247 / 260
ハウジングとイベント
76:たぶんないと思う
しおりを挟む「グオォオン!?」
兄の攻撃が効いたのか、オーレスワイバーンが短く唸った。しかし、その後すぐに兄に向って噛みつこうとしているのか体をひねりながら首を伸ばす。
「ギャオッ!」
「あっぶねぇっ!?」
寸でのところでその攻撃を躱した兄に再度追撃が行かないよう、オーレスワイバーンの頭に向かって攻撃を放つ。
私の攻撃が当たったことでできた一瞬の間に兄はぎりぎり攻撃が当たらない場所まで退避した。
オーレスワイバーンのHPを確認すれば、兄の攻撃は私がした攻撃のダメージを抜いても100近いダメージをたたき出しているので、有効な攻撃ではあったようだ。しかし、それよりもその攻撃そのものが気になった。
今兄が使った攻撃を取得することが出来ればもう少し攻撃の幅が広がるよね。重撃って言っていたし、今回の相手みたいに物理的に固くてそこそこ魔法に対しても耐性がある相手にはかなりいいスキルだと思う。
すぐに詳しく聞きたいところだけど、さすがに今聞くわけにはいかないし、この戦いが終わったら聞くことにしよう。
『サンクス』
『あ、うん』
『ん? どうした』
『大丈夫。何でもない』
『そうぉっと!?』
スキルのことを気にし過ぎて生返事をしてしまったことで、兄に少し気にされてしまった。反省。
しかし、ふむ。今の攻撃で割と兄の方にヘイトが向いているようだし、2回目の設置型爆弾もそろそろ使えそうかな。
これまでちょこちょこ使えそうなタイミングを見計らっていたのだけど、ずっと突撃され続けていて、そうする隙が無かったのだよね。やっぱりこういった場面ではソロよりも複数で挑んだ方がやりやすい。多くなりすぎると逆に邪魔になるのだけども。
『爆弾、設置するから』
『地雷?』
『そう』
『了解。気づかれないように誘導しておくわ』
『よろしく』
そう言うと兄は逃げつつもオーレスワイバーンを引き付けるように攻撃を始めた。
兄がヘイトを引き受けてくれている間に設置型爆弾をオーレスワイバーンが通過するルート上に設置する。最初の時とは違い、設置した後なるべく見つからないように爆弾の上に砂を被せて軽く偽造していく。
【罠】スキルには設置した罠を発見され難くする効果もある。今やった砂を被せたところで効果が上がるかはわからないけど、こういうちょっとしたことでも効果が上がることもあるので余裕があればしておいた方がいいのだよね。ほんの少しとはいえ熟練度も上がるだろうし。
2回目の設置型爆弾でダメージを与えてからオーレスワイバーンの攻撃の激しさが増し攻撃できる回数が減ってしまった。
オーレスワイバーンの残りのHPは4割強。こちらは大きなダメージを受けていないけれど、残り時間はおよそ1時間といったところ。今のペースでは討伐できるかそうかは微妙……どころかおそらく間に合わない。
兄が来てくれたことでダメージ自体は与えられているけれど、どうしても私自身の火力が足りていない。
『もしかしてこれ、背中の上とか安地だったりしないか? 背中に乗れれば攻撃は届かなさそうだし、ワンチャン一方的に攻撃出来たり』
タイムリミットが迫る中、あまりダメージを与えられていないからか兄がそのようなことを言い出した。
『……たぶんないと思う』
多少攻撃できる時間はあるとは思うけれど、安全地帯ってことはないと思う。
確かにオーレスワイバーンは体が大きいし、他のワイバーンに比べて体が固そうだから背中に乗った相手には攻撃できそうにないけど、そんなわかりやすい安全地帯があるとは思えない。直接攻撃できないまでも何かしら間接的に攻撃できる手段は持っていると思う。
よくある攻撃だと地面に背中をこすりつけるように転がるとか。あるいは他の部位に比べてほとんど攻撃が通らないとか、単にすぐ振り落としてくるとか。
ものによっては背中から毒ガスを出す相手も居そう。さすがにオーレスワイバーンがそれをしてくるとは思えないけど。
『確認してみないことにはどうかはわからないだろ』
『まあそうだけど』
まあね、それはそうなのだけどね。露骨な場所だから逆にそういう設定になっている可能性がないとは言い切れないけども。
うーん、でもやっぱりないよね?
