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第3話 恐怖
しおりを挟む……まぶしい
そう感じて朝を迎えた。どうやら現実で間違いないようだ。てっきり元に戻るかと、なんて思ってはいなかった。
さて、昨日の夜に考えてやることは決まっている。
水を探しに行こう。それも急ぎで。
こっちに来る前の日本は夏だった。
そして、こっちに来た時は夕方ぐらい。
そう、昼になったら間違いなく暑くて脱水症状になる。そう考えたのだ。
幸いにも森の中は涼しいが、早めに水は確保しておきたい。
ごく普通の人間である俺には喉が渇くという状況がとても不快なのだ。
とにかく、行動!
そういって森の中へ。
とりあえず真っ直ぐ歩くことにした。道に迷わないように。
途中で立ち止まり、耳を済ませたり辺りを見渡して川や湖などを探す。
それを何回か行い、かれこれ数時間。
見つからない。喉はもうカラカラ。汗もダラダラ。
時間が分からないのでそろそろ戻るべきかと考えたが、何も無いところに戻っても意味が無い。
なのでとにかく歩き、夜になったらその場で寝ることにする。
数時間歩いていると少しは景色が変わっていた。
葉っぱの色が少し変わっていたり、生えている草が違くなっていたり。
なによりも小動物を見かけるようになった。動物がいるということは水辺もあるはず。そう考えて疲れながらも歩き続けた。
日が傾いてきた頃少し休憩がてら周りを見ると背筋が凍った。
目の前には白骨化された死体が。
なんでここに。それも形的に人間。
見つけた時はとても驚いた。が、ふと気づいた。
(ここに人間がきたということは近くに水場があるのかも?)
そうポジティブに考えられた。
あまり休憩は出来ていなかったが、水には勝てなかった。なにより今日1日動き回っているのに一滴も飲んでいないのだから。
早く飲みたい。水を……
あれから数時間。
沢山歩き回って動物の後を追ったりしたが、見つからずあたりは真っ暗になっていた。
「くそっ、水さえあれば……暗いけど探しに行くか?」
苛立っていて思考を放棄しそうなったが、ここは冷静に。暗い中、森を歩くなんて危険すぎる。
明るい時でも転びそうになったのに、暗い中歩いたら確実に転んで体力が終わる。
冷静になって、今日は寝ることにする。そう思って横になって寝ようとした時、なにか音がすることに気づいた。
『グルルルルル……』
動物っぽい鳴き声する。明らかに小動物が鳴くような可愛い音ではなく、とても危険な……
そう思って体を飛び起き上がらせたその瞬間。
グチャァ
音が何も聞こえない。
体が動かない。
痛い。とても痛い。
目に映る光景は大きな舌と大きな牙が見える。
食われているんだ。
「うわあああああああああ!!!!」
声を荒らげながらもその何かを掴み剥がそうとするも力が強く、抵抗が無意味であることが分かってしまう。
体を揺さぶられ、意識がどんどん薄くなっていく。
(あぁ、死ぬのか……死ぬ感覚ってこんな感じなのか……)
そう思いながら体の力が抜けていき、次第に痛覚すら感じなくなった……
ーーONE
太陽が眩しい……
夏の暑さを感じながら、風が気持ちよく吹いていて、地面に生えている草が体に触れくすぐったい……
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