UWWO ~無表情系引きこもり少女は暗躍する?~

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
上 下
226 / 260
ハウジングとイベント

59:周辺調査

しおりを挟む
 

 地下の工房を確認した後、まだ見ていなかった部屋や細かい場所を含めハウスの確認も終わったので、ハウス周辺の森の中を見て回ることにした。決してスキルの熟練度が足りなくて設備が十全に使えないことで絶望したとかそれが原因ではない。

 スキルの熟練度が足りなくて設備が十全に使えないのなら、熟練度を上げればいいだけなのだ。ただ、それをするには大量の素材が必要だし、少しでも早く熟練度を上げるためには簡単に作れるアイテムではなく、少し作るのが難しいアイテムを作った方がいい。そうなれば第1エリアや第2エリアで採取できる素材では物足りない。

 特にそろそろ3次スキルになる【上級錬金】は、下級ポーションとかすぐに作れるアイテム程度だとほとんど上がらなくなっているから、第3エリアでとれる素材はほぼ必須である。

 そんな感じで、生産で使う素材を集めるついでにハウスの周辺を確認しているのだ。


 周辺の森で素材を採取しながら地下にいった後に確認したことについて考える。
 ハウスの2階の確認していなかった部屋は寝室になっていた。これと言ってめぼしいものはなかったのだけど、1つだけ看過できない点があった。

 寝室に置かれていたベッドに触れた瞬間、リスポーンポイントを更新するかしないかの確認ウィンドウが出たのだ。まさかハウスをリスポーンポイントに設定できるとは思っていなかったのですごく驚いた。 

 ただ、リスポーンポイントの更新に関してまだする予定はない。
 現段階で第3エリア内にリスポーンできるのはこのエリアで活動する分にはかなり有用なことではある。だけどリスポーンポイントを変更してしまうといくつか不都合な部分が出てきてしまう。
 リスポーン地点として場所がいまいちということもあるけど、一番の問題なのは、他のエリアに移動するのに時間がかかるようになってしまうことだ。
 
 更新しなければ、デスポーンで第2エリアのセントリウスに移動することができる。当然経験値や熟練度の減少というデメリットもあるけれど、それ以上にメリットがある。
 今の段階では第3エリアにギルドは見つかっていない。そのため、第3エリア内にリスポーンポイントを設定してしまうと、ギルドを利用するために長距離を移動しなければならない。

 それに作ったアイテムを売るにはギルドに行かなければいけないので、これが結構重要なところなのだ。
 兄たちを通してアイテムを売り買いすることもできなくはないのだけど、それだって限界がある。ギルドに設置されている委託取引掲示板が使えないというのは、生産をメインにしているプレイヤーにとっては結構な痛手なのだ。

 一応、僻地ハウスに対する温情なのか、それともすべてのハウスも同じようになっているのかはわからないけれど、ハウス拡張候補欄に転移石像や専用委託取引掲示板を設置するという項目があった。それさえあればリスポーンポイントをハウスに設定するのは問題なくなるし、アイテムを売り買いするためにギルドに一々行く必要もなくなる。

 当然、設置するために費用や素材、一定以上のギルドランクが必要になるため、今すぐに設置ということはできない。
 素材は現状どうにか用意できる範囲なので問題はないのだけど、必要なASがかなり高額なのとギルドランクの関係で結構な時間がかかりそうな気配はしている。

 ギルドランクに関してはそろそろ上がりそうではあるのだけど、これだってギルドに行かなければどうすることもできないので、移動に時間がかかるようになってしまうのは面倒でしかない。

 うん? おっと、こっちに何かが高速で近づいて来ている? 【感知】で出ているマップには赤い点で表示されているから敵性存在なのは確実。それと移動速度からしてプレイヤーということもなさそうだね。

「ギュアァアアァン!」
「フォレストスラッシュディアか」

 目の前に現れたのは、2メートルを超える体躯と鋭く尖った大きな角を持つ鹿型のエネミーだった。

 この鹿はいつも自分から目の前に飛び込んでくる好戦的なエネミーで結構面倒なのだよね。戦ったのは数回程度だけど、とにかく一気に距離を詰めてくるから気を抜いている時に来られると後手に回りやすい。

 強さで言えばあの犬、フォレストシャドウウルフ1匹よりも強い。多分2匹同時にあの犬と戦うくらいの強さにはなると思う。とはいえ今では奇襲されない限りそこまで苦戦するような相手ではないので、焦るような相手ではない。

 攻撃も大振りなものが多いし魔術を使ってくることもないので、攻撃を回避することはそこまで難しくはな……あ。
 ちょっと訂正。
 この巨体と巨大な角による攻撃は範囲が広いので回避するのは結構難しい。特に森の中だと動き回れる範囲が狭い分、うまく回避するのは難しいかもしれない。

「グォォウ!」
「くっ」

 突進から角で突き上げつつ薙ぎ払いの攻撃範囲が今まで戦った鹿よりも一回りか二回りくらい広い。これまではギリギリでもそのまま躱すことができたのだけど、今回は無理だ、躱しきれない。

 咄嗟にシャドウダイブを使い回避する。
 できればこういった一気に距離を詰めてくる、一瞬のスキが致命傷になりかねない相手に、技後硬直があるシャドウダイブは使いたくなかったのだけど、下手に攻撃を食らうよりはましだ。
 影の中から出る場所を吟味すれば、起き攻めみたいなことになることはないだろう。幸い森の中だから、出口となる影はたくさんある。 

 長く影の中にいると体勢を整えられてしまうのですぐに外に出なければならない。後ろ蹴りを警戒して少し離れた位置に出たところで鹿の後姿を確認する。

 この鹿、他のやつより一回りくらいサイズが大きいのかも。記憶にある鹿のシルエットよりも明らかに大きい。それに今まで遭遇した鹿よりも攻撃範囲がだいぶ広かったし。
 個体差。ということなのかそれともLVが今までの相手より高いのか。

 突進の反動でまだ次の攻撃に移り切れていない鹿に対して【鑑定】を行う。それで表示されたLVは26。

 うわ。今まで対峙したモブエネミーの中で過去一にLVが高い。でも私とのLV差が少ないのは結構厄介。

 ジャイアントキリングの称号のせいで格下、私よりLVが下の相手だと与ダメージ20%減だからLVの近い格下って厄介以外の何物でもないのだ。
 まあ、その分新しいエリアに行けるようになったときとか、BOSS相手には結構悪くない効果なのだけど。

 しかもこの鹿、体躯が大きい分HPが多いからタフいのだよねぇ。まあ、好戦的なうえに体躯が大きい分攻撃が当てやすいから、あの犬よりは楽なのだけどね。

 


 _____
 フォレストスラッシュディアの見た目は、殺意高めな角の迷彩色ゼルネ○ス(かくとう)見た目はいいんだけどとにかく凶暴
 この個体は体自体は通常より少し大きいくらいだけど、角が立派

 ハウスからの各転移石造への移動は通常の街ー街間の移動よりもコストが高く設定されています。(今まで記載していませんでしたが、転移に必要なコストはASとMP)
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

追い出された万能職に新しい人生が始まりました

東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」 その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。 『万能職』は冒険者の最底辺職だ。 冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。 『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。 口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。 要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。 その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた エアコンまとめ

エアコン
恋愛
冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた とエアコンの作品色々

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

処理中です...