166 / 260
新規プレイヤーとあれこれ
運営裏話・5
しおりを挟む※この話はアプデ、特にスキル修正の対応についての裏側になります。
※作中、作業をしながらの会話のため、少々会話がぶつ切り状態です。
―――――
「AIちゃんに任せた修正・アプデ不評」
「当然の結果なんだよなぁ」
「修正内容は問題ないだろうよ。まあ、スキルの調整はこちらのミスではあるが」
「修正後の対応がねぇ」
アップデートの翌日。あの後から頻繁に送られてくるようになった運営への批判メールや苦情、抗議メールなどを捌きながら、モニターに向かって乾いた笑いを向ける。
「所長、これ本当に問題ないのですか? 一部のユーザーから過激なコメントが届いていますが」
「コメントは予想の範囲内だろう。それに上からの指示だしな。不安になるのはわかるが。だがまあ、あいつらの成長に必要な事だというのも理解できる」
そう言って所長はある場所に置かれている周囲よりも大きなモニターを見た。そのモニターはどういうわけか、誰も触っていないにもかかわらず高速でログが流れ続けている。
別にこのモニターはUWWOのプレイを監視しているPCに繋がっている訳ではないし、ウェブに繋がっている訳ではない。むしろ繋がっているのはローカル環境下のコンピュータである。まあ、当然普通の物ではないのだが。
「天秤ちゃんがユーザーからのコメントにガチギレしていてヒートアップしすぎているんですけど、発熱しすぎであれ壊れたりしません?」
「ログが拘束で流れていますね。他の子が困惑しているのが見えますよ」
「あれくらいで壊れはしないだろ。伊達に開発から8桁と呼ばれていないさ」
8桁と言うのはあのモニターに映像を写しているコンピュータのことで、その製作にかかったらしい費用をあだ名のように呼んでいるだけのものだ。まあ、実際にどれだけ製作にかかったのかはどちらかと言えば下っ端側の所長も正確には把握していない。
「うーん。一応規約の中にも、『サービス期間中に未調整のAIによる干渉が~』って記載してあるんですけどね。公式ページにもわかり易い位置とは言えませんが載っていますし」
「規約は読まないユーザーの方が多いだろうし、公式ページだって同じだ。それに今回のアップデートにAIが関わっていると思っていない可能性も高いからな」
事前通告もなしにAIを使った修正案を使用。また、修正後の対応もAIに任せてあるとはさすがに殆どのユーザーは知らないだろう。はたして気付いているユーザーはどれだけいるのか。
もともとUWWOはAIを成長させるための空間を拡張して作られたオンラインゲームである。そのため、日テリによるAIの実験場のような役割も持っているのだ。さすがに商品として売り出している以上、しっかりオンラインゲームとしての管理はされているが、今回のような事もすることもサービス開始前から想定されていた。
「あー、そうですねぇ。告知もしませんでしたし、普通気付けないかぁ」
「事前に知らせておいた方が良かったのではないですかね?」
「そうすると実際に同じことをした時の反応とは変わってしまう。それでは意味が無いんだよ。こうしたらこうなる、っていう正確な経験が得られないのはAIたちにとって困るし、後で調整するAI開発部の奴らも困るからな」
「あー、そうですね。それに愉快犯的なユーザーもいますから変なコメント送ってきそうですね。まあ、それはそれで経験になるでしょうけど」
「そういうのは次回だな」
後から情報を入力することはそれほど手間ではない。過去の事例やその際に行った対処法、その結果などをAIたちに読み込ませればいいだけだ。
しかし、それでは人と同じような感情を持つように製作したAIが納得するかと言えば微妙なところだ。そういう物だと理解は出来るだろうが、どうしてそのような対処をしなければならないのか、という部分がそれでは抜けてしまう。
「ただ、アプデ後一部ユーザーのログイン率が下がっているので早めに対処した方が良いと思います」
「アカウント数も少し減ったらしいですからねぇ」
「もうネタ晴らし、というかAIが干渉していることを知らせた方が良いのではないですかね」
