められると、複数の専攻を一緒に選ぶこともできるそうだ。
「マウ兄はこっちでいう創造専攻の魔道具コースと、魔術専攻の付与魔術特化コースを受けてるらしいよ」
「当たり前のように複数の専攻選んでるんだねマウ兄……」
「マウ兄だからなあ……僕は今のところ冒険者コースが良いんだけど、もし行けたら創造専攻の薬学コースも行ってみたいし魔術専攻も気になるし……って今はリュヌのことだよな。ごめんごめん」
「全然気にしてないよ。色々教えてくれてありがとう!」
「可愛い弟のためだからな! とりあえず、あんまり難しく考えすぎないようにな?」
フォル兄は俺の頭を優しく撫で、荷造りを再開した。
あと2週間で長期休暇は終わり、新学期が始まる。そんな忙しい中俺に時間を割いてくれたフォル兄に感謝しつつ、俺は部屋を後にした。
「学校かぁ……。友達、できると良いなあ」
自室へ戻り、ベッドに寝転がりながら俺は新生活へ思いを馳せた。フォル兄の話に出てきた色々なコースの話も気になるが、せっかくのスクールライフなら友達が欲しい。いかんせん俺は自宅近辺からほとんど出たことが無い。友達といえばトールかあとは最近知り合ったリリーくらいだ。……本人に言ったら怒られるかもしれないが。
「そういえば、リリーも学校に来るって言ってたっけ」
「ええ、そのつもりよ」
「うわぁっ!?」
なんとなく呟いた独り言に突然返答があり、俺は情けない声を上げながらベッドから転げ落ちてしまった。
「あんたってほんと変な人間よね」
「いや、突然目の前に妖精が出てきたら誰だって驚くって!」
「あんたがビビりなだけよ。ってそんなんはどうでも良いんだけど」
「人の心臓止まらせかけたくせにどうでも良いんかい」
「うるさいわねぇ。とにかく、今日はあんたのこれからに関することで来たのよ」
リリーは俺の膝頭あたりにちょこんと乗っかると、どこからか取り出した眼鏡をかけ、わざとらしくくいっと上げた。なんでこんな小道具の用意が良いんだこの妖精。
「学校に通うにあたって私と三つ約束してほしいことがあるの」
「何? 改まって」
リリーは真面目そうな顔を作ってそう言った。
「まず一つ目、私以外の妖精に安易に名乗らないこと。普通の自己紹介とかなら良いけど、相手に対して何か関係性を持ちたいと強く願ったらダメ」
「散々名乗りの怖さについて脅されたしね……。わかった」
「素直でよろしい。二つ目は、あんたがヘイアン家だとばれないこと」
「? なんで?」
普通自己紹介の時って名字名乗るもんじゃないのか? 学校に通うにあたって俺がどこの家の子なのかばれないようにするって大変そうなんだけど。
「いーい? あんたら一族の生業は一部の人間、まあ人間以外の存在もいるけど、そいつらにとってめちゃくちゃ重要なものなの。だからヘイアンって名前を聞いてピンとくる奴もいるし、よからぬことを考える奴もいる。きっと親から何か道具はもらえると思うけど、それを絶対に身に着けること」
「あーこれのこと?」
俺は父さんに渡されてクローゼットにしまいっぱなしだったあの怪しいローブを取り出した。
「相変わらずえげつない術式が組み込まれてるわねえ。そうそれよ。私とかトールくらいの存在にはそこまで効果抜群ではないけど、大抵はあんたが空気みたいに見えるはずよ」
「えー、友達作りたいのにすっごい邪魔な効果じゃん」
「大丈夫よ。そのローブ着た時のあんたと同じくらい地味な奴と友達になれば良いじゃない」
「なんか多方面にすごく失礼な気がする」
リリーの物言いに若干複雑な思いを抱きつつ、とりあえず言うことは聞くことにした。まあ、俺には教室の隅っこで大人しくするのがお似合いってことだな……。
「じゃあ最後、三つ目ね」
リリーは一呼吸置いて最後の約束を切り出した。
「本当に自分の力で解決できないことがあったら私に頼ること! 以上!」
そう言い切るとリリーは照れ隠しなのかすぐに部屋から出ていってしまった。言葉の勢いにぽかーんとしている間の早業だった。
「ありがと、リリー」
宙に向かって一人そう呟く。なんだかんだこちらを心配してくれているリリーのその気遣いがなんだかこそばゆかった。
「ん?」
リリーがいなくなった後をよく見ると、小さいながらもなんだか存在感を放っている白い綺麗な花の形の石が落ちていた。……なんだこれ? 落とし物か?
「うぉ、大妖精……?」
石を手に取り、じーっと見つめているとなんだか脳内に「大妖精」という言葉が浮かんできた。大妖精ってなんだ? リリーのことか? 全然そんな大層な感じしないけど……。
石についてもっと思考をめぐらすと、脳内に突然色々な情報が浮かんできた。
「大妖精リリーの召喚石……?」
頭に浮かんだ言葉をそのまま口に出してみる。……え、これってもしかして?
「異世界ものあるあるの鑑定ってやつか?」
そう口に出した途端、手の中の石からもやもやと文字が浮かび上がってきた。そこには大妖精リリーの召喚石という先ほど脳内に浮かんだ言葉が記されている。さらに細かいことも書いてあった。
「やべえまじ鑑定じゃん……。どれどれ、大変貴重なもので、リリーの認めた者にのみ与えられるもの。これを与えられた者は一時的に大妖精リリーの力を扱うことができる……」
まてまて、最後にとんでもない爆弾を残していったなあの妖精……!
「てか、大妖精ってなんだよその肩書!」
俺は一人でそう叫びながらこれはしばらく封印だと、いつか両親からお土産としてもらったマジックボックスにしまい込んだ。うん、よく考えたら見た目と容量が合わないこのアイテムも十分おかしい。
「……まあ、いっか」
俺は思考を放棄し、とりあえずもう一回ベッドに寝転んだ。
「とりあえず学校について考えよう。うん」
後々、俺より詳しく鑑定が行える両親や兄によって俺の鑑定スキル的なものがばれ、少し複雑な気持ちになるとは知らず、学校について考える傍ら中二心を刺激する鑑定や大妖精といったワードにテンションが上がってしまった。
しょうがない。俺は夢見る10歳男児なのだ。
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