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ハウジングと第3エリア
53:時間切れと依頼の完了
しおりを挟む花壇に雑草が生い茂っているわけでもないし、植えられている花や木々もしっかりと綺麗に整っている。1年放置するだけでもひどい状態になるのに、流石にこれはおかしいよね?
幻影魔法で隠されている間は時間が止まる、そんな設定があるならわかるけど、そういうことができるなら目の前にいるガーディアントレントドールの劣化も止められただろうし、おそらくそういうのは無いはず。
『これで、私の役目は終わり。
休止状態で待機していたのでどれほど時間が経過していたのかはわかりませんが、この状態を見る限り相当な時間が経過していたようですね』
今更だけど、陶器でできているっぽい体が100年程度でここまで崩れるっていうのもちょっとおかしいような。ドールの躯体ということで色々組み込まれているだろうから、そのせいで経年劣化には弱くなっているのかな。
オートリペア、自己回復機能も破損していたからその影響もありそう。それにこのハウスの元の持ち主が居れば定期的に修復もできただろうし、本来ならもっと長く生きることができたのだろうね。
不意に上の方からバキッと何かが折れたような、もしくは割れたような音がした。
その音に釣られて視線を上に向けるとちょうど目の前に緑色の物体が一瞬映り、視界を一瞬で通りすぎたそれは大きな音を立てて地面に叩きつけられた。
何事かと思い、落ちて来た物とそれがあったであろう上を見上げる。
所々緑色が混じっている物体……あ、ガーディアントレントドールの葉っぱの部分がなくなっている。そうか、緑色に映ったのは葉っぱの部分だったからか。
『大丈夫です…か』
問題なかったことを示すために頷く。
当たってはいないから問題ないけど、それ以上にあなたは大丈夫なのかと言い返したい。でも、聞いたところで何が変わるってわけでもないのだよね。それに聞いて良いものなのかもわからないし。
って、あ、さっき後ろに下がるように言ってきたの、これが当たらないようにってことだったのかな。確かに先ほどまでいた位置だとあれが直撃、とまでは言わないけど、擦る以上には当たっていたと思うし。
『当たらなくて…よかった。見てわかる…通り、私にはあまり時間が残され…ていません。何か質問…があればお早めにお願…いします』
え、いきなり時間制限あるけど質問いいですよって言われても思いつかなーー、いや一個あった。
「時間が経っているはずなのにここの庭が綺麗なのは、どうしてですか」
『綺麗?』
あれ? よくわかっていない感じ? 目らしき場所がないから見えていないって可能性もあるけど、私の位置を把握していたようだし見えないってことはないはず。
でもこの反応からして、この庭がきれいな状態であるのは想定外のことなのかもしれない。
『ほんと…うですね。しかし、あの時……時を止めるような魔ほ…うを施すほどの余裕はなか…ったはず。なら、これは……』
明らかに困惑しているのがわかる。
となると、やっぱり時間を止める系の魔法は使われていないみたいだ。じゃあなんでこうなっているのって感じだけど。
『まさかあの子が?』
あれ、何か思い当たる節でもあるっぽい?
その様子を見て、あの子に質問しようとしたところでドーディアントレントドールの一番太い枝、腕として使っていた物がボキリと音を立てて折れ、地面に落ちた。
それを皮切りにガーディアントレントドールの体が一気に崩れ始める。
『あ、あ…もう時間のよう……ですね。質問に答えるこ…とが出来ずご…めんなさい』
まさかの時間切れ。ちゃんとした質問の答えは得られず、っていうかこれはあれだね。質問する内容間違えたっていう。
他の質問をすればよかったのだけど、他に思いつかなかったから結果は同じか。いや、何も言わないよりはマシだよね。とりあえず何かあるっていうのはわかったのだから。
『…出来れば、あの子のこと…もよろし…く…頼み……ます』
最後にガーディアントレントドールがそう言い残し、ボロボロと全体が崩れて行った。
最後の力を振り絞ってって感じなんだろうけど、あの子って誰のことなんだろうか。
目の前に出て来た家は100年も隠されていた訳で、そこに人が住んでいるとは思えないし別の場所の話なのかな。でも、さっきの質問の際に、まさかあの子が? って呟いていたからその子の可能性はありそう。まあ、どのみち誰なのかわからないけど。
ガーディアントレントドールは役目を終えたことで完全に崩れ去り、その場所にはボロボロどころか砂のようになった残骸が砂の小山のようになっている。
その中に見覚えのある形のものが埋まっているのが見えた。
その砂山の中から見覚えのある球体を掘り出して【鑑定】を使う。
[(アイテム) ドールコア(戦闘型) Ra:Le Qu:S Du:1 / 500 SAS:–]
戦闘型のドールを動かすために必要なコア。これがあることでドールは主を定め、記憶し、指示を理解できるようになる。コアを作る際に使用した素材のRa・Quに応じてドールの性能が変動する。このコアにはダイヤモンドが使用されているようだ。
このコアを砕くことでダイヤモンドを取り出すことができる。
状態:破損はしていないがこのままドールに組み込んだ場合、破損する可能性が存在する。
修復素材:ダイヤモンド(Qu:A以上)・ミスリル(Qu:A以上)・魔鉱石・金
ああ、やっぱりゴーレムコアと同じようなアイテムだった。いや、RaとQuすごいな。もしかしRaとQu次第で上がるのってAIの質も含まれているのかも。
あとこれは少し前に拾ったゴーレムコアと違って破損はしていないね。ただ、結局Duを回復させないと使えないみたいだから、大した違いはないようなものだけど。
……これを使ってドールを作ったらさっきと同じ人格で復活するのだろうか。修復に必要な素材、地味にこっちの方が多いし何かミスリルが必要とか、全く知らない魔鉱石とかいうのが書かれているから当分修復は無理だなぁ。
そもそも魔鉱石って何?
とりあえず、想定していたよりも時間が取られたからあまり余裕がないし、ハウスの中を軽く確認してから一旦ログアウトかな。
―――――
中編はこの辺で区切り
後編はハウジングを弄りつつ、イベントへという形になるかと思います
ここ3ヶ月ほど更新ペースが激落ちていて申し訳ないです
10
↓
私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
↓
森の中でひっそりと生活しようとしたのだが
いつの間にかハーレムになっていた
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