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8:血魔術を使ってみる
しおりを挟むまた見慣れた棺桶の中に戻ってきた。
まさか一撃でリスポーンさせられるとは想定していなかった。攻撃してきた相手を見て、できれば鑑定した後に対策をして進もうと思っていたのだが、まさかの一撃。不意打ちによるダメージ増加もあるだろうが、HPが半分以上残っている状態で一撃と言うのは対策を練ったとしても勝てるとは思えない。さらに言えば、今回ダメージを受けた量は69だが、実際にどれくらいのダメージを受けたのかはわからない。最低でも69ダメージなのだ。
そもそも少し前に戦ったネズミがLV5だったので森にいる敵は高くてもLV10前半を想定していた。そのくらいなら、【闇魔術】のダークで視界を遮りつつ、熟練度10%で覚えたダークボールでけん制して逃げる、を繰り返して進むつもりだった。
今更だが、そもそも夜に活動する敵にダークが効くのかは疑問である。いや、効かない気がする。【闇魔術】の熟練度5%で夜目を覚えたことから、ダークよりもほんの少しだが上位のスキルである夜目には効果が薄いか、効かないだろう。ついでに新しいスキルきた、から覚えたスキルが既に使っている夜目だった時の、上げてから落とされた私の気持ちを言い表すことはできない。おそらく今回受けたダメージよりも多いダメージを負ったはずだ、精神的に。
とりあえず現状を打破するためにしなければいけないことは限られる。それはレベル上げと、スキルの熟練度を上げることだ。レベルを上げるに当り、今の私が倒せるのはあのネズミしか知らない。と言うかネズミ以外とまともに戦っていないので、それ以外の選択肢はない。しかし、ここで注意しないといけないのは、現在戦闘でまともに使えるスキルは【闇魔術】だけだ。武器のナイフをほとんど使っていないので【短剣術】のスキル熟練度は低いし、そもそもあのネズミに相性が悪い。そして、あのネズミと戦った際に鑑定したステータスはこうなっていた。
[(モンスター)ビッグラット(小) LV:5 Att:闇]
HP:24/24
MP:3/3
スキル:夜目
スキルは気にしなくていいが問題は属性である。このネズミまさかの闇属性なのだ。ネズミって最初に出てくる最弱の敵とかの扱いなはずなのに属性持ち。そして私がまともに使えるスキルも闇属性。この段階であのネズミの王国に挑むのは愚策である。まあ、属性のことがなかったとしても、あそこに挑んでうまくいくビジョンが一切浮かばないのだけれど。
そうするとレベルを上げる前に、新しいスキルを取るか、既にあるスキルの熟練度を上げるか、である。新しいスキルは、残っているSKPは6か。なるべく多く残しておきたいところだけど、SKPを惜しんで先に進めないのは本末転倒。ステータスウィンドウを開いて、スキル取得可能欄にある中から今後使えそうな候補を選ぶ。
ちょっと悩んだけど選んだ候補は5つ。
1つ目は【感知】。さっき森の中で敵の接近に気づくことも出来ずやられたので早めに取得したい。と言うか取得は確定。必要SKPは2。
2つ目は【毒魔術】。対ネズミ用に取得したい。最初から使えるスキルは、ポイズンミスト。ネズミの王国は室内にあるのだから効果はあるだろう。おそらく外に繋がる穴が開いているだろうけど、あの内の一部でも状態異常になれば儲けものだろう。なるべく取得したい。必要SKPは2。
3つ目は【影魔術】。これは森を抜ける用に取得したい。最初から使えるスキルは影潜り。影に潜って身を隠すスキルだけど、影に潜っている間は移動も攻撃も出来ず、影から出て1秒間はすべてのスキルが使用できないという欠点がある。一時的に隠れて敵を欺くことはできるけど、消費MPが1秒につき2。現状、使えるかが微妙だけど早めに取得しておきたい。必要SKPは1。
4つ目は【HP自動回復(微)】。【日光脆弱】のダメージに対抗するために真っ先に取得したかったスキル。UWWOではHPは自動で回復しないので、取得必須と言えるスキル。欠点は必要SKPで10。ムリ足りない。いずれ取得したいスキルの1つ。
5つ目は【MP自動回復量増加(微)】。【闇魔術】の熟練度を上げている時、日差しによるダメージ量よりもMP消費量が上回ってしまったために取得したくなった。欠点はスキルの説明文にMP回復量がどれほど増えるのか記載がないことと、4つ目同様に必要SKPが10。いずれ取得したいスキルの1つ。
とまあ、実質候補は3つだけど。とりあえず【感知】は取得しておく。【毒魔術】はこの後【血魔術】の熟練度を上げてから取得するかどうかを判断しよう。
【血魔術】は【闇魔術】【血統魔術】同様にRACEによって強制的に取得させられたスキル。と言うことはこの3つのスキルはRACE:ヴァンパイアとしてのメインスキルなはずだ。
棺桶から出て棺桶の縁に腰掛ける。うん、縁が細くて痛い。棺桶の蓋を棺桶本体の足側に乗せて、その上に座る。今度は痛くない。
棺桶の蓋が安定しているかを確認してから【血魔術】の[ブラッド]を発動させる。
「ブラッド」
ブラッドとスキル名を唱えると、体の力が一瞬抜けたような感覚を覚えた。これがHPを10%消費して血を発生させた影響だろう。それから目の前1メートル程のところにテニスボールくらいの大きさで血液と思われる液体が現れた。【闇魔術】の[ダーク]は最初に広がった感じで出てきたのに対して、これは広がらずに球体となるようだ。特に意識しなくてもスキルは解除されないようだが、ブラッドはほとんど赤いボールのようになっている。
意識してほとんど球体になっているブラッドを動かしてみる。ダークより形を変えるのが難しい。いや、難しいというより少し柔らかい粘土を弄っている感じか近いかもしれない。ダークはほとんど力を入れなくても変形させられる感じだったから、難しく感じているのかもしれない。
残りのMPが100を切った。そろそろ発動から1分と言うところ、やはりダークに比べてMPの減りが早い。スキル説明にも書いてあるのだから当たり前ではあるのだが、実際使ってみるとその差をより実感できる。
そういえばこの血液のような液体はMPが切れたり、意図的にスキルを解除したりした場合はどうなるのだろう。うーん、1回スキルを解除してみた方がいいかな。あ、いやそういえば、コップ拾っていたはず。それに入れてからスキル切った方がいいかもしれない。もし、まだ使える状態を保つのであっても、地面に零れたら使えなくなるかもしれない。
ブラッドを発動させながらウィンドウを弄ってコップを取り出す。MPが10%を下回ったらコップに入れてみよう。まずは、ぶっつけでやると失敗しそうなので、零さずにコップに入れる練習をする。
コップの上に持ってきて、ゆっくり下ろして、コップの縁に当たらないように少し縦に長細くする。そしてコップにイン!
さらに2回やったところで、MPが10%になったので練習通りにコップに入れる。それから、スキルを解除する。すると、ブラッドで出した血液のような液体は、トプンッと言った感じの波紋を残してコップの中に留まった。
残りのMPは5。とりあえずコップに入った液体を鑑定してみる。
【(道具)魔造血液 Ra:Uc Qu:C Du:48/50】
魔力によって作られた血液。この血液は本物の血液とは異なり、劣化や凝固がしづらい。この血液を利用できるのは、この血液の基となった魔力を持っている者のみである。この血液は、地面及び床に落ちる、残存耐久値以上のダメージを受ける、基となった魔力を持った者がリスポーンする(この場合、インベントリ内に入っていても同様)等の場合、耐久値に関係なく消滅する。作成者:アユ(秘匿)
まだ使うことが出来るようだ。やはりコップなどの器がないと消滅してしまうらしい。しかし、地面と床と言うことは、やるつもりはないけど棺桶の中に入れた場合は残るということ? それに残存耐久値以上のダメージを受けると消滅ということは、それ以下なら盾として使えるということなのかな。まあ、量としてはコップの8割くらいの量しかないから、盾として使うには小さすぎるけどね。
この魔増血液の使い勝手がいいかどうかは追々わかってくるだろうからいいとして、ある程度何度も使えるのは良かった。HPが毎回消費するのはまだいいけど、HPが減った時の力が抜けるような感覚を何度も受けたくなかったので僥倖である。
そして私は、魔増血液の耐久値の減り方を見つつ、MPが10%を下回ったら休憩してMPを回復させる、を繰り返しながらログアウトまでゲーム内4時間ほど現実で23時半になるまで【血魔術】の熟練度を上げていった。
24
↓
私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
↓
森の中でひっそりと生活しようとしたのだが
いつの間にかハーレムになっていた
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