UWWO ~無表情系引きこもり少女は暗躍する?~

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
上 下
178 / 260
新規プレイヤーとあれこれ

24:指名手配犯! っておまえは?!

しおりを挟む
 
 周囲を見渡し安全そうなルートを選んで進み、アイテムを手に入れながら途中襲い掛かってきたエネミーを倒しつつ、荒れた山肌を登ること2時間が経過。

 これまでにエンカウントしたエネミーは3種類。坑道内にもいたムーブロックとこいつの上位種と思われるロールロック。
 ロールロックはムーブロックに比べて動きの速いエネミーで、岩の体をしているくせにコットンマウス並みの早さで動き回ってきたため、対処が面倒だった。まあ、ムーブロックの上位種らしく魔法系スキルには凄く弱かったから、攻撃が当たりさえすれば倒すのは難しくなかったけど。

 そして、最後に1匹。ロックイーターという全長2メートルくらいのオオトカゲ。たまに動物系の番組で見るインドネシアに居るような奴で、全体的にごつごつしていた。
 ロックイーターという名前の通り岩を主食にしているようなエネミーで、その所為なのかやたらと表皮が堅かった。しかも他の2種とは異なり魔法系が弱点という訳でもなかったので最初は普通に手間取った。
 堅い表皮を持っているからかあまり移動速度は速くなかったのと、途中でよくあるお腹側が柔らかくて弱点ということに気付き、それ以降はシャドウニードルを使うことで手間取ることなく倒せるようになった。

 こいつがドロップする素材は見た目通りのごつごつした堅い表皮と太い尻尾だ。【裁縫】で使うには熟練度が足りなさそうな感じなので当分は簡易エンチャントに使うか、使えそうになるまで放置する予定だ。尻尾については正直美味しそうには思えないけど食材扱いだった。

 あ、ロールロックがドロップする素材は、大半がただの石でたまに銅鉱石と言った感じだった。銅鉱石をドロップする確率は4回に1回、25%くらいだったので良いとは言えないけど、石しか落とさないムーブロックに比べれば大分マシではあるけど。


 見える範囲にある採掘ポイントで鉱石を採掘しながら山頂へ向かって移動していく。
 現段階の標高がどの程度なのか正確にはわからないけど、目に見える範囲に植物が生えている様子はないため、それなりに標高の高い位置まで移動してきているのだと思う。

 新たな採掘ポイントを見つけたのでツルハシを使って鉱石を採掘する。
 前にガチャで手に入れた中級ツルハシは既に破損してしまっているけれど、今は総合委託で予備として購入した同じ中級ツルハシを使っている。普通のツルハシでもよかったのだけど、何となく質の良い物を使いたかったので中級を購入したのだ。ついでに上級ツルハシも購入することは出来たけれど、装備条件が【採掘】の上位スキルが無いと駄目だったため購入はしていない。

 採掘ポイントから鉱石が転がり落ちる。
 今回手に入れたのは銀鉱石。悪くはない。当たりの部類だろう。ここ10か所くらいの採掘ポイントから出たアイテムは鉄鉱石・銅鉱石・銀鉱石の順で多い。石は殆どでなくなった。
 そう言えば坑道とは違って爆弾石や爆弾岩が出ていないけど、坑道とは違って外部に晒されているから地表に出た爆弾石や岩は、雨風などの影響を受けて爆発してしまったという事なのだろうか?



「――――!!」

 ん? 人の声? いやエネミーの鳴き声かな?

 無心で採掘ポイントから鉱石を採掘をしていると、どこかから何かの音が聞こえて来た。聞こえてきた感じから山の上の方から聞こえて来た気がしたため、山頂方向へ視線を向ける。

「――――ぇ!」

 また聞こえて来た音、というか声からしてプレイヤーのようだ。

 ここまで登って来るまでに数人のプレイヤーとすれ違っているので、ここよりも高い場所に他のフレイヤーが居てもおかしくはない。だけど、今聞こえてきている音からしてこちらへ向かってそれなりの早さで移動してきているらしいことはわかる。

 足場の悪い場所で走る、しかも下に向かってとなれば自殺行為に等しいと思うのだけど、何か理由があるのかな。……無い方がおかしいか。単に勢いが付き過ぎて足が止まらなくなってしまった可能性もあるけど、そうであれば早い内に転んで無理やり止まってもいいんだし、そうしない理由があるのだろう。

 声の元を探していると、少し離れた上の方に後ろに何かを引き連れて山を走り下りてきているプレイヤーと思われる人影が3つが見えた。

 こちらに近付いて来ているルートではないので問題は無いと思うけど、人影が近付いて来ると同時に地面の揺れが強くなってきている気がする。3つの影の後ろに舞う砂煙で見えづらいけど、もしかして複数のエネミーにでも追われているのかもしれない。

 場合によっては数匹こちらに来るかもしれないから、もうちょっと離れた方が良いかな。

 そう思い、場所を移動する。出来れば隠れるくらいはしたいところだけど、大きな岩とか隠れる場所が無いので出来ないし、シャドウダイブにしても今は日中なので影が少なく、所々にある岩の影に入ると最悪何かの衝撃で岩が動き、影が無くなりかねないので避ける。

 まあ、余程他のプレイヤーのことを考えないプレイヤーではない限り、わざとこちらに来ることはない……、って思ったのがフラグだったのかなぁ。なんかこっちに向かって来ているような気が……

