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聖女の証を義妹に奪われました。ただ証だけ持っていても意味はないのですけどね?

聖女の証明

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 義妹が黙ったところで王子はさらに言葉を続けます。

「ミーシャが来るまでの時間つぶしにはなるだろうと話を聞いていれば、偽物聖女だの、貧乏貴族だの、ミーシャは私の事を金づるとしか見ていないだの、暴言を吐き続け、最後には自分が本物の聖女だと与迷いごとを言うとは、信じられない存在だな」
「事実よ。私が本当の聖女! これで証明できるでしょう!」

 義妹はそう言って王子に見えるようにペンダントを掲げました。それを見て王子は呆れたようにため息を吐きました。

「確かにそれは聖女の証として扱われているペンダントだ。しかし、それを持っているだけで聖女に成れるわけではない」
「は? そんなわけないでしょう?」

 頭を抱えたくなりますね。本当にどうしてこの国の王族である王子にあのような口が利けるのか、一応家族とはいえ信じられません。

「それにそのペンダントを持っているからと言って本人の物とは限らない。それが自分の物だというのなら証明して見せろ」
「そんなの出来る訳ないじゃない。ただのペンダントなのよ!?」

 この言い分からして、持っているペンダントの持ち主ではないと言っているような物なのですけどね。まあ、義妹がそのことを知っているとは思えませんが。

「それが聖女のペンダントだとすれば、魔力を通すことで本当の持ち主かどうかの判断は出来る。しかし、お前は聖女なのだろう。何故そのことを知らない?」
「え、あ、えっと、そう! そこの偽聖女を試すために嘘を吐いただけよ!」

 言い訳にしてもおざなり過ぎますね。誰が聞いてもそれは信じないでしょうに。

「なら、証明できるだろう。早くやれ」

 結果が最初から分かっているため、王子もすぐに終わらせたいらしく義妹を急かします。

「王子。この子は体調が悪くて……」
「今まであれだけ騒いでいてそれは無いだろう。それに少し魔力を流すだけだ。体調が悪くとも出来なくなる事ではない」

 我が家の第2夫人である義妹の母が義妹に助け舟を出そうとしますが、王子によってすぐに却下されました。と言いますか、あれでどうにかなると思たのでしょうか?

「早くやれ」

 王子のその言葉に義妹の表情に焦りが見え始めました。

「どうした? まさかそのペンダントは自分の物ではないという事か?」
「そそ、そんなわけでは」

 八方塞がり状態の義妹の顔が青くなり始めました。しかし、やらないわけにはいかず、義妹は魔力を込めるようにペンダントを握り閉めました。

「反応が無いな。持ち主であれば美しい光を放つというのに、どういう事だろうな?」

 当然、義妹が握りしめたペンダントは何の反応も示しませんでした。そもそも義妹は魔力の扱いも出来るかどうか怪しいですからね。どうあがいてもペンダントを反応させるのは不可能でした。

「え、あ、ちょ……調子が悪いみたいで」
「はあ、そんなわけないだろう」

 王子が本当に呆れた顔をして、近くで警備していた兵士に指示を出します。

 そしてその兵士は義妹の所へ行くと、その手に持っているペンダントを強引に奪いました。

「何するの! それは私んぎっ!?」

 ペンダントを奪われまいと抵抗した義妹を、ペンダントを取った兵士とは別の兵士が押さえ付けました。

「私にこんなことをして良いと思っているの!?」
「王子、こちらを」

 義妹の言葉を無視して兵士はペンダントを王子に渡しました。
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