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ハウジングとイベント
65:誰もやらないってことはそういうこと
しおりを挟む廃墟を探索した後、最初はすぐにハウスに戻って集めた素材を使って生産する予定だった。
しかし、あのまま帰るのはなんとなく物足りないと感じて気になっていた橋の修理に手を出してしまった。
手を出してしまった。と感じてしまった通り、やり始めてからちょっと後悔した。
材料である丸太の切り出しやそこから木材に加工していく最初の過程は良かったのだけど、その後の橋を修復する作業がものすごく大変だった。
そもそもクエスト自体は修復となっているけど、完全に橋は落ちてしまっているし作業自体ほぼ新しく橋をかけるのと同じっていうね。
だから完全に修復が終わるまでの工程が多いし、【木工】スキルの熟練度が低いから組み上げたり固定したりする時たまに失敗するという。失敗したらその素材は消滅しちゃうから、なくなった分はまた補充しないといけないしで、二度手間、三度手間みたいな感じで、繰り返しの作業が本当に多かった。
作業が多かったから、それで【木工】スキルの熟練度すごく上がったけど、それでも最後の方まで失敗は発生し続けた。
別にやらなければいけないクエストとかではないし、やめたところでペナルティがあるわけでもないから途中でやめてもよかったのだけど、自分から始めた以上、投げ出すのは何となく嫌だったから最後までしっかり終わらせた。
でもこれ、クエスト条件に【木工】スキルの熟練度50%以上ってあるけど、あくまでも最低限修復させるために必要なのが50%ってだけで、まともにやるなら最低でも2次スキルに行っていないと厳しいものだったよね? というか1人でやるものでもないよね?
道理で誰も修理しないわけだよ。素材の必要数が多いし、手間もすごくかかる。それに【木工】スキルは今のところ生産スキルの中でも需要が少ないし人気が低いスキルだから、ここまで来ることができて片手間で直せるプレイヤーって、たぶん片手で足りるくらいしかいないのでは?
まあ、本当に【木工】スキルの熟練度はすごく上がったのだけどね。
元が40%を超えたところだったのが木材を作り終わったところで60%を超えて、橋を完全修復したところで二次スキルの【上級木工】になったうえで熟練度は23%になっていた。
普通に作業するよりもスキルの熟練度が上がりやすかったと思う。
原木から伐採して木材にするまでは単純に作業量が多かったからなのだけど、1次スキルの中盤から一気に2次スキルまで熟練度が上がっている以上、その辺はクエストボーナスみたいなものがかかっていたのだろうね。
今までこんなに一気に熟練度が上がったことはないし。まあ、もしかしたら【木工】スキルの熟練度が低すぎたせいで、難易度ボーナスが発生していただけかもしれないけれど。
それと報酬として決まっていたSTP/SKPが15ポイントずつだった。掲示板で上がっていた情報と差があるのが気になるけど、もしかしたら修復した橋のサイズによってもらえる報酬にも差があるのかもしれない。
まあそんな感じで昨日はログアウトするギリギリまで、橋の修復をしていたわけです。
割と時間がかかったせいで作業の途中、あの廃墟方面に移動していったプレイヤーがそれなりに橋脚を使って川を渡っていったけど、物珍しいものを見るような目でちら見されてちょっと辛かった。幸いちょっかいをかけられるようなことはなかったし、関わってこようとしたプレイヤーもいなかったから作業を中断するようなことはなかったけど。
そんな感じで橋を直した後、ハウスに戻って……とはならず、ログアウトまでの時間の関係で一旦廃村にある兄たちのテントにやっかいになったのだ。
なので、現在はハウスではなく廃村にいるわけです。
ただ、ログアウトのために訪れた廃村を見て私はすごく驚いた。
そこには私が最初に見た廃墟と草原化した土地しかなかった廃村は存在せず、そこそこ発展している村と言える場所が存在していたからだ。
というか、ログアウトする前にも確認したけど、いつの間にか廃村の復興度が96%になっているのだよね。まさかこんなに進んでいるとは思っていなかったからとても驚いた。
おかしいよね? 私がハウスを手に入れる前にきた時はようやく建物の土台が完成するくらいだったのに、どれだけ急ピッチで建物が建てられたのか。
2、3日前には材料の木材も不要って言われていたし、結構進んでいるのだろうなぁと理解はしていたのだけど、まさかここまでとは。ちょっと前までプレイヤーが少なくて作業が進まないみたいなことを聞いていたから、イベント直前くらいまでかかると思っていたのだよね。
何だろう。そろそろ終わりそうだから、作業の種類も少ないし、ちょっと手伝って貢献度を稼いでおこうと考えたプレイヤーが増えたのかな。
こういうのって少しでも手伝って貢献度を稼いでおけば何かしらの報酬が貰えることが多いし。
「アユ、もう行くのか?」
「うん」
移動のための準備を進めていると、たまたま同じタイミングでログインした兄が後ろから声をかけてきたので、そう答える。
ここに居てもやれることはあまりないからね。復興の進捗が良くなかったら少し手伝ってもいいかなと思っていたのだけど、ここまで進んでいればその必要もないでしょ。
「そっか。家でも言ったけど、イベント近いせいで生産関係ちょい荒れているから気をつけろよ」
「ん」
ここ2、3日装備の新調とかハウスクエストでギルド回りを完全に無視していたから気づかなかったけど、イベントに向けて他のプレイヤーは結構動いているのだよね。
一応、兄が言っている生産関係のごたごたは、生産系のクランや住民の生産工房で起きているようで、ギルドの生産施設では起きていないようだから、ギルドで生産する分には問題ないだろうけど、警戒しておくに越したことはない。
イベントも近くなってきたし、防具の強化のためにガルスの工房に行こうと思っていたけど、今は避けた方がいいよね。
一応自力での強化もできるし、ガルスのところにいくのはまた今度にしよう。
「ああ、それとさっきの話、ちょっとでもいいから考えておいてくれよ」
「あー…うん、わかった」
今朝、ログインする前に兄からある話を持ちかけられた、というか依頼されたという方が近いのかな。
まあ、色々考えるよりも先に移動しよう。考えるのは移動中でもできるからね。
「それじゃ」
「ああ」
見送りのつもりなのか、廃村の端までついてきた兄にそう言って廃村を出た。
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私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
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