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16:リアルで兄と会話3 そして再び森へ
しおりを挟む「ふふ、俺はようやくエリアボスを倒した。アユはどうだ、進展したか? 昨日デカいネズミに殺されたとか言ってたけど」
「復讐は済んだ」
昼食を食べ終えた後の食休み。上機嫌のまま昼食を食べ終えてから話しかけてくる。エリアボス倒したのか。ワールドアナウンスの、いやその時とは限らないか。あの後倒した人もいるだろうし、兄もその中の1人かもしれない。
「そうか。ああ、そうだ、俺も称号手に入れたぞ。それもエリアボス初討伐の称号」
「ワールドアナウンスの?」
「ああ。まあ、初のワールドアナウンスは先越されたけどな」
あれは兄がいるパーティーだったのか。……できれば兄のアバターネームはふとももでないことを祈っておこう。
「あゆはレベル上がったか、昨日の夕飯の段階でレベル3とか言ってただろ」
「さっき7まで上がった」
「え? 早くね。エリアボス倒すために無茶苦茶エネミー倒し続けてようやく俺がレベル8なんだけど、あゆのところで出るエネミーのレベルどんなもんだよ」
エリアボス倒しているからもっと上だと思っていたけどそんなにレベル差がない。エリアボスのレベルはどうなんだろうか。
「最低5、高くて10くらい」
「は? たっか。最低5ならそれくらい上がるか」
「全部ねずみだけど。エリアボス強かった?」
「強いは強いな。ただ、どっちかって言うとめんどくさい敵。レベルは12で他よりは高いんだが、全体攻撃とか嫌がらせ系のスキルが強くて今まで手こずってた。倒したから今後は戦わないでエリア移動できる分楽出来るはず」
「ふーん」
エリア移動とは、アナウンスでも出てたけどまだ私には関係の薄い話題だ。
「それに初討伐の獲得アイテムが割と便利だな」
獲得…アイテム? どこかで聞いた、あ。そういえばグネズミー倒した時のアナウンスに何か獲得アイテムがあった気がする。確認するの忘れてた。
「なんかあったか。いきなり思い出した顔したけど」
「確認し忘れ。ログインしたら確かめる」
「そうか」
「そういえばそっちはエリアボス倒して別のエリアに行ったの?」
エリアボスの討伐アナウンスはログアウトする2時間前にあったはずだ。なので他のエリアに行って何かしらしているだろう。
「一応行ったぞ、すぐ戻ったけどな」
「一応?」
「メンバーの1人がどうしてもネームド倒したいからって、見つけてもいないのになあ。それに別エリアって言っても同じ第1エリアなんだよ。敵の強さは同じだし、出る敵もそんなに変わらない。多少混雑は解消できるだろうけど」
「ネームド」
グネズミー討伐のアナウンスはしっかりプレイヤーに届いてしまったようだ。設定通りなら私のアバターネームは出ていないはずだけど少し不安だ。
「ネームドも誰が討伐したかわからないからな。どこにいるかもわからないしどんな感じのモンスターだったかすらわからん状態だ。正直、その辺りはガセネタとかがかなり出ててカオスになってる」
「……そう」
どうやら私のアバターネームはちゃんと隠されていたようだ。良かった。
「ん? いや、まさか…。……まあいいか」
兄が何かに気付いたようだが、私も何も言わない。とりあえずこの後ログインしたらグネズミーで獲得したアイテムを確認しよう。あ、そういえば聞こうと思ってたことがあったんだ。
「モンスターのドロップってどんな感じなの? 何かインベントリに入るのとそうじゃないのがあったんだけど」
「モンスターを討伐した時のアイテムドロップはあゆが今言った2パタ…あ、いや、もう一つあるから3パターンだな」
「3パターン」
「1つは地面に落ちる通常ドロップ。2つ目は討伐依頼とかに使う討伐確認用アイテム。これは勝手にインベントリの中に入る。3つ目はボスの討伐とかで獲得できるランダムボスドロップだな。2つ目の討伐確認用のアイテムはインベントリに入らなかったら勝手に消滅する。3つ目はちゃんとどうするかの選択ウィンドウが出るけど」
なるほど、じゃあグネズミー討伐後に拾ったアイテムは通常ドロップか。しっぽはアイテムの説明通りで、確認し忘れたのがランダムボスドロップと言うことか。
「あー集合時間までまだ微妙だけど、もうログインするか。あゆにレベル抜かれかねないから、しっかりレベリングしないと」
別にレベルとか気にしないでいいと思うけど、誘った手前抜かれるのは嫌なのだろう。ログイン時間も今のところ兄の方が多いしね。
私も兄に続いて部屋に戻り、UWWOにログインした。
ログインしてすぐインベントリを開き、アナウンスの中で獲得したアイテムを出して鑑定。
[(アクセサリー)ルビーとサファイアの指輪(劣) Ra:Ep Qu:E Du:68/100 SAS:-]
小さいがルビーとサファイアが埋め込まれた指輪。長いこと放置されていたため土台の指輪は劣化してしまっているが、はめ込まれた宝石の力は失われていない。内側には何かの文字が彫られていたようだが長年に渡り使用していたからか、削れてしまい確認することはできない。
装備効果:火属性・水属性耐性(小) VIT+1
Ra:Epってことはレア度Epic? えっと確か、レア度の順番は、Common・UnCommom・Epic・Artifact・
Legendaryだったはず。まだ上のランクもあった気がするけど記憶にないし、現段階で獲得するのは不可能のはずだから覚えている必要もないだろう。しかしEpicも開始して10日どころか5日も経たずに散れるアイテムではないのでは? 下から3番目とはいえ十分貴重なはずだしね。
まあ、運がよかったということだろう。とりあえず装備しておこう。
火と水の耐性が上がると、効果が確認できるのはいつになるのだろうか。少なくてもこの建物の周囲は森だから火属性を使ってくる敵は居ないだろうし、水は近くに水源なんかがあればいるかもしれないけど見たことないから何とも言えないよね。
ああ、そういえばネズミとの戦闘中に【毒魔術】の熟練度が20%超えてたけど何もスキルは覚えなかったな。
用も済んだし、HPもログアウト中に十分回復した。それにレベルも上がったから、さっそく森に入ってその先を目指そう。
今回はどの方向に進もうか。前回は西側に進んで少しだけだけどマップは埋まっている。今回もそっち方向に行ってマップを広げて行った方がいいかな。少しでも埋まっている分楽はできるし、その方がいいだろう。
今回は前回に比べてより慎重に森の中を進む。【感知】を定期的にして、【隠蔽】を使っていることを強く意識する。掲示板とかで調べた感じ、どうやらパッシブスキルも使っていることを意識すると熟練度の上昇が若干だが大きくなるらしい。
辺りを見渡しながら慎重に進む。相変わらずこの森は倒木とかが転がっていて歩きづらい。あ、なんかキノコ生えてる。あたりを確認しながら倒木のそばに生えているキノコを採取して【鑑定】をする。
[(アイテム)デストリマッシュ Ra:Uc Qu:D SAS:400]
倒木などの木の側に生える毒キノコ。手で触った程度では毒状態にはならないが、このキノコの傘に傷が出来た場合、そこから出る液体に触れると状態異常:毒になってしまう。取扱注意の物であり、基本的に市場には出回らないが一部の薬師や錬金術師が買い取ってくれる場合がある。
毒キノコだった。しかも状態異常が微毒じゃなくて毒。大分強い毒を持っているものだね。あんまり触らない方がいい気がするけど、生えてたら取っていこう、アイテムの説明文見る限り、今後使うことになるみたいだし。周りには…あ、あった。回収。
他には普通の木の実とかが落ちていたのでとりあえず拾って進む。うーん、ん!?
「シャドウダイブ」
【感知】で確認した範囲の端に何か赤い点が出てきたので影の中に逃げ込む。影の中に入っているとスキルは使えないけど、多少周囲は見ることが出来る。さて何が来るのか、まあ来ない方がいいんだけど確認はしておきたい。
影の中でじっと待つ。MPの消費は2秒に1だからそんなに大きくないけど、ずっと中に入ってはいられない。お、何かが来たようだ。う…むぅ、下から見上げるように見てる感じだから見ずらい。んー、犬っぽい形だ。まあモンスターだからおそらくオオカミかウルフか、そんな感じの名前じゃないかな。
近づいてきた。大分大きいな。近くにあった倒木より背中の高さが上だ。と言うことは4本足で立ってるだけでも1メートルは超えるだけデカいと。デカネズミの次がデカ犬とは、強くなりすぎなのでは? 少なくとも正面からやったら勝ち目は0だと思う。断言できる。うん、勝てない。
デカい犬は影に潜っている私の近くまで来て匂いをかいでいる。周囲を見渡して、匂いがここで消えているから近くにいると思っているのか、それともここに居るのがわかっているのか。後者だったらすごく困るけど、どのみち早くどこかに行って欲しい。MPが切れる。まだ半分以上残ってはいるけど、無くなる時はいずれ来るのだから早く行って欲しい。
やっと離れていった。諦めたのか、他の所に何かがあったのかとりあえずいなくなってくれて助かった。いつあの犬が戻ってくるかはわからないから、とにかく早くここから離れた方が良い気がする。
なるべく音をたてないように慎重に且つ速足で移動していく。後、どのくらい森が続くのだろうか。先を見ていてもずっと木ばかりだから当分は抜けられないのは理解しているけど、同じような光景を見続けるのは飽きるし集中力も落ちる。
あ、ほらね。気を抜いてたら目の前にデカい犬がいる。しかも1匹じゃない。見る限り3匹。私の死は確定した。抗うのはどう見ても無理だから、鑑定でもしておこう。
[(モンスター)フォレストシャドウウルフ LV:■■ Att:■]
HP:■■■■/■■■■
MP:■■■/■■■
名前がわかっただけましかなぁ。
そんなことを思いながら私は後ろから奇襲して来た犬の仲間に弾き飛ばされ、今回は一撃ではなかったけど、地面に激突する前に前方にいた犬にお手玉され死亡した。
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