UWWO ~無表情系引きこもり少女は暗躍する?~

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
上 下
215 / 260
ハウジングと第3エリア

53:時間切れと依頼の完了

しおりを挟む
 
 花壇に雑草が生い茂っているわけでもないし、植えられている花や木々もしっかりと綺麗に整っている。1年放置するだけでもひどい状態になるのに、流石にこれはおかしいよね?
 幻影魔法で隠されている間は時間が止まる、そんな設定があるならわかるけど、そういうことができるなら目の前にいるガーディアントレントドールの劣化も止められただろうし、おそらくそういうのは無いはず。

『これで、私の役目は終わり。
 休止状態で待機していたのでどれほど時間が経過していたのかはわかりませんが、この状態を見る限り相当な時間が経過していたようですね』

 今更だけど、陶器でできているっぽい体が100年程度でここまで崩れるっていうのもちょっとおかしいような。ドールの躯体ということで色々組み込まれているだろうから、そのせいで経年劣化には弱くなっているのかな。
 オートリペア、自己回復機能も破損していたからその影響もありそう。それにこのハウスの元の持ち主が居れば定期的に修復もできただろうし、本来ならもっと長く生きることができた動くことができたのだろうね。

 不意に上の方からバキッと何かが折れたような、もしくは割れたような音がした。

 その音に釣られて視線を上に向けるとちょうど目の前に緑色の物体が一瞬映り、視界を一瞬で通りすぎたそれは大きな音を立てて地面に叩きつけられた。
 何事かと思い、落ちて来た物とそれがあったであろう上を見上げる。
 
 所々緑色が混じっている物体……あ、ガーディアントレントドールの葉っぱの部分がなくなっている。そうか、緑色に映ったのは葉っぱの部分だったからか。

『大丈夫です…か』

 問題なかったことを示すために頷く。

 当たってはいないから問題ないけど、それ以上にあなたは大丈夫なのかと言い返したい。でも、聞いたところで何が変わるってわけでもないのだよね。それに聞いて良いものなのかもわからないし。

 って、あ、さっき後ろに下がるように言ってきたの、これが当たらないようにってことだったのかな。確かに先ほどまでいた位置だとあれが直撃、とまでは言わないけど、擦る以上には当たっていたと思うし。

『当たらなくて…よかった。見てわかる…通り、私にはあまり時間が残され…ていません。何か質問…があればお早めにお願…いします』

 え、いきなり時間制限あるけど質問いいですよって言われても思いつかなーー、いや一個あった。

「時間が経っているはずなのにここの庭が綺麗なのは、どうしてですか」
『綺麗?』

 あれ? よくわかっていない感じ? 目らしき場所がないから見えていないって可能性もあるけど、私の位置を把握していたようだし見えないってことはないはず。
 でもこの反応からして、この庭がきれいな状態であるのは想定外のことなのかもしれない。

『ほんと…うですね。しかし、あの時……時を止めるような魔ほ…うを施すほどの余裕はなか…ったはず。なら、これは……』

 明らかに困惑しているのがわかる。
 となると、やっぱり時間を止める系の魔法は使われていないみたいだ。じゃあなんでこうなっているのって感じだけど。

『まさかあの子が?』

 あれ、何か思い当たる節でもあるっぽい?

 その様子を見て、あの子に質問しようとしたところでドーディアントレントドールの一番太い枝、腕として使っていた物がボキリと音を立てて折れ、地面に落ちた。
 それを皮切りにガーディアントレントドールの体が一気に崩れ始める。

『あ、あ…もう時間のよう……ですね。質問に答えるこ…とが出来ずご…めんなさい』

 まさかの時間切れ。ちゃんとした質問の答えは得られず、っていうかこれはあれだね。質問する内容間違えたっていう。
 他の質問をすればよかったのだけど、他に思いつかなかったから結果は同じか。いや、何も言わないよりはマシだよね。とりあえず何かあるっていうのはわかったのだから。

『…出来れば、あの子のこと…もよろし…く…頼み……ます』

 最後にガーディアントレントドールがそう言い残し、ボロボロと全体が崩れて行った。
 
 最後の力を振り絞ってって感じなんだろうけど、あの子って誰のことなんだろうか。
 目の前に出て来た家は100年も隠されていた訳で、そこに人が住んでいるとは思えないし別の場所の話なのかな。でも、さっきの質問の際に、まさかあの子が? って呟いていたからその子の可能性はありそう。まあ、どのみち誰なのかわからないけど。

 ガーディアントレントドールは役目を終えたことで完全に崩れ去り、その場所にはボロボロどころか砂のようになった残骸が砂の小山のようになっている。
 その中に見覚えのある形のものが埋まっているのが見えた。

 その砂山の中から見覚えのある球体を掘り出して【鑑定】を使う。


[(アイテム) ドールコア(戦闘型) Ra:Le Qu:S Du:1 / 500 SAS:–]
 戦闘型のドールを動かすために必要なコア。これがあることでドールは主を定め、記憶し、指示を理解できるようになる。コアを作る際に使用した素材のRa・Quに応じてドールの性能が変動する。このコアにはダイヤモンドが使用されているようだ。
 このコアを砕くことでダイヤモンドを取り出すことができる。
 状態:破損はしていないがこのままドールに組み込んだ場合、破損する可能性が存在する。
 修復素材:ダイヤモンド(Qu:A以上)・ミスリル(Qu:A以上)・魔鉱石・金


 ああ、やっぱりゴーレムコアと同じようなアイテムだった。いや、RaとQuすごいな。もしかしRaとQu次第で上がるのってAIの質も含まれているのかも。
 あとこれは少し前に拾ったゴーレムコアと違って破損はしていないね。ただ、結局Duを回復させないと使えないみたいだから、大した違いはないようなものだけど。

 ……これを使ってドールを作ったらさっきと同じ人格で復活するのだろうか。修復に必要な素材、地味にこっちの方が多いし何かミスリルが必要とか、全く知らない魔鉱石とかいうのが書かれているから当分修復は無理だなぁ。
 そもそも魔鉱石って何?

 とりあえず、想定していたよりも時間が取られたからあまり余裕がないし、ハウスの中を軽く確認してから一旦ログアウトかな。


―――――

中編はこの辺で区切り
後編はハウジングを弄りつつ、イベントへという形になるかと思います
ここ3ヶ月ほど更新ペースが激落ちていて申し訳ないです
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

だらだら生きるテイマーのお話

めぇ
ファンタジー
自堕落・・・もとい楽して生きたい一人のテイマーのお話。目指すのはスローライフ!

処理中です...