「今更だろうな。今普通にプレイしているプレイヤーはどうあれ、あの対応を受けた上でプレイしているのだから、これから劇的に減ることは無いだろう。それにあの段階でアカウントを削除したユーザーはそもそもうちのゲーム、と言うか運営方法に合っていないって判断で良いだろう。申し訳ないという気持ちが無い訳ではないが、今後も同じような事をする予定だから、合わないのはどうしようもない」
「あの、こっちが責任取らされるとか、そんなことはないですよね? 今の社長、ちょっと信用ならないので、不安なんですけど」
「その辺は大丈夫だ。責任がこっちに来ないよう言質は取ってある」
「あの、それ……口約束とかではないですよね?」
「さすがにそれは無い。後から覆されても困るからと前の会議の段階で書面は用意してあるし、万一のことに備えてボイスも取ってあるからな。使うかどうかはわからないが」
「なら良かったです」
今回のスキル調整の対応については失敗することが前提で進められていた。なので、アップデートをAIに任せる会議で決めた段階で今後の対応については既に決定済みである。
「あと、あの人は臨時であの位置に居るだけで社長という訳ではないぞ? あくまでも代理だ」
「わかっていますよ。でも、あの人が社長になりたがっているというか、乗っ取ろうとしているのも知っているので」
「まあ、飛世社長が戻ってくればどうとでもなるだろう。あの人に会社を動かす才能はないし、一部以外からの人望はないからな。今回だって息子だからと強引にあの位置に就いただけだ」
「カムバック飛世社長! 出来るだけ早く!」
そう言ってユーザーからの意見書などを捌いていた男が、おそらくその社長の居るのだろう方向を見て祈る。
ついでに飛世社長が居ない理由は単純に足を骨折し、入院中だからである。
「1週間後。いえ、後6日後ですか。ユーザーはどういった反応をするでしょうねぇ。あまり良い反応は想像が出来ませんが」
「『今回はAI製作の一端に協力していただき~云々』といった感じで、付き合って貰った感謝としてチケットとスキル関係のチケット、ついでにアイテムを送る予定になっているから多少は今来ている反応は収まると思うぞ?」
「そうだと良いですねぇ」
「そうじゃないと困るな。まあ、0にはならないだろうが」
「何やっても文句を言って来る方はいますからね」
そんな不安を言い合っている間にも時間は過ぎて行った。
―――――
AIに感情は必要か否か。
賛否あるでしょうが、これはあくまでも小説なので。まあ、ゲーム製作用AIには必要ないと思いますが、ゲーム運営用AIなのであった方が面白い……よね?
※過去の事例から学べばいい、と言うのは禁句。
そもそも人間だって実際に経験しないと、実感を得ることは難しいですからね。AIも同じという事です(あくまでも作中に関して)
今回の修正に関わったAIは5機?体?
1:審判ちゃん(最終決定権持ち)
2:天秤ちゃん(意見出し過激派)
3:バラちゃん(バランサー)
4:未記載
5:未記載
※バラちゃんについては良さそうな名前が思いつかなかったのでそのうち変更します。4・5は役職?は決まっていますが名前が決まっていません。
UWWO内では、サイレントでちょくちょくAIが更新されています。
プレイヤーからするとこんな感じ↓
「あの住民、最初よりもよく話すようになってないか?」
「表情もなんか柔らかくなっているような?」
※日テリの会社の問題は3章前半以降に引き摺ることはないですし、作中に出て来ることはないです。ざまぁ展開はあるでしょうけど、触れることはないです。
何でこんな設定作ったのだろう?
4
↓
私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
↓
森の中でひっそりと生活しようとしたのだが
いつの間にかハーレムになっていた
フリースペースに別作品のリンクを貼ってみませんか?
↓
フリースペースに他の作品のリンクを貼りたいのだー!
お気に入りに追加
1,217
あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!

忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。


間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる