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母国の騒動

王子としての最後 ※他視点

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「はあ、とりあえず今言ったことはあくまでも些細な事ではある。しかし、本当の問題は別だ」
「私は何か問題を起こしたという記憶はないのですが」

 グリーとしてはいつも通りの行動をずっと続けていたと認識しているため、何が問題だったのかを理解することが出来なかったようだ。

「……先日、お前が一緒にいた少女についてだ」
「先日? 少女……ラフリアの事でしょうか?」

 グリーは数日前、執務を投げ出し城外に出ていた際に出会った少女の事を思い出した。あれからもう一度会ってはいるがそれっきりになっており、その後に別の女性と関係を持ったことでグリーはその少女の事をうっすらとしか覚えていなかった。

「そのまま、名乗っていたのか」
「はい?」
「いや、何でもない」

 まさか、件の少女が偽名を使わずにグリーと接していたとは思いもよらず、第1王子は頭が痛いような気分になった。

「とりあえず、そのラフリアと名乗った少女の事だが、何処の出身なのか、お前は把握しているのか?」
「他国の出身で旅行でこの国に来たと聞きましたが、もしかして嘘だったのですか?」
「いや、他国出身なのは間違っていない」

 それを聞いて、自分が騙されていなかったことに安堵するグリーだったが、本題に入っていない段階で安堵する様子を見て、2人の様子を監視していた宰相も呆れたような表情をしていた。

「その様子であれば、その少女の身分までは把握していないようだな。おそらく商人の娘か下級の貴族くらいに思っているのだろう?」
「出身と名前以外、何も言ってくれなかったので、訳アリの貴族とは思っていましたが……、まさかその部分に問題があったのですか!?」

 今更、驚きの声を上げるグリー。しかし、その様子には少なからず演技を匂わせる硬さが見えた。

 おそらく数日前にあった少女の身分に問題があったと気付いたグリーは、その問題を起こした原因をその少女に擦り付けるために、このような演技をしているのだ。

「その下手な演技は止めろ、グリー」
「え、演技ではないです。本当に驚いているのですよ? 本当です」

 驚きが演技であることを指摘され、グリーはあからさまに狼狽え、口ごもる。

「お前の反応はどうでもいい。既に事は起き問題も回避できない状況だ。お前がどうあろうとそれは避けられない」
「え?」

 何をしても無意味と言われ驚くグリーを無視して第1王子は話を続ける。

「先日お前と事をしでかしたラフリアという者の正体はタテリア皇国の貴族で間違いない。そして正確な名前はラフリア・テリエス」
「テリ……エス……!?」

 テリエスという家名に聞き覚えがあったグリーはそれを聞いて一気に顔を青ざめ、事の重大さを認識した様子だった。

「あの少女はタテリア皇国、テリエス侯爵家の令嬢だ。そしてこの国に居た理由は確かにお忍びと言っても間違いはない。しかし、正式な物ではなく誰に事を告げることなく家出をした中でのお忍びだ」
「では、何故あのような事を? 確かテリエスの令嬢と言えば、タテリアの王太子の第2夫人として正式に迎え入れられることが決まっていると聞き及んでいましたが」
「それが嫌だった、それだけの理由だ。お前と事を運んだのもそれが理由だろう」

 自分が利用されていた。そのことを聞かされてグリーはとうとう口を開けなくなった。

「まあ、利用されていたかどうかは関係ない。お前は他国の王族と婚約している者と事を運んでしまった。そして、それはタフリアの王太子に対する敵対行動としてとられた」
「っ!?」

 意図せず国家間の問題に発展してしまっていることを知りグリーは息を呑んだ。

「しかし、あちらとしてもテリエスの令嬢が行った行動によるものである以上、ことを大きくしたくはないらしい。それはこちらとしても同じだが、今後同じようなことが起きないとは断言できない。故にお前は現段階を持って王族の籍から排除することが決まった。正直なところ、もっと早い段階でこうしておけばよかったと今回のことで大いに後悔している」
「はぇ?」

 まさか、自分が王族ではなくなるとは想像もしていなかったグリーは、驚きや信じられないという思いから素っ頓狂な声を上げた。

「ただし、このまま平民まで位を落とすのも不安が残る。差し当たってオグラン家の爵位を剥奪する可能性があるため、もしそうなった場合はその穴を埋めるために新たな爵位を与えることになるだろう」
「そ……れは、もし剥奪されなかった場合、私はどうなるのでしょう。それと私と婚約していたリーシャはどのような扱いを……」
「……さて、どうなるのだろうな。まあ、あの者の事なら既に婚約は破棄されている。お前の気にするところではない」

 知らぬうちに自身の婚約が破棄されていた事に驚くも、それ以上に自分の今後のことが不安でならないグリーは宰相の方へ視線を泳がせた。しかし、宰相はグリーの事を一切気に留めず、手に持っている書類の確認を進めていた。

 そうしてこの時を持ってグリーは王族の籍から除され、一貴族として残りの生涯を過ごすこととなった。

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