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いまさら愛せと言われましても
その後の
しおりを挟む彼は後に来た兵士によって連れて行かれました。処罰の内容について、今後関わることはないということなので詳しくは聞いていないませんが軽くはないでしょう。
その件であの後我が家にも監査が入りましたが、あの家が関わっていた不正に一切関わっていなかったので、何事もなく終了しました。
これで、この件は本当に終わり。
ようやく落ち着いて次期子爵としての引継ぎ業務に戻れます。
「大丈夫かい?」
今纏めていた書類が終わり、紅茶を飲んで休憩しているところへロレスがやってきました。
「大丈夫とは?」
「この前のこと。一応前の婚約者だったのだろう」
別に気にしてはいないのですが。もしかするとロレスが彼のことを気にしているのかもしれません。
彼との関係は婚約者だったとはいえ、そうなった理由は政略的な物だったため互いに来いという感情はなく、愛なんてものもなく、本当に他人のような感じの関係でした。たまに顔を合わせる度に脅され馬鹿にされていましたが、あくまでも言葉だけの事でしたので
「大丈夫ですよ。彼との関係は最初から無いようなものでしたから」
「そうなのか?」
「元々形だけの関係でしたから、特に思うことはありません」
「そうならいいのだが」
そう言うロレスの表情は先ほどよりも安心しているように見えます。やはり、ロレスが彼の事を気にしていたのでしょうね。
もしこれが嫉妬ゆえの事であれば嬉しいことですが、ロレスはあまりその手の感情を表すことはありませんし、おそらく聞いたところではぐらかされてしまうだけでしょう。
「そうだ」
「どうしま…した……か?」
声を掛けられたのでそちらを振り向いたところ、ロレスの手が私の頬に触れました。こういった場所でこのような行動をされたことがないので私は困惑で、それ以上言葉を出せなくなってしまいます。
「もし、この後少しでも時間があるなら庭の方に出ないか? 軽く散歩でもしよう」
「え……ええ、大丈夫ですが、どうして」
「ちょっとした嫉妬だ」
「え」
まさか、ロレスからそういうことを言ってくるとは思っていなかったので、言葉を失います。
「ほら行こう」
そういってロレスは私の手を取り軽く私を引き寄せました。
やっぱり私の夫はかっこいいと思います。あの時にすぐに私の前へ庇い出てくれましたし、本当に素晴らしい方だと思います。
ああそうそう。こうやってロレスと婚姻を結べたのは彼が強引に婚約を破棄してくれたからですし、そこのところだけは彼に感謝をしているのです。
完
―――――
これにて、この話は終わりとなります。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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