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第1回イベント
おまけ 2日目のドワーフ 前
しおりを挟むイベント2日目が始まった。俺はイスタットの首都から2つ離れた村をイベントの初期地点にしている。これは、単なる偶然ではあるが掲示板の書き込みを見るに、イスタット首都の混雑具合を回避できたのは僥倖だったと言える。
元より第2エリアのエリアBOSSであるアッシュボアを倒すためにこの村を拠点にしていた。
どうも、物量攻めをしてくるアッシュボアの攻略は無理だと匙を投げたプレイヤーが多かったらしく、周りにはあまりプレイヤーは見えない。初日に確認した限り、多くとも100人は居なさそうだ。
これは、ポイントとなるエネミーの取り合いがあまり起きないことを意味する。完全に無くなるという訳ではないが、少なくとも各国の首都に居るプレイヤーに比べれば無いも同然だろう。
さて、まずはPVPをするためとポイントを稼ぐために1日目にも行った狩場に移動しよう。少なくとも、まずはエネミーを倒さなければPVPも出来ない。嫌がらせ対策とは言え、直ぐにポイント獲得効率の良さそうなPVPが出来ないのは不満がある。
ただでさえ、1位とのポイント差が3倍以上もあるのだから、エネミーを倒しただけではそう考えても追いつかない。そもそも、1位はどうやってあれほどのポイントを稼いだのか謎だ。俺も切れ目なくエネミーを倒し続けていたと言うのにあそこまで差が開くのには何かしらのからくりがあるはずだ。
さすがにイベント中、それがわかるとは思えないが運営があのポイントを掲示したと言うことはチートではないと言うことだ。ならば、同じプレイヤーである以上、俺にも同じことが出来るはずなのだ。
ただ、あのようなポイントになっているプレイヤーは他に居ない。それは現在1位のプレイヤーしか気づいていない何かがあると言うことも示している。故に、それを実行することが困難である。もしくは、レアスキルのようなものを使っている可能性もある。そうであるならば、最悪俺には出来ないと言うこともあり得る。
まあ、それは今考えることではないな。
「ふっ!」
そう思いながら目の前に出て来たウルフ型のエネミーを叩き切る。さすがに一撃では倒せないか。
おそらく1位は一撃で倒しているからあのポイント数なのだろう。ワイバーンの他にフィールドBOSSのような存在が居るならそれの可能性はあるが、アナウンスが来ていない以上、その線は薄いだろう。
ウルフが悲鳴を上げながら俺との距離を取ろうと後退しようとする。だが、そうさせるつもりはない。大して強くないウルフ一体に時間を掛けているようでは、1位になるのは不可能だろう。
もし、現在の1位がイベントに参加していなかったら、俺はぶっちぎりでトップに立っていただろうが、それを考えるのは意味がないことだ。それに上がいると言うのは、実に張り合いがあって悪くない。これで最終的にポイントを上回れば完ぺきではあるが、どうなる事か。1位を越えるには、少なくともこの2日目をフルに戦い続けなければならないのは確定だ。
む? ワイバーンが近くに出たようだ。ワイバーンの鳴き声がここまで聞こえてくると言うことは、割と近い位置に出たらしい。しかし、どうするか。討伐に参加するのはいいが、正直ポイント効率はかなり悪い。
今後のことを考えれば討伐に参加すべきではあるが、今が2日目であることを考えれば、確実に討伐後にPVPに発展するだろう。さらに、現在獲得ポイントが上位である俺は確実に狙われる。
…いや、待てよ? むしろその方が良いのかもしれないな。勝手に向かって来てくれるのなら、一々プレイヤーを探す手間も省けるしな。問題はやられた場合だが、PVPならポイントは減らないが、もしワイバーンがまだ倒されていない状況でプレイヤーから攻撃され、その後にワイバーンの攻撃を食らってしまえば即落ちしかねない。しかも、ワイバーンに倒されるとポイントは減る。
だったらある程度離れた位置から【土魔術】で攻撃を入れればいいだろうか? 掲示板情報ではあるがおそらくそれでもポイントは手に入るし、素材も手に入るはずだ。多少、実入りは少なくなると思うがな。
そうして俺はこれからの方針を決め、ワイバーンの鳴き声がした方に向かった。
何だこれは?
これは俺がワイバーンと他のプレイヤーが戦っている場に到着して最初に思ったことだ。
ワイバーンと戦っているのは前衛、後衛を含めても30も居ない。しかし、その周りにはそれよりも多くのプレイヤーがその様子を窺っているのが見える。
これは漁夫狙いか? もしくは最初にワンパン入れて素材を獲得できる条件を満たしたら死なないように離れているだけか。…いや、どう見ても死なないようにしているとは思えない態度だな。
やはり漁夫…いや、PVP狙いか? さっき俺が考えたようにワイバーン討伐後の消耗したプレイヤー狙いか。やられた側は嫌だろうが、ポイントを考えれば悪くはない…か。嫌らしいやり方だから俺はやらないが、順位だけを気にしているならやるやつは多いだろうな。
まあ、いいか。とりあえずワイバーンに攻撃を当てるか。ちょうど飛び上がったところだから、ショット系で良いだろう。
「アースショット」
スキルをチャージした後、俺がそう言うと同時に周囲の地面から土の塊が4つ程飛び出す。そしてそれなりの速度で俺の思い描く軌道を緩くなぞり、ワイバーンに衝突した。【土魔術】は他の属性とは異なり、魔術ダメージと物理ダメージの半々で判定される。
そのため、現在存在が確認されているエネミーとしては、魔術耐性が比較的高いワイバーンにそれなりのダメージを与えることが出来る。
もしかしたら弱点属性の判定も出ているかもしれないが、風属性の弱点属性が明確にわかっていないため確実にそうだとは言えない。まあ、他の属性の相性を見る限り、風属性の弱点は土属性の可能性は高いが。
「ギャァアアアア!?」
どうやら俺の攻撃でちょうど規定ダメージに届いたらしく、ワイバーンが地上に落ちていく。地面が揺れ、土ぼこりが舞う中、それを下で待ち構えていた前衛のプレイヤーがワイバーンの落下と同時に追い打ちを掛けている。ワイバーンの下に居た何人か落下に巻き込まれてダメージを受けているようだが、それでも直ぐにワイバーンは討伐されるだろう。俺が手を出すまでもない。
そして、そう時間が経たないうちにワイバーンはポリゴンとなって消えていった。手に入ったポイントは7。ポイントはスキルを一回使っただけにしては多い方だろうな。おそらくワイバーンを地面落としたことの貢献度が、他に比べて高いと言う判定に繋がっている感じだな。
素材は…肉と骨か。骨はまあ、使えるだろうが肉は要らないな。イベント後に委託に流すことになりそうだ。おそらく同じようなことを考えている奴らは多いだろうから額は低くなりそうだが、持っていても使い道が無い以上それ以外の選択肢はない。
ワイバーンは倒された。故にこの場に参加していたプレイヤーは本来この場で解散となるはずだ。
しかし、今はイベント中。昨日の敵は今日の友、の逆でさっきの戦友は今の敵、と言わんばかりの雰囲気に突入した。元からこうなるとわかっていたプレイヤーはさっさとこの場を離れているが、残ったプレイヤー同士で睨みを利かせている。
まあ、ワイバーンと戦った後なので、疲れからかそこまで全力で敵対していると言う訳ではないようだが。
しかし、そうではない連中もいる訳だ。そう、戦いには参加せず、周囲で傍観を決めていた連中だ。そして、そいつらは静かにではあるが既に動き出している。
互いに睨みを利かせまくっていたプレイヤーたちは気付いていないのか、はたまた、仲間だったのか、ワイバーンの討伐に参加していたプレイヤーが1人傍観していたプレイヤーに倒されたことを切っ掛けに、今回のイベント名にふさわしい生き残りをかけたサバイバルバトルが始まった。
まあ、PVPなら死んでもそこまでデメリットは無いのだがな。
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