俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ などのファンタジー短編集

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
上 下
36 / 77
聖女の身代わりのために【変化魔法】で聖女とそっくりに変身したおじさん。隣国の皇子には捨てられたが、なぜかその妹の皇女に懐かれる。(超短縮版)

身代わりおじさんです(絶望)

しおりを挟む

 【変化魔法】という特殊な魔法を覚えて生まれた俺氏。なぜか今、王の間に呼び出される。

「お前が、ソルターであっているか?」

 でかい椅子に座った、肖像画でしか見たことのなかった国王が俺に話しかけてくる。

「はい」
 普通に威圧感あって、こええぇ……

 どうしてこんなところに平民の俺が呼び出されているのか。理由としては先に挙げた魔法くらいだが、もしかしてこれが法に触れるからと処刑されるのか?

 魔法ギルドには違法魔法だからと使用するのを禁止されているし、今の今まで日常で使ったことはない。
 数度だけ、ギルドからの依頼で身代わりとして使ったきりだ。

「此度の話は伺っているか?」

「……なにも」
 何の話なんですかねぇ! 有無を言わせず連れてこられたから何も聞いてねぇんですよねぇ。おい! そこの騎士さんよぉ!

 国王少し戸惑ってんじぇねぇかよ。どうすんだよこれ、もしかして王様に今回のこと説明させんのか?

「ここにお前を連れてきたのは誰だ?」

「……申し訳ありません。わからないです」
 チラ見したら俺を王城に連行してきた騎士にめっちゃ睨まれているんだよね! ここでポロったらこの後何されるかわかんぇから言えねぇんだわ。
 そもそも名前もわからんし。こいつですって指して、国王の前で言うのもどうかと思うしさ。

「そうか。そのあたりは後でそこにいる騎士を問い詰めることにするかな」

 がっつりバレてんじゃねぇかよ草ァ! ザマァねぇわ。

「今回あなたをここへ呼び出したのは、隣国であるゴーシャ帝国と我が国の聖女に関してのことです」

 国王の隣に立っていた宰相っぽい人が丁寧に説明してくれる。

「我が国の聖女様が、ゴーシャ帝国の第2皇子から求婚されました。しかし求婚とは言いましたが、我が国の立場では断ることが出来ないため、実際のところは強制です」

 ゴーシャ帝国って言えば強欲帝国とか言われるこの国の隣に位置しているでかい国のことだ。
 うちの国は国土が小さいし、周辺国の中でも力がないから普段から結構無茶振りされていたりするんだよな。

 一部の食料とか、そこに依存しているから強く言えないし、言ったら何されるかわからんっていう。
 まさか、聖女を求めてくるなんて思ってなかったけど。

「聖女様は我が国の宝だ。おいそれと他国に移動させるわけにはいかない」

 聖女ってのは文字通り、聖なる力を持っている女性のことを指す。この国に居る聖女も特別な力を持っているわけだ。

 で、ここまで説明されれば何となく俺がここに呼ばれた理由は見当がつく。

「そこで、ソルター殿には聖女の姿に変身してもらい、身代わりをしてほしいのだ」

 そら来たことか!(絶望)

「あの」
 いやでも、【変化魔法】って万能じゃないんだよな。

「なんだね」

「その、いずれ誤魔化せなくなると思うのですが」
 俺の魔法は確かに他人の見た目そっくりに変身することはできる。しかし、当然だが変身した当初の姿のままでいくら年が過ぎたところで成長もしないし老化もしない。見た目が変化することはないのだ。

「問題はない」

 うっそだろ!?
 いやバレるって。ばれたらどうなると思ってんの? 俺はまあ殺されるとして、国間の問題になるでしょ。そこ理解しているでしょ!?

「ゴーシャ帝国の皇子から求婚されたわけだが、あちら側は本格的に聖女様と婚約を結ぶつもりはないのだ。あくまで我が国の力を削ぎたい、それだけのために聖女様に求婚してきたにすぎない」

 そういうことっすか。そうであればまあ、バレない……わけねぇよなぁ!

 どう考えてもバレないってことはなだろ。
 確かにさ。俺の【変化魔法】は見た目、感触、声に匂いまで真似られるし、その人物の能力もそれなりに使えるようになる。
 後まぁ、考えたくないけど、男女のあれこれもできなくはない。考えたくはないけど。

 だから、その場しのぎにはかなり優秀だけど、長期で見たらそうでもないんだよ。

「無理があるのでは」
 絶対バレるから考え直してほしいわ。

「大丈夫だ。問題ない」

 そんなわけねぇだろうガアアァア!!

 俺は顔に出すことなく、心の中でそう絶叫した。いやまじで問題ないわけないだろうがよ。

 とはいえ、国の意向を一庶民がどうすることなど出来るわけもなく、俺は聖女に変身し、隣国の皇子の元死地へ向かうことになった。




 それから、見た目美少女ながら性格が激悪の聖女に会い、聖女の姿に変身してみればそっくりすぎてキモイと言われ、傷心のまま隣国ゴーシュ帝国へ移動。

 ゴーシュ帝国ではバレることなく第2皇子の婚約者として受け入れられたものの、なぜかすぐに皇子に放逐され、途方に暮れることに。
 勝手に国へ帰るわけにもいかず何をするもなく、仕事を求めればなぜかオッドアイ皇女の付き人にされる。

 皇女の付き人をしつつ、いつ身代わりなのがバレるかと戦々恐々としている中で、なぜか皇女に懐かれ、戸惑う日々。
 
 めっちゃ可愛い子に懐かれるのはうれしいけど、バレた時が怖すぎる! それと、騙し続けているの状況で心が痛い。
 付き人とは言え皇女付きだから元の生活よりいい生活が出来てはいるんだけど、つれぇええええ!

 誰か俺をこの環境から助けてください! お願いしまぁす! 


 なお、助けは絶対に来ない模様。

 身代わり変身おじさんの未来はどっちだ!?



 ―――――
 終わり
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...