160 / 260
新規プレイヤーとあれこれ
10:古きヴァンパイアの日記
しおりを挟む机の上に先ほど復元してもらった[古きヴァンパイアの日記]を置き、内容を確認するために表紙を開いた。
最初に手にした時とは打って変わって、本はあっさりと開いた。新品同様とまでは行かないまでも、中の紙は状態のいい古い本といった感じだ。
リアルの本よりも1ページの紙の厚さがある日記の内容を確認してく。
ヴァンパイア語とかノーディレス帝国の標準語とかあの人が言っていたけど、普通に読めるね。これはプレイヤーだから言語は関係ないのかな。ヴァンパイア語はRACE関係で読めている気がするけど、言語を学ぶと言っても何処でって話だし、こういう物なのだろうか。
まあ、読めないよりは断然いいか。
そう思い読み進める。
前半の内容は普通の日記だった。
いや、普通と言うかどうも100年前の日常を綴っている感じ? 先に進むにつれて殺伐と言うか切羽詰まってきているような雰囲気が醸し出されているけど、その日にあったことが纏められている感じ。
日記を残り少しという段階まで読んだところで書いてある言葉が少し変わったことに気付いた。さらに文字が薄ら光っているようになっているから、おそらくここからが魔法書という事なのかもしれない。
内容はともかくここまで全部普通の日記だったから多分そのはず。
『この文章を読むことが出来るという事は我らがヴァンパイアの真祖の血を引く者なのだろう。ここに記されている内容はヴァンパイアとしての力を十全に扱うための知識だ。
私たちには時間がない。どうやら帝国はここまでだろう。この結果は今までの傲慢な対応の付けが来てしまったのかもしれない。
本来ならここに記されている物は親から子へ受け継がれていくものだ。私たちには子はいなかった。しかし、このままでは知識が断絶してしまう可能性が大きい。そのため、私はここにその内容を記すこととした。ただ、多くに広めるべき知識ではないため、このように資格ある者にしか見ることが出来ないよう魔法書としている』
……遺書? いや、最初は日記として使っていたけど、途中でどうにもならないことに気付いたから遺書として使った感じかな。
とりあえず続きを読もう。
『我らヴァンパイアは夜の一族だ。故に日中はあまり得意ではない。特に血の濃い者は慣れるまで日に当たると傷を負ってしまう。まあ、それは次第に慣れ、いずれは傷を負う事は無くなる。しかし、慣れたところで日のある場所では本来の動きをすることは難しい。
しかし、我らが真祖は一時的とは言え私たちにそれを無にする方法を伝えてくれた。それが【血統魔術】【血統魔法】だ。知識が無ければ大したスキルを覚えないが、ここに書かれている知識を獲得すれば秘めたる力が目覚めるだろう』
え、ここに来てよくわからないスキル筆頭の【血統魔法】君強化されるの?
最初から使えている[夜目] と熟練度50%で覚えた、【血魔術】系統スキルに影響する[血液操作補助] 以外何もなかったから、強制取得スキルの中でもぱっとしないなぁとか、最近影薄いスキルだなって思っていたのだけど、むしろそれは伏線だったのかもしれない。
このスキル、条件を満たさないと強化されない、本来の能力が使えない系だったとは。というか【血統魔術】って何? 私、最初から【血統魔法】だったのだけど、もしかして同じヴァンパイアでもRACEによって取得したスキルって違うのかな。
うーんWIKIに載っているかな。確認したい。
『スキル名は[真祖覚醒]だ。
一時的に我らが真祖の力を得ることが出来る。その結果少しの時間ではあるが、日光の影響を受けることなく活動することが出来るようになるのだ』
なんですと? 一時的って書いてあるけど日中弱体化消せるの? 凄く嬉しい……けど、まさか3分とかじゃないよね? さすがにその時間だけだと短すぎるのだけど。
スキルの確認……あ、取得はまだ出来ていないのか。レシピと同じで本を読み終えないと覚えないのかな。
このままでは[真祖覚醒]スキルの確認も出来ないので、本の先を読み進めて行くことにする。
『他にも【血統魔法】で取得できるスキルはあるが、ここには記載しない』
え? 何でここに来てそれ。全部記載しておいて欲しかったのだけど。
もったいぶっているような書き方にちょっとだけイラついた。まあ、でも全て教えて貰ってもつまらないかも知れない。不満は不満だけど。
『[真祖覚醒]を取得した上で熟練度を上げて行けばおのずとそのスキルを取得できるはずだ。[真祖覚醒]もそうだが上手く使えるかどうかは其方たちの腕次第だ。
これから居なくなるだろう私たちが出来るのは、この本に情報を記載しそれを教えることだけ。出来れば自ら教えられればこの上ないが無理だろう。魔物の大群がこちらにも迫っている』
あ、情報が書かれているのはここまで見たいだね。後は近況報告的な内容だ。これなら流し読みで大丈……夫? ん、何だろうこれ。
本の最後のページの文字が異様に光っていることに気付いた。先ほどまでの文字もうっすらと光っているようなエフェクトが掛かっていたけど、それとは明らかに違う物だ。
{最後に1つだけ記しておく。
ここが読めるという事は私と同じ(純血)のヴァンパイアだろう。
出来ればで良い。妻が管理していた別荘の管理を継いではくれないだろうか。
この本同様に幻影魔法を施したうえで保護魔法を掛けてあるため、誰にも見つからずそのままの状態で残っているはずだ。
あそこには私たちの思い出が詰まっている。誰もいないまま、放置しておくのは忍びない。
なに、無償でとは言わない。あそこに設置している設備はそのまま使って構わない。私たちが写っている写真さえ捨てなければ、建物の中を弄るのも構わない。
建物の場所と幻影魔法を無効化する方法を記載している。
どうか、私と妻の思い出を受け継いでほしい。
レイス・ハイデンベルク
オーレル・ハイデンベルク }
…………? えっと、うん?
最後の最後で遺書か、と思ったけど、これもしかしてハウジング手に入れられる系やつかな。しかも最初からある程度手が入れられているやつ。どんなものかわからないから反応し辛いけど、プレイヤー個人で持っているって話は聞かないから割と凄い事なのだとは思う。どう反応していいかわからないけど。
とりあえずこの本の感想は、日記というよりも遺書だよね。死ぬのがわかっていたから後世に知識を繋げよう的な内容の。
『アナウンス
【血統魔術】の制限が外れました。これによりスキル[真祖覚醒]を取得しました。詳しくはスキル説明欄を確認してください』
『アナウンス
依頼:古きヴァンパイアからの想い、を受諾しました』
ああ、別荘のやつは依頼扱いなのか。しかも強制で受けないといけないのね。他の人に譲るつもりはないから良いけど、依頼になるってことは何かあるってことだよね。ちょっと不安だ。
【血統魔法】の方は新しいスキルを覚えるのとは違って制限解除なのか。となると、同じように制限を受けているようなスキルがあるかもしれない?
【血統魔法】
ヴァンパイア専用の魔法。攻撃スキルは内包しないが、ヴァンパイアの活動を補助するスキルを使うことが出来る。ヴァンパイア必須の魔法。ただし、ヴァンパイアの血が薄い場合は取得できない。
[夜目(P)]夜闇や暗闇など暗い場所でも日中のように周囲を見渡せるようになる。見やすさは基となるスキルの熟練度による。
[真祖覚醒](1%)内に秘める真祖の血を一時的に覚醒させるスキル。このスキルを発動している時は日光下での行動に制限が掛からなくなる。発動時間の長さはスキルの熟練度に依る。日光が当たる場所でのみ発動可。効果時間:10m CT:12h
[血液操作補助(P)]【血魔術】系統スキルの操作性を上昇させる。上昇率はスキルの熟練度による。
しっかり取得されているね。でもどのくらいの熟練度で獲得できていたのかわからないな。一応50%で取得した[血液操作補助(P)]よりも前に出ているからそれより前に取得できるみたい。
あと、スキル名の後に個別で熟練度らしきものがあるのは何だろうなぁ。もしかしなくても【血統魔法】その物の熟練度上げても[真祖覚醒]の熟練度は上がらないよねこれ。それに熟練度を上げれば他のスキルも取得できるみたいなことが書かれていたけど、たぶんこっちの熟練度だよね。
熟練度の方はまあ良いとして、効果時間10分は良かった。これくらいあれば何とか使えそう。ただ、案の定というかだろうなぁと思っていたけどCT長い。一時的とは言えデメリット帳消しに出来るスキルだし、これくらいじゃないとバランス取れないよね。長いけど。
うーん、[真祖覚醒]の確認をしたいところだけど、UWWO内の今の時間は夜だから確認出来ないのだよね。なら、これは当初の予定通り、この後はさっき覚えたレシピを作る感じでいいかな。
古きヴァンパイアの日記をインベントリにしまい、私は今度こそギルド書庫から生産施設へ向かった。
_____
今回出て来た[真祖覚醒]は簡単に言うと奥義のようなものです。各RACEにも同じようなスキルが存在します(通常RACE、レアRACEどちらにも。ただし例外在り)
ついでに、CTに関しては[真祖覚醒]の熟練度を上げれば多少短くなります。効果時間はそこそこ伸びる感じです。
5
↓
私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
↓
森の中でひっそりと生活しようとしたのだが
いつの間にかハーレムになっていた
フリースペースに別作品のリンクを貼ってみませんか?
↓
フリースペースに他の作品のリンクを貼りたいのだー!
お気に入りに追加
1,217
あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!

忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。


間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる