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廃村の復興と素材を探して
おまけ リラ:初遭遇
しおりを挟むこれはUWWO~引きこもりヴァンパイアは暗躍する?~の2章前半の後半に登場したドラゴニュート(土)であるプレイヤーNAME:リラの話。アユに会う少し前(前半)、また第2エリアに到着し別れた後の話(後半)になります。
※長くなったので前後編で分割しています。
〇
Unite Whole World Onlineのサービスが開始して2週間と数日が経過した。
サービス初日からこのゲームをプレイしている私は、社会人故にプレイ時間を制限されていたために未だ他のプレイヤーの姿を確認したことが無い。
本来なら、皆と同じ初期地点からゲームを開始しているところだけど、アバター作成時にレアRACE、基本的に最初に選べるアバターのRACEとは違い、ランダムでしか選択できない種になった所為で初期地点が辺境という、マゾプレイを慣行することになったのだ。
あの時はレアだし基本RACEよりも成長量が大きいというところだけを見て安易に飛びついてしまったのだけど、正直なところ若干どころではないくらい後悔している。
数日前にあったイベントも今いるエリアでは参加できないと運営から言われ、涙を呑んだ。いや、まあ、どの道その日は仕事が入っていたから参加は出来なかったのだけどさ。
周囲を警戒しながら道の跡と思われる場所を進んで行く。ここを見つけたのが昨日。ようやく他のプレイヤーに会えると思った矢先、昨日はフォレストシャドウウルフの群れに蹂躙された。
1対1なら倒せそうな気配はある。しかし、あのエネミーは必ず複数で現れるため、今のところ倒しきれたことは1度もない。
私の初期地点は廃屋だった。外から見たところ山小屋とかそんな感じの小屋で、辛うじて原型を留めているだけだった。
はっきり言って今まで戦ったことのあるエネミーなら速攻で壊せそうなくらいにボロボロ。臨時セーフティーエリアとして機能していたから壊れることは無いだろうけど、おそらく私が他のリスポーン地点に到達したタイミングで壊れるとかそんな感じだと思う。跡形もなくなくなる可能性もあるけど。
それで初期地点が山小屋だったから周囲は山、というよりも森だった。最初はエネミーが出やすそうでLVもすぐ上がるかも、なんて思っていたけど最初に戦った敵のLVどころかNAMEすらわからなかった。私の記念すべき戦闘はその信じられない結果に茫然としている内に終わってしまった。
後で調べたところでその理由がわかったのだけど、その所為で対峙したあのエネミーのLVがどうにか出来る範囲ではないことも理解してしまった。はっきり言ってLV1の私ではどうにか出来るものではなかった。
八方塞がりかどうかはわからなかったけど、すぐにアバターを作り直すかどうかを考えた。
偶然ランダム選択で出ただけだからレアRACEにこだわりはなかった。でも、レアという魅力は判断を鈍らせるもので、結局アバターを作り直すことは早い段階で諦めた。
Unite Whole World OnlineはLVアップによるステータス上昇が存在する。しかし、同時にスキルの熟練度を上げることでもステータスは上昇する。どうやら一部スキルで不具合が生じていたみたいだけど、運がいいのか悪いのか、残念なことに私は仕事の関係で初日のログインが出来なかったためその不具合には遭遇していない。
そして私は頑張った。素振りでも熟練度が溜まるスキルを取得してステータスを上げ続けた。
初日は最初に死に戻ってから小屋の中で【拳】スキルの熟練度を上げ、同時に熟練度が上げられそうな【身体能力向上(微)】と【体術】も取得した。
ただ、私のアバターのRACEであるドラゴニュート(土)は強制で【竜鱗】【土魔術】【竜魔術】【自動回復(微)】を取得する。通常スキルである【土魔術】以外は強力なスキルなんだけど、その所為で15もSKPを消費する。
この結果、最初に使えるSKPはランダムでRACEを選んだことによるボーナスと初回版によるチケットの分を合わせても5しか残らなかった。
実のところ【拳】【身体能力向上(微)】【体術】のスキルを取得するのに必要だったSKPは6。……うん、そう、足りない。足りなかったんだ。だから先に【土魔術】の熟練度を10%以上にして、足りない分のSKPを確保してから3つスキルを取得した。
先に2つスキルを取得して、そのスキルの熟練度を上げても良かったんだけど、3つとも同時に熟練度を上げられるタイプのスキルだったから、出来るだけ同時に取得したかったのだ。まあ、1次スキルの最初の10%なんて、後から取得しても2次スキルになる頃には気にならない程度の誤差にしかならないんだけどさ。
それで限りあるログイン時間を数日分消費してスキルの熟練度を50%まで上げた。1次スキルという事もあって割と早く熟練度も上がり、同時にステータスも上昇した。
スキルの恩恵を受けているステータスが元の3倍近くになったことで、これで何とかなる、そう思いセーフティーエリアから出たもののまたしてもあっさり鹿っぽいエネミーに殺された。
どうにもならない。ステータスを眺めながら先の事を考える。今ならまだアバターを作り直せば遅れは取り戻せるだろう。他のプレイヤーよりもプレイ時間が取れないから数日分とは言えそこまでロスはない。
しかし、RACEのランダム選択は最初に使い切ってしまったから使えない。いや、もともと獣人(白猫)でプレイしようとしていたのだから元の予定に戻るだけだ。いや、しかし、しかしだ。
少しのお機関とは言え、このRACEでプレイしていたので若干愛着も湧いて来ているし、何だかんだ今までしたことのなかった格闘家スタイルも意外と悪くなかった。
やっぱりこのまま進めよう。そう結論を出すのに掛かった時間はそう長くはなかった。
