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貴方の言う真実の愛のお相手は誰なのでしょうか。まさか私の妹ではありませんよね?

夕食

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 エレーナがフマ男爵家の不審な点に気付いてから数日が経ちました。

 国ではフマ男爵家への調査が続いていますが、まだ正式な結果は出ていません。しかし、調査に行った者たちに不自然なところが見られているので、そこから調査を進めて行く予定にはなったようです。

「調査に行った方たちが軒並みフマ男爵家を擁護しているというのは本当ですか?」
「そのようだ。私も直接その者たちに会った訳ではないが、調査に関わっている者からはそう聞いている。明らかに調査が進んでいない状況でそういったことを言いだすのはおかしいという事で、さらに調査員が集められているらしい。それと、その魔術に対抗できるように魔道具もいくつか持ち出されているようだ」

 夕食の場で父親であるレフリア伯爵とフマ家の捜査状況について話します。

「そうだとすればエレーナが言っていた洗脳術が実在する、という話が現実味を帯びてきますね」
「そうだな。とりあえず今話せる内容はこれくらいだ。エレーナは独自に調べているようだが、出来れば危ないことはして欲しくない。レイシャの方からもあまり深くかかわるな、と話しておいてくれないか。私からの言葉では受け流されることが多いのだ」
「ええ、私からも注意しておきます。私のため、と言ってはくれましたが、その所為でエレーナに何かあったら嫌ですからね」

 父親との話が終わると自室へ戻りました。

「エレーナが戻ってきているか見て来てもらっても良いかしら」
「はい。了解しました」

 部屋に戻るなり側に仕えていた使用人にそう指示を出します。先ほどの夕食の場どころか屋敷の中にエレーナが居なかったのはレフリア家の者なら把握しているでしょう。

 さらに言えば帰って来ていなかった理由も凡そわかっています。今回のようなことは決して初めてではないため、心配はしているもののまたか、といった感覚が強いのですけど。
 それに、エレーナは別に1人で行動している訳ではない。護衛はしっかり付けているし、側仕えの使用人も一緒に行動しているのですよね。

「戻りました。入室してもよろしいでしょうか?」
「? ええ、いいわよ」

 エレーナが帰って来ているのかを確認しに行った使用人が思いの外早く戻って来たことに疑問を抱き少し首をかしげながら入室の許可を出します。

「失礼します」
「エレーナは戻って来ていたのかしら?」
「先ほど戻って来たようです。それと、来客がありました」
「来客? こんな時間に?」

 既に夕食を終えている時間です。予定していたのなら別ですが、普通このような時間に来客が訪れることはありません。

「はい。そのため、レイシャ様もすぐにお召し替えをお願いします」
「……わかったわ」

 私も来客に会う必要があるのかしら、もしかしたらイゲリス家からの謝罪、もしくは捜査関係の話なのかもしれませんね。
 そう判断し指示通り部屋着から急いでドレスに着替え、来客が待つ場所へと向かいました。

 

「どこでお待ちになられているのかしら?」

 急いで支度をしたため、その来客がどこの誰なのか、どこで待っているのかを聞き忘れていました。
 普段と同じような来客であれば待合室に向かうはずなのですが、今回はその場所とは異なる場所のようですね。いつもと同じ場所であれば、そう先に教えてもらえていたでしょうし。

「貴賓室になります」
「そこでお待ちになられている、という事はレフリア家よりも地位が上の方という事ですか」
「そうなります」

 この時間の急な来客であれば特別な理由がない限り、レフリア伯爵家よりも地位の低い貴族家の者が来た場合は、商人と同じような扱いをすることはざらにあります。これはレフリア家に限った話ではありません。

 しかし、この状況で貴賓室を使用するという事は、レフリア伯爵家よりも地位の高い者が来たという事なのでしょう。よって、イゲリス家からの謝罪の線は消えますね。

「どなたがお越しになっているのでしょうか」
「侯爵家の方、と聞き及んでいます」
「侯爵家……ですか」

 侯爵家、と聞いて最初に思い浮かぶのは、シレスとの婚約を結んだ原因のメシャル侯爵家ですね。
 シレスだけでなく、イゲリス家が洗脳術の影響を受けているのであれば、領地が隣接しているメシャル侯爵家も他人ごとではないのかもしれません。とすれば、この侯爵家が来ている可能性は非常に高いですね。


 そうしては貴賓室の前までやって来ました。中に到着の合図を送る前に身なりを整え、目上の方に見られても問題ないようにしておきます。

 貴賓室の扉の近くに待機し、側仕えであるルルーが私が身なりを整えたことを確認したところで、中に居る使用人に聞こえるように扉をたたきました。

 少し間を開けたところで中から扉が開きました。

「お待たせしました。中へお入りください」

 父であるレフリア伯爵の側仕えである男に部屋へ入るよう促され、私と付き添いの側使えたちは貴賓室の中へ入ります。そこには当主である父親と母親、メシャル侯爵家の当主とその令息、そしてエレーナが居ました。どうやら私が最後に到着したようです。

「お待たせしてしまったようですね。ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません」
「いや、気にすることはない。私たちがこのような時間に来たのだから迷惑をかけているのはこちらだ」

 すぐに上手い返しが思いつかず、私は言葉ではなく微笑みを返しました。
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