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貴方の言う真実の愛のお相手は誰なのでしょうか。まさか私の妹ではありませんよね?

閑話 自白薬

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 ※前話とほぼ同時期の話です。
 ーーーーー



 フマ家の当主が投獄されている牢屋の中で、数人の役人が1人の男を取り囲んでいた。取り囲まれている男は手足を縛られ椅子に固定されている。
 この椅子に拘束されている男が今回の薬物事件を起こした張本人であるフマ家の当主である。
 
「これから何をされるかわかるか?」
「ふん。どうせ情報を吐かせるために私を拷問するのだろう? 私は何をされてもそんなことをしたりはしない」

 強がりでもなんでもない、すでに死を覚悟したかのような表情で男がそう言葉を発した。

 すでに捕まってしまった以上、この国でやらかした内容を考えれば処刑以外の道はない。それはこの男も理解している。そのため、どのみち死ぬのであれば、なるべく関わった者の情報を流さないようにと覚悟を決めているのだ。
 ただ、その姿勢が自身の後ろに誰かがいると自白しているとはこの男は自覚していない。


 それから少し時間が経ったところで、役人がもう1人ワゴンを押して牢屋の中に入ってきた。そのワゴンの中にはいろいろな道具が詰められ、中には何に使うかわからない液体が入った瓶もある。 

「娘の方はどうだった?」
「だめだな。母親同様碌な情報を持っていなかった。どうやらこいつはそれなりに情報管理だけは優秀だったようだな。行動が露骨すぎて、どうしてそこだけ優秀なのかが疑問なくらいにな」

 役人がそう漏らした言葉を聞いた男が勝ち誇ったような表情をした。しかし、その表情を見た役人たちは男からは見えないように笑みを浮かべていた。

「上役からそうしろって言われていただけじゃないか? 流石にこいつがそこまで徹底できるとは思えない」
「そうかもしれんな」

 役人たちは男に聞かれないよう小声でそう言いながら、持ってきた道具などを準備していく。しかし、準備しているといっても先ほど持ってきた道具はほとんど使わないのか、厚手の長手袋と口を覆うための布、そして液体の入った瓶を取り出しただけで準備はすぐに終わった。

「何のためにお前たちを捕まえてから数日放置していたと思う?」

 役人の1人が男に近づきそう問い掛ける。そしてそれと同時に用意した道具を男に見えるよう置いていく。

「なんの……ま、まさか、あれを使うのか?」
「あれとは?」

 自分の前に用意されていく道具を見て、ある可能性に思い当たった男は青ざめそう問う。それを聞いた役人は薄い笑みを浮かべはぐらかすようにそう答えた。

「お前ら中和剤は飲んだか?」
「ああ」
「飲んでいないやつはここに居ませんよ」
「ならいい。それじゃあ、使うぞ」

 そう言って厚手の手袋をはめた役人が先ほど持ってきた小さな瓶の口に布を被せ、中の液体を少量布に含ませた。

「あ、あ、あぁ……」

 このあと自分がどうなるのか、その有り様をありありと想像できた男が、恐怖から声を振るわせる。

「なに、嫌だと思うのは最初だけだ。あとはお前も知っている通り、嫌な気持ちなんて何も沸かなくなる。そうだろう?」
 
 そう言って役人は男の顔にその薬品を含ませた布を近づける。恐怖を煽るためにわざとやっているのか、布を近づける速度はかなりゆっくりだ。

「や、やめろ…やめてくれ!」

 男はそう懇願し、少しでもその布から逃げるようにもがいた。しかし、しっかり椅子に固定された体ではほとんど逃げることはできなかった。

「ぅあ、ぁ…あ……」
 
 

 そうして、そう時間もかからないうちにその男は自身の背後にいる人物について洗いざらいはいたのだった。

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