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従順そうな妹が良いとおっしゃいますが、本当にその子で大丈夫ですか?
似た者同士
しおりを挟むグレイとの婚約の破棄が正式に成立した翌日。
既に本日の講義は終わり、私は学生会室で本日の講義の内容をまとめています。何時もでしたら学生寮へ戻ってからするのですが、時々気分転換がてら学生会室ですることもあるのです。
「こんな時間に誰かいるなんて、って、ああレインか」
「あら? ケイニー様がこの時間にここへ来るのは珍しいですね」
「ま、たまにはいつもと違う事をすることもあるさ。君もそうだろう?」
ここに居る段階で否定は出来ませんね。
暫く会話もなく時間が過ぎて行きました。
ケイニー様は図書館で本を借りて来ていたらしくそれを読み、私は元からやっていた作業を続けています。
「……聞きたいことがあるのだけど、いいかな?」
「何でしょうか?」
私の作業がひと段落したところでケイニー様が話しかけてきました。話しかける時期を見計らっていたことからして、軽い話題ではなさそうですね。
「君に婚約者が居なくなった訳だが今後はどうするつもりなんだい? たしか、君は家の跡取りだったよね?」
私とグレイの婚約が正式に破棄されたことは多くの学園生が把握しています。これは噂ではなく、グレイがサシアに振られた腹いせに言い触らしているのが原因です。どうやらケイニー様の所にも伝わっていたようですね。
「そうですね。まあ、別に婚約しないと家督を継げない、という訳でもありませんので、色々と学びながら気長に探しますよ。それに家督を継ぐのは妹のサシアに譲っても良いと、お父さまから逃げ道を示してもらっていますし」
我が家は子息が居ません。そのため長子である私が家督を継ぐ予定になっているのですが、お父さまは絶対に継がなければならない、とは強制はしていません。
先がどうなるのかわからない、というのもありますが今回のような事が起きれば次の婚約者を探すのに苦労するのです。
これは先もってそう宣言していたお父さまには、先見の明があったのでしょうね。
「なるほどそうなのか。……なら、僕が君の婚約者に立候補してもいいかな?」
「ケイニー様は婚約者が居たと記憶していますが?」
ケイニー様は侯爵家の長子ですし、学園での成績も評判も良好な方です。なので、多くの家から縁談の申し出があり、その内の中から一番利のある家の令嬢と婚約したと聞いています。
「あぁ、理由は違うけど君と同じさ。いろいろあって婚約の話が流れてしまってね」
最近の話なのでしょうか。それとも大分前からそうであった可能性もありますね。思い返してみれば、最近ケイニー様が婚約者の話題を話の中で出してきた記憶がありません。
「妹に家督を継ぐ権利を譲ることが出来るというのならどうだろうか?」
「そうですね……」
ケイニー様は侯爵家の方ですから私が嫁に行く形ですか。ああ、だから家督を譲ってもいいと言った後にその話を振られたのでしょう。
私からすればケイニー様はとても良い相手です。嫌は無いのですよ。本当に。
私に拒否感が無いことを感じ取ったのでしょう。ケイニー様は私が座っている場所へ来て真剣な目で私を見つめました。
「どうか私の婚約者になって頂けないだろうか」
そしてケイニー様は片膝をついてそう言うと、そっと私の前へ手を差し出してきました。その様になる姿に少しだけ頬が緩みます。
ケイニー様ならグレイのような結果にはならないでしょう。ああ、でも、私らしくこれだけは言った方が良いでしょうね。
「規律を守れる方なら是非」
私はそう言ってケイニー様の差し出された手に手を重ねました。
―――――
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