UWWO ~無表情系引きこもり少女は暗躍する?~

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
上 下
99 / 260
生産したい、色々作りたい

17:生産を一旦止めて、素材を集めよう

しおりを挟む
 
 生産設備が使えるようになってからリアルで2日程が経った。

 オルグリッチの倒し方が確立されたのか、ウエストリア側からセントリウスに入って来るプレイヤーがちらほら確認できた。

 ただ、セントリウスの街に留まっているプレイヤーはあまり居ない。理由としては掲示板でも出ていたエネミーのLV帯がそれほど変わらないため、セントリウス付近ではLV上げが出来ないからだ。なので、大半のプレイヤーはセントリウスのギルドを登録したら第1エリアへ戻っている。
 一部のプレイヤーは第3エリアに向かうために色々とやっているようだけどその内容はよく知らない。かく言う兄たちのパーティーもそれに該当するのだけど、あれ以来、ゲーム内で接触もしていないため何をやっているのかはわからない。

 同じギルドを使っているのに2日、いやゲーム内で4日間も接触しなかった理由はタイミングが合わなかったのもあるけれど、一番の理由は私が生産設備のある部屋にこもっていたからだ。

 生産設備にこもっていた理由は、生産スキルの熟練度を上げるためもあったのだけど生産施設でアイテムを作っていると、それを眺めに来るプレイヤーが居たのでそれを避けるためでもある。おそらく次のアップデートで追加されるクランのメンバー集めの下調べなのだろうけど、相手の気持ちも考えずにじろじろ見て来るようなプレイヤーが居るような集団には加わりたくない。と言うか、そもそもクランに入るつもりは一切ない。

 生産設備のある部屋であの錬金板を装備するために【上級錬金】の熟練度を上げていたのだけど、やっぱり2次スキルだからなのかゲーム内4日掛けても熟練度は50%を超えていない。容量拡張鞄を作った時にはそれなりに熟練度が上がったからあっさり上がると思っていたのだけど、どうも同じ物を何個も連続で作っていると得られる熟練度が減っていくようだ。

【上級錬金】の熟練度上げのために容量拡張鞄と圧縮鞄をそれなりの数を作った。私が使わない余分に作った物は他のプレイヤーが買うのかがわからなかったので、全て総合委託に流した。しかし、残念ながら流した物の半数はまだ売れ残っていて、少しではあるけれど赤字である。
 圧縮鞄に関しては、どうやら重力石を使うことで容量拡張ではなく圧縮となるらしい。まあ、重力石を使うとSASが跳ね上がるので、圧縮鞄は委託に流した物の半数にも満たない。

 他の生産スキルは【上級錬金】の熟練度が上がり辛くなったあたりから、【調合】と【料理】の熟練度も上げていた。

【調合】は錬金でポーションを作り始めたあたりから殆ど上げていなかったので、初級ポーションを作りまくって熟練度を上げた。途中から錬金と同じように熟練度が上がり辛くなったのだけど、1次スキルだからなのか全く上がらなくなった訳ではなかったので、それは無視して初級ポーションを作り続けた。その結果、【調合】の熟練度は70%を超えた。

【料理】は熟練度が60%を超えたところで一旦止めた。羊肉を使えばそれなりにASは稼げるのだけど、如何せん数を作るには時間効率が悪い。1時間で30個ちょっとしか作れないので、ASを払って利用している場所で生産するのは向いていない。
 なので、【料理】の熟練度を上げるなら、いつもログアウトする時に使っている宿の部屋でやることになると思う。もしくはリアルの朝方とか、平日の昼はプレイヤーも少ないからその時に生産施設で熟練度を上げることになる。

 それでこれからやることは第3エリアに向かって素材を確保することだ。
 本音を言えばあまり行きたくは無いのだけど、デストリマッシュとか薬草って第1エリアと第2エリアでは取れないのですよ。その所為で委託にも一切流れていないし、私が確保していた物も尽きてしまった。
 薬草についてはセントリウスに着いて直ぐに無くなったし、デストリマッシュはこの前ナイフと短剣に使ったのが最後だった。

 デストリマッシュが欲しい理由は色々使い勝手がいいからなのだけど、薬草が欲しい理由は、HPが上がったから初級ポーションだと回復量が頼りないからだ。

 まあ、私はあまりダメージを食らうような戦い方はしないから、ポーションはそれほど使わないのだけど、ダメージを受けた際に使うポーションの回復量がHP総量の10%にも満たないのは不安でしかない。出来れば最低でも10%は回復してもらわないと不安はぬぐえない。

 そう言うことで一回第3エリアに戻る? 行くことにしたのだ。

 それで今の時刻はリアルだと9時くらいで、UWWO内だと18時といったところ。まだ日差しのダメージを受ける時間帯ではあるのだけど、【日光脆弱】の熟練度下げも兼ねて今から出発する。



 そして何事もなく2時間程走ったところで壁のある場所に到着した。前はここからセントリウスまで走って3、4時間掛かっていたはずだから、それと比べると大分移動速度が上がっている。

 着いたはいいのだけど、残念ながら壁にある扉は開いていなかったので、ここに居るはずの住民と言うか軍人?に話しかけて扉を開けてもらうしかないようだ。
 そう判断して周りを見渡して軍人を探す。

 見る限り他のプレイヤーと思われる影は無いけれど、っと、軍人らしき住民を見つけた。何か待機場所みたいなところからこちらを見ている。まあ、もう20時は過ぎているし、こんな時間にここへ来るような人は怪しいから警戒しているだけだと思う。
 ん? ……暗めの色のコートを着てフードを被っているって、私普通に怪しいやつなのでは?

 …まあ、いいか。どの道話しかけないと向こう側に行けないし、さっさと扉を開けて通して貰おう。

「……何か御用で?」
「向こう側に行きたい…のですけど」

 凄く警戒されている。そうするのもわかるのだけど、あまりいい気分ではないな。

「ああ、また異邦人か。通行許可証はあるのか?」
「これ」

 ギルドカードに通行許可が記されているので、それを見せる。すると、軍人はギルドカードと私を見比べて難しそうな顔をした。これはもしかして偽造と思われている?

「…すまないが、そのフードを取ってくれないか? ギルドカードの偽造は無いと思うのだが、そのままだと他人のカードを出している可能性が否定できない」

 ああ、なるほど。フードの所為か。これって一応認識阻害の能力もあるし、それが駄目だったという事かな。まあ、周囲に他のプレイヤーが居たら嫌だけど、今は居ないみたいだから問題はない。

「問題はないな。すまんな、疑って」
「別に問題は無い…です」

 軍人が確認したのがわかったら直ぐにまたフードを被る。
 ここで門番みたいなことをしている以上、疑うのは仕事の内だから、謝罪は要らないのだけど。

「基本的にここは閉まったままだから、戻って来た時はここに付いているノッカーを使え。それで気付いた奴がそこの窓から顔を出すはずだ」

 扉を開けて貰って、第3エリア側に出たところで軍人が扉に付いている直径15センチくらいの輪を指して言ってきた。なるほど。前は気付かなかったし使わなかったけど、本来ならそれを使って開けてもらうのか。

「わかりました。ありがとうございます」

 そう言ってから私は第3エリアに向かって走り出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

だらだら生きるテイマーのお話

めぇ
ファンタジー
自堕落・・・もとい楽して生きたい一人のテイマーのお話。目指すのはスローライフ!

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...