UWWO ~無表情系引きこもり少女は暗躍する?~

にがりの少なかった豆腐

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1:アバターメイク

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 目を開けたら、何もない空間に立っていた。どうやら無事、UWWOにログインできたようだ。

 周りを見回すと、10メートルほど離れたところにUWWOのタイトルロゴが出現していた。見たところそれほど大きくはなさそうだが、なぜかロゴが伸びたり縮んだり膨らんだりし始める。近づいた方がいいのかと思い足を進めようとしたが、急に動作が大きくなり始めたため思いとどまる。

 しばらく見つめていると、文字同士がくっ付き、大きな球体になり始めた。まさか、これは最終的に爆発するパターン!? と身構えたところで、球体は爆発することなく徐々に人型になり、最後には完全な人型のアバターになった。

「ようこそUNITE WHOLE WORLD ONLINE の世界へ。始めまして、私は初期設定の補助を行いますAI、C-633と言います。短い間ですがよろしくお願いします」

 なるほど、これが兄の言っていた補助AIというやつか。というかさっきのロゴのモーションは必要だったのだろうか。運営の遊び心とかなのかもしれない。
そんなことを考えながら私はよろしくお願いしますと言って、軽く会釈した。

「質問がある場合は、その都度質問されて大丈夫です。私が答えられる範囲で回答いたします」

「初回限定版特典のチケットがインストールされています。使用なさいますか?」

 YES/NO、という選択肢が目の前に出てきたので、YESを選択する。

「チケットを反映させました。
 ではこれから初期設定を行います」

「先ずはアバターの設定です。アバターの見た目は本体にスキャニングしたご自身の体を基に作られています。そのため性別の変更はできません。また、現実での生活に影響が出る可能性を考慮して、UWWOでは通常アバターの大きな変更はできない仕様となっております。どの程度変更できるかは実際にアバターを弄ってみて確認してください。基本的に身長は±5センチ、BWHなどのパーツは±5%程度の変更までなら可能です。ただ、髪の長さや色、肌の色、瞳の色は可能な範囲で自由に変更できます。アバター作成に関して、こだわりがない限り最低でもなるべく髪の色は変更しておいた方がよいと注意を促すよう製作側から言われております」

 注意に関してはリアルバレ防止のために変えた方が良いということなのだろう。過去にいろいろあったらしいし。まあ、元から多少は変えるつもりだったから問題はない。
 とりあえず、目立つのは嫌だから目立たないように特徴を減らすように弄る。顔のパーツとかほぼ弄れないのか、なら普段しない様な髪型とかにすればいいか。
 身長とかは多少弄る程度の方が良いかな。さすがに身長5センチも変えたら違和感あるだろうし、胸は大きくするのはないな。変なのが寄ってくる可能性が増える。むしろ減らした方がいいのか。
 髪は、癖っ毛だからストレートでセミロングくらいの長さにして、髪の色は黒だと逆に目立つ可能性があるからダークブラウンくらいで。おお、眉毛の色も変わった。
 これ以上弄る所もないので、アバター作成完了ボタンを押す。

「アバターの作成を完了しますがよろしいでしょうか?」

 またYES/NOの選択肢が出てきたのでYESを選択する。

「では次はアバターのNAMEを設定してください。ここでも現実の名前しようしないよう注意するように促されております」

 変な名前は付けない方がいいかな。変な名前付けても私自身が反応できなそうだし、兄もこのゲームやるから、バレて恥ずかしい思いをするのは嫌だ。うーん、まあ普通にアユでいいか。

「NAMEの重複はありません。アバターNAMEはアユさまでよろしいでしょうか?」

 選択肢が出てきてYESを押す。

「では、次はアバターのRACEを設定してください。選べるアバターは、ヒューマン、エルフ、ドワーフ、獣人になっております。獣人を選択された場合、獣人の中から元となる動物を選択することになります。RACE選択によりアバターの外見が多少変化する場合がありますが、RACE選択後にアバターを設定し直すことが可能です。各RACEのステータスなどはRACEを決定した後に確認ができる形となっております」

 選べるのは4種類からか。私はソロで活動するつもりだから、戦闘と生産をまんべんなく使えるRACEの方が良いはず。特化型になりやすいRACEは却下だ。
 聞いた限りでは、獣人は戦闘特化のビルド向きらしいから除外、エルフは戦闘も生産もこなせるが、筋力が低いから武器防具製作系は向いていないらしい。誰にも関わらずプレイするという私の理想から外れるので却下。ドワーフは魔法方面が壊滅的らしいのでダメ。やはり器用貧乏のヒューマンにすべきだろうか。

「どのRACEにするかを悩まれる場合は、ランダムでRACEを選択する方法もございます。ランダムでRACEを設定できる回数は1アカウントにつき3回までとなっております。ランダムを選択した場合初期STP/SKPに5ポイントほどボーナスがつきますが、あまりお勧めしておりません」

 どうやらなかなか選択しなかったので迷っていると思われたらしい。UWWOのAIはすごいらしいという噂は本当のようだ。しかし、お勧めしないとはどういうことだろう。

「ランダムでRACEを設定する場合、低確率で本来選択できないレアRACEを選ぶことができますが、その場合初期位置がフィールド上のセーフティーエリアにランダム、もしくはRACE専用のセーフティーエリアが初期位置となります。この場合、チュートリアルを受けるまで時間がかかる、場合によっては不可能に近い状況になる恐れがあります。また、チュートリアルを受け終わるまで、JOBの設定ができないことも考慮してください」

 何か知らない単語が出てきた。UWWOのホームページにもレアRACEと言う情報は載っていなかったはずだ。昨日じっくり見たから断言できる。

「さらにレアRACEに関しては、アバターが人型ではない、取得不可スキルがある、強制取得スキルがある、ステータスの補正が極端、選択できないJOBがあるといった場合がございます。あらかじめUWWOでのプレイスタイルを決めている場合は避けるのが無難だと思われます」

 む、確かに選択できたレアRACEのステータス特徴がわからない以上、やろうと思っていたプレイスタイルが出来なくなる可能性も考慮しないといけないのか。しかし、レアという物に惹かれるのは人の性だと思う。

「最後に、私たち補助AIにはレアRACEに関するすべての情報は開示の許可は出ておりませんので、レアRACEが選択できる場合でもRACE名以外の説明をすることが出来ません。それに伴いステータスに関する説明やSTP/SKPの説明をすることが出来なくなるため、レアRACEを選択した場合初期位置についた後にヘルプを参照ください」

 ステータスとかは予習しているからそこまで説明が欲しいわけじゃないし、どうにかなりそうだから問題はないはず。

「RACEをランダムで設定しますか?」

 まあ、これだと思えるのが来なかったらヒューマン選べばいいし、とりあえずYESを押す。

「では、ランダムにより、エンジェルが選択されました。レアRACEとなります」

 エンジェル、要は天使か。天使って大体回復とかサポート系として出てくることが多かったから、レアRACEだけど却下で。もう1度ランダム。

「では、ランダムにより、獣人(熊)が選択されま――」

 獣人、却下。リトライ。

「では、ランダムにより、ヴァンパイア(純血)が選択されました。レアRACEとなります」

 ヴァンパイア? 心臓に杭…は、今は関係ないとして、日に弱い。日中外で活動できない可能性が高いな。いや、ソロで活動するのなら問題ないかな。戦闘特化のRACEの可能性もあるけど、(純血)とか付いているし、かなりのレアRACEっぽい。ダメだったら初回のクーポンもったいないけどリセットしてやり直せばいいか。このRACEで決定だ。

「RACE:ヴァンパイア(純血)で決定しますか?」

 安定のYES選択。

「RACEの設定が完了しました。レアRACEが選択されたため、次の工程をスキップします。ステータスなどに関しては初期位置に到着後、ステータスと言っていただくとステータスウィンドウが出ますのでそこで確認してください。またヘルプ等はそのウィンドウの1番下にございます。そのほかに関して詳しくは後程ヘルプを参照ください」

 うわっ、肌の色が青白くなった。さすがにこれはない。失敗したか。

「RACEの設定に伴い、アバターの再設定が可能です。アバターの設定を行いますか?」

 そういえば再設定可能だった、セーフ。YESを選択して、ということで肌の色を変更、ってああ肌色リセットボタンでRACE選択前の色には戻せないっぽい。リセットを押しても青白いままだ。とりあえず白さが抜けないけど覚えている限り近い色にしてっと。遠目で見ても違和感はないようだ。よし、完了。

「初期設定が完了しました」

「それでは、これより初期位置へ転送を開始いたします。30秒後に転送が完了予定です」

 結構時間がかかったが、ようやく設定が終わったようだ。
 そんなこと考えていると足元から光が溢れてきた。結構まぶしいが、これは転移エフェクトなのだろう。

「では、改めまして、ようこそアユさま。Unite Whole World ONLINEへ。いまからUWWOの世界アーウェルスでの新たな冒険が始まります。私たちAI一同、開発者一同、アユさまのアーウェルスでの活躍を期待しております。行ってらっしゃいませ」

 補助AI C-633がそう言い終わると同時に私の視界は真っ白に染まった。
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