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第1回イベント
50:ファルキン視点より
しおりを挟むイベント中・ファルキン視点
「ギリギリ間に合ったな」
「ああ。あと少しでイベントに間に合わない所だった」
そう言ってエンカッセが安堵したように嘆息した。
イベント開始30分前の段階でイベント空間に転移していた俺たちは周囲のプレイヤーの多さから、ここでイベントを開始したら確実にスタートダッシュが出来ないと判断して近くのセーフティーエリアまで猛ダッシュしていた。判断するのが早かったこともあり、何とかイベントが始まる前にウエストリアの隣にあるセーフティーエリアである村に到着したところだ。
「安堵している暇があったら、早くイベント空間に移動した方が良いわよ?」
「あ、やべっ」
そうして、ウィンドウを操作してイベント空間に転移した。
転移すると、そこにはそれなりの人数のプレイヤーが既にイベント開始を待っていた。混み合っているという程ではないが、これでも出だしは多少遅れそうだ。ウエストリアから行けるイベントエリアに比べれば雲泥の差度はあるけどな。あのまま、あそこに居たらセーフティーエリアから出るのにどれだけ時間が掛かるか想像したくもない。それに比べれば相当マシだ。
ついでにアユに連絡を取った所、周りに誰もいないらしい。羨ましいな、ちくしょう!
イベントが始まった。俺たちはセーフティーエリアから出て直ぐには敵を倒さず、セーフティーエリアから少しでも距離を取るために全力で駆ける。
これは事前に決めていたことだ。開始直後はセーフティーエリアの近くにプレイヤーが固まっているのでそこで狩りをするのは効率が悪い。なので出来るだけセーフティーエリアから離れたところに行ってから狩りをすると言うことになっている。
「エンカッセ。どこまで移動する予定だ?」
「出来ればセーフティーエリア同士の中間が理想だが、この分だとそこでも他のパーティーとかち合いそうだ」
まあ、そうだよな。あれだけプレイヤーが固まっていれば少しでも離れた位置に移動してから狩りをしようとする奴はいくらでも出て来るだろう。おそらくセーフティーエリアの近くでやるよりはポイントを稼げるだろうが、それでも食い合う以上効率がいいとは言えない。
「じゃあ、どうするつもりー?」
「マップを見る限り近くに森がある。そこに入って狩りをする。おそらく平野よりも強い敵が出るだろうが、俺らなら大丈夫だろう」
「この辺の森じゃあフォレストベアとかも出ないだろうし、問題は無いんじゃないか?」
「賛成はするが、そもそもフォレストベアはイベントの敵として出て来るのか?」
「公式が出してるイベントの説明読んでないのか? イベント出現モンスターの一覧に出てたぞ」
本当にふとももは適当なところがあるな。NAMEもそうだし、こういったイベントの時も碌に説明文とか読まないからなぁ。そのくせ俺より成績がいい時があるからムカつくんだが。
「あの一覧、出現する全てのモンスターが載っている訳じゃないようだから、もしかしたらこの辺でも異常に強い奴が出るかもしれないけどね」
「まあ、そうなったら諦めるしかないでしょ」
「諦めるなよ。戦え。もしくは逃げろ」
「いや、無理な時は無理でしょ。そもそも勝てない時って大体逃げれないし」
まあ、諦めるのも一つの手ではあるけど、そのスタンスでやっていると取れるポイントも取れなくなるんだよな。直ぐに諦めることの利点は時間のロスが減ることにあるからどっちが良いかと言うと意見は分かれるだろうが。
「進路上に敵」
「了解」
ぎーんの指示によってジュラルミーんが敵に【風魔術】の何かを放った。さすがに全てのスキルを把握している訳ではないし、スキル名も聞こえなかったのでなんのスキルを使ったのかはわからない。ただ、進路上に居たプラインシープらしき敵は一撃でポリゴンになって消滅した。
「ポイントはどうなっている?」
「1ポイント」
「3ポイント」
「9ね」
「と言うことはパーティーを組んでいれば一切手を出さなくても1ポイントは獲得できると。振り分けは貢献度か?」
「まあそうだろ」
これ、フルパーティーだとかなり効率悪いんじゃないか? 今の羊で16ポイントとなると等分で2ちょっとだし、戦闘となると全員で攻撃する前に倒せてしまう。そうなると獲得ポイントが偏るな。特に近距離メインの俺やエンカッセ、ふとももは戦闘に参加する前に敵が倒れていることが多くなりそうだ。
「パーティー分けた方が良いんじゃないか?」
「え、どうして?」
「ああ、確かにそうかもしれん」
さすがにパーティーリーダーであるエンカッセも気づいたようだ。逆に遠距離攻撃を主体にしているジュラルミーんは気付いていないようだな。まあ、自分に関係する事じゃないと気付きにくいのかもしれない。
「貢献度によるポイントの割り振りは俺やエンカッセのような近距離職にとってあまりポイントを稼げるようなシステムじゃない。特に高火力型の遠距離職が居ると余計それが顕著になる」
「あ、確かーに。ずっと私だけが攻撃してキル数稼いでいたら他の人はポイント稼げないよね。だから分けるのか」
「一旦止まるぞ」
「りょ」
今組んでいるパーティーを一回解消させるために足を止める。マップの位置は…大分進んだようだ。周囲にもプレイヤーの影は無い。
「パーティーを一旦解消した。それで3人パーティーにするつもりだが意見はあるか?」
「それが妥当だろ。ついでにパーティー編成も一択だけど」
「だろうな」
「いや、2人で話を進めないで欲しいのだけど」
俺とエンカッセだけで話を進めているのは確かに他のメンバーからしたら、勝手に進めるなと思うかもしれないが、実際に貢献度のことを考えると一択しかないと思う。
「いや、平均的に貢献度を割り振ると考えると一択しかないだろ。俺とエンカッセ、それとプリネージャの組み合わせと、ぎーんとジュラルミーんそれとふとももの組み合わせ以外ない」
「だな。戦闘面では確かに偏るが、この組み合わせ以外で組むと貢献度に偏りが出やすくなるはずだ」
「あー確かに? 敵が大して強くないならこれ以外ないかも。でも強いの出てきたらどうするん?」
「その時は合流すればいいだけだろ。というか別に分かれて行動するとは言っていないんだが」
「え、あー確かーに、言ってねー。ジュラ勘違―い!」
「いや、明言もしてないから、分かれて行動すると思っても変じゃねえよ」
そんなやり取りをした後にまた平野を駆け、森に到着した。そしてしばらく森で出現した敵を倒し続けてポイントを稼いだ。
そして2時間程狩りを続けていたところで、いきなりアナウンスの通知音が響いた。ちょうど対峙していた敵を倒したところだったから直ぐにアナウンスの内容を確認した。
≪イベントアナウンス
イベント空間上のフィールドBOSSであるイベントワイバーンの内の1体がプレイヤーによって倒されました。
これにより、1部の情報を開示します。
イベント空間にはフィールドBOSSであるイベントワイバーンLV20が3体存在しています。
イベント開始からしばらくの間はプレイヤーに遭遇しない限り、初期位置から動くことはありませんが、開始から一定時間経過後にイベントフィールド上を自由に移動し始めます。
このイベントワイバーンを初めて討伐した場合、討伐に参加したプレイヤーの全てに合計1000ポイント獲得できます。ポイントの割り振りは討伐した際の貢献度によって決まります。既に討伐済みのプレイヤーが参加していた場合獲得できるポイントは10分の1となります。
イベントワイバーンは討伐後、10分程でイベントフィールド上にランダムでリホップします。
この情報については、イベント用のウィンドウにて再度確認できるようになっています≫
「は? いや、ワイバーンだと!?」
事前の情報収集で一切知らなかった情報が出たことで驚きのあまり声が出てしまった。いやマジかよ!? イベントだから何かしらの大物は居ると踏んでいたけど、まさか飛竜、ワイバーンが出て来るとは。
「え? 何いきなり」
「さっきアナウンス来たやつ! それを確認してみろ!」
エンカッセ以外はまだアナウンスを確認していないのか、いきなり声を上げた俺に驚いた様子を見せている仲間にアナウンスを見るように促す。
「嘘だろ?」
「ワイバーン…?」
「まじかー。想定外じゃーん」
「どうする。探しに行くか?」
「……いや。行かない」
今すぐにでも探しに行こうとしていた仲間をエンカッセは止めた。
ワイバーン…、UWWOだと飛竜扱いになるかはわからないが、ポイント的にもおそらく獲得できるアイテム的にもおいしい敵だと思うんだけどな。
「どうしてだ?」
「今のアナウンスを聞いて俺も探しに行こうと一瞬考えた。だがな、他の連中もおそらく同じことを考えている。そうなれば取り合いになるし、フィールドBOSSと言っていた以上パーティー単位での戦闘ではないはずだ。1パーティーで倒せればポイント効率は良いかもしれないが、人数が増えれば果たして割に合う程のポイントが得られるとは思えない」
「なるほど。確かに探してまで倒すメリットは無いな。アイテムの方はどうなるかがわからないけど、多くはなさそうだ」
「だな」
そうして俺たちはそのまま森の中で敵を狩り続けることにした。そして森の中の敵が減って効率が下がったタイミングで移動を繰り返していると、昼の時間を過ぎたあたりで初めてワイバーンに遭遇した。
どうやら平均LVが低いプレイヤーたちが既に戦っていたようで、俺たちはそれを援護するように戦闘に参加した。
結果だけ言えば、それほど多くのポイントが獲得できたわけではない。通常の敵を倒した時よりも多くはあるが、討伐までに掛かった時間を考えれば効率は悪い方だ。それでも、アイテムはポイントに比べていい方だった。1人2、3個は獲得できていたのでイベント終了後に活用できるだろう。
その後は、ワイバーンに遭遇することなく1日目を終えたが、俺が獲得したポイントは1万を超えていたので十分な成果だったと言えるはずだ。
アユの獲得ポイントを聞きたいところだけど、……いや、聞いたらテンションが下がりそうだから止めておくか。
31
↓
私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
↓
森の中でひっそりと生活しようとしたのだが
いつの間にかハーレムになっていた
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