とはいえ、このまま続けても時間切れになりそうだから、何か別のことをして状況を変えていく必要はあるのは確か……なのだけども。
『このままだと時間微妙だし、ちょっとやってみるわ。駄目そうならすぐ離脱するけど、死んだらすまん』
『ん』
そう言うと兄はオーレスワイバーンの背に乗るタイミングを計り始めた。
設置型爆弾を当ててからヘイトは私の方に向いているし、たぶん乗ること自体はそこまで難しくはないと思う。
ただ、その後どうなるかまではわからない。
「せいっと!」
兄が突進に合わせてワイバーンの背にむかって跳躍する。普通に跳んだだけでは直接乗るに高さが足りないと判断したのか、壁を使って2段ジャンプの要領で高さを稼ぎ、そのままワイバーンの背に器用に着地した。
「ギャガア!?」
突然自分の背中へ今戦っていた相手が乗ってきたことに驚いたオーレスワイバーンが、今まで聞いたことがないような声を上げる。
『行けるじゃん』
『そうだね』
まあ、スキルさえあればたぶん乗るだけならそこまで難しくない。問題はこの後。乗ったまま攻撃をすることが出来るか。どれくらいそれを続けられるかなのだけど。
『足場は悪いがとりあえず攻撃してみるか』
そう言いながら兄が背に乗りながら攻撃していく。今まで向かってくるオーレスワイバーンを回避して、その隙に攻撃するという繰り返しになっていたのだけど、背中の上に居ればそのようなことをする必要もないので連続で攻撃を繰り出している。
ただ、足場が悪く少しバランスが取り難いのかオーレスワイバーンの背中にある棘のようになっている鉱石をつかんで攻撃しているため、今までのようにダメージを出せていないみたいだ。
「ガアアァァァアアア!!」
やはりと言うか背中に乗って攻撃をしてくる兄を嫌がり、オーレスワイバーンが兄を振り払おうと体を大きく振るう。しかし、兄は背中にある鉱石につかまって落とされないように耐え、その合間に攻撃を加え続けている。
『案外このままいけるんじゃないか。これ!』
思いの外上手くいっているせいか、ちょっと調子に乗っているようだけど、想像していたよりも兄が背中の上で奮闘している。
ダメージも結構出せているし、もしかして本当に安全地帯……あ。
そんなことを考えていたところでオーレスワイバーンの動きが変わり、今度は背中を地面に擦り付けるつもりなのか翼をたたみ姿勢を低くし始めた。
「あ、やべうおぁっ!?」
調子に乗って攻撃していたため、反応が遅れた兄がオーレスワイバーンのデスローリング? に巻き込まれかけていた。
寸でのところで回避はできたみたいだけど結構ダメージ食らっていそう。とはいえ、ちょっとの間なら背中の上に乗って攻撃できるのがわかったのは収穫と言えるかな。
スキル的に私にはできないからあまり参考にはならないけど。
ん、おや? オーレスワイバーン、思いきり巣を巻き込んで転がっていっているけど、あれ大丈夫なのかな。
自分たちが守っていたはずの巣を自ら巻き込んで壊すとか、何となく不具合の気配がするのだけれど。
141
↓
私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
↓
森の中でひっそりと生活しようとしたのだが
いつの間にかハーレムになっていた
フリースペースに別作品のリンクを貼ってみませんか?
↓
フリースペースに他の作品のリンクを貼りたいのだー!
お気に入りに追加
1,217
あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!

忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。


間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる