UWWO ~無表情系引きこもり少女は暗躍する?~

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
上 下
159 / 260
新規プレイヤーとあれこれ

9:復元魔法

しおりを挟む
  
 この司書、笑顔だけどちょっと圧を感じるね。それだけ見てみたい、読んで見たいという事なのだろうけど。

 司書のその様子に若干引きながら私はインベントリからあの本を取り出した。


[知らない言語で書かれた本 Ra:Ep Qu:F Du:-/-]
 あなたの知らない言語で書かれた本。日記のような魔導書のような、書き方が不規則に変わっているためどのような本なのか書式だけでは判断できそうにない。何らかの保護魔法がかけられているようで完全に破損することは無いようだが、経年劣化が激しく真面に開くことが出来そうにない。この本を読むには復元魔法で読める状態に戻し、対応する言語を覚える必要がある。


 殆ど忘れていた説明を見る。そう言えば復元しないと読めないらしいけど、この司書に聞けばどうすればいいかわかるのかな。というか、これだと司書も読めないのでは?

「これですか。いや、凄く古い本……というわけではなさそうですが傷みが激しいですね。このままだと復元魔法を使わない限り読むことが出来ないでしょうね」
「復元魔法」

 ピンポイントでそれを言ってくれるの? 聞かないでも説明してくれるならありがたいけど。

「ああ、復元魔法なら私が使えますよ」

 まさかすぐにその単語が出て来るとは思っていなかったからオウム返ししてしまっただけなのに、どうやら司書は質問として受け取ってくれたようだ。

「そう……なのですか」

 これはまさか、自分で取得する必要がない? 所得する必要が無いのならSKPの節約になるからありがたいのだけど。

「【複製魔法】も復元魔法も司書としては必須技能ですから。むしろ使えなければ司書にはなれません」

 複製魔法とかまた知らないスキルが出て来たけど、話の流れからして復元魔法は使ってくれそうだね。

「それでアユさん。この本なのですが、復元魔法を使ってしまってもよろしいでしょうか」
「あ、はい」

 直してくるなら否はないです。ASが必要だとしても超高額でもない限りPKKで稼げているから問題ないし。

「じゃあ、ちょっと待っていてくださいね」

 そう言って司書の男性はまた奥の倉庫に向かった。本を持って行かなかったところからして、復元魔法をするために必要な道具を取りにいったのだろう。


「お待たせしました」

 司書の男性はすぐに戻って来た。手には2枚の板と何故か本が1冊。どうして本を持ってきたのだろう。説明書?

「では、始めますね」

 そう言うと司書の男性は持ってきた板の内、一枚をカウンターの上に置いた。その板は錬金板のような見た目の物で、その上へいくつかの素材と私が持っていた読めない本を置くと、すぐに板に魔力を通し始めたようだ。

 板が淡く光る。見た目や光方からして錬金板のようだけど、微妙に違う気もする。次第に光が強くなり本を包んで行く。そしていくらか経ったところで光が一気に収まった。

「ふぅ。これで復元は完了です。念のため鑑定はしておきますね。もし、見るだけで問題が起こるような本だったら大変ですから」

 ああ、見ただけで問題が起きるってことは、UWWOの中にも呪われている系のアイテムってあるか。となると、廃墟とかが多い第3エリアにそういったアイテムが多そうな気がするね。

「…………うん。問題ないようですね」

 司書の男性はそう言うと板の上から本を退かしカウンターの上に置いた。
 ああ、私も【鑑定】しておこう。


[古きヴァンパイアの日記 Ra:Ar Qu:A Du:-/-]
 ノーディレス帝国の常用語とヴァンパイア語を混ぜて書かれた日記。この日記には当時の想いが綴られている。『日記ではあるが一部に魔法陣が施され、読む資格のあるものにしか見えない部分が存在する(秘匿文)』復元魔法により状態は回復したが、元の状態が悪すぎたため保護魔法の効果は無くなってしまっている。
 秘匿情報:魔法書
 保有者:アユ(有資格者)


 え……っと?
 う、うん。とりあえず復元は問題なく終わっているね。

 ……いやいや待って。秘匿文ありのアイテム説明って何? Ra:Arって初めて見たよ!? それにArってことはartifactだからEpicの1個上のRa度? Ra:Epならいくつか見たことあるけどこれは完全に初めてだ。
 あといきなり魔法書ってなにさ。しかも有資格者って、どういうこと?

「あの、申し訳ないのですが」
「え、あ、はい」

 まさか魔導書だから回収されるとか、そういう流れ……いや、さっき問題ないって言っていたから違うよね。情報多くて頭の中パニックになるよ。

「出来ればこちらの本、【複製魔法】を使ってこちらの本に複写したいのですが、いいでしょうか?」

 司書の男性はそう言いながら先ほど持ってきた本と使わなかった方の板をカウンターの上に並べた。

「構わない、ですけどその板は?」
「あ、これは錬金板ですね。特殊な加工をして【複製魔法】に特化させたものです。先ほど使ったのは復元魔法に特化させた錬金板です」
「なるほど」

 特化させた生産装備か。プレイヤーには使えなさそうだ。

「許可もいただけたのでさっさと進めてしまいますね」

 司書の男性はささっと準備を進め、日記を複写していった。

「ありがとうございます。これで書庫になかった本がまた1冊増えることになりました。特にヴァンパイア語で書かれた本は数が少なくて貴重なんです。まあ、その分、解読出来る者も少ないのですけどね」
「はぁ」

 手元にない新しい本が手に入ったからなのか、複写してから妙にテンションが高い司書について行けず、修復してもらった感謝をしてからカウンターを離れた。

 この後、新しく手に入ったレシピで作れる物を一通り作る予定だったけどでも、先にこの本の内容を確認しないといけないよね。

 そういう事で私はまたギルド書庫内にある机の場所に戻った。



_____
本の内容は次回

司書が日記を複製した理由は他のヴァンパイア系プレイヤーに見せるためです。これにより、条件を満たしたヴァンパイアプレイヤーが訪れるとイベントが発生するようになりました。

Ar(artifact)はプレイヤーには作れないRa度になります。人工伝説級ということで過去の遺物とか、偉人が使用したことで変質したアイテムと言った形で使われるためのRa度になります。簡単に言えばRa度の低いイベントアイテム。いえ、Ar自体低くはないですけどね。他に対応するアイテムがGoなので低い扱いです。

復元魔法と【複製魔法】の違いはプレイヤーが取得できるか出来ないかです。【】付きのスキルは取得できる物。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

追い出された万能職に新しい人生が始まりました

東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」 その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。 『万能職』は冒険者の最底辺職だ。 冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。 『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。 口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。 要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。 その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた エアコンまとめ

エアコン
恋愛
冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた とエアコンの作品色々

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...