数日後、山小屋の近くに洞窟らしきものがあることに気付いた。
既に10回以上リスポーンしており、初期から持っているASも尽きている。失うものはないので、私は見つけてすぐにその中を確認しに行った。
中は普通の洞窟だった。出て来たエネミーはコウモリ。ビッグバット(小)というエネミーだった。アバターのLVが上がっていない中でエネミーのNAMEがわかったこと少し疑問を持ったけれど、とりあえず戦ってみた。
驚くほどあっさり倒せたことにさらに驚いたけど、これでLVが上げられるという嬉しさが上回り、嬉々としてビッグバット(小)を狩り続けた。
そうしてビッグバット(小)を狩り続けることでLVが上がり、山小屋の近くに出て来る鹿のようなエネミー、フォレストスラッシュディアを倒すことに成功したのだ。
この時のLVは18。鹿はLV21だった。格上相手とは言え、LVの差はそれほどでもないし、1対1ならやりようはあるのだ。
そして現在はLV24になった。どうしてもフォレストシャドウウルフの群れには勝てないのだけど、見つからないように移動すれば進めないこともない。何度か見つかって初期地点に戻されはしたけれど、ようやく私は森を抜け荒れてはいるものの広めの道に出ることが出来た。
達成感を感じながらも周囲を確認する。しかし、建物らしきものは見当たらない。プレイヤーどころかNPCすら見かけない場所なのだから、近くに街や村は無いのかもしれないと懸念していた。そのズバリな結果に少し落ち込んだけど、チュートリアル先を示す先を目指せば最低でもNPCは居るはずだからと、気持ちを持ち直しMAPに示されている先に進むことにした。
荒れ果てた道に沿って進む。所々崩れた家か小屋と思われる物を見つけることは出来たけど、それ以外はエネミーしか見つけられていない。
出て来るエネミーが森の中とは違いそれほど強くはないので苦戦はしないが、物陰から出て来ることが多いので面倒だ。
さらに進むと目の前の景色が開け、草原と思われる場所に出た。
ここまで来たところでエネミーが殆ど出なくなった。草原という事で隠れる場所はないし、食べ物もあまりないという事だろうか。UWWOはゲームではあるがエネミーの生息地や配置にはそれなりの理由が付けられているらしいから、たぶんそういう感じなのだろう。
MAPに表示されている指示に従って道を進む。いくつか道が分岐している場所を見つけたが、変に進む道を変えて目的地に辿り着かなかったら嫌なので分岐している道には進まずにそのまま歩を進めた。
時間の関係で1度辛うじて使えそうな廃墟でログアウトし、翌日からまた道を進み始める。
1時間程移動したところで先にダムのような壁が確認できた。それを視認した瞬間、私の体から少しだけ力が抜けた。
変な場所に行かないようにと分岐していた道に進まなかったのだが、目に映る壁からして真直ぐ進んで行くことが間違いだったのだろう。見た目からしてあの壁に穴が開いているとは思えない。
そう思えるほど先にある壁はのっぺりとしていた。
無駄な時間を使ってしまった。
そう思いながら来た道を戻る。ログイン出来る時間が限られている状況でこの失敗は痛い。もう少し日が進めばそれも増やせるだろうが、現状どうすることも出来ない。
早くチュートリアルを受けて普通にプレイしたい。その思いで先ほどまで進んでいた道を戻っていると不意に道の脇にある廃屋の近くで何かが動いた。
エネミーかもしれない。そう判断していきなり飛び掛かられてもいいように構える。しかし、一向にそれはこちらに来ない。むしろ少しずつ離れて行っているようにも見えた。
廃屋の影に入ってしまい見えなくなってしまったのでしっかり確認しようとさらに近付く。
距離としては20メートルくらい離れているだろうか。少しだけ見えている存在は、今まで遭遇してきたエネミーと動き方が違う。
森の近くだしフォレストシャドウウルフ? いや、それよりも大分小さいね。初見エネミーかもしれない。サイズは小柄な人間くらい…………まさか!?
そう自分の中で仮定が出てしまった瞬間、私はすぐさまその存在の元へ駆けだした。
サイズ、動き方、私が近付いても大きく反応していないところからエネミーではないと結論付ける。ならば答えは一つだ。
プレイヤーなのかNPCなのかはわからない。けど、けれど自分以外の人だ。
もしかしたら勘違いかもしれない。普通にエネミーの可能性も否定できない。だけど、私は一縷の望みを掛けてそれに近付いて行く。
姿がしっかり見えた。やはり人だ。何をしているかはわからないけど、人。このゲームを始めて初めて遭遇する人だ。
「あああああああ!!!」
ようやく他の人に会えた嬉しさから私はその人に向かってダイブした。私が声を上げたことでその人は私の存在に気付いたのかこちらを向き、私のダイブを寸でのところで躱した。
その結果、私は草の中に転がり込んでしまった。
「はっ!?」
すぐさま顔を上げ、私の事をおっかなびっくりといった表情で見ている人を見る。
ああ、ちゃんと人だ。フードを被っているからなのか顔が少し見えづらいけれど、しっかり人である事がわかる。
「あ、あ…や…」
「あや?」
「や、やっと他の人に会えたーーーっ!!!」
私の行動に目の前の人が困惑しているのが見てわかったけれど、それ以上に嬉しいという感情が溢れ自重できずに私はそう声を上げた。
8
↓
私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
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森の中でひっそりと生活しようとしたのだが
いつの間にかハーレムになっていた
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