「ぁぁああ?! あそこにプレイヤーが!!」
「あっち行けあっち!」
「ちょうどいいから擦り付ける!」
「いや駄目だろ!?」

 そう叫びながらこちらに近付いてくるプレイヤー3人組。先頭を走っているプレイヤーが私に後ろに付いて来ているエネミーを擦り付けるって言っているけど、その後ろから付いて来ている2人は否定的。1人は私に避けるようジェスチャーを出している。
 ただ、先頭を走っているプレイヤーの後ろをそのままついているから口だけかな。咄嗟について行かないという判断が出来ていないだけかも? 一応、避けるように指示を出してはいるし。

 迫ってきているプレイヤーから逃げるように斜面を登る。足場の悪いところを登っているから速度が出ないため、戦闘になった場合を考えて装備を元に戻しておく。

「おい!? このままだとMPKになりかねないから進路変えろ!」
「偶然ならMPKにはならん!」
「はぁ!?」

 口に出している段階で偶然はないよね。システム的にもアウト判定だと思う……と言うかあのプレイヤーたち、今まで見たことが無いマークを頭上に掲げているけどレッドNAMEだ。

 うーん? あのマーク、最近どこかで見たような……掲示板かなぁ。

「偶然じゃない判定されても、どうせもうレッドなんだよ! なにやっても結果は変わらねぇ!」
「そ、そうだけど」
「いやいや?! 捕まったら絶対刑期増えるでしょ!?」

 …………あ、ギルドから手配されたレッドNAMEプレイヤーに付くマークだ。見たのはイスタットの総合ギルドに張られている指名手配書に載っているやつだったかな。
 ふむ、なるほどこれならわかり易い。ここに居なかったら多分もう見つかっているくらいには目立っているね。

「もういっそここで死んだ方が楽になれるのでは!?」
「街には戻れない。一部とはいえプレイヤーから恨まれているだろうから確かにそうかもしれない?!」
「俺は諦めねぇゾ! このまま逃げ切ってやる!」

 あぁ、なるほど。この人たち坑道閉鎖の原因を作った人たちか。まあ、どの道レッドNAMEだし倒しても問題ないよね。

「そこのプレイヤー逃げ――」
「ごめんなさ――」
「「あ」」
「は?」

 普通に採取に来ているあまり戦闘が得意ではないプレイヤーだと思われていたのか、私が足を止め武器を構えたことで3人のプレイヤーが呆けたような声を上げた。

「ですよねー。はは……」
「っざけっ!」
「あれ待って、このプレイヤー……」

 猛ダッシュで駆け下りてきているため、攻撃されそうだと気付いてもそう簡単に進路を変えることが出来ず、3人はそのまま私の方へ突っ込んで来る。
 それに合わせてまだ少し離れた位置にいるプレイヤーに向けてダークショットを放つ。

「ああああ!! クソがあっ!」
「あふん」
「いや、こんな偶然ある??」

 既にある程度ダメージを受けていたのか、首などの弱点に当たらなかった攻撃で1人がポリゴンとなった。残り2人の内1人は攻撃を受けたことで転び、1人は無理やり攻撃を避けた。

「ゲブン!?」

 転んだ1人が後ろから付いて来ていたエネミーに轢かれて死亡。残りの1人はすぐに体勢を整えて逃げようとしていたので追撃を放つ。
 よく見たら、追って来ているエネミー1匹だ。これならどうにかなるかもしれない。

「シャア!! あ」

 躱せたことを喜んでいたプレイヤーの後頭部に【血魔法】で作ったレイピアが刺さり、それが止めとなったのかポリゴンに変わっていった。


 ≪ワールドアナウンス
 イスタットのイグレベス坑道で罪を犯し逃亡していた異邦者:レンスが討伐され、これにより投獄されました。
 イスタットのイグレベス坑道で罪を犯し逃亡していた異邦者:アーベントが討伐され、これにより投獄されました。
 イスタットのイグレベス坑道で罪を犯し逃亡していた異邦者:カンタルプが討伐され、これにより投獄されました。≫

 ≪ワールドアナウンス
 イスタットのイグレベス坑道で罪を犯し逃亡していた者たちが全て投獄されました。これにより異邦者に対するイグレベス坑道の入場禁止令が解除されます≫


 坑道の閉鎖が解除されたようだ。まあ、喜びたいところだけど今はそれどころじゃないのだけど。

「グロロロロ……」

 いやまさか今の3人を追って来ていたのがこんなエネミーだったとは想定していなかったなぁ。


[(レアモンスター)ロックワイバーン LV:28 Att:土・毒]
 HP:7326 / 8750
 MP:518 / 560
 スキル:■
 状態:―


 まさかのワイバーン君の再来! しかもおそらく亜種という。

 ……勝てるのだろうか、これ。



―――――
隠れる場所がほとんどない場所でしかも夜ではない環境
ついでにゴフテスよりも強い
指名手配犯の3人については逃げている途中で偶然ここを見つけ、隠れていた感じです。今回の流れは、手を出してはいけない相手に手を出してしまった結果です
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

だらだら生きるテイマーのお話

めぇ
ファンタジー
自堕落・・・もとい楽して生きたい一人のテイマーのお話。目指すのはスローライフ!

処理中です...